【講師解説】司法試験・予備試験の選択科目の選び方と科目別勉強法

司法試験・予備試験の選択科目の選び方は?科目別勉強法も解説

司法試験と司法試験予備試験(以下、予備試験)は、いずれも論文式試験に「選択科目」があります。

多くの受験生は、選択科目の対策にあまり時間をかけません。しかし、効率よく対策して高得点を取れれば総合点で差がつき、合格を後押ししてくれます。

この記事では、スタディング司法試験・予備試験講座の講師が選択科目の選び方を解説。科目別の特徴と勉強法なども紹介します。

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【講師解説】司法試験・予備試験の選択科目の選び方

司法試験や予備試験の選択科目は、法律基本7科目よりも勉強の優先順位が低いものの、得意にしておけば合格への大きな力となります。

多くの受験生にとって最初の疑問となる選択科目の選び方について、スタディング司法試験・予備試験講座の講師であり、働きながら司法試験に合格した経験を持つ漆原照大弁護士が解説します。

執筆者

弁護士 漆原照大
漆原法律事務所 代表弁護士/スタディング司法試験・予備試験講座 講師

埼玉県庁で働きながら弁護士を目指し、2020年に司法試験に合格。自身の受験経験から、忙しい社会人が合格するには「完璧な答案」よりも「現実的な合格答案」を書く必要性に気づき、受験生に知識とテクニックを伝えるため講座開発に参画。「スタディング 司法試験・予備試験講座」2025年版より「論文対策講座・予備試験実践編」の一部を担当。

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科目選択の成功のポイントは次の2つです。

  • 興味が持てる内容で選ぶ
  • 総学習時間の目安・試験対策のしやすさで選ぶ

1つずつ見ていきましょう。

選択科目の選び方(1)興味が持てる内容で選ぶ

選択科目の選び方のポイントの1つめは、興味を持って学べる科目を選ぶことです。

予備試験・司法試験はそれなりに長期間の勉強をすることになりますから、興味が持てない科目を長期間勉強することは非常に辛いと思います。

そのため、まずは興味が持てる内容かどうかを判断するために、該当分野の入門書(比較的薄いもの)などに目を通してみると良いでしょう。

また、可能であれば、予備試験・司法試験の実際の過去問もざっと目を通してみてください。

イメージだけで決めてしまうと、実際の試験範囲や試験問題とのギャップに後々ショックを受けることもあります。

選択科目を途中で変えることは非常にリスクが大きいです。興味が持てる内容を選択科目にすることはまったく問題ありませんし、むしろ推奨されますが、

イメージだけで安易に決定しないように留意する必要があります。

選択科目の選び方(2)総学習時間の目安・試験対策のしやすさで選ぶ

選択科目の選び方のポイントの2つめは、 総勉強時間がなるべく短く済むか・試験対策がしやすいかに着目することです。

総学習時間の目安で選ぶ

選択科目は基本7科目と比べて相対的に対策が手薄になりがちです。とはいえ、選択科目に多くの時間を費やしてしまった場合、他の科目にも影響がでてきてしまいます。

特に社会人受験生にとっては、時間の捻出自体に厳しい制約が加わることから、選択科目は極力負担が少ないものを選ぶという方法もあると思います。

試験対策のしやすさで選ぶ

試験対策のしやすさも重要な視点です。受験者数が多い科目は学習教材などが充実しており、過去問の参考答案や再現答案の入手も比較的容易であるため、学習に取り組みやすいでしょう。

また、受験者が多い分、模試などにおいて相対的に自分がどの位置にいるのかも把握しやすいといえます。

さらに、受験者が多いということは、受験生同士での添削や過去の先輩受験生との情報共有も容易になるということも意味しています。

一方で、受験者数が少ない科目は学習教材や過去問の参考答案等の入手が難しく、試験対策が難しいという点があげられます。

上記2点について、具体的な科目を挙げて考えてみましょう。

例えば、労働法倒産法は受験者数が多いため、試験対策がしやすい科目です。ただし学習範囲は非常に広いため、総学習時間の目安という意味では他の科目に劣ります。

また、試験対策がしやすいということ自体はメリットですが、それは他の受験者にとっても同じです。試験対策がしやすければしやすいほど、受験生全体のレベルは高くなってきます。

このように、科目ごとに一長一短がありますので、ご自身の学習スタイルや可処分時間などとも相談して決めるとよいでしょう。

「実務に役立つか」は重視しなくていい

「どうせ勉強するなら将来の実務で役に立つ科目を選びたい」と考える方も多いでしょう。そのため、実務で役に立つかどうかという視点も選び方のひとつになってくると思います。

しかし、予備試験・司法試験で勉強する選択科目の知識はどれも超基本的な部分に限られます。

学習範囲が広いといわれている労働法を選択していたとしても、将来労働分野の事件に取り組むのであれば、更に勉強や調査をすることは避けられません。

そのため、実務に役立つかという点はあまり重要視する必要はありません。合格を最優先に考えましょう。

働きながら合格!スタディング講師の体験談

現在は弁護士となった私ですが、かつては公務員として働きながら司法試験を目指す社会人受験生でした。

この記事を読んでいる方と同じように、選択科目について迷った経験があり、私の場合は「環境法」にするか「労働法」にするかで迷いました。

環境法は、公務員として環境行政に携わった経験があり、興味を持って学べる点がメリットでしたが、当時は受験用の書籍が充実していない点がネックでした。

また、環境行政に携わっていたといっても試験範囲と重複する部分は限定的で、勉強時間を短縮できるほどの知識ではありません。

一方で労働法は、当時から選択する受験生も多く書籍類も充実していたため、どちらの科目を選ぶべきかとても悩みました。

しかし、最後はやはり自分が興味を持って学べることを重視して、環境法を選びました。

その結果、どんどん環境法にのめり込んでいき、学習が進むにつれて好きな科目そして、得意な科目となりました。

社会人受験生だったので勉強時間の確保が大変でしたが、環境法は好きなので勉強していてもまったく苦にならず、他の科目の息抜きとして取り組むことができました。

実務に出てから環境法を使うことはあまりないですが、後悔はまったくありません。

むしろ環境法があったからこそ合格できたと思っているので、今となっては当時の自分に感謝しています。

これから司法試験・予備試験を目指す方は、ぜひ選択科目を得意にしてください。

選択科目は基本7科目と同じ配点でありながら、対策が疎かになりがちです。しかし、それゆえに対策がしっかりとできれば高得点を十分狙える科目でもあります。

また、選択科目は、司法試験では試験初日の1科目めに行われます。そのため、選択科目を得意にすると、それだけでスタートダッシュを切ることができ、精神的にもかなり安定すると思います。

みなさんも、ぜひ選択科目を得意にしていただき、合格を掴み取ってください。

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司法試験論文式試験の選択科目

司法試験の流れ

ここからは、司法試験論文式試験における選択科目の具体的な科目や試験日程、試験時間や問題数といった概要について解説します。

科目・試験日程・時間・問題数

科目

倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)

試験日程・時間・問題数

1日目の9時30分〜12時30分(3時間)、2問

選択科目の試験は、1日目の最初に実施されます。試験時間は他の科目より長く3時間となっていますが、余裕があるわけではありません。試験が始まったら、まずは第1問、第2問の両方をナナメ読みしてボリューム感を確認しましょう。その上で、あらかじめ各問題に割く時間を決めてから、問題文を読み込んでいくのがいいでしょう。

選択科目は、答案用紙の使い方が特殊です。4枚組の答案用紙が2通配布されて、それぞれを第1問、第2問に使用します。例えば第1問で5枚、第2問で3枚といった使い方はできないため、注意してください。

受験者数と合格者数

司法試験の選択科目別の受験者数

選択科目別の受験者数

▼令和6年(2024年)司法試験の選択科目 受験者数・合格者数

科目受験者合格者
人数割合人数割合
倒産法566人15.1%255人16.0%
租税法199人5.3%62人3.9%
経済法789人21.1%344人21.6%
知的財産法552人14.7%229人14.4%
労働法1072人28.6%503人31.6%
環境法124人3.3%28人1.8%
国際関係法(公法系)71人1.9%26人1.6%
国際関係法(私法系)373人10.0%145人9.1%

【参考】法務省「司法試験の結果について」>各年の「受験状況」と「総合評価」

上記は、令和6年(2024年)司法試験の選択科目における受験者数・合格者数とその割合を示した表です。

受験者数、合格者数が最も多い科目は労働法となっています。労働法の次に受験者数、合格者数が多い科目は経済法です。

逆に受験者数、合格者数がもっとも少ない科目は、国際関係法(公法系)となっています。

前述のとおり、労働法は比較的学習しやすい科目のため選択する受験生が多い傾向にあります。

予備試験論文式試験の選択科目

論文式試験 試験日:毎年7月中旬に2日間で実施 合格発表毎年10月 憲法・行政法・民法・刑法・商法・民訴・刑訴 各50点満点 民事実務 50点満点 刑事実務 50点満点 選択科目50点満点

ここまでは、司法試験論文式試験の選択科目に関する情報を見てきました。

ここからは、予備試験論文式試験の選択科目における具体的な科目や試験日程、試験時間や問題数といった概要について解説します。

科目・試験日程・時間・問題数

科目

倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)

試験日程・時間・問題数

1日目の16時30分〜17時40分(1時間10分)、1問

司法試験とは異なり、選択科目の試験は1日目の最後に実施されます。時間や問題数も司法試験より少なく、1時間10分で1問を解く形式です。

出願者数

▼令和6年(2024年)予備試験の選択科目の科目別出願者数

科目別出願者数

▼令和6年(2024年)予備試験の選択科目 受験者数・割合

科目受験者数割合
倒産法2,959人18.8%
租税法749人4.8%
経済法2,155人13.7%
知的財産法1,594人10.1%
労働法5,845人37.1%
環境法452人2.9%
国際関係法(公法系)492人3.1%
国際関係法(私法系)1,518人9.6%

上記は、令和6年(2024年)予備試験の選択科目における受験者数とその割合に関する表です。

司法試験と同じく、受験者数が最も多い科目は労働法となっています。ただ司法試験とは異なり、労働法の次に受験者数が多い科目は倒産法です。

また、受験者数がもっとも少ない科目は環境法となっています。

司法試験と同様に、予備試験でも労働法を選択する受験生が多い傾向にあります。

選択科目の科目別の特徴・勉強法

ここまでは、司法試験・予備試験における選択科目の概要を解説してきました。

ここからは、科目ごとの特徴や勉強法について解説します。選択科目を選ぶ際の参考にしてみてください。

【倒産法】特徴・勉強法

倒産法で主な出題範囲となるのは、破産法と民事再生法です。司法試験では、破産法と民事再生法から1問ずつの計2問が出題されます。

予備試験の出題は1問ですが、破産法か民事再生法に関する問題、もしくは破産法と民事再生法の比較問題が出題されると予想されます。

学習量は多いですが、ほかの民事系の科目とも親和性が高いため、学習効果は連動して高まるでしょう。

勉強においては、まずは破産法を学習して、破産手続を理解する必要があります。

その上で、民事再生法について学ぶとよいでしょう。

民事再生法には、破産法との共通点が多くあります。双方の共通点や違いを理解しながら勉強を進めましょう。

【租税法】特徴・勉強法

租税法で主な出題範囲となるのは、所得税法です。

最近は、所得税法と関連する範囲で法人税法や国税通則法からの出題もありますが、メインは所得税法と考えてよいでしょう。

そのため、まずは所得税法を理解する必要があります。

所得税法を学んだ上で、法人税法など関連法令の勉強を深めていくとよいでしょう。

租税は税理士などの専門分野であるため、司法試験・予備試験での人気はそれほど高くない傾向です。

学習用の教材も税理士試験や公認会計士試験用が多く、司法試験用のものは充実していません。

ただ租税法は、ほかと比べると勉強量がそれほど多くはない科目です。

勉強においては、よく出る判例をしっかり勉強して理解しておけば、合格が近づくでしょう。

【経済法】特徴・勉強法

経済法で主な出題範囲となるのは、独占禁止法です。

独占禁止法の学習では、行為要件と効果要件の理解が重要となります。

行為要件は刑法の構成要件と似ている部分が多く、親和性が高いと言えるでしょう。

経済法は、出題範囲が独占禁止法だけであるため、学習量が少なくて済むとされています。

独占禁止法は条文数も少ないため、ほかの科目と比べてもインプットを早めに終えられるでしょう。

そのため、近年は受験生たちの間で人気が高まっています。

【知的財産法】特徴・勉強法

知的財産法で主な出題範囲となるのは、特許法と著作権法です。

その中でもよく出題される分野は限られているため、勉強が必要な範囲はそれほど広くありません。

また知的財産法は民法や行政法との親和性が高いため、前提知識があれば理解しやすくなります。

勉強においては、裁判例が重要です。

特許法については、判例の射程を問う問題も多く出題されます。著作権法については、下級審レベルの裁判例を学習しておくとよいでしょう。

【労働法】特徴・勉強法

労働法で主な出題範囲となるのは、個別的労働関係法と集団的労使関係法です。

労働法は実務で扱う可能性が高く、選択する受験生が非常に多い科目です。

教材も充実しているため、勉強にも取り組みやすい科目であると言えるでしょう。

ただし、学習量は非常に多く、広い範囲の知識が必要となります。

勉強においては、判例学習が重要です。重要な判例が多く、インプットに時間がかかるでしょう。

まずは論証集などを使って、各論点についての判例の立場を論証できるようになりましょう。

【環境法】特徴・勉強法

環境法で主な出題範囲となるのは、環境10法と呼ばれる個別法です。具体的な法律は下記のとおりです。

  • 環境基本法
  • 環境影響評価法
  • 大気汚染防止法
  • 水質汚濁防止法
  • 土壌汚染対策法
  • 循環型社会形成推進基本法
  • 廃棄物処理法
  • 容器包装リサイクル法
  • 自然公園法
  • 地球温暖化対策推進法

法律の数は多いですが、一つ一つの条文数は少ないため学習量はそれほど多くありません。

ただし受験者数が少ないため、教材はあまり充実していない点に注意が必要です。

勉強においては、環境10法の構造を把握しておきましょう。条文をすぐに引けるようにしておくこと、制度趣旨を理解しておくことが重要です。

【国際関係法(公法系)】特徴・勉強法

国際関係法(公法系)で主な出題範囲となるのは、国際法、国際経済法、国際人権法です。

主に、国家間の紛争や問題に対する解決策を考える問題が出題されます。

国際関係法(公法系)は、特定のキャリアに進まない限り、実務でもほとんど関わる機会のない分野です。

そのため選択する受験生はかなり少なく、教材も充実していません。

勉強においては、判例集を使う必要があります。

また、過去問と同じ問題点が出題されることが多いため、過去問対策が重要です。

【国際関係法(私法系)】特徴・勉強法

国際関係法(私法系)で主な出題範囲となるのは、通則法や訴訟法の国際裁判管轄に関する部分です。

私人間における国際的な紛争が起きた際に、解決策を考える問題が出題されます。

出題範囲はそれほど広くなく、学習量も多くはありませんが、教材は比較的充実しています。

勉強においては、条文を学ぶ際に各条文の趣旨まで理解しておきましょう。

出題パターンの傾向は比較的つかみやすいため、ある程度解答のパターンを身につけておくとよいでしょう。

選択科目を制する法律基本7科目の応用

ここまで選択科目の解説をしてきましたが、選択科目はあくまでも法律基本7科目の応用となります。

そのため、まずは法律基本7科目をしっかり勉強しておきましょう。

予備試験から司法試験まで、最も多く重なっている試験科目が法律基本7科目です。

法律基本7科目は配点割合も多いため、試験対策としてのコストパフォーマンスも高いと言えます。

法律基本7科目をしっかり対策しておけば、選択科目の基礎となる知識が身につき、短期合格が近づくのです。

まとめ

今回は司法試験・予備試験の選択科目について解説しました。

  • 選択科目は「内容への興味」や「勉強時間と試験対策のしやすさ」を考慮して選ぶのがおすすめ
  • 司法試験・予備試験ともに受験者数がもっとも多い科目は労働法
  • 選択科目はあくまで法律基本7科目の応用であるため、法律基本7科目の対策が重要

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