司法試験の受験には「5回」という回数制限があります。ただし実際に合格した人を受験回数で分類すると、1回の受験で合格している人が圧倒的に多く、データをより詳しく見るとその理由も浮かび上がってきます。
この記事では、司法試験の受験回数制限の制度、受験回数別の合格者の分布、そして万が一5回とも不合格になってしまった場合の対応策について解説します。
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司法試験の受験回数制限
司法試験の受験には受験資格の取得から「5年間」という期間の制限があります。
司法試験は年に1回なので最大「5回」の受験が可能です。
受験資格は次のいずれかのルートで取得できます。
- 予備試験ルート:司法試験予備試験(以下、予備試験)に合格する
- 法科大学院ルート:法科大学院を修了する、あるいは在学中に所定の要件を満たす
各ルートにおける司法試験の回数制限について解説します。
予備試験ルートの場合
予備試験に合格して司法試験の受験資格を取得した場合、合格発表後の最初の4月1日から5年間、司法試験を受験できます。
つまり最大5回の受験が可能です。
※ 司法試験が毎年7月実施と仮定して作成
例えば、令和5年(2023年)予備試験に合格したとします(合格発表は翌年2月)。
この場合、司法試験は令和6年(2024年)試験から令和10年(2028年)試験まで、5回(5年)の受験が可能です。
法科大学院ルートの場合
法科大学院を修了して司法試験の受験資格を取得した場合、大学院修了後の最初の4月1日から5年間、司法試験を受験できます。
つまり最大5回試験が受けられます。
※ 司法試験が毎年7月実施と仮定して作成
例えば、令和6年(2023年)3月に大学院を修了した場合、同年の試験から令和10年(2028年)試験まで、5回(5年)の受験が可能です。
また令和5年(2023年)からは、所定の要件を満たせば在学中の人も受験可能となりました(在学中受験資格)。
その条件は、所定の科目単位を修得し、かつ司法試験が行われる年の4月1日から1年以内に法科大学院を修了する見込みがあることです。
例えば令和6年(2024年)3月に大学院修了予定の人でも、修了見込みがあれば令和5年(2023年)7月の司法試験にチャレンジできます。
もし不合格だった場合は、在学中受験資格は「最初に司法試験を受けた年の4月1日」から5年間の受験可能なので、
令和5年(2023年)年試験から令和9年(2027年)試験までの5回(5年)の受験が可能ということになります。
かつては「回数制限なし」→「5年で3回」の「三振ルール」
ちなみに、司法試験の受験回数の制限については、これまでに2度の変更が行われています。
かつての司法試験は受験回数の制限がなく、合格するまで何度も挑戦する「司法浪人」が珍しくありませんでした。
しかし、不合格が続く受験生の精神的負担は大きく、また勉強に何年も費やした後に就職へ進路転換しようとしても、就職活動は年齢を重ねるほど厳しさが増します。
こうした負担を軽減するため、「5年で3回」という回数制限が設けられた時期がありました。
当時の司法試験の受験体験記を読むと、「三振」というキーワードが出てくるかもしれません。司法試験における「三振」とは、受験できる回数が「5年で3回」だった時代に、3回すべて不合格に終わり受験資格を喪失してしまうことの俗称です。
司法浪人問題への対応策として実施された「5年で3回」の制度でしたが、いざ始まると、受験生が貴重なチャンスを無駄にしないよう、法科大学院修了直後の1年目に受験しない「受け控え」が目立つようになりました。
そこで、受け控えをなくして受験生の滞留を防ぎ、さらに法科大学院の教育の効果が最も高い「大学院修了直後」の受験を促すため、
回数制限は平成27年(2015年)試験から現在の「5年で5回」に緩和されたのです。
司法試験は「1回で合格」が最も多い
「5回」という回数制限の中、司法試験は何回目の受験で合格する人が多いのでしょうか。
司法試験合格者の受験回数の分布を、以下のグラフで見ていきましょう。
▼司法試験合格者の受験回数
試験実施年 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
令和6(2024) | 79.1% | 18.6% | 2.8% | 1.8% | 0.8% |
令和5(2023) | 88.9% | 6.9% | 2.0% | 1.3% | 0.8% |
令和4(2022) | 74.6% | 12.8% | 6.3% | 3.3% | 3.0% |
令和3(2021) | 72.1% | 12.2% | 7.1% | 5.3% | 3.3% |
令和2(2020) | 66.2% | 15.3% | 8.7% | 5.9% | 3.9% |
令和元(2019) | 58.9% | 18.8% | 9.3% | 7.2% | 5.9% |
【参考】法務省「司法試験の結果について」(各年の「総合評価」)
近年の司法試験合格者の分布を見ると、どの年も1回目の受験で合格している人の割合が最も多いとわかります。
1回目で合格する割合は年々増加しており、令和4年(2022年)には全合格者の4分の3近くを占めています。
一方、受験回数が多くなるほど合格者の割合は減少しています。
回数を重ねるほど「論文」の突破が難しい
司法試験の合格と受験回数の関係について他のデータも見てみると、受験回数を重ねるほど「論文式試験」の突破が難しいという傾向が浮かび上がってきます。
まず、データを見るための前提知識を解説しておきます。
司法試験では「短答式試験」と「論文式試験」が実施されるのですが、配点の割合は「短答:論文=1:8」と大きく偏っています。
つまり、合否の鍵を握るのは配点が圧倒的に高い論文式試験ということです。
論文式試験の重要性がわかったところで、データを見てみましょう。
次のグラフはいずれも、令和5年(2023年)司法試験の短答合格率(青色)と総合合格率(赤色)を受験回数に応じて比較したものです。
- 短答合格率:受験生のうち短答式試験に合格した人の割合。
- 総合合格率:短答合格者のうち論文式試験にも合格した人の割合。
3つのグラフは、合格者の属性(「法科大学院修了者(既修)」「法科大学院修了者(未修)」「予備試験合格者」)ごとに集計したものです。
いずれの属性においても、短答合格率は受験回数が増えても下がりにくいのに対し、論文式試験の突破率を示す総合合格率は、1年目の合格率が最も高く、受験回数が増えるほど下がる傾向が読み取れます。
【あわせて読みたい】司法試験は受験1年目が最も合格しやすい?
1回目が最も合格しやすい理由
ではなぜ1回目が最も合格しやすく、受験期間が長くなるほど論文式試験を突破できなくなるのでしょうか。
その理由は、2回目以降の受験生は「合格できない書き方」をする人の割合が増えるからです。
論文式試験を突破するために重要な点は、「知識の量」よりも「答案の書き方」です。
述べている内容が他の受験生と同じだったとしても、よりわかりやすく読みやすい文章を書けている答案のほうが高得点を獲得できます。
ところが、1回目の受験で不合格となった人の多くは「不合格の原因は知識不足にある」と考え、次の受験に向けて知識量を増やす学習に力を入れてしまいます。
その結果、答案の書き方を改善できないまま受験を迎え、得点が伸びず合格を逃してしまうのです。
論文式試験は、長文の問題文を正確に読解して論点を抽出し、端的かつ読みやすい文章で時間内に答案を作成しなければなりません。
試験に合格するには、合格者に添削してもらったり、オンラインスクール等で基本的な書き方を学んだりしてスキルアップするのが効率的といえるでしょう。
もし5回とも不合格になってしまったら?
回数を重ねるほど合格率の下がる司法試験ですが、もし5回不合格になったらどうなるのでしょうか。
結論を述べると、その後の受験が二度とできなくなるわけではありません。
5回とも不合格になっても、受験資格をもう一度取得すれば司法試験への再挑戦が可能です。
司法試験の合格率が高いのは「予備試験ルート」
前述のとおり、受験資格を得る方法には「予備試験ルート」と「法科大学院ルート」の2つがありますが、司法試験の合格率は、実はルートによって大きく異なります。
近年のデータを見ると、法科大学院ルートの合格率は30〜40%程度ですが、予備試験ルートの合格率は80%を超えているのです。
▼司法試験の合格率
試験実施年 | 予備試験合格者 | 法科大学院出身者 | 全体 |
令和6(2024) | 92.84% | 34.84% | 42.13% |
令和5(2023) | 92.63% | 49.67% | 45.34% |
令和4(2022) | 97.53% | 37.65% | 45.52% |
令和3(2021) | 93.50% | 34.62% | 41.50% |
令和2(2020) | 89.36% | 32.68% | 39.16% |
令和元(2019) | 81.82% | 29.09% | 33.63% |
【参考】法務省「司法試験の結果について」
予備試験合格者が司法試験に受かりやすい理由は、2つの試験の仕組みや取るべき対策に共通点が多く、
合格率が3〜4%の難関である予備試験に合格できれば、司法試験を突破する力も自然と身についているからです。
予備試験に合格する勉強法
独学だけで司法試験・予備試験の合格を目指すのは非常に難易度が高いですが、独学には費用が抑えられる・生活スタイルに合わせて勉強できるといったメリットもあります。
そこで、独学で合格したい人のための勉強法として3つのポイントを解説します。
▼インプット量を必要最小限にする
予備試験・司法試験の出題範囲は非常に広範ですが、実際に試験で必要となる知識は、受験生が思っているほど多くありません。
あいまいな知識を多く詰め込むことに時間を費やさず、試験で使える正確な知識を必要最小限の量でインプットしましょう。
▼問題を解く練習に早く移行する
司法試験・予備試験は「わかる」と「解ける」の間に大きな壁があり、問題を解けるようにならないと合格できません。
短期で合格できた人の多くは、いち早く問題演習に入っています。
▼論文式試験は合格者の思考を追体験して学ぶ
予備試験・司法試験で最も難しいのは、論文式試験です。
短期合格者の多くは講師自らが答案例を作成する実演型講義を活用し、思考の過程を追体験をして答案の書き方を学んでいます。
独学の勉強法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】司法試験・予備試験の独学は無理?それでも独学したい人の勉強法
まとめ
今回は、司法試験の回数制限について解説しました。
- 司法試験の受験には「5回」という回数制限がある
- 司法試験は1回で合格する人が最も多く、受験回数が多くなると論文式試験の突破が難しい
- 5回不合格になっても、受験資格をもう一度取得すれば再挑戦できる
- 受験資格を得られる予備試験の合格率は3〜4%と低いが、予備試験合格者の司法試験の合格率は非常に高い
難関と言われる司法試験ですが、正しい勉強方法、特に「論文式試験の答案の正しい書き方」を身につけることができれば、少ない回数で合格できる可能性が高まります。
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