
司法試験予備試験(以下、予備試験)の第一関門である短答式試験には、法律基本7科目の他に「一般教養科目」も出題されます。対策にどのくらい時間をかけるべきでしょうか。
実は、まったく対策せず0点だったとしても、短答式試験に合格することは可能なのです。
この記事では予備試験の一般教養科目について、0点でも合格できる理由や、浮いた時間でどんな勉強をすべきかについて解説します。
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予備試験の一般教養科目とは?
予備試験の一般教養科目とは、大学卒業程度の一般教養を試すために短答式試験(マークシート)で出題される科目です。かつては予備試験の論文式試験でも一般教養科目が出題されていましたが、令和4年(2022年)に廃止されています。
▼予備試験 短答式試験の試験時間
試験科目 | 試験時間 |
民法・商法・民事訴訟法 | 1時間30分 |
憲法・行政法 | 1時間 |
刑事・刑事訴訟法 | 1時間 |
一般教養科目 | 1時間30分 |
【参考】法務省「司法試験予備試験の実施について」>各年の受験案内
一般教養科目で出題される分野は、人文科学、社会科学、自然科学、英語です。合計40問が出題され、この中から20問を自由に選択して解答します。
法曹になるための試験になぜ一般教養科目がある?
予備試験に一般教養科目があるのは、簡単に言うと法科大学院ルートとのバランスをとるためです。
予備試験に合格すると、法科大学院修了者と同じように司法試験の受験資格を得られます。
法科大学院に入学できるのは、原則として大学卒業者のみです。一方で、予備試験には受験資格の制限がないため、実際に高校生で予備試験を受験し、合格している人もいます。
そのため予備試験でも一般教養科目を課すことで、受験者に大学卒業程度の一般教養があるかどうかを判定しているのです。
一般教養が「0点でも合格できる」のはなぜ?
予備試験の短答式試験は、実は「一般教養が0点」でも合格できる可能性が十分あります。その理由を解説しましょう。
まず、短答式試験の合格点は、例年160〜170点程度となっています。
▼近年の予備試験短答式試験の合格点
試験実施年 | 合格点 |
令和6(2024) | 165点 |
令和5(2023) | 168点 |
令和4(2022) | 159点 |
令和3(2021) | 162点 |
令和2(2020) | 156点 |
令和元(2019) | 162点 |
前述のとおり、短答式試験は法律基本7科目(前出の図で黄色で示したもの)と一般教養で構成されています。
法律基本7科目の満点は合計210点であり、仮に8割がとれたら168点。すでに例年の合格点と同程度の得点を獲得できることになります。
このため、法律基本7科目で8割強をとれる人であれば、たとえ一般教養が0点でも合格できるのです。
もちろん一般教養でも得点できたほうが理想的ですが、特別な対策は必要ありません。一般教養の問題は5肢択一式となっています。
極端な話をすれば、機械的に選択した20問すべてに同じ番号をマークしても3、4問は正解となります。1問3点なので、9〜12点程度はとれるでしょう。
また、一般的な受験生であれば42問中2、3問は解ける問題があるため、特に対策をしなくても18点程度はとれるはずです。
逆に考えると、法律基本7科目で152点(7割3分)がとれたら合格ラインに到達できるという想定になります。
この7割3分をとることは、それほど難しくないと言われています。短答式試験の法律基本7科目は過去問から繰り返し出題される分野が確立していて、対策が立てやすいからです。
普段から過去問を繰り返し解いて、問題の答えそのものだけでなく周辺知識や関連条文も丁寧に確認しておけば、7割5分はとれるようになるでしょう。
また、こうした過去問対策を続けていれば、論文式試験でも条文を適切に示しながら論じることができるようになります。
一般教養は、そもそもの出題範囲が事実上無制限で内容も多岐に渡るため、有効な試験対策が行いづらい科目です。
一般教養科目の対策に時間を使うよりも、対策するほど得点が伸びる法律基本7科目に集中したほうが合格が近づくでしょう。
以下は、過去の予備試験短答式試験の合格者平均点、合格ライン、合格ラインの得点率をまとめたものです。
▼予備試験 短答式試験の結果
試験年 | 合格者の平均点 | 合格点 | 合格点の得点率 |
令和6(2024) | 181.1点 | 165点 | 61.11% |
令和5(2023) | 183.4点 | 168点 | 62.22% |
令和4(2022) | 175.0点 | 159点 | 58.89% |
令和3(2021) | 178.7点 | 162点 | 60.00% |
令和2(2020) | 173.7点 | 156点 | 57.78% |
令和元(2019) | 177.0点 | 162点 | 60.00% |
平成30(2018) | 177.7点 | 160点 | 59.26% |
平成29(2017) | 174.9点 | 160点 | 59.26% |
平成28(2016) | 181.5点 | 165点 | 61.11% |
平成27(2015) | 187.5点 | 170点 | 62.96% |
平成26(2014) | 185.7点 | 170点 | 62.96% |
平成25(2013) | 185.3点 | 170点 | 62.96% |
平成24(2012) | 184.1点 | 165点 | 61.11% |
平成23年(2011) | 184.7点 | 165点 | 61.11% |

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予備試験の短答式試験に合格するには?
では予備試験の短答式試験に合格するには、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。勉強方法について解説します。
短答式試験は「法律基本7科目」に集中!
前述のとおり、予備試験の短答式試験は一般教養科目がたとえ0点でも合格できるので、法律基本7科目のみを勉強することになります。
とはいえ7科目と多く、それぞれの科目の出題範囲も非常に広範です。試験直前に短期集中で一気に詰め込むような対策では太刀打ちできません。
また、一度勉強をしてもしばらく触れずにいるとその知識の多くを忘れてしまうため、問題も解けなくなってしまいがちです。
これを防ぐには、毎日少しずつでも演習を進めて知識を定着させたり、間違えた問題を復習して弱点を潰したりといった対策が有効です。
こうした地道な学習を早めに習慣化しておくことが短期合格につながります。
予備試験全体で考えると「論文式試験」対策が6〜7割
予備試験の第一関門である短答式試験の突破はもちろん重要ですが、予備試験に最終合格するには、論文式試験の対策が非常に重要です。
試験対策全体から見ても、6〜7割の時間は論文対策に使う必要があるでしょう。
論文式試験では、ただ法律の知識があればよいわけではなく、その知識を応用したり問題を分析したりして、合格レベルの文章に落とし込めるスキルが必要となります。
スクールなどに通っている人は答案の添削を受けられますが、独学ではどこをどう直せばよいかがわからないため、文章に落とし込むスキルを身につけるのは難しいでしょう。
問題の特徴や対策のポイントはこちらの記事で解説しています。

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【Q&A】予備試験に関するよくある質問
最後に、予備試験に関するよくある質問について解説します。予備試験の受験を検討している人や、予備試験に関する疑問がある人はぜひ参考にしてください。
予備試験の合格率は?
予備試験の最終合格率は例年3~4%前後で推移しており、合格率と最終合格率は下記のとおりです。
試験実施年 | 短答 | 論文 | 口述 | 最終 |
令和6(2024) | 21.86% | 17.45% | 97.40% | 3.57% |
令和5(2023) | 20.01% | 19.01% | 98.36% | 3.58% |
令和4(2022) | 21.75% | 17.85% | 98.13% | 3.63% |
令和3(2021) | 23.24% | 18.19% | 98.11% | 3.99% |
令和2(2020) | 23.84% | 19.02% | 95.67% | 4.17% |
令和元(2019) | 22.89% | 19.15% | 96.36% | 4.04% |

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予備試験や司法試験に合格するための勉強時間は?
予備試験・司法試験に合格するための勉強時間は、目安を立てるとすれば下記のようになります。
予備試験 | 司法試験(本試験) | 合計 | |
一般的な勉強法 | 6,000〜8,000時間 | 1,800〜2,000時間 | 7,800〜1万時間 |
短期合格者の勉強法 | 3,000〜5,000時間 | 1,500時間 | 4,500〜5,600時間 |
司法試験・予備試験の勉強時間は、他のさまざまな資格試験対策と比べても、個人差が非常に大きいことが特徴です。
ただし、短期合格者の勉強法を参考にすれば、一人ひとりにとっての最短ルートで合格を目指せます。勉強のやり方が、命運を分ける大きな要素となるのです。
短期合格者の勉強法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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まとめ
今回は予備試験短答式試験の一般教養科目や短答式試験対策について解説しました。
- 一般教養は人文科学、社会科学、自然科学、英語からなる40問中20問を選んで解答
- 法律基本7科目で8割強がとれる人なら、一般教養が0点でも合格できる
- 一般教養の試験対策は不要。法律7科目に集中したほうが合格が近づく
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