裁判官になるためのルート
法曹である裁判官は、弁護士・検察官と同様、司法試験を突破した人たちです。司法試験を受験するために必要なルートはふたつ。「法科大学院を修了する」「司法予備試験に合格する」です。
なお、2023年からは法科大学院在学中も一定の要件を満たすことで受験可能となります。
司法試験に合格しただけでは、裁判官になれません。合格後は、法曹スペシャリストを養成・輩出するための実務研修である「司法修習」が待っています。この研修期間は1年間。司法修習研修所で実務を学び、リアルな裁判現場の雰囲気を体感。最後に実施される修了試験の考試(二回試験)に合格すると、修了が認められます。
司法修習修了してはじめて、法曹三者(判事・検事・弁護士)のいずれかを選択する権利が与えられるのです。大学卒業後に法科大学院と司法試験・司法修習の考試にいずれもストレート合格を果たしたとしても、最低3年間の勉学期間が必要となります。
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69期の就職状況
参考までに、69期司法修習修了生の2017年1月時点における就職状況をみてみましょう。69期司法修習生の修了者は、1,762名。そのうち裁判官・検事・弁護士それぞれの道に進んだ人数は下記となります。なお、判事補は判事の前段階で、判事は裁判官の職位です。検事も検察官の職位の一つです。警察官の警部補や警部、警視と同じようなものと考えてください。
- 判事補採用者:78名(4.4%)
- 検事採用者:70名(4.0%)
- 弁護士登録者:1,472名(83.5%)
どんなタイプが裁判官になれる?
裁判官は、司法試験と司法修習修了試験に合格した者の中から任命されます。法曹三者のうち、裁判官へのルートはとくに「狭き門」といわれ、簡単に選ばれるものではありません。教官からの推薦状があると選ばれやすいといわれるため、勉学に励むことはもちろん日ごろの素行や生活態度も問われるでしょう。
以下で、裁判官としてふさわしい人格とスキル、適性などをご説明します。
中立的な立場で判断できる
裁判官の道を選んだ理由として、修了生の多くが「中立的な立場で物事を判断する特性に魅力を感じる」と答えています。裁判官は、弁護士や検事のように、どちらか一方に肩入れして意見を主張したり、真相を究明したりすることはありません。徹頭徹尾、中立的なスタンスを守り、大局的見地から司法の判断を下します。双方の言い分を平等に聞いて全体像を把握するバランス感覚と、真実と真摯に向き合う誠実な人柄が重視されるといえるでしょう。
思いやりある心と謙虚な姿勢
裁判官というと、「厳格」「固い」「感情が薄い」などのイメージがありますが、それとは対極にある「人情味」や「思いやりの心」も大切な資質といわれます。法廷には、さまざまな立場から意見を主張する人々が現れます。過ちを犯して悔いている加害者もいれば、不幸な目に遭って思いを聞いて欲しいという被害者もいるでしょう。また、思わぬトラブルの渦中にあって途方に暮れる市民とも接しなければなりません。公正な裁きの背景には、これらの人々に心から寄り添う謙虚で思いやりある姿勢があるのです。
的確かつ迅速な決断力
高い識見とすぐれた法律解釈力で、問題の全容を鋭く分析し、最終的に双方、そして国民が納得するかたちで結論に導く判断力が求められます。それも、的確かつ迅速、時代の流れや世論に流されない公正な決断が必要となるのはいうまでもありません。その一方で、時代の趨勢を考慮した高度な判断も、場合によっては重要視されます。裁判所の判断が新しい法的解釈や法律作成に影響を与えることを考えれば、判例至上主義に陥らない柔軟かつ果断な決断力と、大きな責任がともなうことの自覚も必要となるでしょう。
検事・弁護士からの転身もある
検事や弁護士を選んだ法曹が、その後裁判官にシフト、あるいは兼任する「非常勤裁判官」の道もあります。異なる立場から法律を極めてきた専門家が裁判官になることで、より幅広い視野からの司法判断が期待できるとともに、裁判の質の向上につながります。そのようなメリットがあることから、弁護士任官を勧める弁護士連合会もあるくらいです。
数としては決して多くなく、そう簡単に任官できるものでもありません。しかし、司法レベルの底上げに寄与する方策として、「非常勤裁判官」や「弁護士任官」などの制度があります。
参考サイト: