司法試験の短答式試験とは?合格率・出題傾向・勉強法

司法試験の受験は、科目数が多くボリュームも大きい論文式試験が合否のカギを握りますが、短答式試験の対策もおろそかにできません。もし短答式試験の得点が最低ラインを超えていない場合、論文式試験の採点が行われず不合格になってしまうからです。

今回は司法試験の短答式試験について、基本情報、合格率、出題傾向、勉強法などについて解説します。

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目次 Contents

司法試験の短答式試験とは?合格率・出題傾向・勉強法


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司法試験の短答式試験とは

司法試験の流れ

司法試験の短答式試験は、予備試験と同じくマークシート方式の試験です。

予備試験の短答式試験の科目は法律基本7科目と一般教養(全8科目)ですが、司法試験は民法、憲法、刑法(全3科目)で、予備試験よりも科目数がかなり少ないことが特徴です。


令和5年(2023年)試験日程・合格発表

令和5年(2023年)司法試験の短答式試験は7月16日(日)に実施されます。

また、短答式試験に先立って7月12日(水)・13日(木)・15日(土)には論文式試験が実施され、試験全体では全4日の日程となっています(2日目の後に休み1日あり)。

なお、司法試験と予備試験の短答式試験は、一部で同じ問題が出題されるため毎年同じ日に実施されます。


【あわせて読みたい】司法試験と予備試験の実施日程・試験場(試験会場)


試験時間・科目・問題数・配点

▼試験時間・問題数・配点

科目 試験時間 問題数 配点  最低ライン
民法 1時間15分 36問程度 75点 30点
憲法 50分 20問程度 50点 20点
刑法 50分 20問程度 50点 20点
合計 2時間55分 76〜77問 175点

【参考】法務省「令和5年司法試験受験案内」「司法試験の方式・内容等の在り方について」

旧司法試験では、論文式試験の合格者は、その年の口述試験に合格できなくても、翌年に限り筆記試験(短答・論文)の免除を受けることができました。

ただし、現行の司法試験ではそういった科目免除の制度はありません。


最低ライン・合格に必要な得点

司法試験の短答式試験では各科目に「最低ライン」が設けられていて、合否判定の材料になります。

短答式試験で1科目でも40%未満の点数を取ってしまうと、他の科目がどれだけ高得点でも、その時点で短答式試験は不合格となります。

各科目の最低ラインは、民法が30点、憲法と刑法が20点です。


また全科目で最低ラインを超えていた場合でも、合計点が一定の得点に達しなければ短答式試験は不合格となります。

不合格の場合、論文式試験の採点が行われません。

この「一定の得点」はその年の受験生の平均点を考慮して算出され、令和5年(2023年)試験については8月3日に発表されます。

点数は年によって上下しますが、全体の7割の得点が取れていれば、おおむね安心と言えるでしょう。

もっとも、最終合格者の短答平均点はさらに高いものになるので、最終合格のためには8割の得点を目指すべきといえます。


▼近年の司法試験短答式試験の平均点

平均点 最低ライン
民法 憲法 刑法 受験者

合計

短答合格者

合計

令和5

(2023)

48.7点 31.4点 38.2点 118.3点 126.1点 99点
令和4

(2022)

47.3点 31.6点 36.8点 115.7点 123.3点 96点
令和3

(2021)

48.9点 34.2点 34.3点 117.3点 126.4点 99点

【参考】法務省「司法試験の結果について」>各年の「短答式試験結果」


なお、司法試験全体の配点割合は「短答:論文=1:8」となっています。

つまり合否の鍵を握るのは配点が圧倒的に高い論文式試験であり、受験勉強はどうしても論文対策が中心になるでしょう。

しかし、前述のとおり短答式試験で最低ラインを超えなければ論文式試験の採点に進めません。

短答式試験の対策もおろそかにしないようにしましょう。


司法試験短答式試験の合格率・難易度

ここからは、実際の数値をもとに司法試験短答式試験の合格率、難易度について解説します。

まずは、合格率を見てみましょう。


合格率(対受験者数)

▼司法試験短答式試験の合格率(対受験者)

受験者数 合格者数 合格率
令和5(2023) 3,928人 3,149人 80.17%
令和4(2022) 3,082人 2,494人 80.92%
令和3(2021) 3,424人 2,672人 78.04%
令和2(2020) 3,703人 2,793人 75.43%

【参考】法務省「司法試験の結果について」>各年の「短答式試験結果」


上記は、近年の司法試験短答式試験の合格者数や合格率をまとめた表です。

司法試験短答式試験の合格率は、例年70~80%台で推移しています。

予備試験短答式試験は例年20%台のため、司法試験短答式試験の合格率はかなり高い傾向にあると言えるでしょう。


受験資格別の合格率

▼司法試験短答式試験の受験資格別の合格率

予備試験合格者 法科大学院修了者 全体
令和5(2023) 99.72% 78.24% 80.17%
令和4(2022) 99.75% 78.07% 80.92%
令和3(2021) 100.00% 75.13% 78.04%
令和2(2020) 99.05% 72.38% 75.43%

【参考】法務省「司法試験の結果について」>各年の「短答式試験結果」


上記は、司法試験短答式試験の合格率を、それぞれ予備試験合格者と法科大学院修了者に分けて記載した表です。

予備試験合格者は、近年は98%以上が司法試験の短答式試験に合格していることがわかります。

それに対し、法科大学院修了者の短答式試験合格率は60〜70%台です。

やはり難易度の高い予備試験に合格できている受験者のほうが、司法試験短答式試験でも合格率が高い傾向となっています。


令和5年(2023年)短答合格率 法科大学院トップ10

▼令和5年(2023年)司法試験短答式試験の法科大学院別合格率ランキング

合格率順 大学院名 受験者 短答合格者数 合格率
1位 京都産業大法科大学院 1人 1人 100.0%
2位 予備試験合格者 353人 352人 99.7%
3位 専修大法科大学院 35人 32人 91.4%
4位 京都大法科大学院 275人 245人 89.1%
5位 一橋大法科大学院 180人 160人 88.9%
6位 慶應義塾大法科大学院 310人 275人 88.7%
7位 東京大法科大学院 315人 274人 87.0%
8位 早稲田大法科大学院 389人 326人 83.8%
9位 愛知大法科大学院 6人 5人 83.3%
10位 大阪大法科大学院 182人 149人 81.9%

【参考】法務省「令和5年司法試験(短答式試験)の結果」


上記は、令和5年(2023年)の司法試験短答式試験の合格率を法科大学院別に算出したランキングです。

合格率だけで見ると、受験者が少ないかつ全員合格している大学院が上位となります。

ただ、それでも予備試験合格者が上位に食い込む結果となっています。


司法試験短答式試験の【出題形式】を解説

ここからは、実際の司法試験短答式試験の出題形式について解説します。

なお、どの科目も解答はマークシート方式です。

解答欄がずれてしまうと、正しい答えが出ていても点数がにつながらなくなってしまいます。

マークのミスをしないよう、細心の注意を払いましょう。


【民法】形式はシンプルだが読み間違い注意

民法は36〜37問を75分で解くことになります。

1問あたりにかけられる平均時間は2.03〜2.08分となり、後述する憲法や刑法よりも時間はシビアです。

その分、出題形式には「正しいものを選べ」などシンプルなものが多く、形式に慣れるのは比較的容易です。

ただし、「正しいものを選べ」「誤っているものを選べ」「正しいものの組合せを選べ」「誤っているものの組合せを選べ」など、問題文中の指示を取り違えてしまうと、せっかく肢の正誤は合っているのに得点に結びつかないという事態が生じます。

出題形式に慣れるだけではなく、問題文をよく読むことを忘れないようにしましょう。

<例題>担保物権に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。

ア.留置権は 担保物権である。
イ.質権は担保物権ではない。
ウ.地役権は担保物権である。
エ.抵当権は担保物権である。
オ.永小作権は担保物権ではない。

1.アウ 
2.アエ 
3.イウ 
4.イオ 
5.エオ

(正解:3)



【憲法】選択肢が少なく焦らず解ける

憲法は20問を50分で解くことになります。1問あたりにかけられる平均時間は2.5分です。

もっとも、憲法は1問あたりの肢数が3つであることが多く、基本的に肢数が5つある刑法よりも体感的には時間に余裕が出てくると思います。

出題形式としては、3つの肢の正誤を選ばせて、「正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せ」を選ばせる問題と、「正しいものには1、誤っているものには2」をマークさせる問題がメインです。

後者の場合は部分点が配点されているものもありますが、やはり全ての肢を正答するに越したことはありません。

<例題>憲法上の人権に関する次のアからウまでの各記述について、判例の立場に従って正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。

ア. 学問の自由は憲法23条で保障される。
イ.意に反する苦役に服せられない自由は憲法上保障されていない。
ウ.髪型を決める自由は憲法21条の表現の自由として保障される。

1.ア○イ○ウ○ 
2.ア○イ○ウ× 
3.ア○イ×ウ○
4.ア○イ×ウ× 
5.ア×イ○ウ○ 
6.ア×イ○ウ×
7.ア×イ×ウ○ 
8.ア×イ×ウ×

(正解:4)



【刑法】問題文長め・出題形式は多様

刑法は20問を50分で解くことになります。

1問あたりにかけられる平均時間は憲法と同じ2.5分ですが、刑法は問題文がやや長く、1問あたりの肢数が5本(4本のこともある)であるため、苦手な人にとってはややシビアなものになります。

出題形式は憲民刑の中でもっともバラエティに富んでいます。

下記の例題のように事案を読んで回答するものから、民法同様に「正しいものの組合せ」「誤っているもの」などを選ばせる正誤問題、さらには学生と教師の会話形式での穴埋め問題などがあります。

<例題>次の【事例】における甲および乙の罪責に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しいものには1を、誤っているものには2を選びなさい。

【事例】  
甲は帰宅途中に路上で倒れているAを発見した。Aは死んでいたのではなく単に意識を失っており、そのことに甲も気づいたが、甲はAが意識を回復しないうちに何か金品を盗もうと思い、Aの胸ポケットから財布(3万円が入っていた)を抜き取りその場を立ち去った。翌日、甲はAの財布の中に入っていたお金で何かおいしいものを食べようと思い、Aの財布をそのまま持っていって高級料理店Bでフルコース(2万5千円)を食べ、代金を払って店を出たところ、酒に酔ったCとすれ違い様に肩がぶつかった。Cが「痛いじゃないか」と怒鳴って甲の顔や胸に複数回殴りかかってきたため、甲は身の危険を感じ、たまたま持っていたバタフライナイフでCの肩を1回刺して重傷を負わせた(甲に殺意はなかった)。大変なことをしてしまったと後悔した甲は、たまたま通りかかった通行人の乙に対して「この人を頼む」とだけ言い、Aの財布から残りの5千円を何も言わずに渡してその場を立ち去った。乙がこの5千円をタクシー代金として使って重傷のCをタクシーに乗せて病院まで同乗し、病院で応急処置を受けたCは一命を取りとめた。

ア.意識のないAの胸ポケットから財布を抜き取った行為には、占有離脱物横領罪が成立する。
イ.自分のではなくAのお金でフルコースを食べた行為には、Bに対する詐欺罪が成立する。
ウ.Cをバタフライナイフで刺した行為について、Cが複数回殴りかかってきたのに対して1回しか反撃していない以上、正当防衛が成立し、過剰 防衛となることはない。
エ.Cに重傷を負わせた甲が通行人の乙に対して「この人を頼む」と言って立ち去った点につき、判例の立場に立てば中止犯は成立しない。
オ.甲から5千円を受け取った乙について、もともと甲がAの胸ポケットから抜き取った金銭である以上、乙に盗品等無償譲受罪が成立する。

(正解: ア:2 イ:2 ウ:2 エ:1 オ:2)



司法試験短答式試験の【出題傾向と勉強法】を解説

ここからは、司法試験短答式試験の出題傾向と勉強法について解説します。

問題の傾向や効果的な勉強方法を把握して、短期での実力アップと合格を目指しましょう。


【民法】短答でしか問われない知識が多い

民法は条文や判例から幅広く出題されます。

特に条文は民法だけで1000条以上あることに加え、一般法人法や任意後見契約に関する法律などの特別法からの出題も過去にはあり、学習範囲は膨大です。

一方で、論理問題(法律の知識というより、論理操作だけで解ける問題のこと)や学説に関する問題は少なめです。

判例の知識は論文式試験の勉強の中で頭に定着するものも存在しますが、条文の知識のほとんどは論文ではなかなか出題されず短答式でしか出題されない、いわゆる「短答プロパー」の知識です。

したがって、他の科目より多い配点を占める民法では特に、短答式試験に焦点を据えた学習が必要になります。


【憲法】

憲法は条文や判例を中心に出題されますが、民法と異なり条文は100条程度と少なく、特別法からの出題もほとんどありません。

もっともその分、判例からの出題の比重が大きいです。

しかも判例もただ漫然と判例の文言を頭の中に入れていたのでは太刀打ちできないような、「内在的な理解」を問う問題が多いです。

そのため、憲法の短答学習の中心は判例の読み込みによる内在的理解の獲得に充てることになります。


一方で条文学習については、制度や関係する学説の比較などを行うとよいでしょう。

例えば天皇の国事行為に関する4条に紐づけて、公的地位に基づく公的行為に関する二行為説や三行為説を整理して理解することで、条文問題と学説問題、両方の対策になります。


【刑法】

民法が条文に比重を、憲法が判例に比重を、それぞれ置いているのに対し、刑法はその半々といったところです。

判例知識の問題は、「条文解釈→規範→あてはめ」という事案の処理の流れに沿った学習をしていれば解けるような素直な問題が多く、論文式試験の学習との相乗効果がもっとも高く見込める科目といえるでしょう。

もっとも、刑法は判例と有力学説を対比させて、それぞれどのような結論が導かれるかという「学説」問題も存在します。

そのため、学習においては判例だけを唯一の正解として機械的に暗記するのではなく、有力学説が判例にどのような批判をしているか、判例の不都合性をどう解決しようとしているのかについても学習をすることで、さらに高得点を狙うことができます。


過去問に早めに着手すると効率的

司法試験短答式試験は、出題形式がある程度パターン化していること、加えて重要な知識は形を変えて何度も出題されていることから、

何よりも先に過去問を解くことでその先の学習が楽になります。

もっとも司法試験の短答式試験は出題範囲がとにかく広いため、ただやみくもに過去問を解いていても、単一のバラバラな知識が身につくだけで未知の問題には対応できません。


そこで出題範囲ごとに体系づけられた過去問集を使うことで、知識を体系づけて整理することができます。

「まだまだインプットに不安があり、過去問には手を出せないな……」と思う方であれば、予備校の基礎講座や基本書を読み進めていくのと併行して、

今自分が学んでいる範囲の過去問を解いていくという「インプット・アウトプット併行型」の学習をおすすめします。

効率よく学習を進めて、高得点を目指しましょう。


まとめ

今回は、司法試験短答式試験の概要や合格率、出題傾向、勉強方法などをご紹介してきました。

  • 司法試験短答式試験は40%未満の点数の科目が1科目でもあると不合格になるので注意。
  • 司法試験短答式試験の合格率は例年70〜80%台
  • 短答式試験の対策は、科目ごとの傾向を把握して過去問に早めに着手するのが効率的

司法試験の短答式試験は簡単な試験ではありませんが、「スタディング 司法試験・予備試験講座」では、短期での合格を目指せるカリキュラムを用意しています。

合格を目指す方は、ご自分の知識レベルやライフスタイルにあった学習方法をとりいれつつ、早めに対策を始めてみてください。

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