宅建の5点免除制度の基礎知識
宅建の5点免除(5問免除)と呼ばれる制度について、初めて聞いたという方も多いでしょう。
宅建の5点免除制度について、一からわかりやすく解説していきます。
宅建の5点免除制度とは
宅建の「5点免除(5問免除)」とは、すでに宅建業に従事している方を対象とする免除制度です。
一般の方(宅建業に従事していない方)は、5点免除制度を利用することはできません。
5点免除制度を利用した場合、宅建試験全50問のうち5問(46~50問目)が免除となり、合格ラインも5点分低くなります。
たとえば合格点が34点の年度なら、一般受験者が合格するには50問中34問以上に正解する必要がありますが、5点免除制度を利用すると45問中29問以上の正解で合格となります。
ただし、試験時間は一般の受験者よりも10分短縮となります。
5点免除制度で免除される範囲
まず、宅建の試験分野と出題数は下記の通りとなっています。
出題分野 | 出題数 |
宅建業法 | 20問 |
権利関係 | 14問 |
法令上の制限 | 8問 |
税・その他 | 8問 |
宅建は「宅建業法」「権利関係」「法令上の制限」「税・その他」の4分野から出題されます。
5点免除制度で免除される範囲、すなわち宅建試験の46~50問目は、「税・その他」のうち「その他」に該当する部分です。
「その他」では、宅地建物取引業法施行規則に含まれる以下の内容から5問出題されます。
- 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること
- 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること
5点免除制度を利用すると、「その他」の5問は免除されます。
「その他」に該当する試験範囲に関しては、5点免除制度利用者は後述する「登録講習」にて学習するため、宅建試験では免除となるという仕組みです。
この5問は、地形や土地に関する一般的な知識を問うタイプの問題や、近年の統計情報の知識を問うタイプの問題が中心です。法律の知識はほぼ必要とされません。
5点免除制度を使えばこういった問題をパスできるため、浮いた時間を他の分野の勉強に使えます。
宅建の5点免除制度の申し込み
次に、宅建の5点免除制度の申し込みについて、解説していきます。
5点免除制度に申し込むための条件は?
5点免除制度は誰でも申し込めるわけではありません。申し込むための条件は以下の2つです。
▼所定の機関が実施している登録講習を修了していること
5点免除制度を利用するには、事前に登録講習を受講し、講習の最後に行われる修了試験に合格する必要があります。
修了の日から3年以内の宅建試験において、5問免除制度を利用できます。
▼宅建業に従事していること
前述の登録講習は、宅建業に従事している方のみ受講することができます。登録講習を受講するには宅建業従業者証明書が必要となります。
宅建業従業者証明書とは、宅建業に従事していることを証明するもので、勤務先の事業者が発行します。
正社員ではなく、パートやアルバイトとして働いている人も宅建業従業者証明書は発行されます。また、宅建業の実務経験の長さは問われません。
【参考】一般財団法人 不動産適正取引推進機構「登録講習について」
5点免除制度の申し込みはいつまで?スケジュールを確認
5点免除制度を利用するには、登録講習を修了している必要があります。
宅建試験に申し込みの締め切り直前に「5点免除制度を利用しよう」と思い立っても、講習を受ける時間がないので利用できません。
登録講習の受講申し込みは、宅建を受験する年の3月ごろまでには行う必要があります。手続きの流れを見てみましょう。
▼【〜3月ごろ】登録講習の受講申込み
登録講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施しています。まずは下記の実施機関一覧を参考に、登録講習の申し込みを行いましょう。
【参考】一般財団法人 不動産適正取引推進機構「登録講習の登録講習機関一覧」
登録講習実施機関は全国各地に複数ありますので、ご自身が通いやすい場所を選んで受講することができます。
宅建を受験する年の3月ごろまでに、忘れずに受講の申し込みを完了しておきましょう。
▼通信教育(2カ月程度)
登録講習は、通信教育、スクーリング、修了試験で構成されています。
申し込み完了後、実施機関から教材が送られてきたら、各自で通信教育での学習に取り組みます。課題提出の義務等はないので、自分のペースで学習することができます。
▼スクーリング受講(1~2日間)
スクーリングでは、登録講習実施機関が実施する講義を受講します。
原則、各自で会場まで足を運んで1~2日間(計10時間)の対面講義に参加する形になります。一部、新型コロナ感染防止策としてオンライン講義を実施している機関もあります。
▼修了試験
スクーリングの最後に修了試験が行われます。修了試験は通信講座とスクーリングで学習した範囲から出題されます。
修了試験の概要は以下のとおりです。
- 回答形式:四肢択一式
- 問題数:20問
- 合格基準:7割以上正解で合格
▼登録講習修了者証明書交付
修了試験に合格すると、登録講習修了者証明書が交付されます。登録講習修了者証明書の有効期限は3年間です。
▼【7月】宅建試験申し込み
宅建試験の申し込みは例年7月です。5点免除制度を利用したい方は、申し込み時に申請を行いましょう。
申請には、宅建試験の申し込みに登録講習修了者証明書を添付する必要があります。
5点免除(登録講習)の費用相場
登録講習の費用相場は15,000~19,000円程度です。実施機関によって異なるので、Webサイトなどで確認しましょう。
5点免除制度は宅建受験に有利?
結局のところ、5点免除制度は宅建受験に有利なのでしょうか?
ここでは、合格率の観点から5点免除制度の有利性についてみていきましょう。
5点免除者と一般受験者の合格率はどれだけ違う?
5点免除制度を利用した受験者の合格率は、令和5年度(2023年度)の実施分では24.1%でした。
一般受験者の合格率(17.2%)よりも高い数値となっています。
その他の年度においても、基本的に5点免除制度を利用した受験者の合格率は一般受験者の合格率よりも0.3~6.9%程度高くなっています。
試験に出題される範囲が狭められるため、集中的に勉強できることが要因でしょう。
5点免除制度を使っても宅建に落ちることはある?
もちろん、5点免除制度を使っても宅建試験に落ちることはあります。
令和元年度(2019年度)からの5年間で、5点免除制度を利用した受験者の合格率は17.0~24.1%でした。
一般受験者より合格率が高いとは言え、不合格となる方のほうが圧倒的に多いのが現実です。
ただし、宅建試験では「半年も勉強したのに、あと1点だけ足りなくて不合格だった」というケースも珍しくありません。
受験した年度に、よりによって自分の苦手なテーマが多く出題される可能性もゼロではないでしょう。
合格の可能性を少しでも高めたい方にとって、5点免除制度は利用を検討する価値があります。
ちなみに、登録講習のスクーリング最後に行われる修了試験は、宅建試験ほどの難易度ではありません。
修了試験の合格率に関する公的な情報はありませんが、真面目に登録講習を受けていれば合格できる試験です。
5点免除制度の登録講習ってどんなもの?
ここでは5点免除制度の利用に必要な「登録講習」の内容についてみていきます。
また、登録講習と同じく宅建関連の講習である「登録実務講習」や「法定講習」との違いについても解説します。
登録講習の内容
登録講習は宅地建物取引業法に基づいて行われる講習のため、どの実施機関で受講しても、授業構成や学習内容はほぼ同じです。
登録講習(通信講座、スクーリング)では以下のような科目を学習します。
- 宅建業法その他関係法令に関する科目
- 宅地及び建物の取引に係る紛争の防止に関する科目
- 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関する科目
- 宅地及び建物の需給に関する科目
- 宅地及び建物の調査に関する科目
- 宅地及び建物の取引に係る税務に関する科目
登録講習で学習するのは、5点免除制度で免除になる範囲だけではありません。
免除にならない範囲、すなわち宅建試験で解く必要のある範囲も含めて学習します。
そのため、登録講習を受講することは宅建試験本番に向けての学習にも大いに役立ちます。
登録実務講習との違い
宅建の登録実務講習とは、宅建業の実務経験が2年未満の人が宅建士になるために必須の講習です。
登録講習が宅建試験の受験前に実施される講習であるのに対し、登録実務講習は宅建試験合格後の講習です。
宅建試験は、合格してもすぐに宅建士として仕事をすることはできません。
合格後、所定の手続きを経て、都道府県知事から宅地建物取引士証(宅建士証)を交付されることによって、国家資格を持つ宅建士として働くことができます。
宅建試験合格者は、試験を受けた都道府県知事に対し資格登録ができます。資格登録は宅建士証の交付を受けるための前段として必要な手続きです。
実務経験がある人は、合格後そのまま資格登録申請に進むことができます。
一方、実務経験2年未満の人は宅建試験合格後、資格登録申請の前に登録実務講習を受ける必要があります。
なお、資格登録は任意です。宅建合格者という立場は一生失われることがないため、しばらく宅建士資格を使う気がない人は、宅建士資格が必要になったタイミングで登録することもできます。
【あわせて読みたい】宅建の登録実務講習とは?受けないとダメ?内容や流れなど疑問を解決!
法定講習との違い
宅建の法定講習とは、宅建士証の交付申請や更新に関連する講習です。
▼宅建士証の交付申請
試験合格から1年を超えて宅建士証の交付申請を行う場合、法定講習を受講する必要があります。
なお、合格から1年以内に宅建士証の交付申請をする場合は、講習は不要です。
▼宅建士証の更新
宅建士として働くためには、5年ごとに宅建士証の更新が必要です。宅建士証を更新するには、交付申請前6ヶ月以内に行われる法定講習を受講する必要があります。免許更新が必要なタイミングで、所定の機関から通知が届くようになっています。
前述の登録講習と登録実務講習は国土交通大臣の登録を受けた実施機関が行うのに対し、法定講習は各都道府県指定の法定講習実施団体によって講習が行われます。
【あわせて読みたい】宅建士証の更新は5年に1回!講習の内容・コロナの影響・期限切れ対応は?
メリット・デメリットを踏まえて5点免除の申請はどうするべき?
結局、5点免除の申請をした方がよいのかどうか、迷っている方も多いでしょう。
最後に5点免除のメリットとデメリットをまとめて、どうするべきか考えてみます。
5点免除のメリット
▼5問免除されることによる合格可能性の上昇
例年、5点免除制度を利用した受験者の合格率は、一般受験者の合格率よりも高くなっています。
5点免除のデメリット
▼講習費用がかかる
登録講習の費用相場は15,000~19,000円程度です。
▼申し込む手間、講習を受ける手間がかかる
登録講習に申し込むには、宅建を受験する年の3月頃までに、スクーリングに通える範囲の実施機関を調べて申し込まなければなりません。
そして、登録講習を修了するには約2カ月間の通信講座と1~2日間のスクーリングを受講し、修了試験に合格する必要があります。
また、登録講習修了者証明書の有効期限は3年です。
もし3年で合格できなければ、再度5点免除制度を利用するには再び登録講習を受けなおさなければなりません。
▼免除される試験範囲が限定的
5点免除制度で免除される問題は、宅建試験のうち46~50問目です。
この5問は、地形や土地に関する一般的な知識を問うタイプの問題や、近年の統計情報の知識を問うタイプの問題が中心です。
まとめ
メリット・デメリットを考慮すると、「宅建業界で働いていて、なんとしてでも近いうちに宅建に合格しなければならない!」という人は5点免除制度を利用するといいでしょう。
迷っている方は、まずは宅建の勉強を始めてみてから、5点免除制度を利用するかどうかを考えてみてください。