令和元年7月7日(日)に2019年度(平成31年度)の司法書士試験が行われました。受験をされた皆様、お疲れさまでした。
今年度の試験に向けて、様々なことを犠牲にして頑張ってこられたのではないかと思います。ひとまず、今まで頑張ってきた自分を褒めてください!
ここでは、2019年度(平成31年度)の筆記試験の講評をお伝えするとともに、今回の試験傾向から2020年度(令和2年度)の対策を検討していきたいと思います。
現在、次年度の試験に向けて勉強中の方もご参考にして頂ければ幸いです。
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第3問の独立行政員会の学説問題、第35問の仲立人については、対策をしていなかった方が多かったのではないかと思います。しかし、その他の問題につきましては、過去問を検討しつつ、周辺知識を確認しておくことで、対応できた問題が多かったのではないかと思います。
本年度も個数問題はなく、第20問、第23問、第28問以外は組み合わせ問題でしたので、5つの肢のうち2~3肢の判別ができれば正解を導くことができる問題が多かったように思います。また、第20問、第23問、第28問は、単純選択式の問題で、第20問は平成18年の判例を知らなければ正解を出しづらい問題でしたが、第23問と第28問は比較的正解を出しやすい問題だったと思います。
対策としては、例年と変わりませんが、過去に出題されている知識の習得は当然として、過去に出題されている知識については、少し掘り下げて勉強をしておくといいでしょう。さらに、過去に出題されている知識の周辺知識及び関連知識までおさえられれば、十分合格レベルの実力がつくはずです。
また、ご存知の通り、来年度以降は、改正後の民法で出題がなされると思いますので、改正民法の対策をしっかりとしておきましょう。改正民法に絡んで、民法について少しだけお話をさせていただきます。
今年の民法総則の出題ですが、民法総則で頻出分野である意思表示と代理からの出題がありませんでした。意思表示につきましては、改正民法で変わった部分が多く、代理につきましては、判例法理が明文化されたものが多くあります。
来年度の民法総則は意思表示と代理は要注意といえます。民法総則の問題を見たときに、改正によって変わる部分を避けて出題しているのかと思ったのですが、債権法の問題は、改正によって変わる譲渡禁止特約の規定や隔地者間の契約について問われていましたので、特に改正によって変わる部分を避けて出題していたわけではなかったようです。
第1問~第11問までの民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、供託法、司法書士法は、過去に出題されていた知識から大きく外れた出題はなかったと思われます。
第12問~第27問までの不動産登記法は、相変わらず総合問題が多く出題されました。不動産登記法を学ぶときには、所有権に関する登記手続、抵当権に関する登記手続、根抵当権に関する登記手続というように、分野ごとに学んでいくのですが、出題されるときは、選択肢の5肢のすべてが所有権に関する出題という問題よりも、すべての肢が違う分野から出題されている総合問題が多く出題されています。
しかし、いきなり横断的に知識を覚えておくことは難しいですから、各分野の勉強をしっかりと行い、過去問を通して横断的知識を身に着けていくようにしましょう。また、不動産登記法の多肢択一式は、記述式を解くために必要となる知識よりも、より細かな先例の知識等が問われます。
より細かな先例の知識等を理解しつつ覚えるためには、記述式で問われる知識の理解が必要となりますので、記述式の対策をしつつ、多肢択一式の過去問を通して、より細かな先例の知識等を身につけるようにしましょう。
第28問~第35問の商業登記法は、不動産登記法とは異なり、各分野からまとまって出題される問題が多く、本年度も同様の傾向で出題されていました。商業登記法の多肢択一で必要とされる知識ですが、記述式の対策で身につく知識で多肢択一式も解答を導き出せる問題が多いので、記述式の対策を通して知識を身に着けていくようにしていけばいいと思います。
過去問をしっかりと検討されている方ですと、申請しなければならない登記手続を抽出することができたのではないかと思います。
第1欄ですが、多肢択一式の基準点をクリアできる方ですと、事前通知の諸手続き、資格者代理人による本人確認情報の提供、委任状についての公証人による認証に関する知識は有していると思いますので、回答できたのではないかと思います。
第2欄ですが、数次相続に関する所有権移転登記については、平成22年度の記述式でも問われていますし、記述式では頻出の論点です。また、賃借権には抵当権の効力が及ばないとの知識も基本的な知識です。
第3欄ですが、敷地権付区分建物についての効力について問われており、これも多肢択一式の基準点をクリアできる人であれば、回答できたと思います。
第4欄ですが、別紙3を見て、株式会社つぼみ銀行が本店を移転していることから、登記名義人表示変更登記が必要となるのではないかと気づいた方もいるかと思います。この点につきましても、過去の本試験の問題でおなじみのパターンです。そして、検討を進めていくと、極度額の増額が必要だと分かり、極度額の増額は新たな追加設定の性質を有していることから、極度額の増額に基づく根抵当権の変更登記の前提として、根抵当権登記名義人住所変更の登記手続が必要となることも抽出できたのではないかと思います。
来年度以降の司法書士試験を目指す方は、平成31年度から平成20年度の過去問を何度も繰り返して知識を身に着けることと、資料の読み方などを学んでください。これだけで合格するために必要な知識は十分身に付きます。
今後も出題可能性がありますので、登記原因証明情報に必要となる要素をおさえておいていただければと思います。
商業登記法は、検討すべき事項及び書かなければならない量が多かったため、時間内に書き終えることが難しかったかもしれません。
しかし、不動産登記法と同様、過去問を検討しておけば、同じようなパターンで出題されている論点が多く、合格するために必要な点数はとることができたのではないかと思います。
組織再編を絡めた出題は、過去に何度も出題されています。また、大会社となることに伴って機関を変更しなければならないパターンも過去にも出題されています。
別紙1のスター株式会社の資本金の額が金4億円で、別紙6で合併により資本金の額が金1億円増加することに気付いた方はそれでいいのですが、仮にこの点について問題文を読み飛ばしてしまった方も、別紙10の議事の概要の第2号議案の機関に関する変更を見て、大会社になったのではないかと気づいた方もいると思います。
登記の委任を受けている司法書士がこの点についてアドバイスをしているところもヒントになったかと思います。この点も過去の本試験の問題でおなじみにパターンといえます。このように、問題にいくつかヒントがあり、過去問を検討しておくと、本試験のヒントに気付きやすくなると思います。
来年度以降の司法書士試験を目指す方は、不動産登記法と同様、平成31年度から平成20年度の過去問を何度も繰り返して知識を身に着けることと、資料の読み方などを学んでください。これだけで合格するために必要な知識は十分身につきます。
口述試験等の日程は、下記をご覧ください。
山田 巨樹 プロフィール
1974年山口県生まれ。明治大学法学部法律学科卒業。司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。教材制作、講義、受講相談、質問回答など司法書士の受験指導に関わるあらゆる業務を担当。多くの合格者を輩出する。 東村山司法書士事務所 代表 |