司法書士試験の例年の日程の流れを表にまとめました。
▼司法書士試験の例年の流れ
願書の配布期間 | 4〜5月 |
出願期間 | 5月 |
筆記試験 | 7月第1日曜日 |
多肢択一式問題の正解及び基準点発表 | 8月上旬〜中旬 |
筆記試験合格発表 | 9月下旬または10月上旬〜中旬 |
口述試験 | 10月中旬〜下旬 |
最終合格発表 | 10月下旬または11月上旬〜中旬 |
司法書士試験は、例年ほぼ同じ時期に行われています。
出願は5月に行いますが、期間が2週間程度と短い点に注意が必要です。
願書の提出準備が整ったら筆記試験を受験するエリアの管轄の法務局、地方法務局の総務課に郵送申請、または窓口申請しましょう。
次は、司法書士試験の受験資格や試験科目など試験の内容を解説していきます。
司法書士試験は、「筆記試験」「口述試験」に分かれて行われます。
筆記試験に受験資格はなく、年齢や学歴、性別に関係なく受験可能です。
受験回数にも制限がないため、合格するまで何度でも受験できます。
口述試験の受験資格は、筆記試験合格者のみです。
筆記試験の合格者には合格通知書が郵送され、合格者は合格通知書を受験票として試験会場に持参して受験します。
司法書士試験の筆記試験は、午前の部と午後の部に分けられています。
午前の部は択一式のマークシート形式で、午後の部は択一式のマークシート形式と記述式の2科目が実施されます。
それぞれの配点や科目は以下の通りです。
▼午前の部の択一式の試験科目(105点満点)
民法 | 20問 |
商法(会社法) | 9問 |
憲法 | 3問 |
刑法 | 3問 |
計 | 35問 |
▼午後の部の択一式の試験科目(105点満点)
不動産登記法 | 16問 |
商業登記法 | 8問 |
民事訴訟法 | 5問 |
民事執行法 | 1問 |
民事保全法 | 1問 |
供託法 | 3問 |
司法書士法 | 1問 |
計 | 35問 |
▼午後の部の記述式の試験科目(140点満点)
不動産登記法 | 1問 |
商業登記法 | 1問 |
計 | 2問 |
午前の部は択一式のみの問題で、試験科目は民法と商法の問題が中心です。
午後の部の試験は、択一式と記述式の2通りです。
択一式の試験科目は民法や商法、不動産登記法、商業登記法は出題数が多いことから主要科目と呼ばれており、それ以外の7科目はマイナー科目と呼ばれています。
また、従来の筆記試験午後の部の記述式問題の配点は「2問で70点満点」でしたが、令和6年度以降の筆記試験から140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表され、さらに配点が大きくなっています。
司法書士試験の出題科目で最も多いのは民法です。
その他の出題科目である不動産登記法や商法(会社法)、供託法などは民法が密接に関係するため、しっかりと民法の知識を身に付けておくとその他の科目もスムーズに理解が進みます。
しかし、択一式問題に基準点が設けられているため、それぞれの基準点を上回らなければ合格はできません。
そのため合格に向けて勉強するときは、出題されるすべての科目をしっかりと網羅する必要があります。
口述試験では、司法書士として必要な知識が問われます。
出題範囲は以下のとおりです。
所要時間は1人15分程度で、面接形式で受験者1人に対して2人の試験官に口頭で回答を求められます。
試験内容は筆記試験に合格できる知識があれば応えられる内容で、例年筆記試験合格者のほとんどが口述試験に合格しています。
司法書士試験は国家資格の中でも特に、難易度が高い試験として挙げられます。
次は以下の3つの観点から司法書士試験の難易度をまとめました。
実際にどのぐらいの受験者が合格し、どのぐらいの勉強時間を必要とするのかを見ていきましょう。
▼過去5年間の受験者数と合格者数、合格率の推移
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 13,372人 | 695人 | 5.20% |
令和4年度 | 12,727人 | 660人 | 5.18% |
令和3年度 | 11,925人 | 613人 | 5.14% |
令和2年度 | 11,494人 | 595人 | 5.17% |
平成31年度 | 13,683人 | 601人 | 4.39% |
過去5年の合格率は4〜5%前後で推移しています。
それ以前は3%台の年が多かったことを考えると、近年では、やや合格率が高くなっていると言えます。
そうはいっても、国家試験の中でも合格率が特に低い試験のひとつです。
司法書士試験の合格率が低い理由としては、試験の難易度が高いだけでなく、受験資格が設けられていないという点が挙げられます。
誰でも受験できるため、チャレンジのハードルが低いのです。
学歴や実務経験、他資格の取得といった条件もないため、そもそも法律に関する知識がない方や、十分な準備ができていない方も多く受験しており、結果として合格率が下がっていると考えられます。
そのため、合格率の低さ=試験の難易度とは言えません。
司法書士試験の受験者数は減少傾向にあり、この15年ほどで半分以下にまで受験者数は減少しています。
司法書士試験の合格点と基準点は、毎回同じではありません。
合格点や基準点は、筆記試験終了後に発表されます。
過去5年間の合格点と基準点は以下の通りです。
▼過去5年間の筆記試験の合格点
年度 | 筆記試験の合格点(280点満点) |
令和5年度 | 211.0点以上 |
令和4年度 | 216.5点以上 |
令和3年度 | 208.5点以上 |
令和2年度 | 205.5点以上 |
平成31年度 | 197.0点以上 |
▼過去5年間の司法書士試験の基準点
年度 | 午前の部・択一式
(105点満点) |
午後の部・択一式
(105点満点) |
記述式
(70点満点) |
令和5年度 | 78点 | 75点 | 30.5点 |
令和4年度 | 81点 | 75点 | 35点 |
令和3年度 | 81点 | 66点 | 34点 |
令和2年度 | 75点 | 72点 | 32点 |
平成31年度 | 75点 | 66点 | 32.5点 |
※令和6年度以降の筆記試験から、記述式の配点が140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表されました。
上記の合格点は、午前の部・択一式、午後の部・択一式、記述式の総得点280点をもとに設定された基準です。
合格点はその年によって差はあるものの、だいたい200点前後を推移しています。
択一式問題の基準点は午前の部、午後の部ともに毎年かなりバラつきがあります。
記述式問題の基準点も毎年35点前後※ではあるものの、毎年同じではありません。
※令和6年度以降の筆記試験から、記述式の配点が140点満点になる旨が令和5年12月4日に発表されました。上記の合格基準点は、午前の部・択一式、午後の部・択一式、記述式の総得点280点をもとに設定された基準です。
合格点や基準点が毎年異なる理由は、司法書士試験の合否判定に相対評価が取り入れられているからです。
合格者の人数があらかじめ決められているため、その人数に合わせて合格点が上下します。
具体的には、受験者全体のレベルが高ければ合格点は高くなり、レベルが低ければ合格点も低くなります。
つまり、午前の択一式問題と午後の択一式問題、記述式問題でそれぞれ基準点を上回り、合格点以上の総得点を獲得しなければ試験に受かりません。
確実に合格を目指す場合は、択一式問題は午前の部、午後の部でそれぞれ70〜80%以上の得点を目指す必要があります。
そう考えると全ての科目をしっかり網羅して、試験対策をしておくことが重要です。
司法書士試験合格のために、必要な勉強時間の目安は一般的に約3,000時間と言われています。
科目数が多く、出題範囲も広いためインプットだけでもかなりの時間がかかります。
さらにアウトプットのトレーニングなどを考えると、最低でも3,000時間程度の時間が必要です。
仮に初学者が1年間で合格を目指すのであれば毎日8時間以上、2年間かけて勉強する場合でも毎日4時間以上の勉強時間を確保しなければなりません。
同じく法律系の国家資格である行政書士の勉強時間は約500〜1,000時間、宅建士は200〜300時間であることを考えると、司法書士試験対策には多くの勉強時間が必要なことがわかります。
資格取得を考える際に、複数の資格の難易度を比較すると難しさの程度がよくわかります。
そこで、司法書士試験と行政書士試験、税理士試験の難易度を受験者数や受験資格、合格率、勉強時間の観点から比較しました。
行政書士は法律系の国家資格であり、独立開業も可能なため人気の資格です。
司法書士試験と行政書士試験について表にまとめました。
▼司法書士試験と行政書士試験の比較
司法書士 | 行政書士 | |
受験者数(令和4年度) | 12,727人 | 47,850人 |
受験資格の有無 | なし | なし |
合格率 | 4〜5% | 10%前後 |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 | 約500〜1,000時間 |
司法書士と行政書士はどちらも法律系の国家資格ですが、難易度には差があります。
いずれも受験資格はなく、学歴や職務経験などを問わず誰でも受験可能です。
ただし、合格率は司法書士が4〜5%であるのに対して、行政書士は10%前後を越えています。
また、合格に必要な勉強時間を比較すると、その差は3倍以上です。
以上から司法書士試験と行政書士試験の難易度を比較すると、司法書士試験の方が難しいとわかります。
行政書士を先に取得して、ステップアップとして司法書士とのダブルライセンスを目指すこともできます。
司法試験は裁判官や検察官、弁護士の法曹三者になるための国家資格です。
司法試験を受験するには法科大学院を修了、もしくは予備試験に合格しなければいけません。
司法書士試験と予備試験、司法試験について表にまとめました。
▼司法書士試験と司法試験・予備試験の比較
司法書士 | 予備試験 | 司法試験 | |
受験者数(令和4年度) | 12,727人 | 13,004人 | 3,082人 |
受験資格の有無 | なし | なし | あり |
合格率 | 4〜5% | 3%前後 | 30〜40%前後 |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 | 約3,000〜1万時間 | 予備試験合格者:約1,000時間
法科大学院修了者:約2,000〜3,000時間 |
司法書士と予備試験・司法試験はどちらも法律系の国家資格ですが、予備試験・司法試験の方が難易度は高めです。
司法試験は受験するまでのハードルが高いため、合格率は意外と高い数値になっています。
一方で、予備試験は司法試験の合格率を下回り、例年3%前後です。
合格するために必要な勉強時間は人によって差はありますが、多くの場合は司法書士試験よりも長時間必要です。
宅建士とは宅地建物取引士の略称で、不動産取引の専門家であることを示す資格です。
宅建試験に合格後に登録実務講習を受講して登録すると、不動産契約時に必要な「重要事項の説明」を行えるようになります。
司法書士試験と宅建士試験について表にまとめました。
▼司法書士試験と宅建士試験の比較
司法書士 | 宅建士 | |
受験者数(令和5年度) | 13,372人 | 233,276人 |
受験資格の有無 | なし | なし |
合格率 | 4〜5% | 15%前後 |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 | 約200〜300時間 |
宅建試験は毎年20万人前後の方が受験する最大規模の国家資格です。
司法書士試験と同じく法律系の国家資格ではありますが、合格率の高さと合格に必要な勉強時間の少なさから、宅建士の方が難易度が低いとわかります。
他の国家資格と比較しても、宅建士の難易度はそこまで高くありません。
社労士とは社会保険労務士の略称で、社会保険や労働関連の法律の専門家として人事や労務管理を行います。
雇用や社会保険、労働問題、公的年金の分野で唯一の国家資格です。
司法書士試験と社労士試験について表にまとめました。
▼司法書士試験と社労士試験の比較
司法書士 | 社労士 | |
受験者数(令和5年度) | 13,372人 | 42,741人 |
受験資格の有無 | なし | あり |
合格率 | 4〜5% | 5%前後 |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 | 約500〜1,000時間 |
社労士も難関資格と言われる国家資格のひとつで、合格率は司法書士試験と同程度です。
ただし、社労士試験は勉強範囲が社労士として必要な範囲に限られており、論述試験や口述試験がありません。
そのため、司法書士試験と比較すると合格に必要な勉強時間は短く、難易度は低いといえます。
税理士は税に関するスペシャリストです。
税理士も国家資格であり、業務独占資格です。
ビジネスと税金は切っても切れない関係のため、一般企業からの需要も高く、さらに独立開業することもできます。
司法書士試験と税理士試験について表にまとめました。
▼司法書士試験と税理士試験の比較
司法書士 | 税理士 | |
受験者数(令和4年度) | 12,727人 | 28,853 人 |
受験資格の有無 | なし | あり |
合格率 | 4〜5% | 15〜20%前後 |
必要な勉強時間 | 約3,000時間 | 3,000時間以上 |
税理士試験の合格率は、司法書士試験より高くなっています。
合格率が高い理由のひとつは、科目合格制です。
ある科目の基準点を満たして合格すれば、その科目は半永久的に合格状態が保持されるため、ひとつひとつの科目の勉強に集中できます。
また、受験資格として学歴や資格、職歴が設けられていることもあり、そもそも受験するまでのハードルが高いという点が合格率の高さとして反映されていると考えられます。
司法書士試験と税理士試験の合格に必要な勉強時間は、ほぼ同じです。
ただし、税理士には科目合格制度を採用しており、一般的には3〜5年程度かけて全科目の合格を目指します。
実際に働きながら毎年受験して全科目の合格を目指しているという方も少なくありません。
また、税理士試験は科目合格も履歴書に記載できるため、就職や転職の際は評価材料の1つになります。
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通信講座や通学講座を受講して合格を目指す方が多い中、独学で司法書士試験に合格するのは難しいでしょう。
独学でも合格できないわけではありませんが、難易度はかなり高くなります。
出題範囲が非常に広いため、学習効率の高い勉強方法を行う必要があります。
独学で司法書士試験合格を目指す場合、参考書の選定や学習計画、勉強方法などをすべて自分で決めなければいけません。
もし非効率で生産性が低い学習方法をしてしまった場合は、いくら勉強を続けてもなかなか合格できない恐れがあります。
また、司法書士試験は専門性が高いため、勉強する中でわからない部分が出てくることもあるでしょう。
独学しているとわからないことがあっても教えてくれる人がおらず、わからないまま勉強を続ける、もしくは立ち止まることになるでしょう。
以上から司法書士試験の難易度は非常に高いため、独学で勉強を始める場合でも難しいと感じたときは臨機応変に対応し、ときには資格取得講座を活用することも大切です。
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次は司法書士試験の合格者を分析し、合格者の特徴をまとめました。
年齢や性別の観点から、どのような人が合格している傾向が高いのかを見ていきましょう。
令和5年度(2023年度)の合格者の年齢別の割合は以下の通りです。
▼年齢別の司法書士試験合格者数
生年 | 合格者数 |
2000年代生まれ | 21人 |
1990年代生まれ | 162人 |
1980年代生まれ | 230人 |
1970年代生まれ | 197人 |
1960年代生まれ | 66人 |
1950年代生まれ | 16人 |
1940年代生まれ | 3人 |
合計 | 695人 |
生年別のデータをみると、もっとも多いのは40代前後にあたる1980年代生まれの方です。
次いで70年代、90年代となっています。
以上から、司法書士試験合格者の主な年齢層は30〜40代と言えます。
また、合格者の最低年齢は19歳で、最高年齢は82歳でした。
令和5年度の司法書士試験合格者695人のうち男性は487人、女性は208人でした。
割合としては男性が70%を占めていますが、女性の合格者も決して少なくありません。
資格試験の合格だけが、司法書士になる唯一の方法ではありません。
実は、裁判所や検察局に一定期間勤めた経験があれば、司法書士の資格が与えられます。
しかし、資格試験以外で司法書士になるには「最低でも裁判所や検察局で10年以上のキャリアを積むこと」もしくは「簡易裁判所判事又は副検事として通算5年以上従事すること」が条件であり、その上法務大臣の認定も受ける必要があります。
誰しもが裁判所事務官や検察事務官などになれるわけではないので、一般的には資格試験合格の道を目指す方法が選ばれています。
司法書士試験に合格しても、すぐには司法書士として活動できません。
まず全国にある司法書士会のいずれかに登録し、そこで開催される研修に参加する必要があります。
実施期間やカリキュラムなどは各司法書士会によって異なり、中には配属研修を司法書士会登録の必須条件とするところもあります。
配属研修とは、司法書士事務所に1〜3カ月程度働き、実務を学ぶ研修です。
派遣先は就職先と異なる司法書士事務所を選ばなければならないところもあり、派遣先事務所の条件もさまざまです。
詳しい内容については、登録予定の司法書士会に確認しましょう。
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多くの場合、試験合格者は司法書士事務所に勤務し、補助者として実務を学ぶキャリアからスタートします。
事務所によって取り扱う業務内容は異なるため、各自目指す分野をメイン業務とする事務所への就職が望まれます。
中には、事務所勤務を経ずいきなり開業する合格者もいます。
しかしそのようなケースでも、学生時代にアシスタントとして事務所に配属し、実務スキルを学んだ人がほとんどです。
実務経験ゼロでの開業は現実的に厳しいと考えましょう。
不動産登記や商業登記、供託業務、成年後見業務など、司法書士業務はさまざまです。
昨今では、簡易裁判所で解決可能な140万円以下の訴訟案件を扱える「認定司法書士」として活動する方もいます。
法務省の認定試験に合格すれば資格が得られますので、訴訟代理業務までフィールドを広げたい方はぜひチャレンジしてください。
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ここでは司法書士試験の概要や難易度などについて詳しくご紹介しました。重要なポイントをあらためておさらいします。
司法書士は難易度が高い資格ではありますが、しっかりと勉強をすれば合格できる資格です。
受験資格もないため、司法書士資格が気になっている方はぜひ目指してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修した人 山田 巨樹 講師(司法書士・スタディング 司法書士講座 主任講師) 司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。その後、大手法律事務所勤務を経て独立し、東村山司法書士事務所を開設。2014年、「スタディング 司法書士講座」を開発。実務の実例を交えた解説がわかりやすいと好評。 |