宅建の試験概要
まずは宅建試験について、試験の形式や問題数、試験日と時間といった基本情報をチェックしておきましょう。
試験形式・問題数
宅建試験の形式はマークシート方式で、4つの選択肢から適当なものを一つ選択する四肢択一式です。
問題数は全50問で、相対評価方式のため合格ラインは毎年変動します。
例年、35点前後が合格ラインとなることが多く、学習の際には余裕をもって「38点程度」を目標にすることをおすすめします
余裕を持って勉強し、問題の難化にも対応できるようにしておきましょう。
試験日・試験時間
宅建の試験は年に1回、例年10月の第3日曜日に実施されます。令和5年度の宅建試験は2023年10月15日(日)です。
試験時間は2時間で、13:00〜15:00の予定です。
ただし、新型コロナウィルス感染症の影響により、10月試験の試験会場での定員を上回る受験申し込みがあった場合、12月試験の受験となる可能性があります。
受験者が試験日を選択することはできず、8月末の試験通知で10月試験か12月試験かを指定されます。
試験会場
試験会場は、受験者が居住している地域の会場で受験します。都道府県内に複数の試験会場がある場合には、インターネットから申し込みをすれば試験会場の選択が可能です。
ただし、先着順で会場が埋まっていくため、タイミングによっては希望の会場で受験ができないこともあります。
【あわせて読みたい】2024年度(令和6年度)宅建試験日と申し込み、合格までのスケジュール
過去問
宅建試験の過去問は、試験実施機関のWebサイトで公開されています。
【参考】一般財団法人 不動産適正取引推進機構「宅建試験」>「受験をお考えの方」>「宅建試験の概要」
しかし、サイト上に解説は載っていないため、宅建学習に使うのは難しいと言えます。
実際に宅建を受験するのであれば、解説付きの過去問集が必須です。
試験内容は?科目別の勉強方法・勉強時間・目標点
ここからは宅建の試験科目ごとの勉強方法や勉強時間、目標点について解説していきます。
まずは、試験科目ごとの問題数を見てみましょう。
試験科目 |
問題数 |
問題番号 |
権利関係 | 14問 | 問1〜14 |
法令上の制限 | 8問 | 問15〜22 |
税・その他 | 3問 | 問23〜25 |
宅建業法 | 20問 | 問26〜45 |
免除科目 | 5問 | 問46〜50 |
宅建試験は全50問ですが、科目によって問題数に大きな差があることがおわかりいただけるでしょう。
そして科目ごとに難易度も異なります。つまり合格するためには、科目によって勉強の仕方や割くべき勉強時間を変える必要があるのです。
では、各科目はどのように後略していけばいいのでしょうか?
おすすめの勉強順に沿って、「権利関係」→「宅建業法」→「法令上の制限」→「税・その他」で解説していきます(「免除科目」は5点免除(5問免除)に関する項目で後述)。
また各科目の勉強時間については、一般的に宅建合格に必要な総勉強時間は200〜300時間で、今回は300時間の場合の配分について記載しています。
権利関係
▼出題内容・科目の特徴
権利関係は、民法や借地借家法などの法や、それらに明記されている権利に関する問題が出題されます。
一番の特徴は、事例問題が多く、文の意味を正しく把握しないと回答できない問題が多いことです。
さらに問題数は宅建業法に次いで多い科目でもあります。宅建受験で一番の難関科目と感じる人も多いでしょう。
▼目標点
14問中10問正解
▼勉強方法
権利関係で得点するには、問題文で示された事例において「誰が、誰に、何をするのか」を正確に理解することが大事です。
インプット学習をするときは、重要なポイントは文章を読むだけでなく図とセットで覚えましょう。
問題練習では、事例上の関係を図に描いて整理するのもおすすめです。文を読むだけではわからなかった関係が、図を見ることではっきりして、得点力アップに結びつきます。
▼勉強時間
総勉強時間が300時間の場合、90時間程度(全体の30%)
権利関係の問題は、問題文を正しく理解できなければ正解することができません。1問当たりにかけられる時間が少ない試験本番ではなおさらです。
問題文で問われていることを正しく把握し、適した答えを導けるよう練習を何度も繰り返すようにしましょう。
宅建業法
▼出題内容・科目の特徴
宅建業法の配点は、試験全体の4割を占めます。「宅建業法で満点近い点数を取得できなければ、合格は難しい」と言われることもあり、得点をしっかり稼ぐべき科目です。
他の科目より比較的素直な問題が出題され、年度ごとの難易度のばらつきも小さいです。その分できるだけミスを少なくして、確実に得点できるようにする必要があります。
▼目標点
20問中18問正解
▼勉強方法
宅建業法を攻略する上では、地道なインプットとアウトプットを繰り返すことが重要です。
裏を返せば、インプットを怠るとまったくといっていいほど歯が立たない科目となります。知識は体系化して正しく頭に入れるようにしましょう。
暗記が苦手な人は、テキストの文字を読み込むだけでなく、動画や音声でのインプットもうまく活用しながら学習を進めてみてください。
特に勉強し始めの頃は、単純な暗記作業を続けていると飽きがきてしまうこともあるため、モチベーションを高められる勉強法を探すのがポイントです。
▼勉強時間
総勉強時間が300時間の場合、120時間程度(全体の40%)
宅建業法を盤石にしておけば、他の科目で多少苦戦しても余裕を持てます。
最初の時期に覚えた知識がそのまま基礎になり、得点にもつながる科目です。何度も反復して学習することで定着度を高めていきましょう。
【あわせて読みたい】宅建業法の試験攻略法!頻出テーマ・勉強法をおさえて満点を目指そう
法令上の制限
▼出題内容・科目の特徴
法令上の制限は、都市計画法や建築基準法など、建築物を建てるにあたって気をつけなければならない法令上の制限や規制について出題される科目です。
▼目標点
8問中5問正解
▼勉強方法
難易度のチェックと、割り切りった勉強が必要になります。例年、この科目では都市計画法に関する問題が2問、建築基準法に関する問題が2問出題されます。
ただし、この2科目は難易度が高く、攻略に要する勉強量が多いわりに得点効率がよくないことが特徴です。
反対に、得点しやすい科目は国土利用計画法、農地法、宅地造成等規制法で、いずれも1〜2日学習すれば得点力が身に付きます。
勉強に割くことができる時間は限られています。
宅建の試験では必ずしも満点を取らなければならないわけではないため、法令上の制限で取りたい5点はどのジャンルからどう取るのか、計画的に学習しましょう。
▼勉強時間
総勉強時間が300時間の場合、50時間程度(全体の17%程度)
法令上の制限の出題範囲を網羅的に学習しようとすると、50時間ではまったく足りません。50時間は、難易度や勉強効率をもとにポイントを絞って学習する場合の時間です。
必ず押さえておくべき内容はしっかり頭に入れておき、試験で出題された際には確実に得点できるようにしておきましょう。
税・その他
▼出題内容・科目の特徴
税・その他では、税法や統計、土地建物に関する問題が出題されます。統計問題については、最新の統計が出題される傾向があります。
試験前に最新の情報を確認しておきましょう。また、地方税や地価公示法、不動産鑑定評価基準などがよく出題されることが多いです。
▼目標点
8問中5問正解
▼勉強方法
税・その他の範囲は非常に広く、問題数を鑑みると正解するのが難しいと思われがちな科目です。実際、満点をとるのは非常に難しいと言えます。
しかし、その中でも出題傾向をある程度掴むことはできるため、捨ててしまうのはもったいないです。
地方税や地価公示法、不動産鑑定評価基準などがよく出題されるため、勉強する時間を確保し、頻出項目を必ず頭に入れておきましょう。
▼勉強時間
総勉強時間が300時間の場合、40時間程度(全体の13%程度)
宅建受験者の中には税・その他の勉強をほとんどしない方もいますが、それはあまり得策ではないでしょう。
出題傾向にばらつきはありますが、よく出題される問題については頭に入れておくことをおすすめします。
勉強を始めると40時間はあっという間です。集中して学習を進めていきましょう。
【あわせて読みたい】最初に知っておきたい宅建の勉強法!効率のいい勉強法から分野別攻略法まで
登録講習修了者の「5点免除(5問免除)」
宅建試験には通称「5点免除(5問免除)」という制度があります。
これは、規定の条件を満たした方を対象に、宅建試験全50問のうち5問(46~50問目)の問題を免除するものです。
※前出の表では「免除科目」として記載していますが、「税・その他」に含めて全8問と分類することもあります。
5点免除制度を利用した場合、合格ラインも5点分低くなります。たとえば合格点が34点の年度なら、45問中29問以上の正解で合格となります。ただし、試験時間は10分短縮となります。
5点免除制度を利用した受験者の合格率は、令和4年度(2022年度)は17.3%で、一般受験者の合格率(17.0%)よりも高い数値となっています。
免除を受けられる要件は、「宅建業に従事していること」と「所定の機関が実施している登録講習を修了していること」です。宅建業者で働いているのであれば活用を検討してみるといいでしょう。
【あわせて読みたい】宅建の5点免除とは?申し込みや講習について徹底解説
宅建のメリット
ここまで宅建を勉強するにあたって必要な情報をお伝えしてきましたが、晴れて宅建を取得できた際には、どのような恩恵を受けることができるのでしょうか。
宅建を取得するメリットとして、考えられる3つの効果をご紹介します。
就職・転職時の強みになる
まず、宅建は就職・転職の強みになるというメリットが思い浮かぶ方も多いでしょう。特に不動産関係の業界では宅建士が重宝される傾向にあります。
宅建業者には、従業員5名あたり1名の宅建士を配置することが義務付けられていて、欠員が出れば2週間以内に宅建士を補充するなどして配置の割合を保つ必要があります。
また、重要事項の説明などは、宅建士でなければ従事できません。こういった理由で宅建士に常にニーズがあるのです。
資格手当がもらえる
不動産会社や金融機関など業務上宅建士が必要になる企業では、宅建を取得することで資格手当がもらえることがあります。
資格手当の相場は1〜3万円と言われています。仮に月3万円の場合、年収は36万円増えることになります。
他の資格取得へのステップになる
宅建の受験者の中には、資格試験に初めて挑戦する人も多いです。数ある資格の中で難易度が高すぎない宅建は「資格試験の登竜門」的な立ち位置。
宅建取得の経験を足がかりに、ダブルライセンス、トリプルライセンスと資格を取得していく人は珍しくありません。
たとえば宅建と同じく不動産系の国家資格である管理業務主任者やマンション管理士などは、宅建で学んだ内容がベースにあると学習を進めやすくなります。
このほか、ファイナンシャルプランナーや行政書士など、不動産と親和性の高いジャンルの資格を取得していくケースもあります。
宅建の合格率・合格点(合格ライン)の推移
宅建の合格率は、約15〜17%です。合格点については、絶対的な合格ラインが定められているわけではありません。
宅建試験は合格率を一定に保つことを目的に相対評価方式となっているため、毎年合格ラインは変動するのです。
次の表は、平成20年度(2008年度)以降の宅建試験の受験者数、合格者数及び合格率・合格点を示したものです。
年度(西暦) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
平成20 (2008) |
209,415人 | 33,946人 | 16.2% | 33点 |
平成21 (2009) |
195,515人 | 34,918人 | 17.9% | 33点 |
平成22 (2010) |
186,542人 | 28,311人 | 15.2% | 36点 |
平成23 (2011) |
188,572人 | 30,391人 | 16.1% | 36点 |
平成24 (2012) |
191,169人 | 32,000人 | 16.7% | 33点 |
平成25 (2013) |
186,304人 | 28,470人 | 15.3% | 33点 |
平成26 (2014) |
192,029人 | 33,670人 | 17.5% | 32点 |
平成27 (2015) |
194,926人 | 30,028人 | 15.4% | 31点 |
平成28 (2016) |
198,463人 | 30,589人 | 15.4% | 35点 |
平成29 (2017) |
209,354人 | 32,644人 | 15.6% | 35点 |
平成30 (2018) |
213,993人 | 33,360人 | 15.6% | 37点 |
令和元 (2019) |
220,797人 | 37,481人 | 17.0% | 35点 |
令和2 (2020)※ |
204, 250人 | 34,338人 | 16.8% | 10月実施分 38点 12月実施分 36点 |
令和3 (2021)※ |
234,714人 | 41,471人 | >17.7% | 10月実施分 34点 12月実施分 34点 |
令和4 (2022) |
226,048人 | 38,525人 | 17.0% | 36点 |
令和5 (2023) |
233,276人 | 40,025人 | 17.2% | 36点 |
※令和2年度(2020年度)と令和3年度(2021年度)は、10月実施分及び12月実施分の合計の数値です。
合格点はおおむね35点を中心に推移していることがおわかりいただけるでしょう。
近年、合格点がもっとも高かったのは令和2年度(2020年度)10月試験の38点でした。
学習時は38点程度を目標に設定するのがおすすめです。
忙しくても宅建に合格する方法
仕事や家事に追われ、忙しい日々をお過ごしの方も多いと思います。そうした状況で宅建の取得を目指す場合には、どのような手段をとればいいのでしょうか。
ここでは、宅建勉強においてよくある失敗のパターンと、それに対する対策をご紹介します。
これから勉強を始める方はもちろんのこと、現在進行形で宅建の勉強にお悩みの方もぜひ参考にしてみてください。
よくある失敗パターンと対策
よくある失敗パターンを3つピックアップし、それぞれに対する対策をご紹介します。
▼勉強時間が足りなかった
まずは、勉強時間が不足していたために合格できなかったというパターンです。これは特に社会人の方にありがちな失敗で、家で勉強する時間がないために起こることが多いです。
忙しくても勉強時間を増やすには、まず「勉強は机に向かってする」という考えを捨てるところから始まります。
仮に1日の中で机に向かえる時間が30分しかなかったとしても、通勤中、昼休憩中、寝る前などのスキマ時間に少しずつ勉強できれば、合計で1〜2時間の勉強時間を確保できます。
また、時間があっても疲れていると机に向かうのがおっくうな時もあるでしょう。そんな時は、たとえばスマホのようにソファやベッドでくつろいだ状態でも学習できるツールがあれば、勉強時間を増やせます。
▼問題練習の時間が足りなかった
意外と多いのは、インプットの時間を確保するのに注力しすぎたあまり、問題練習の時間を確保できなかったというパターンです。
せっかく知識を身につけたとしても、試験本番で得点できなければ意味がありません。
この場合は、問題練習の時間を増やすのがもっともシンプルな解決法ですが、忙しい人が限られた勉強時間で問題練習の効果を最大にするにはどうすればいいのでしょうか?
一番のおすすめは、インプットと並行して問題練習を始めること。覚えた知識が問題文ではどのように問われるのかを把握していくのです。
最初に解くのは、マルバツ形式の一問一答問題集が最適です。サクサク進めることができるので、日々の勉強に手軽に取り入れることができます。
アウトプットを意識したインプットができるよう、勉強のサイクルを作ってみましょう。
▼勉強したが得点が低かった
勉強時間を確保できたけれど、得点につながらなかったという失敗パターンもあります。この場合は、試験内容をまんべんなく勉強しようとしていることが多いです。
そもそも宅建に合格するには、試験範囲は端から端までくまなく勉強する必要はありません。忙しい人なら、なおさらです。
宅建は満点(50点)を目指さなくても、合格ラインの38点程度を取れれば合格できます。そして試験に出題される問題には、一定の傾向があります。
最小限の勉強で合格するには、得点に結びつく部分を重点的に勉強するようにしましょう。
忙しくても合格できる「スタディング 宅建士講座」
スキマ時間の活用や、要点をしっかりおさえた学習をするなら、オンライン通信講座の「スタディング 宅建士講座」が最適です。
パソコンのほかスマホアプリでも学べるので、通勤中や昼休憩中などに動画講座を見る、問題集を解くといった学習ができ、スキマ時間を活用して勉強時間を積み上げていくことができます。
講座内容は、動画の講義やWebテキストを使った基本的な内容の学習と、一問一答の問題練習がセットです。
インプット学習とアウトプット学習を最適なバランスで進めることができます。
また、スタディングでは学習内容を合格に必要なポイントに絞っているため、無駄がありません。
限られた勉強時間でも最大限効果を出すことができるよう考え尽くされた教材で、宅建合格までの最短ルートを歩んでみませんか?
スタディング 宅建士講座とは? |
まとめ
今回は、宅建の試験概要や科目別の勉強方法、よくある失敗と対策をご紹介してきました。
- 宅建は国家資格で、試験日は例年10月の第3日曜日(年1回)
- 宅建の試験内容は「権利関係」「法令上の制限」「税・その他」「宅建業法」「免除科目」
- 一部の人を対象に「5点免除(5問免除)」制度があり、利用者の合格率は一般受験者より高い
試験は決して簡単ではありませんが、忙しい人でもスキマ時間を活用すれば一発合格も可能です。
あなたのライフスタイルに合った学習方法を取り入れてみてください。