司法試験のパソコン受験は令和8(2026)から!どう変わる?対策は?

司法試験と司法試験予備試験(以下、予備試験)は、令和8年(2026年)からパソコン受験(CBT方式)が導入される見通しです。

実現すれば、受験生は大量の手書きの負担から解放されますが、未知の新方式に対応できるように事前の情報収集と準備が不可欠です。

この記事では、司法試験のパソコン受験(CBT方式)について解説します。

司法試験のパソコン受験(CBT方式)とは

「CBT」とはComputer Based Testingの略で、コンピューターを使って試験を行う方法のことです。

司法試験もこのCBT方式で実施される見通しで、デジタル庁が2023年6月に改定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、

令和8年(2026年)に実施する試験からの導入に向け、システムの設計・構築等を進める」と明記されています。

不正防止のため、インターネットに接続できないシステムで試験会場の端末を使用して解答する仕組みを想定しています。

司法試験のCBT方式はアメリカのニューヨーク州などですでに導入されていて、法務省はそれらの事例を参考に詳細部分を検討中です。

パソコン受験(CBT方式)はいつから?

前述のとおり、司法試験のパソコン受験(CBT方式)は、令和8年(2026年)の試験からの導入が予定されています。

パソコン受験(CBT方式)で何がどう変わる?

法務省は、令和8年(2026年)から司法試験の短答式試験と論文試験の両方にパソコン受験(CBT方式)を導入することを目指しています。

パソコン受験(CBT方式)の導入によって大きな影響を受けるのは、論文式試験です。

司法試験の流れを見てみましょう。下記の図のとおり、論文式試験は3日間で法律基本7科目と選択科目が行われています。

現行(手書き)の場合、法律基本科目は1問につきA4サイズ・23行の解答用紙が最大8枚、選択科目は1問につき最大4枚記入可能で、すべて合計すると最大4万4,000字程度の書き込みができます。

解答用紙の9割を埋めると仮定して4万字程度書くことになり、手書きによる受験生の負担は非常に大きくなっています。

その論文試験が手書きからパソコンを使用して答案を作成する形式に変更されます。そしてマークシート形式の短答式試験も、パソコンで解答する形になる予定です。

なお法務省は、令和8年(2026年)の予備試験では論文試験のみでCBT方式の導入を目指しています。

導入の背景・目的とは?

パソコン受験導入の目的としては、受験者の利便性の向上と、試験関係者の負担軽減が挙げられます。

これまでの試験では、手書きで大量に解答を書くことが受験生への負担となっていただけでなく、読みにくい解答用紙も多くあり、採点者にも負担がかかっていました。

また、業者に依頼する答案用紙の作成、運搬のコストもありました。

受験手続きに関しても出願が郵送のみで、利便性は悪く、処理にも時間やコストがかかっていました。

これらをデジタル化することで、受験者・採点者の負担軽減と、経費削減、情報セキュリティーの向上などの効果が期待されています。

どこまで決まった?司法試験のパソコン受験(CBT方式)

令和8年(2026年)導入予定の司法試験のパソコン受験(CBT方式)について、未定の部分も多いですが、決まっている事柄についていくつか取り上げます。

パソコンは持ち込める?

海外では司法試験にパソコンを持ち込めるところもありますが、日本の場合はパソコンの持ち込みはできない予定です。

アメリカのニューヨーク州の司法試験では、指定されたワープロセキュリティーソフトをインストールしたパソコンを受験者が用意し、試験会場で解答する方式です。

一方、日本の司法試験の場合は、あらかじめ司法試験委員会(法務省)が会場に用意した端末で解答することが想定されており、使い慣れた端末を持ち込むことはできません。

従来同様、会場に集合して試験を受ける形式を取り、受験者が個別に自宅などからインターネットに接続して試験を受ける、というタイプにはならない予定です。

問題は紙で出題される? 

CBT方式ではパソコンを使って答案を作成することになるのが一番大きな変更点となりますが、問題文に関しては同様にパソコンに表示される変更となるのか、問題文だけは従来通り紙で配られるのかは言及がありません(2024年9月現在)。

ただ、まずは解答用紙からというスモールステップで始まり、問題用紙が従来通り配られたとしても、全体としてはデジタル化推進の方向にあるので、いずれ紙の問題文がなくなる可能性も十分にあります。

余白などに書き込むことで頭の整理をしていた人は、問題・解答用紙ともに廃止されると解答そのものにも影響が出てくるでしょう。

プレテスト(模擬試験)は実施される?

司法試験が旧試験から新試験に切り替わった際は、プレテスト(模擬試験)が行われました。

法務省のCBT導入に関するQ&Aでは、今回の導入においても試験版・体験版がホームページ等で提供予定とされています。

短答式試験では問題をスキップして後から戻ったり、解答を後から修正したりする機能が設定される予定とされています。

論文試験だけでなく短答式試験も合わせて事前に操作に慣れる時間を確保したいところです。

受験生のメリット・デメリットと必要な対策とは?

これまで紙で大量に書くことが求められていた司法試験が、パソコン使用に変わることで生じるメリット・デメリットについて、必要な対策と合わせてご紹介します。

受験生のメリットは?

大量に文字を書く必要がなくなる

論文試験の解答時はとにかく大量に文章を書く必要があり、手書きに慣れていない人は練習しなければ時間内に解答を最後まで書き切ることができないような文量でした。

また、実際に現場で行われる実務では手書きで書類を作成する場面はほとんどなくなっていて、大量の文章を書く練習というのが司法試験のためだけに行われている状態であり、実務に生かされないというデメリットになっていました。

パソコン受験への変更によって、これらの負担が減少します。

手書き文字の読みにくさによる失点を防げる

手書きの場合は解答内容が合っていても読み取ってもらえなければ点数にならないという懸念がありましたが、パソコン方式で気にする必要がなくなります。

自分の字が読みにくいという自覚がある人は、手書きからの解放は心理的にも大きいでしょう。

字のきれいさで差がつくことなく、解答内容そのものに集中できるようになります。

答案の記入が楽になる部分も

論文試験の答案用紙はあらかじめ配られる枚数が決まっていて、書き損じても追加配布はありません。

また、解答用紙の枠の外に書かれた部分は採点されないルールがあるので、文章を消すのは容易でも反対に文章を追加するのは困難でした。

しかし、パソコン受験ではコピーや貼り付け等の文章作成に必要な機能が使用できる予定なので、解答の作成や途中変更などが今までより苦労なくできるようになります。

受験生のデメリットは?

使い慣れないパソコンで時間をロスする

手書き文字が読みにくく減点されるという事態は避けられますが、急いで打ち込むことによる変換ミスの可能性は高くなります。

会場にある使い慣れないパソコンを使用することでさらに誤変換の可能性が高まりますし、個人的な単語登録などの機能は使えないことが想定されるため、日常生活で使用しない法律用語が大量に出てくる解答案を打ち込むのに時間がかかる懸念があります。

紙の余白を使用した整理などができない

解答用紙だけでなく、答案構成用紙や問題用紙なども配られず、すべてがパソコンを使っての作業に切り替わるとすれば、紙に図形などを書き込んで考えを整理したり、核となる部分をメモしたりといったことができなくなります。

たくさんの情報を脳内で処理することが求められるため、考えがまとまらずに適切な解答ができなくなる恐れが出てきます。

出題や採点方法に影響する可能性

手書き時より短い時間で解答できるようになると、それを見越して今までより問題文が長くなり、分析に時間がかかるようになるかもしれません。

採点方法に関しても、これまで原則として加点方式でしたが、時間内に解答できる文章量が増えると、冗長で質の低い解答でも、加点部分が多く含まれて合格点に達してしまうというケースが発生します。

もちろん文字数が制限される可能性もありますが、採点方法が減点方式に変更ということもあり得ます。

必要な対策は?

パソコン受験への変更で、特に文章の入力量が多い論文試験に必要になる対策を3つご紹介します。

パソコンで速く正確に文章を書く

パソコンを使って答案を書く際は、タイピングの速度で解答できる量が変わるので、タイピング練習は重要です。

普段からあまりパソコンで文章を書いていない人は、手元を見なくても文章が書けるように練習する必要がありますし、慣れている人でもキーボードの配置が変わるとうまく打ち込めなくなります。

試験で使用されるものと同じタイプ(Windowsの日本語用キーボード、106、108/109、112のいずれかのタイプ、文字入力は日本語Microsoft-IMEの予定)に慣れておきたいところです。

ただし、タイピングにばかり気を取られるのは問題で、あくまでも解答内容が適切でないと合格につながらないことは忘れないようにしましょう。

時間配分を考える

入力がパソコンになっても、制限時間内に答案を完成させる点は手書きと変わりありません。

試験の最後の方は疲れが出て、タイピングが遅くなる可能性もあるので、実際に試験時間通りに取り組んでみて、自分がどれくらいの字数を打てるかを把握しましょう。

その上で、答案の構成を考える時間と答案を作成する時間がそれぞれどれくらいになるか、時間配分を考えることが重要です。

また、パソコンで入力する際には、手書きの時の書き間違いとは違い、同音異義語の変換ミスなどが起こりやすくなるので、ミスを防ぐために答案を読み返す時間を確保するのが必須です。

採点者に分かりやすい構成を意識する

タイピングに慣れると、手書きよりも短い時間で多くの文章を書くことができます。

ただ、何でも盛り込もうとすると冗長になるので、答案の質が低下しないよう注意が必要です。

特に問題用紙などの余白を使って考えを整理したりできない場合、たくさんの情報を脳内だけで処理することになり、まとまりのない文章になる恐れがあります。

採点者に伝わる・分かりやすい構成を意識して、そこからブレないようにまとめることが重要です。

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手書きからパソコンに変わることは大きな変化であるとはいえ、合格するためには基本的な答案の書き方を身につけることが大切である点はこれまでと同様です。

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【Q&A】司法試験のよくある質問

最後に、司法試験に関するよくある質問を2つ取り上げます。

司法試験・予備試験の受験方法以外のデジタル化は?

司法試験や予備試験における受験者の利便性向上や、試験関係者の負担軽減を目指して行われるデジタル化の動き。これはパソコン受験の導入だけにとどまらず、受験の手続きに関しても進められます。

CBT方式への試験方法の変更に先立ち、令和7年(2025年)からは試験の出願手続きなどのオンライン化が段階的に進められる予定です。

司法試験・予備試験の論文はどう対策すればいい?

予備試験の論文式試験対策は、次のような順番で行うと効率的です。

基本となる三段論法を取得する

各科目の特徴的な骨組みを把握し、論文の書き方を習得する

過去問を解く

法律を初めて学ぶ人は、慣れるために模範解答を書き写すことから始めるという方法も。

司法試験の論文式試験では、条文・判例・学説の意味を理解し、問題の意図に合わせた整合性のある論述が求められます。

「未知の論点に対しても、既存の知識を組み合わせ、限りある時間の中で一定水準の解答をする」という視点も持つことが重要です。

まとめ

司法試験のデジタル化に伴うパソコン受験(CBT方式)の導入に関して、従来の試験との違いや受験生のメリット・デメリット、受験に必要な対策についてご紹介しました。

  • 司法試験の論文試験と短答式試験で2026年から、予備試験も同年に論文試験で導入予定。併せて出願手続きのオンライン化なども
  • 受験生だけでなく、採点者や試験関係者の負担も軽減
  • タイピング練習や時間配分・採点者に伝わる構成案を意識するなどの対策が必要

答案の作成方法が変わっても、重要なのは中身。答案の書き方を身につけることが合格への道です。ぜひスタディング司法試験・予備試験講座の論文対策を体験してみてください。

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