司法書士の認定考査とは
司法書士の認定考査は、司法書士試験の合格者が「認定司法書士」になるために必要な試験です。
正式には「簡裁訴訟代理等能力認定考査」といい、法務省が試験を実施します。
試験に合格すると法務大臣から認定を受け、簡易裁判所管轄で、請求額140万円以下の民事事件の代理業務を行えるようになります。
認定司法書士が行える業務を「簡裁訴訟代理等関係業務」といい、具体的には以下の10個の業務を指します。
- 民事訴訟手続の代理
- 訴え提起前の和解(即決和解)手続の代理
- 支払督促手続の代理
- 証拠保全手続の代理
- 民事保全手続の代理
- 民事調停手続の代理
- 少額訴訟債権執行手続の代理
- 裁判外の和解の各手続について代理する業務
- 仲裁手続の代理
- 筆界特定手続について代理をする業務 など
2023年4月1日時点で、司法書士全体における認定司法書士の占める割合は約78%(18,027人)であり、その割合は高いといえるでしょう。
司法書士の認定考査の基本情報
司法書士の認定考査の基本情報として、以下の3つを把握しておきましょう。
- 受験資格
- 日程・時間
- 形式・内容
それぞれ、詳しく解説していきます。
受験資格
認定考査の受験資格は、「司法書士法第3条第2項第1号」に規定する研修(特別研修)の課程を修了した者とされています。
特別研修は、司法書士有資格者に参加が認められる日本司法書士会連合会主催の研修です。
研修の内容は、基本講義やグループ研修、ゼミ(演習)、裁判所の協力を得て実施される実務研修(法廷傍聴)、受講者自身による模擬裁判など実践的なものとなっています。
研修時間は100時間ほどで、研修の時期は例年5月下旬から7月上旬です。
日程・時間
認定考査の日程は、平成31年度(2019年度)までは6月に実施されていました。
しかし、令和2年度(2020年度)に新型コロナウイルス感染症の影響で6月から8月へ延期になったことをきっかけに、近年では9月に実施されるようになりました。
考査時間は午後1時〜3時までの2時間です。
形式・内容
認定考査の形式は、記述式です。
- 事実認定の手法に関する能力
- 立証活動に関する能力
- 弁論及び尋問技術に関する能力
- 訴訟代理人としての倫理に関する能力
- その他簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力
上記の能力を習得しているかどうかを問われる内容となっています。
申込み方法
認定考査の申込み方法は、入会している司法書士会を通じて考査申請書類を受けて、申請書類を司法書士会に提出するという流れです。
司法書士会に入会していない方は、自分の住所地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに設立された司法書士会を通じて、同手続きを行います。
提出方法は、以下のとおりです。
- 直接持参する
- 郵送する
郵送する場合は、必ず書留郵便で送ることを忘れないようにしましょう。
持参、郵送ともに、締切は8月上旬です。
※令和3年度簡裁訴訟代理等能力認定考査受験案内をもとに記載しています。
認定司法書士になるまでの流れ
認定司法書士のみ、簡裁訴訟代理権の行使が認められます。
認定司法書士になるには「特別研修」と呼ばれる研修を修了し、かつ法務大臣が実施する「簡易訴訟代理等能力認定考査」に合格する必要があります。
特別研修を受ける
特別研修は、司法書士有資格者に参加が認められる日本司法書士会連合会主催の研修です。
12月の司法書士試験合格発表後(主に1月下旬)に実施されます。
同じ時期に新人研修が行われますが、研修の目的も内容も明確に異なるため、混同しないように注意してください。
研修会場は、北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州の8ブロックごとに設けられ、関東地区はさらに東京会場と神奈川会場に分けられます。
所定の過程をすべて受講し、必要な課題をすべて提出するなどの条件を満たした方のみ、修了認定が受けられる決まりです。
【合わせて読みたい】司法書士合格後の新人研修とは?特別研修や就職までの流れも解説
簡裁訴訟代理等能力認定考査を受験
認定司法書士になるための特別研修を修了すると、次に待っているのは簡裁訴訟代理等能力認定考査です。
認定考査は、平成31年度(2019年度)までは6月に実施されていましたが、近年は9月に実施されています。
解答は記述式で行われ、事実認定の手法や立証能力、弁論および尋問技術、または訴訟代理人としての倫理観が問われます。
弁護士と同等レベルの法廷業務があるかどうかが試される試験といえるでしょう。
そう聞くとかなり難易度高めの試験のように思われるかもしれませんが、司法書士試験の合格率よりはずっと高く、70%前後の方が合格しています。
受験者は難関の司法書士試験突破者、もしくはすでに司法書士として実務を経験している法律の専門家です。
特に試験を終えたばかりの受験者は、試験の感覚が残っているため、精神的にもゆとりを持ってチャレンジできるかもしれません。
認定考査の認定率と難易度
認定考査の認定率は、70%前後です。
直近5年の認定率を、以下で確認してみましょう。
考査受験者数 |
認定者数 |
認定率 | |
令和5年(2023年) | 728名 | 562名 | 77.2% |
令和4年(2022年) | 643名 | 420名 | 65.3% |
令和3年(2021年) | 591名 | 417名 | 70.6% |
令和2年(2020年) | 625名 | 494名 | 79.0% |
令和元年(2019年) | 936名 | 746名 | 79.7% |
司法書士試験の合格率は、約4〜5%前後なので、一見すると、認定考査の難易度は低いように思えます。
しかし、司法書士試験に合格して特別研修を受けても、全員が合格できるわけではありません。
特別研修を受けて終わりにするのではなく、自分なりに学習を継続し、合格に向けて傾向と対策を立てる必要があるでしょう。
認定考査の過去問は入手できる?
認定考査の過去問は、法務省の認定考査のページから入手可能です。
ただし、法務省のホームページでは、令和5年8月時点で令和5年度から平成30年度の過去問しか確認できません。
そのほか、一般書店やインターネット上の書店でも、過去問と解答をまとめた書籍が販売されています。
書籍として販売されている過去問集では過去数年分に限らず、過去10回以上分の過去問と回答を確認できるものもあります。
認定司法書士になるメリット・デメリット
司法書士から認定司法書士になるメリット・デメリットを、それぞれ紹介していきます。
メリット:活動領域が広がる
認定司法書士になるメリットは、活動領域が広がることです。
通常の司法書士資格では行えない簡裁訴訟代理等関係業務を扱えるようになると、より多くの依頼を受けられて、活躍の場を広げられます。
結果的に、転職先を有利に進められたり、独立開業しやすくなったりして収入アップが期待できるでしょう。
また、認定司法書士が増えれば、法律インフラの強化にもつながり、相談者の救済にもつながることになります。
デメリット:特別研修・認定考査を受ける必要がある
認定司法書士になるデメリットは、特別研修・認定考査を受ける必要があることです。
認定司法書士になると受注できる業務の幅が広がりますが、それには約100時間の特別研修を受けて、認定考査をパスしなければなりません。
どちらも決して簡単なことではなく、時間と手間がかかるので、負担が増えることは覚悟しておきましょう。
まとめ
司法書士の認定考査の概要や認定司法書士になるまでの流れ、メリット・デメリットなどを解説してきました。
最後にポイントをおさらいしておきましょう。
- 認定考査とは、「認定司法書士」になるために必要な試験
- 認定司法書士になるには、特別研修を受け、認定考査に合格する必要がある
- 認定考査は例年9月、午後1時〜3時に実施される
- 認定率は約70%
- 認定司法書士になれば活動領域は広がるが、それ相応の時間と手間がかかる
司法書士の資格は、国家資格の中でも最難関のひとつに数えられる資格です。
しかし、年齢や性別も問わず誰もが受験可能な資格であり、合格すれば人生を大きく変える可能性を秘めています。
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