
宅建試験に合格するには、徹底的な過去問練習が欠かせません。
試験本番は過去に出題された問題の類題が出やすく、得点力アップに直結するからです。
また試験本番は時間との勝負でもあるため、過去問練習でスピーディーな解き方を体得しておくことがマストです。
この記事では、宅建攻略の要となる過去問の活用について、スタディング宅建講師のアドバイスも含めて解説します。
宅建合格には過去問練習が欠かせない3つの理由
まず、宅建に合格する上で過去問練習が欠かせない理由は、次の3つです。
- 過去問と似ている問題が多く出題されるから
- インプットだけでは得点力が身につかないから
- 現時点の実力がわかるから
ひとつずつ解説します。
過去問と似ている問題が多く出題されるから
過去問練習が欠かせない理由の1つめは、宅建試験は過去問と似ている問題が多く出題されるからです。
宅建で出題される分野は「宅建業法」「権利関係」「法令上の制限」「税・その他」の4つで、もっとも配点が大きい宅建業法は過去問の類題が多いとされています。
一般的に傾向が掴みにくいとされている「法令上の制限」や「税・その他」の分野においても、頻出しているテーマはあります。
ぜひ、いくつかの年度の過去問を広げて比較してみてください。似たような問題が出題されていることに気がつくはずです。
こうした出題傾向は、テキストや問題集でも紹介されますが、やはり実際に過去問を解いているうちに実感を通して学んだ方が的確に掴みやすくなります。
過去に出題された問題に触れ、どのような問題が頻出なのかを把握していきましょう。
インプットだけでは得点力が身につかないから
2つめの理由は、インプットだけでは得点力が身につかないからです。
宅建試験はマークシート方式で、4つの選択肢の中から1つを選ぶ四肢択一で答えます。
「記述式ではないのだから、知識さえ頭に入っていれば解けそうだ」といった印象を抱くかもしれませんが、そう簡単に正解させてくれないのが宅建試験です。
なぜなら、テキストで読んで暗記した知識をストレートに問われる問題だけでなく、具体的な事例について「知識をどう使うか」が問われる問題も出題されるからです。
実際の過去問を見てみましょう。平成25年度(2013年度)宅建試験の権利関係(相続)の問題です。
婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて、Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ、Dは平成25年10月1日に死亡した。他方、Aには離婚歴があり、前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。Aが平成25年10月2日に死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.Aが死亡した場合の法定相続分は、Bが2分の1、Cが5分の1、Eが5分の1、Fが10分の1である。
2.Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、遺産分割の方法が指定されたものとして、Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。
3.Aが生前、A所有の全財産についてDに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、Eは代襲相続により、Aの全財産について相続するのが原則である。
4.Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてFに遺贈する旨の意思表示をしていたとしても、Fは相続人であるので、当該遺贈は無効である。
この問題を解くには、まずA〜Fの6人が置かれている状況を把握します。問題文の状況は図を描くとわかりやすくなります。

そして、正解を導くには、すべての選択肢について正しいか誤りかを判断する必要があります。
たとえば、選択肢「1」の正誤を判断するには、法定相続人(遺産を受け取れる人)や法定相続分(遺産の取り分の割合)に関する知識を使います。
インプット学習の段階では、下記のような個別の知識で学習しています。
- 配偶者は常に相続人
- 配偶者と直系卑属(子・孫)が相続人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、直系卑属が2分の1。
- 嫡出子(婚姻関係のある男女の子)の身分は親の離婚によって失われない。
- 被相続人(亡くなった本人)の子が相続の開始(被相続人の死亡)以前に死亡したときは、その者の子(被相続人の孫)が代襲相続人となる。
このような個別の知識を組み合わせ、問題文の事例にあてはめると、法定相続人と法定相続分は下記の通りになります。
- B(配偶者)が2分の1(※残り2分の1がC・E・Fのもの)
- C(嫡出子)が6分の1
- E(代襲相続人)が6分の1
- F(離婚前の嫡出子)が6分の1
つまり、選択肢「1」は誤りであることがわかります。
「知識をどう使うか」を問われるとはどういうことか、イメージできたでしょうか?
まず問題文を読み、状況を整理する。そして内容を理解して、適切な知識をあてはめて正誤を見極める。この一連の流れは、テキストを読むインプット学習だけでは鍛えられません。
知識を得点に結びつけるアウトプット能力を高めるために、過去問練習が重要なのです。
ちなみに、この問題の正解は「2」です。下記ページで解説しています。
【あわせて読みたい】宅建士試験ピックアップ過去問解説 権利関係-相続 平成25年 第10問
現時点の実力がわかるから
過去問練習が欠かせない理由の3つめは、現時点の実力がわかるからです。
過去問集に掲載されているのは当然、過去に実際の宅建試験で出題されてきた問題です。
つまり宅建に合格するためには、過去問をすらすら解けるようなレベルまで実力をつけなければならないということになります。
過去問を解くことで自分の実力を知り、それ以降の学習につなげましょう。
インプットが一通り終わったところで過去問を解いてみると、得点できる問題と得点できない問題が明確になります。
自分の理解度を正確に把握し、勉強すべきポイントがわかれば、あとはその部分のインプットを強化するだけです。
また、過去問練習を繰り返していると、自信の実力の変化も分かってきます。
勉強の効果を測り、今後の学習方針を決めるという意味でも、過去問を使って実力を知ることは非常に大切なのです。
忙しくても合格したい!スタディング宅建講師による過去問活用法
宅建試験合格のカギを握るのは、過去問の効果的な活用です。
スタディング宅建講師による、3つの具体的な活用方法を紹介します。
- 過去問は問題集ではなく「第二のテキスト」
- カバーすべき過去問は7年分、できれば10年分
- 同じ過去問に3回取り組んで定着率アップ
過去問は問題集ではなく「第二のテキスト」
過去問は、単に正誤をチェックする問題集としてではなく「第二のテキスト」と捉えましょう。
テキストとして活用すれば、試験の出題傾向や暗記すべき知識範囲、出題頻度が明確になります。
個々の選択肢それぞれについて「なぜ正解なのか」「不正解なのか」を掘り下げながら、試験の傾向をつかみましょう。
過去問学習の落とし穴は、選択肢をざっと読んで解答し、正解したら「よし次!」と学習を進めてしまうことです。やがて正解番号を覚えてしまえば「もう飽きた」という状態になるでしょう。
過去問を「第二のテキスト」と捉えれば、正誤確認にとどまらず、出題傾向や暗記すべき知識範囲が把握できます。たとえば「〜以上・〜未満」まで覚える必要があるのかや、毎年出題されるのか、それとも10年に1回しか出題されないのか、などの情報を得られるのが過去問です。
過去問は試験の情報源と捉え、戦略的に取り組んでみてください。
カバーすべき過去問は7年分、できれば10年分
過去問は最低でも7年分学習して、可能であれば10年分はさかのぼって取り組んでみましょう。
ここからは、過去問の必要年数と試験出題数を分野別に解説します。
宅建業法
宅建業法は例年20問出題され、最低7年分(140問)でひと通りの論点をカバーできます。
ただし十分な対策をとるなら、10年分(200問)が理想的です。

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法令上の制限と税・その他
法令上の制限と税・その他は毎年8問ずつ出題され、宅建業法以上に暗記要素が強いのが特徴です。
7年分(各56問)でひと通りの論点を確認できますが、10年分(各80問)まで取り組むと安心です。
権利関係
例年14問出題される権利関係は、年々出題範囲が拡大しています。
そのため最低でも10年分(140問)、可能であれば12年分以上の過去問を学習するのが理想的です。
カバーすべき過去問数を全分野で合計すると、最低でも400問弱、理想的には500問強になります。これを3回繰り返すと合計1,500問程度となり、たとえば3カ月の学習期間なら1日あたり約17問のペースで学習を進めるのがよいでしょう。
同じ過去問に3回取り組んで定着率アップ
過去問は繰り返し取り組むことで、知識の定着率が向上します。
スタディングの宅建講師が推奨する学習法は、分野別になった過去問集を使って同じ設問に最低3回取り組む方法です。
1回転目
1回転目は、解くのではなく読むことを重視します。
各分野の出題レベル、問われる知識の細かさ、横断的な知識が必要か否かを確認しましょう。
また、設問は「1問1答式の設問が4つ集まったもの」と捉え、4つの選択肢すべてに正誤の判断ができるように理解を深めます。
解説を読んで正解・不正解の根拠を確認し、理解できない部分はテキストに戻って学習しましょう。
2回転目
2回転目は、1回転目で補強した知識が身についているかを確認します。
各選択肢の正誤を判断したうえで、完全に理解できた問題と理解が不十分な問題を分類していきます。
3回転目
3回転目は、2回転目で正解した問題を除外し、理解が不十分だった問題だけに集中しましょう。
この段階で取り組むべき問題が、まさに自身の弱点にあたります。
明確になった弱点を試験直前期に復習することで、本試験でのミスを防ぎ、合格ラインをクリアする実力が身につきます。
宅建試験の過去問を活用する際のポイント
ここからは、過去問活用のための重要なポイントや注意点を解説します。
- 最新の情報で学習するよう注意する
- 解説が充実しているものを選ぶ
- 模試で本番のシミュレーションもしておく
最新の情報で学習するよう注意する
宅建試験の過去問集は、最新の法改正情報が反映されたものを使用しましょう。
古い過去問集で学習すると誤った知識が身につき、本番で失点する危険性があります。
直近で法改正があった場合は、その内容に関して出題されるケースもあるため、常に最新情報を意識して学習することが合格への近道です。
古い情報の過去問集は避けて、最新版を購入しましょう。
解説が充実しているものを選ぶ
過去問集は、解説の充実度を重視して選びましょう。
単に正解・不正解のみが記載されているものではなく、個々の選択肢について3〜4行以上の解説があるものがおすすめです。
また、誤りの選択肢については理由が詳しく解説されており、正しい選択肢については付随する知識まで解説されている過去問集が理想的です。
可能であれば購入前に中身を確認し、解説の充実度や質を確かめながら選んでみてください。
模試で本番のシミュレーションもしておく
過去問で知識を身につけたら、模擬試験に取り組みましょう。
本番さながらの環境で模試を受ければ、緊張感の中でどのくらい実力を発揮できるかがわかり、時間配分の感覚もつかめます。
模試は最新の法改正も反映しているため、過去問では学べない最新の出題ポイントを確認できる点もメリットです。
ただし、模試を何度も受けると、疲労感や挫折感につながるリスクが考えられます。
模試受験は適度な回数にとどめ、結果から弱点を洗い出したら、その対策に集中しましょう。

宅建講師が語る、分野別出題傾向とおすすめ勉強法・スケジュール
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宅建過去問を無料ダウンロードする方法
宅建の過去問は、試験実施機関の一般財団法人 不動産適正取引推進機構のサイトから無料でダウンロードすることができます。
ダウンロードにあたって会員登録などは不要で、正解番号表も合わせてダウンロード可能です。
実際の試験問題を見てみたい方は、ぜひ活用してみてください。
令和6年度(2024年度)宅建過去問
令和5年度(2023年度)宅建過去問
令和4年度(2022年度)
令和3年度(2021年度)
令和2年度(2020年度)
令和元年度(2019年度)
ただし、この方法には注意点もあります。
まず、正解番号表には解説が掲載されていないという点です。
前述のように過去問練習には「解き方を覚える」という側面があります。
そのため、解説が掲載されていないと、正しい解法がわからない問題も出てくるでしょう。
また、法改正が行われた影響で、現在の法律と一致しない問題が含まれている可能性もあります。問題練習には最新の法改正が反映された過去問集を使いましょう。
宅建の過去問の種類と使い方
過去問集は、一見するとどれも同じように思えるかもしれませんが、主に「体系別」「年代別」の2つに分類されます。
では、それぞれの過去問集をどのように活用すればいいのでしょうか。
順に解説していきます。
体系別過去問集の使い方
体系別過去問集とは、出題分野やテーマを体系的に分類して過去問をまとめたものです。
過去問の種類の使い分けとしては、まず体系別過去問集に着手し、実力がついたら年代別過去問集にも挑戦してみる、という流れが一般的でしょう。
宅建学習のスタート期は、あるテーマについてインプット学習をしたら、体系別過去問集を開いて同じテーマの問題に取り組みます。
最初は一問一答問題集のほうがサクサク取り組めて手軽ですが、問題を解くことに慣れてきたら、ぜひ本番と同じ出題形式の体系別過去問集で問題練習をしてください。
また、学習の中期や直前期になると、体系別過去問集が苦手の克服に役立ちます。
宅建試験は分野によって解き方や難易度が大きく異なります。
また、多くの受験者が簡単だと言っているような分野でも、いざ解いてみると苦手だったというパターンもあります。
体系別過去問集で自分の苦手なテーマを特定し、重点的に学習しましょう。
この際に意識すべきなのは、やはり「解き方」です。
苦手な部分だからといって投げやりになるのではなく、しっかり解説を読んで同じ間違いをしないようにしましょう。
過去問を解き、解説で解き方を覚えるというサイクルを繰り返すうちに、苦手分野は苦手ではなくなるはずです。

宅建の試験内容と出題形式。科目別の目標点・攻略法
宅建の試験内容は、宅建業法、権利関係、法令上の制限、税・その他という複数の科目で構成されています。科目によって問題の傾向や配点が異なるので、最短ルートで合格…
宅建の試験内容は、宅建業法、権利関係、法令上の制限、税・その…
年代別過去問集の使い方
年代別過去問集とは、過去問が試験の年度ごとに収録されたものです。
「過去問」と聞いてまず思い浮かぶ、スタンダードな形式と言えるでしょう。
インプット学習とそれに対応する基礎的な問題練習を終えたら、学習の仕上げをしていくイメージで年代別過去問に着手しましょう。
年代別過去問集は、試験本番をシミュレーションする目的で使いやすいです。
具体的な勉強方法としては、1年分の過去問を実際の試験時間と同じ2時間で解いてみる練習が効果的です。
試験本番は2時間で50問の問題を解く必要があります。
どうやって時間を使うか、どの問題から解くかなどを考えながら挑戦してみましょう。
時間内にしっかり得点を確保できる力を身につけておけば、気持ちに余裕を持って試験本番を迎えることができます。
宅建の過去問アプリ
宅建の過去問練習は、書籍だけでなくアプリからも行うことができます。
過去問アプリのメリット
過去問アプリを活用するメリットは、次の3つです。
- 場所を選ばず学習できる
- スキマ時間に学習できる
- 分厚い紙の本を持ち運ばなくていい
アプリを使えば通勤中や休み時間など、手軽にサクッと問題練習ができるため、スキマ時間を活用したいと考えている方には必要不可欠なツールとなるでしょう。
分厚い紙ベースの過去問集を持ち歩かなくていいというのもおすすめポイントです。
出先に本を持参するというだけで大きな負担になりますが、スマートフォンであればほとんどの方が日常的に持ち歩いているため、特に負担が増えることもありません。
勉強を継続するためにも、手軽さは非常に重要です。
過去問アプリのデメリット
過去問アプリを使う際に考えられるデメリットは、次の2つです。
- 過去問を解くだけでは合格できない
- 丸暗記に注意が必要
過去問はアウトプット能力を養うためのものであって、宅建学習の一部に使えるツールです。
インプット学習は別途必要なので、学習は過去問アプリだけでは完結しません。
合格するには講座、テキスト、問題集を組み合わせた学習が必要です。
また、過去問アプリのみに頼った学習をしてしまうと、どうしても過去問とその答えを暗記してしまいます。
しかし、本試験では過去問とまったく同じ問題が出題されるわけではありません。
丸暗記でわかったつもりになることは危険です。
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忙しい方でも通勤中や家事中、ストレッチをしながらなど、スキマ時間を活用して着実に合格へと近づいていきましょう。
宅建を受験する際の総勉強時間は、200〜300時間程度とされています。
たとえば半年間の勉強で合格を目指すなら、1日2時間の勉強時間を確保する必要があります。
毎日2時間机に向かうのは難しいですが、スタディングのアプリを活用すればスキマ時間を大いに活用して、勉強時間をぐっと増やすことができます。
ぜひ活用を検討してみてください。
まとめ
本記事では、宅建試験合格に欠かせない過去問の活用法について、スタディング講師のアドバイスを交えて解説しました。
ポイントは次のとおりです。
- 宅建の過去問は「第二のテキスト」と捉えて出題頻度や暗記レベルをつかむことが重要
- 宅建の過去問は最低7年で可能なら10年分取り組み、権利関係は12年分以上が理想的
- 同じ過去問に3回取り組むことで弱点克服につながり、合格に必要な力が身につく
- 過去問は解説が充実した最新版を使用し、本試験前には模試を受けておく
- 体系別過去問は学習スタート期や弱点克服に有用で、年代別過去問は学習の仕上げに活用するのが効果的
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