※2022年(令和4年)司法試験受験状況を更新しました(2022/10/18)。
法務省が公表した受験年数別合格者数のDATAをみると、実は受験1年目が最も合格しやすいのです。受験期間が長い、すなわち学習期間が長いことが必ずしも有利になりません。それはなぜでしょうか?
司法試験の合格率は受験期間の長さに比例しない。
司法試験は法律系の最難関の国家試験ですから、やはり覚えなければならない知識も、理解しておくべきことも、資格試験の中でも最大級です。
したがって、学習期間が長い方ほど多くの知識をインプットすることができ、合格率が高くなるように思われます。
しかし、下記の表を見ると、どの受験資格であっても「受験資格を取得してからの期間」(以下、受験期間と呼びます)が短い方の合格率が一番高く、受験期間の長さすなわち学習期間の長さが有利にならないことが明らかです。
令和5年(2023年)司法試験 受験資格取得年数別 最終合格率
法科大学院 既修者コース修了者
受験資格取得 (法科大学院修了年度) | 最終合格率 (対受験者数) | 短答合格率 (対受験者数) | 総合合格率 (対短答合格者数) |
---|---|---|---|
既修修了1年目 (令和4年度) | 62.82% | 89.06% | 70.54% |
既修修了2年目 (令和3年度) | 27.33% | 78.46% | 34.84% |
既修修了3年目 (令和2年度) | 11.17% | 66.02% | 16.91% |
既修修了4年目 (令和元年度) | 17.36% | 71.90% | 24.14% |
既修修了5年目 (平成30年度) | 6.36% | 73.64% | 8.64% |
法科大学院 未修者コース修了者
受験資格取得 | 最終合格率 (対受験者数) | 短答合格率 (対受験者数) | 総合合格率 (対短答合格者数) |
---|---|---|---|
未修修了1年目 (令和4年度) | 31.43% | 67.86% | 46.32% |
未修修了2年目 (令和3年度) | 14.21% | 61.42% | 23.14% |
未修修了3年目 (令和2年度) | 8.28% | 58.60% | 14.13% |
未修修了4年目 (令和元年度) | 7.20% | 56.00% | 12.86% |
未修修了5年目 (平成30年度) | 6.08% | 58.11% | 10.47% |
予備試験 合格者
受験資格取得 (予備試験合格年度) | 最終合格率 (対受験者数) | 短答合格率 (対受験者数) | 総合合格率 (対短答合格者数) |
---|---|---|---|
予備合格1年目 (令和4年度) | 92.98% | 99.71% | 93.26% |
予備合格2年目 (令和3年度) | 80.00% | 100.00% | 80.00% |
予備合格3年目 (令和2年度) | 75.00% | 100.00% | 75.00% |
予備合格4年目 (令和元年度) | 100.00% | 100.00% | 100.00% |
予備合格5年目 (平成30年度) | 100.00% | 100.00% | 100.00% |
合格率が高いと言われる予備試験合格者であっても、受験期間2年以降は合格率が下がります。
なぜ、合格率は受験期間の長さに比例しないのか?
司法試験の合否を決めるのは論文得点。
司法試験では総合得点で合格判定を行いますが、総合得点は以下の式で計算されます。
総合得点=短答得点+論文得点×1.75
短答式試験は175点満点、論文式試験は1400点満点(上記1.75倍後)です。
上記の総合得点の計算によれば、短答と論文の配点割合は「短答:論文=1:8」となります。
このように司法試験では、論文の配点が圧倒的に高く、論文の得点が最終合格を決定すると言えます。
論文は知識量ではなく書き方が得点に影響する
その論文式試験ですが、短答とは異なり、論文は知識の量よりも答案の書き方が得点に大きく影響します。
同じ内容を書いていたとしても、読みやすく分かりやすく書けている答案の方が、相対評価で得点が高くなるからです。
逆に書き方が悪いと、答案を採点する考査委員に内容が十分に伝わらず得点が得られなかったり、論理力や論述力が低く評価され低い得点しか得られなかったり、得点が伸び悩んでしまいます。
短答では合格者の平均点を超えているのに論文の得点が足りなくて総合で不合格となった方は、知識量ではなく答案の書き方が悪くて不合格となった可能性が高いといえます。
受験2年目以降は「合格できない書き方」をする受験生の割合が高まる
しかし、多くの受験生が不合格の原因を努力不足つまり知識のインプット不足と考えがちで、翌年以降に知識量を増やす学習は行っても、答案の書き方を改善するための学習を十分に行えていない方が多いようです。
その結果、受験1年目で不合格すなわち「合格できない書き方」と考査委員に判定された受験生の多くが、答案の書き方を改善できないまま翌年も受験するため、受験2年目の合格率は受験1年目以上に低下するのです。
受験3年目の場合は、1年目に引き続き2年目も「合格できない書き方」であると考査委員に判定され、そのまま答案の書き方を改善できず固定化してしまった方が多いため、さらに合格率が低く低下していると言えます。受験4年目、5年目も同様です。
答案の書き方の改善は、独学ではつかむのは難しいと言われます。それは、自分でも気づかない悪い書き癖を直さないといけないからです。多くの人は、自分では分かっていてその文章を書いているので、自分の文章のダメなところに気づきにくいのです。
受験期間が長くなってきているのに、論文式試験の得点が伸び悩んでいる方は、合格者の方に自分の答案を添削してもらい書き方の改善や矯正を行うきっかけとなる機会を設けましょう。
本ページは下記資料を参考にしています。