宅建の合格率は15~17%程度です。数字だけを見ると、10人中1人か2人しか合格しない、つまり難易度が高い資格だという印象受けるかもしれません。
しかし実際は、宅建は国家資格の中では難易度がそれほど高い部類ではありません。
宅建の合格率が低い理由としては、次の2つの点が考えられます。
国家資格には、受験資格として建築士やFP1級のように学歴や実務経験といった要件を設けているものもあります。
しかし宅建には受験資格に制限がありません。学齢、年齢、実務経験などが問われないため、誰でも受験の申し込みができます。
また、試験の形式が4肢択一方式(マークシート方式)であることも、受験者側にとっては心理的なハードルが高くならない要素と言えるでしょう。
このように誰でも受験しやすいため、宅建の受験者数は例年約20万人にのぼります。母数が増えれば、受験者の本気度にもばらつきがあるのは自然なことです。
仮に不合格でも翌年になればまた受験のチャンスはあるので、「今年必ず合格したい」という受験者ばかりではないと言えるでしょう。
前述のように宅建は受験の申し込みのハードルは低いですが、試験に出題される範囲は広く、計画的な勉強が求められます。
宅建の試験科目と出題数は下記のとおりです。
分野 | 出題数 |
宅建業法 | 20問 |
権利関係(民法など) | 14問 |
法令上の制限 | 8問 |
税・その他 | 8問 |
出題数が多く重点的に勉強することになるのは、宅建業法と権利関係(民法など)で、それらに加えて法令上の制限、税金や建物の安全性などの知識も求められます。
さらに、学習には一定の「深さ」も必要です。
たとえば権利関係は、事例問題の出題が多く、法律を理解したうえで事例に当てはめて正解を導き出す必要があります。単純な暗記だけでは乗り切れない科目です。
受験者の中には、学習に手こずって試験範囲をしっかりカバーしきれないまま試験本番を迎え、不合格になる人も少なくありません。
このように、「誰でも受験できる」「試験範囲が広い」という理由から宅建の合格率は低くなっていますが、
裏を返せば「今年必ず合格したい」という決意で臨み、試験本番に向けて計画的に勉強すれば、宅建の実際の合格率はもっと高いはずです。
合格に必要な勉強時間については後述しますが、正しい方法で取り組めば、一般的には半年前後の勉強で合格を目指せるイメージです。
宅建の合格率は、平成20年度(2008年度)以降は15~17%台で推移しています。
他の資格は実施年度によって合格率が大きく変動することもありますが、宅建は年によって合格率が大きく上下することはなく概ね安定しています。
一方、宅建は相対評価方式の試験のため、合格ライン(合格点)は毎回変動します。
平成27年度(2015年度)の合格点は31点ですが、令和2年度(2020年度)10月試験は38点が合格点と、7点も差があります。過去問を解く際には注意が必要です。
令和5年度(2023年度)の宅建試験は、10月15日(日)に実施されました。
受験者数、合格者数、合格率、合格ライン(合格点)は下記のとおりでした。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 | |
令和5年度(2023年度) | 233,276 | 40,025 | 17.2% | 36点 |
また、令和5年度(2023年度)の合格者全体の職業構成比に注目すると、1位は不動産業(35.2%)、2位は学生(10.9%)、3位は建設業(8.8%)でした。
4位以降は、金融業が8.2%、その他業種が25.0%などとなっています。
業務のために宅建が必要となりやすい不動産、金融、建築業界の関係者や、就職を控えた学生の割合が目立ちます。
【あわせて読みたい】令和5年度(2023年度) 宅建試験合格発表!合格点は36点、合格率は17.2%
【参考】一般財団法人 不動産適正取引推進機構「令和5年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
次の表は、平成20年度(2008年度)以降の宅建試験の受験者数、合格者数及び合格率・合格点を示したものです。
年度(西暦) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
平成20 (2008) |
209,415人 | 33,946人 | 16.2% | 33点 |
平成21 (2009) |
195,515人 | 34,918人 | 17.9% | 33点 |
平成22 (2010) |
186,542人 | 28,311人 | 15.2% | 36点 |
平成23 (2011) |
188,572人 | 30,391人 | 16.1% | 36点 |
平成24 (2012) |
191,169人 | 32,000人 | 16.7% | 33点 |
平成25 (2013) |
186,304人 | 28,470人 | 15.3% | 33点 |
平成26 (2014) |
192,029人 | 33,670人 | 17.5% | 32点 |
平成27 (2015) |
194,926人 | 30,028人 | 15.4% | 31点 |
平成28 (2016) |
198,463人 | 30,589人 | 15.4% | 35点 |
平成29 (2017) |
209,354人 | 32,644人 | 15.6% | 35点 |
平成30 (2018) |
213,993人 | 33,360人 | 15.6% | 37点 |
令和元 (2019) |
220,797人 | 37,481人 | 17.0% | 35点 |
令和2 (2020)※ |
204, 250人 | 34,338人 | 16.8% | 10月実施分 38点 12月実施分 36点 |
令和3 (2021)※ |
234,714人 | 41,471人 | 17.7% | 10月実施分 34点 12月実施分 34点 |
令和4 (2022) |
226,048人 | 38,525人 | 17.0% | 36点 |
令和5 (2023) |
233,276人 | 40,025人 | 17.2% | 36点 |
※令和2年度(2020年度)と令和3年度(2021年度)は、10月実施分及び12月実施分の合計の数値です。
令和5年度(2023年度)宅建試験の合格者の平均年齢は、35.6歳でした。性別ごとの平均年齢は、男性が36.0歳、女性が35.0歳です。
キャリアアップや転職を考える30代が受験者の中心になっていることがうかがえます。
また、合格率を男女別で見てみると、同年度の平均が17.2%であったのに対し、男性のみの合格率は16.5%、女性のみの合格率は18.3%でした。
【参考】一般財団法人 不動産適正取引推進機構「令和5年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
宅建の合格者のうち、7割以上は社会人です。仕事をしながら資格取得を目指す忙しい日々を送っているため、自分のペースで取り組める独学で宅建に挑戦する人も少なくありません。
宅建の合格率に関する公式データの中に「独学での合格率」という項目はありませんが、宅建は資格試験、特に国家資格の中では独学で合格しやすい資格と言えるでしょう。
初めて学ぶ人も、ポイントを押さえて勉強すれば独学で合格できる可能性はあります。
宅建の独学合格に必要な勉強時間は、約200~300時間が目安とされています。
受験者によってはすでに不動産や法律の知識がある方もいれば、一切勉強したことがないという方もいるでしょう。
独学合格に必要な勉強時間は、前提知識の差によって異なります。
200~300時間と言われると途方もない勉強量のように思えるかもしれませんが、「1日の勉強時間」と「勉強日数」で考えてみましょう。
勉強時間300時間を達成するまでに必要な日数を、下記の表にまとめました。
1日の勉強時間 | 勉強日数 |
1時間 | 約10カ月(300日) |
2時間 | 約5カ月(150日) |
3時間 | 約3カ月強(100日) |
宅建の試験日は例年10月の第3日曜日です。上記の表を参考にすると、試験までの勉強時間を確保するにはいつから勉強を開始すればいいかも見通しが立つでしょう。
たとえば、1日2時間の勉強時間を確保きる人なら、5月ごろから勉強をスタートすれば試験日までに300時間の学習が可能です。
1日に勉強可能な時間は仕事やプライベートの状況によって異なるので、場合によっては1年じっくり独学して合格を目指す人もいるかもしれません。
宅建の独学合格を目指す勉強方法としては、まず効率的に得点するにはどうすればいいかを考えましょう。
勉強をスタートする前に、宅建試験の配点を意識するところからはじめます。
宅建は全50問が出題され、そのうち配点が大きいのが宅建業法の20点、権利関係(民法など)の14点です。
この2科目を合わせれば34点となり、しっかり得点できれば例年の合格ラインへぐっと近づきます。
宅建業法は「落とせない科目」であり、合格のためにはどれだけ落とさず得点できるかが重要です。
勉強は暗記中心となります。独学では宅建業法から勉強を始めて、自分一人で宅建に合格できそうか確かめるのも一つの方法でしょう。
また、合格にはテキストと問題集を往復する反復学習が重要です。何度も問題集を解いて、テキストで理解を深めていきましょう。
【あわせて読みたい】最初に知っておきたい宅建の勉強法!効率のいい勉強法から分野別攻略法まで
【あわせて読みたい】宅建に独学で受かった人は多い?独学のテキスト・勉強法・勉強時間も解説
「独学だと宅建に合格できる可能性が下がるかも?」と心配になる方もいるでしょう。
独学で失敗するとすれば、自己管理ができず試験までに出題範囲を終えることができなかった、わからない箇所を解決できなかったというケースが挙げられます。
独学以外で宅建合格を目指す勉強方法としては、通信講座を受講したり、資格取得のスクールへ通学したりすることが一般的です。
通信講座や資格スクールには次のようなメリットがあります。
また、講師や、自分と同じく宅建合格を目指す講座の受験者の存在が、モチベーションにつながるはずです。
資格スクールに通学するのは金銭的・時間的負担が大きいという人は、費用を抑えながら好きな場所・好きな時間に勉強できる通信講座がおすすめです。
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宅建取得を検討している方の中には、不動産や法律に関する他の資格も気になっているという方がいらっしゃるでしょう。
宅建の関連資格についてまとめました。ご自身のキャリアにとって必要な資格を見つける参考にしてみてください。
管理業務主任者は、マンション管理会社に一定割合必要とされる人材で、業者側の立場からマンションの安全管理、および住民の快適な生活環境の形成をサポートする国家資格です。
▼合格率は?
管理業務主任者の合格率は19~24%程度です。受験者数は約3,500人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
仮に不動産系資格に初めて挑戦するとして、管理業務主任者と宅建の難易度を比較すると、管理業務主任者のほうがわずかに易しいか、ほぼ同じくらいと言えるでしょう。
合格率だけを比べると、管理業務主任者のほうが合格率が高く、取得しやすいように見えます。
これは管理業務主任者の受験者の中には宅建の学習経験者が多い傾向であることが関係していると考えられます。
宅建の学習経験者は学習経験を活かして挑戦できるため、合格率を上げているようです。
ダブルライセンスを狙う方は、取得の順番として、まずは宅建取得を目指してみてもいいでしょう。
管理業務主任者の合格に必要な勉強時間は300時間ほどと言われていますが、出題範囲は宅建と重なっている部分も多いので、宅建取得後であればより少ない時間で合格を目指せます。
マンション管理士は主にコンサルティング業務を行うマンション管理の専門家で、マンションの管理組合へのアドバイスなどを行う国家資格です。
▼合格率は?
マンション管理士の合格率は8~10%程度です。受験者数は約12万2,000人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
合格率からわかるとおり、マンション管理士は宅建より難易度が高いです。また、マンション管理士の合格に必要な勉強時間は500時間と言われていて、宅建よりも多くの勉強量が必要です。
キャリアアップや就活で有利になる不動産系の資格がほしいと考えているのであれば、まずは宅建を習得し、その後ダブルライセンスでマンション管理士を目指すという道がおすすめです。
また、マンション管理士は管理業務主任者とのダブル受験で取得を目指す人も少なくありません。
賃貸不動産経営管理士は、アパートやマンションなど賃貸住宅に関する管理業務を行う専門家です。
法律によって、一定の規模以上の賃貸住宅管理業者の管理事務所ごとへ1名以上の設置が義務付けられています。2021年からは国家資格となりました。
▼合格率は?
賃貸不動産経営管理士の合格率は30〜50%程度です。受験者数は約3万人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
合格率からわかるとおり、賃貸不動産経営管理士は宅建より難易度が低いです。
また、必要とされる勉強時間を比べても、賃貸不動産経営管理士は100〜150時間であり、宅建の方がより多くの勉強を必要とします。
賃貸不動産経営管理士の資格制度は2007年にスタートした比較的新しいものであり、資格の独占業務はありません。
不動産関連の資格の中でももっともメジャーで知名度が高く、独占業務がある点は宅建の魅力と言えるでしょう。
FP(エフピー)の略称で知られるファイナンシャルプランナーは、資産形成、ローン、税金などお金に関する相談に専門的な知識で対応します。
ここでは宅建と同じく受験資格に実務経験などの制限がないFP3級について説明します。
▼合格率は?(日本FP協会)
FP3級の試験を実施する2つの機関のうち日本FP協会の合格率は、学科が70〜80%程度、実技が80〜90%程度となっています。
▼宅建と難易度を比較すると?
合格率からわかるとおり、FP3級は宅建より難易度が低いと言えます。
勉強時間を比較しても、FP3級の合格に必要な勉強時間は80~150時間程度であり、宅建のほうがより多くの勉強を必要とします。
FP3級の学習はお金に関する知識が幅広く身に付くのに対し、宅建の学習は不動産を取引する仕事に直結する点が特徴的です。
難易度が高いぶん、特定のテーマの専門性が高まるところが宅建の魅力と言えます。
行政書士は、法律書類作成や申請手続きの代理などを行うことができる国家資格です。年齢を問わず受験でき、独立・開業しやすい資格として人気です。
また、一定の法律知識があることで企業の法務部や総務部などにも活躍の場があります。
▼合格率は?
行政書士の合格率は10〜13%程度です。受験者数は約4万人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
合格率からわかるとおり、行政書士は宅建より難易度が高いです。また、行政書士の合格に必要な勉強時間は500~1,000時間程度です。
宅建のほうがより少ない勉強時間で合格を狙えます。
司法書士は法律専門職の国家資格で、市民に身近な「くらしの法律家」です。
不動産・商業登記の手続、供託の手続き、裁判所などへ提出する書類の作成など幅広い業務を通して、依頼者の権利や財産を守ることが仕事です。
▼合格率は?
司法書士の合格率は4~5%程度です。受験者数は約1万3,000人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
司法書士は国家資格の中でも難易度はトップクラス。合格率からわかるとおり、司法書士は宅建より難易度が高いです。
また、合格に必要な勉強時間は3,000時間と言われています。宅建のほうがより少ない勉強時間で合格を狙えます。
二級建築士は建築士の資格のひとつで、設計や工事の監理を行う際に必要な国家資格です。
一級建築士との違いは取り扱い可能な建物の規模で、二級建築士は比較的小規模な戸建て住宅が主な業務対象となります。
▼合格率は?
二級建築士の合格率は22~26%程度です。受験者数は約2万3,000人です。
▼宅建と難易度を比較すると?
二級建築士は宅建よりも難易度が高いと言えるでしょう。
合格率を比べると二級建築士のほうが高いですが、合格に必要な勉強時間は、すでに業界を経験している人は500時間、初めて勉強をする人は700時間ほど必要と言われています。
また、二級建築士を受験するには学歴や実務経験が求められます。
宅建だけに注目していると、取得が難しい資格のように感じたかもしれません。しかし他の資格と比較すると、実務経験や学歴、また取得が必須の資格がないことから、合格を狙いやすい国家資格と言えます。
宅建には取得するメリットも多くあります。まずは就職や転職に強い点です。宅建の資格保有者の活躍の場としてまず挙げられるのが不動産業界です。
不動産売買取引において、契約の際必要となる重要事項の説明および37条書面の交付は、宅建の資格保有者でなければ担当できません。
将来的には独立して不動産業を営むことも可能です。
不動産業界はもちろんですが、銀行や信用金庫などの金融業界でも宅建の資格保有者が求められます。
担保を必要とする融資業務では、不動産に対する適切な知識や鑑定力がなければ融資の判断が難しいからです。
すでにリタイアした人や子育てなどで仕事のブランクがある人も、宅建士を取得すれば再就職の際にアピール材料となります。
収入アップもメリットの一つです。
宅建を保有していると会社から月に資格手当が支給されることがあります。宅建の資格手当の相場は1〜3万円程度です。
また、宅建士の資格はプライベートでも活かせる場面があります。それはマイホーム購入や相続の際です。宅建士の知識を活かしてトラブルを回避できるでしょう。
資格の制度面では、宅建試験の合格やの資格登録の効力は何年経っても失われないこともメリットと言えるでしょう(宅建士証は5年に1回の更新が必要です)。
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宅建の合格率は15~17%台で、毎年約20万人が受験する人気の国家資格です。
一般的に半年前後の勉強で合格を目指しやすく、きちんと勉強して臨めば見かけの合格率ほど難易度は高くありません。
宅建は就活・転職でアピールする材料になるほか、資格手当による年収アップや将来的な独立も目指せます。合格難易度と取得のメリットを考えたとき、宅建は「コスパの良い資格」と言えるでしょう。
あなたも宅建を取得して、キャリアの選択肢を増やしてみてはいかがでしょうか。