司法試験過去問の出題パターン 論文編

論文式試験の出題傾向と対策について

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司法試験論文式試験の過去問を勉強していても、出題範囲が膨大で毎年まったく違う問題が出ているので、いざ自分の受験本番になっても未知の問題に対応できる気がしません。論文式試験に出題パターンはあるのでしょうか。

論文式試験は、出題範囲は広く、毎年違う問題が出ていますが、「問題を通して試験委員が求めているもの」「答案を通して試験委員が見たい受験生の能力」は毎年同じといえます。過去の出題データを分析して、それが何なのかを学び取りましょう。

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試験委員が求めるものは毎年同じ?

 司法試験の過去問を見れば分かりますが、出題される内容は毎年様々で、問題文中の事実や論点において過去問とまったく同じ出題というのは一度としてされたことがありません。そのため受験生としては、
「色々な基本書を読んだり予備校の講義を聴いたりして、現場で論証を吐き出せる論点のストックをたくさん増やそう」
「過去問や答練などの問題演習をたくさんこなして、似たような問題が出題されたら他の受験生よりも多く書けるようにしよう」
という心理に陥り、そのような勉強をしてしまいがちです。
 しかし皮肉なことに、このような心理で勉強を進める人ほど、合格が遠のいてしまうのが司法試験の恐ろしいところです。なぜなら、実務家登用試験である司法試験は、そのような知識・論点をたくさん知っている人を求めてはいないからです。彼らが求めているのは、
「① 未知の論点に対して、②既存の限りある知識を組み合わせて、③限りある時間の中で、④一定水準の事案処理をこなすことのできる人」
です。これら①から④こそ、司法試験に合格した人が将来なるべき弁護士・検察官・裁判官といった法曹三者の仕事の本質だからです。

したがって、答案を通して受験生がアピールすべき能力も、上記①から④ということになります。そのような視点のもとで、各科目の出題パターンを分析していきましょう。

公法系の出題分析

憲法

 憲法の出題形式は、平成18年度第1回の司法試験からほとんど変わっていません。やや長文の事例を読んで、当事者から依頼を受けた弁護人の立場に立って憲法上の主張を組み立て(設問1)、これに対する相手方当事者の反論を踏まえながら私見を論じる(設問2)というものです。平成27年度のみ配点が明示されました(設問1が50点、設問2が50点。ただしこの年は設問1が小問(1)原告の主張で40点、小問(2)被告の反論のポイントで10点という問題構成でした)。毎年出題形式がほぼ同じであることを考えると、配点のない年の問題も、平成27年度とほぼ同じような点数配分が試験委員の間では行われていたと推測されます。
 出題内容としては、憲法上の主張をする前提としての訴訟形式を問うことがあるので注意が必要です(平成24年度・地方自治法242条1項の住民監査請求及び242条の2第1項第4号の住民訴訟など)。具体的な憲法上の主張として頻出なものはやはり表現の自由(平成18年度、20年度、23年度、25年度、27年度)です。次いで多いのがプライバシー(平成21年度、23年度、28年度)、信教の自由(平成19年度、24年度)、などです。こうした自由権ばかりではなく、社会権の制約も出題されます(生存権について平成22年度)。ほかにも、平等原則違反(平成22年度、25年度、27年度)、適正手続(憲法33条・31条について平成29年度)なども出題されます。
採点実感を読む限り、憲法の答案で重要なのは、「表現の自由を侵害する」「学問の自由を侵害する」などと憲法上の文言をただあげつらうことではなく、具体的に依頼者のどのような自由が侵害されているかを挙げ、それがいかなる理由で侵害されているといえるのかを自分の言葉で説明する、ということです。


行政法

近年の行政法は他の科目よりも、設問の形としてはパターン化してきています。

・訴訟要件(例:「提起すべき抗告訴訟を挙げ、その要件を満たすかについて検討しなさい」)
・処分の適法性(例:「本件命令は適法と認められるか。関係する規定の趣旨及び内容に照らして検討しなさい」
・損失補償(例:「費用について損失補償を請求することができるか」)

などです。憲法と異なり毎年配点が明示されており、また問題文中の「誘導」に論述のメリハリについて言及されていることもあるため、求められている答案の分量としてはわかりやすいです。「誘導」とは、受験生に一定の内容を書いてもらうために試験委員があえて書いているヒントで、「当事者から相談を受けた法律事務所の会議録」のような形で存在します。受験生はこの「誘導」の中の指示に従う形で、答案の骨格を組み立てることになります。
 出題内容としては、問題となる訴訟は抗告訴訟がメインになりますが、実質的当事者訴訟(平成20年度、23年度)、国賠請求(平成18年度)、住民訴訟(平成22年度)、損失補償請求(平成24年度、27年度)などが出題された年もあります。抗告訴訟は取消訴訟や非申請型義務付け訴訟、差止訴訟などの訴訟要件が頻繁に出題されますが、訴訟要件のうち処分性や原告適格など特定の要件だけを聞いてくる年もあるので注意が必要です。
 いずれにしても、行政法の試験は出題パターンがある程度固定化している分、受験生の答案はどれも形式面でおなじようなものになり、差がつきにくい傾向にあります。問題文中の誘導を正確に読み取り、書くべきことと書くべきでないことをしっかり理解したうえで、個別法の解釈を読み手にも分かりやすく示すことが、合格点を取るポイントになります。


民事系の出題分析


民法

 民法は例年、長文の事例問題について、設問3つ程度が出題されます。民法は範囲が広く、毎年バリエーションに富んだ出題がされるため、個別の論点を頻出論点と位置づけることは難しいです。もっとも、出題形式としては、平成26年度試験あたりから問い方の固定化傾向が見られ、答案が書きやすくなっています。たとえば、以下のようなものです(※説明のため問題文を一部改変しています)。

・「下線部の事実の法律上の意義をどのように説明すればよいかを検討しなさい」(平成26年度)
・「主張の根拠を説明し、その主張が認められるかを検討した上で、これに対して考えられる反論を挙げ、その反論が認められるかどうかを検討しなさい」(平成27年度)
・「請求の根拠及び内容を検討し、その請求の当否を論じなさい」(平成28年度)
・「請求に対し、どのような反論をすることが考えられるか。その根拠及びその反論が認められるために必要な要件を説明した上で、その反論が認められるかどうかを検討しなさい」(平成29年度)


 このような問い方に忠実に答える答案を作成するためには、問題文中の事実を読み、①誰が誰に対してどのような請求をしているか、②それに対する反論はどのようなものが考えられるか、③これらの請求や反論が認められるために必要な法律要件は何か、④そのような法律要件を満たす事実は問題文中のどの事実か。これら①から④を、要件事実にしたがって整理することで、比較的わかりやすい形に組み立てることができます。

 こうした作業を現場でできるようになるためには、個別の論点の勉強だけではなく、要件事実の勉強も必要です。『新問題研究 要件事実』(司法研修所編)などの薄い本を何度も読み込んで、要件事実の発想に早いうちから習熟しましょう。


商法

商法も民法同様、かなりの長文の事例問題について、設問3つ程度の出題がされます。議決権行使書面(平成21年度)、貸借対照表(平成22年度、23年度、27年度)、履歴事項全部証明書(平成23年度、26年度)、定款(平成25年度)など、会社実務に関する書類が資料として付されることも多く、問題文のみならずこれら資料を読み解いて必要な事実を抽出し、答案に書き表すことも求められています。
 出題パターンとしては、取締役などの役員のした行為についての会社法上の適法性(利益相反取引、多額の借財など)や株主総会・取締役会の瑕疵(説明を欠いて行われた株式の有利発行、特別利害関係人の決議参加など)と、それを争うための会社訴訟手続(株主代表訴訟、株主総会取消しの訴えなど)とを組み合わせて問うものがメインです。会社法では裁量棄却などにより、瑕疵のある行為でも取消事由にあたらないという結論が導かれることも多いため、「瑕疵があるか」という問題と「取消・無効事由にあたるか」という問題を区別して論じる必要があります。
 平成29年度現時点まで、司法試験では商法総則・商行為法や手形・小切手法からの出題はありません。しかし、予備試験では既に平成24年度に商法や手形法の条文を引くことを求められる出題がされました。そのため、この先の司法試験で出題がないとは言い切れません。これらの法律からの出題がないとしても、会社法という1000条近くある条文を手繰って解く必要があるため、他の科目以上に条文に慣れておくことが求められる科目です。

民訴法

 民訴法の出題形式は近年ではほぼ固定されています。民事紛争が生じている事例について、その事例にかかわっている法律家(弁護士あるいは裁判官)と修習生の2人による会話を読み、法律家が修習生に課題として出している2~3つの設問に答えるというものです。民訴法は、民事系の他の2問に比べて、判例の知識があることが前提となっている出題が多いです。そのため、判例集を用いた判例学習の重要性が民法、商法よりも高いです。もっともその分、問題文中のあてはめに用いる記述は民法や商法に比べて多くありません。一見難しい問題が出ても落ち着いて、問われていることに対してのみ淡々と答えるだけで、一応の水準の答案を書くことができる科目です。採点実感にあるとおり、①基本的な原理原則を正しく理解し、②問題文をよく読み、聞かれていることにだけ正面から答え、③ある程度具体的なあてはめを書くことを心がけましょう。
 出題内容としては、訴訟要件に関するもの、裁判所の審判対象に関するもの、判決の効力に関するもの、当事者が複数いる場合の訴訟手続に関するものなど、幅広く出題されます。ほぼ毎年出題される既判力を筆頭に、裁判上の自白(平成19年度、21年度、23年度)、弁論主義(平成21年度、24~25年度、29年度)、複雑請求訴訟(平成18年度、20年度、23年度、24年度、28年度)などがよく問われています。もっとも、民訴法は概念を理解するのに時間がかかる科目であるため、こうした頻出の論点にヤマを張ることなく、民事訴訟手続全体の流れの中で各概念を理解し、万遍なく学習することが必要です。

刑事系の出題分析

刑法

 刑法の出題パターンは単純で、具体的な長文事例問題について「甲」「乙」「丙」「丁」といった人物(検討を要する人数は毎年異なります)の罪責を論じる形式が平成18年度試験から一貫して続いています。ただし細部については、事例の一部として逮捕後の供述要旨が付いているもの(平成18年度)、小問として論ずべき法律上の論点があらかじめ定められているもの(平成19年度)、参考判例が付されているもの(平成19年度)、参考資料として社員総会議事録が付されているもの(平成24年度)があり、こうした細部でのアレンジが今後行われないとは限りません。ただし、これらのアレンジも基本的には罪責検討の一資料としての域を出ないため、仮に本番で出題されてもパニックにならず、落ち着いて検討しましょう。
 出題内容としては複雑な事例問題のため、総論のみあるいは各論のみということはあり得ませんが、特に広義の共犯に関する論点は毎年出題されており、重要論点のひとつといえます。その他特に頻出の論点としては、総論では正当防衛(平成18年度、23年度、29年度)、因果関係の有無(平成22年度、25年度、26年度)、不作為犯(平成22年度、26年度)、各論では住居等侵入罪(平成20年度、26年度、27年度、28年度)、強盗罪(平成20年度、27年度、28年度)横領と背任の区別(平成21年度、24年度、29年度)などがあります。


刑訴法

 刑訴法は例年2つの設問からなり、設問1で複数の捜査活動の適法性に関する出題が、設問2で公判や証拠などに関する出題がされます(平成20年度はこの順番を逆にして出題されました)。もっとも平成28年度で接見指定を含め合計4つもの設問が出題されたこともあり、続く平成29年度は設問数は2つに戻ったものの拾うべき事実が多かったことから、近年では事案処理能力が試される試験といえます。
 出題内容も多岐に渡ります。捜査の適法性に関する出題では強制処分と任意処分の区別(平成19年度、26年度、27年度)、現行犯・準現行犯逮捕(平成23年度、25年度)、実質的逮捕(平成26年度、28年度)令状に基づく捜索差押え(平成20年度、29年度)、逮捕に伴う捜索差押え(平成24年度、25年度)などが複数回出題されています。公判や証拠に関する出題では、伝聞証拠について、その証拠能力の有無を問うものが頻繁に出題されています(平成18年度、20~23年度、25年度、27~29年度)。伝聞に続いて多いのが違法収集証拠排除法則(平成18年度、27年度)と訴因変更(平成24年度、26年度)に関する出題です。他には、同種前科の証拠能力(平成19年度)、証拠によって必ずしも確定できない事実を裁判所が認定することの可否(平成24年度)、自白法則(平成27年度)、公判前整理手続後の質問制限(平成28年度)などがあります。
 近年の刑訴法は特に、基本的論点からの出題が多いです。そのため受験生も答案が書きやすく、問題提起や規範定立といった論証部分では差がつきません。逆に言えば論点落としが即、命取りになる科目でもあるので、基本的知識については正確に理解し、論証を書き出せるようになっておく必要があります。その上で、問題文中の個別の事情をどこまで分析してあてはめ、分かりやすい答案を書くことができるかが勝負の分かれ目になります。

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