司法書士試験を受験する方は、試験の出題科目や配点、合否判定基準など試験の内容を詳しく把握しておくことが大切です。試験の出題科目や問題数、スケジュールを知ることで、学習計画を立てて効率よく勉強できるようになります。
この記事では司法書士試験の出題科目や配点、合否判定基準、試験のスケジュールなどをまとめました。司法書士試験受験を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
司法書士の(筆記試験)の出題科目と内容
司法書士試験に合格するには、筆記試験と口述試験に合格する必要があります。
まずは、司法書士筆記試験の出題科目と問題数、配点を紹介します。
司法書士試験の筆記試験で出題されるのは、民法、不動産登記法、商法(会社法)、商業登記法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法、供託法、刑法、憲法の計11科目です。
▼司法書士筆記試験の出題科目と問題数、配点
試験 | 試験科目・問題数 | 配点(計350点) |
午前の部・択一式計35問 | 憲法〔3問〕 民法〔20問〕 刑法〔3問〕 商法(会社法)〔9問〕 | 105点 |
午後の部・択一式計35問 | 民事訴訟法〔5問〕 民事執行法〔1問〕 民事保全法〔1問〕 司法書士法〔1問〕 供託法〔3問〕 不動産登記法〔16問〕 商業登記法〔8問〕 | 105点 |
午後の部・記述式計2問 | 不動産登記法〔1問〕 商業登記法〔1問〕 | 140点 |
従来の筆記試験午後の部の記述式問題の配点は「2問で70点満点」でしたが、令和6年度以降の筆記試験から140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表されました。
科目全体を見ると出題数の多いものと、それ以外の比較的出題数が少ないものがあることがわかります。
司法書士試験の受験界では出題数が多いものは「主要4科目」、それ以外の科目は「マイナー科目」と呼ばれています。
主要4科目とは
主要4科目に該当する科目は、民法、不動産登記法、商法(会社法含む)、商業登記法です。
この4科目だけで、試験全体の配点の内、実に約82%を占め、「主要4科目」と呼ばれています。
司法書士試験の学習の大部分は、主要4科目の学習になります。
特に民法は、これらの科目の中でも出題数が20問と多く、最重要科目です。
なぜ民法の出題が多いかというと、不動産登記法、会社法・商法など他の科目を学習していくうえで、必要な知識となってくるからです。
また、不動産登記法と商業登記法は、択一式以外に記述式でも各1問出題されます。
そのため、司法書士試験では、これらの「主要4科目」をいかに攻略していくかが、合格のカギといえます。
【合わせて読みたい】司法書士試験「民法」の攻略法
【合わせて読みたい】司法書士試験「不動産登記法」の攻略法
【合わせて読みたい】司法書士試験「会社法・商法・商業登記法」の攻略法
マイナー科目とは
主要4科目以外の民事訴訟法や民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法、憲法、刑法が「マイナー科目」と呼ばれています。
「マイナー科目」との呼び名から、「重要視しなくてもいい」、「捨て問(科目)にしていい」と勘違いされがちですが、出題数が「主要4科目」に比べ少ないというだけで、決しておろそかにしていい科目ではありません。
司法書士試験は、各年度の難易度にもよりますが、択一式には基準点があり、この基準点を超えなければ記述式の採点を行わないという制度があります。
基準点は各年度で変動しますが、得点率に直すと多くの年度で70%台です。年によっては80%程度の得点率が必要になる場合もあります。
これがマイナー科目もおろそかにできない理由です。
司法書士試験に合格するためには、主要4科目をしっかりおさえつつ、マイナー科目もバランスよく、効率的に学習していくことが重要です。
【合わせて読みたい】司法書士試験「マイナー科目」の攻略法
司法書士の筆記試験合格するための基準
司法書士の筆記試験に合格するには、午前の択一式問題、午後の択一式問題、記述問題のそれぞれで基準点をクリアし、そのうえで合格点以上の点数を獲得しなければいけません。
司法書士試験の合否判定には相対評価も取り入れられており、その年の受験生の成績に応じて基準点・合格点が変動します。
ここでは、合格点と基準点について詳しく見ていきましょう。
合格点
司法書士試験の合格点は、280点満点に対する合格基準です。
近年の司法書士試験の合格点は、以下のとおりです。
年度 | 合格点 |
令和6年度(2024) | 267.0点/350点満点 |
令和5年度(2023) | 211.0点/280点満点 |
令和4年度(2022) | 216.5点/280点満点 |
令和3年度(2021) | 208.5点/280点満点 |
令和2年度(2020) | 205.5点/280点満点 |
※令和6年度以降の筆記試験から、記述式の配点が140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表されました。
上記の令和5年度までの合格点は、午前の部・択一式、午後の部・択一式、記述式の総得点280点をもとに設定された基準です。
合格点は試験日の時点では決められておらず、試験後に合格者の成績に応じて決定します。
そのため、合格者全体の成績が高ければ合格点が高くなり、成績が低ければ合格点も低くなります。
合格点はその年によって変動しますが、例年の傾向から判断すると合格基準を満たすには80%ほどの点数は獲得しておきたいところです。
基準点
基準点は午前の部の択一式問題、午後の部の択一式問題、記述式問題のそれぞれに設けられている合格基準です。
近年の司法書士試験の基準点は、以下のとおりです。
年度 | 基準点 |
令和6年度(2024) | 午前・択一式:78点/105点満点 午後・択一式:72点/105点満点 午後・記述式:83.0点/140点満点 |
令和5年度(2023) | 午前・択一式:78点/105点満点 午後・択一式:75点/105点満点 午後・記述式:30.5点/70点満点 |
令和4年度(2022) | 午前・択一式:81点/105点満点 午後・択一式:75点/105点満点 午後・記述式:35点/70点満点 |
令和3年度(2021) | 午前・択一式:81点/105点満点 午後・択一式:66点/105点満点 午後・記述式:34点/70点満点 |
令和2年度(2020) | 午前・択一式:75点/105点満点 午後・択一式:72点/105点満点 午後・記述式:32点/70点満点 |
※令和6年度以降の筆記試験から、記述式の配点が140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表されました。
上記の令和5年度までの合格点は、記述式の得点70点をもとに設定された基準です。
基準点も合格点と同じように、受験生の成績に応じて基準点が変動するので試験日の時点では点数が決まっていません。
午前の択一式試験・午後の択一式試験で基準点以上を獲得しなければ、記述式試験は採点してもらえません。
しっかりと勉強し、一定の基準をクリアした受験生だけが記述式試験まで採点してもらえます。
司法書士の口述試験の出題科目と内容
司法書士試験の筆記試験に合格された方は、最終試験の口述試験を受験することになります。
口述試験の試験時間は約15分間です。
受験生1人に対し、面接官2人がつき、受験生に質問する形で実施します。
口述試験で出題される科目は、基本的に以下の3科目です。
- 司法書士法
- 不動産登記法
- 商業登記法
筆記試験と出題科目は重複していますが、口述試験では問題なく回答できるレベルまで質問内容になれておく必要があります。
とはいえ、口述試験は筆記試験に合格された方であれば、基本的に合格できるといわれています。
質問に答えられないときは、面接官が手助けしてくれることもあるので、焦らず落ち着いて受験することが大切です。
司法書士試験の日程と概要
次は、司法書士試験のスケジュールや受験資格などの概要を紹介します。
スケジュール
司法書士試験は、以下のスケジュールで行われます。
受験申請受付期間 | 例年5月上旬〜中旬頃 |
筆記試験 | 例年7月の第1週目の日曜日 |
筆記試験の合格発表 | 例年9月末〜10月初旬 |
口述試験 | 例年10月中旬(平日) |
最終合格発表 | 例年11月初旬 |
司法書士試験の詳細のスケジュールは、例年4月はじめに発表されます。
詳しくは、法務省のホームページの司法書士試験のページから確認するといいでしょう。
受験資格
司法書士試験の受験資格はありません。
年齢や性別、学歴などに問わず、どなたでも受験可能です。
受験料
司法書士試験の受験料は8,000円です。
8,000円分の収入印紙を受験申請書の所定の欄に貼り付ける形で、受験料を納付します。
なお、受験料は、受験しなかった場合でも返還されることはありません。
司法書士試験の合格率と合格者数の推移
司法書士試験は最難関国家資格の1つと言われるほど、難しい試験です。
過去の試験の合格率を見ると、5%程度になっています。
▼過去5年間の司法書士試験の結果
年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和2年度 | 14,431 | 11,494 | 595 | 5.17% |
令和3年度 | 14,988 | 11,925 | 613 | 5.14% |
令和4年度 | 15,693 | 12,727 | 660 | 5.18% |
令和5年度 | 16,133 | 13,372 | 695 | 5.20% |
令和6年度 | 16,837 | 13,960 | 737 | 5.27% |
平成28年頃までは合格率が3%を下回ることが多かったことを考えると、近年は合格率が上昇傾向にあります。
とはいえ、現在でも依然として合格率が低いことには変わりません。
このような難しい試験を受験して本当に合格できるのかと、不安に思う方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、司法書士試験は受験資格がない点から、合格率だけを気にしすぎる必要はないでしょう。
なぜなら年齢や学歴、学習の進捗状況にかかわらず受験できるため、試験範囲を全て勉強し終わっていない方や、次年度の本格受験に備えて受験している方など、さまざまな背景の方が受験しているからです。
難しい試験ではありますが、適切な方法で勉強を継続すれば合格できる試験です。
司法書士試験合格に必要な勉強時間
司法書士試験合格に必要な勉強時間は、3,000時間程度と言われています。
3,000時間というと、3年で合格を目指す場合は1日あたり3時間弱の勉強時間が必要です。
仮に1年間で合格を目指す場合は、1日8時間以上勉強を続ける必要があります。
ただし、過去の経験や勉強効率などによって実際に合格するまでにかかる勉強時間は異なり、なかには2,000時間ほどの勉強時間で合格する方もいます。
司法書士試験に合格するための勉強法
司法書士試験は難しく、合格までに時間もかかるためなるべく効率よく学習を進めたいものです。
ただやみくもに勉強を進めても合格するのは難しく、正しい勉強方法を知ることが大切です。
それでは、初学者の方でも実践しやすい3つの勉強法を見ていきましょう。
目標を定めて計画的に学習する
司法書士試験に合格するには、長期的な学習計画を立てる必要があります。
まずは合格目標を決めたら試験日から逆算して、無理のない学習計画を立てましょう。
最初の頃は試験勉強のモチベーションが上がっているため、多少無理をしても勉強を続けられるかもしれません。
しかし、無理な計画を立てると次第に勉強が嫌になり、途中で勉強をやめてしまうケースも否定できません。
そこで合格するまで学習を続けられるように、動画で講義を見たり、スマホで問題を解いたりして無理のない方法で学習できるように計画を立てることが大切です。
出題形式を意識して勉強を進める
司法書士試験の勉強は、テキストや動画などでインプットするだけでは不十分です。
スポーツに言い換えると勉強は「普段の練習」で、試験は「試合」です。
スポーツで普段の練習は強いのに本番で本領を発揮できない人がいるように、試験勉強でもいくら知識をインプットしても、試験本番で高得点を取れるとは限りません。
試験でも強くなるには、司法書士試験の問題に慣れる必要があります。
そのためにも、問題を解くスキルを身に付けたり、難しい問題への対応法を決めたりして、出題形式を意識した勉強をすることも重要です。
問題や過去問は何度も繰り返し解く
人間は誰しも1回勉強しただけでは忘れてしまうため、合格するためには何度も繰り返し学習しましょう。
短期で合格する方の多くは、何度も繰り返し復習しています。
学習をする際は最初のインプットにはあまり時間をかけず、インプットした後はすぐに復習や問題練習に取り組みます。
復習と練習問題を繰り返して、試験本番に勝てる実力を着実に身に付けることが大切です。
試験勉強を最後まで継続する
試験に合格できなかった人の多くは、勉強を途中でやめてしまったり、最後まで勉強できなかったりした人です。
もちろん最後まで勉強したのに合格できなかった人もいますが、人数は圧倒的に少ないでしょう。
最後まで勉強を続ければ、それだけ合格できる可能性も高くなります。
大切なのは合格するまで諦めないことです。
司法書士試験は難関資格ではありますが、正しい勉強方法で学習を継続すれば合格できる試験です。
最後まで勉強を続けるには、無理なく勉強できる環境を整えることも重要といえます。
まとめ
司法書士試験の内容をおさらいしましょう。
- 司法書士試験は筆記試験と口述試験が行われる
- 出題科目は主要科目とマイナー科目の11科目
- 合格するには3つの基準点をクリアし、さらに合格点をクリアする必要がある
- 司法書士試験に受験資格はない
- 合格率は4〜5%ほどで、最難関資格の1つである
司法書士試験は難しい試験ですが、試験の仕組みを理解し、しっかりと対策すれば合格できます。
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この記事を監修した人 山田 巨樹 講師(司法書士・スタディング 司法書士講座 主任講師) 司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。その後、大手法律事務所勤務を経て独立し、東村山司法書士事務所を開設。2014年、「スタディング 司法書士講座」を開発。実務の実例を交えた解説がわかりやすいと好評。 |