一昔前まで、司法書士が目指す道といえば、「独立開業」一択でした。しかし、昨今は社会構造の変化にともない新しい制度や技術の導入が進み、加えて国民ニーズも多様化しています。司法書士を取り巻く環境も変化の波にさらされ、独立開業以外にも勤務司法書士や企業内司法書士など、選択肢が増えてきたという現状があります。事務所の形態としても、単独より複数の有資格者が在籍する司法書士法人も増加し、かつてのように「一国一城」の事務所運営がすべてとはいえません。それぞれ専門分野を持つ司法書士が、同じ組織で活動する働き方も珍しくないのです。
将来的に独立開業するにしても、まずは司法書士法人への就職、もしくは個人事務所にアシスタントとして入って実務経験を積み、人脈を広げてから独り立ちするという方法は、現在でもスタンダードです。その意味では、試験合格後の最初のスタートラインは、就職活動にあるといえるかもしれません。
資格があったとしても、司法書士事務所に就職するのは簡単ではありません。そんな中でも、登記関係の実務経験や不動産・金融機関などで働いた経験を持つ方は、就職できる確率も比較的高いといえるでしょう。
司法書士補助者として働いてきた方は、資格取得後に司法書士チームの一員として昇格が許されるかもしれません。法務局への書類提出や、クライアントへ提出する書類作成を任されているだけに、登記・供託業務の事務処理スキルも身に付いていることでしょう。また、司法書士補助者は電話対応や接客など秘書が担当する事務も担います。雇用者としては、現場の空気を知っていて、かつクライアント情報にも精通している人材に業務を引き継がせるほうが安心もできるでしょう。試験に合格後、勤務先の司法書士事務所からそのまま採用となってもおかしくありません。
不動産会社や、銀行・信用金庫などの金融機関を顧客に抱える司法書士事務所も少なくありません。不動産会社に対しては登記の手続き代理、金融機関に対しては相続時の戸籍収集の代行や銀行員向けセミナーの開催などのサービスを提供。地元の企業・関係機関を中心に、これらの業種と密接な関わりを持つのが司法書士という専門家の特徴でもあります。
これらの企業・関係機関で働く中でも、とくに営業マンの方は司法書士と交流したり、取引したりする機会に恵まれるため、資格取得後は司法書士事務所への転職が有利となってもおかしくありません。事務所としても不動産会社・金融機関の関係者に顔の広い新人がいれば、新たな業務提携やサービスの継続利用につながるメリットも生まれます。そのうえ、これらの業種出身者は公的機関を相手にする仕事にも慣れていますので、すんなり実務に慣れてくれる可能性も高いといえます。
行政書士や宅建、土地家屋調査士など司法書士と親和性の高い資格を同時に持っていれば、就職活動に弾みがつくでしょう。法律系や不動産系の専門資格は司法書士と必要知識が重複する部分もあるため、戦力として認められる公算も高いといえます。
以下は、司法書士とのダブルライセンスでおすすめの資格です。
上記に挙げた特徴に当てはまらないという方でも、もちろん司法書士事務所へ就職できるチャンスはあります。少しでも採用確率を高めるためにも、計画・準備を綿密に行ったうえで就職活動をスタートしてください。
活動の準備段階として、司法書士事務所や業界のリサーチは最低限行いたいところです。また、自己アピール効果を高めるための履歴書・職務経歴書の作成にも、力を注ぎましょう。司法書士資格を生かしてどんな貢献ができるか、採用担当者の心に響くアピールが大切です。
コンサルタントのいる人材紹介サービス会社に登録するのも、ひとつの方法です。キャリアプランから自己分析、相性のよい事務所探しまで、トータルで就職活動をプロデュースしてくれます。自力での事務所探しが困難な方、計画・準備に時間を割く余裕のない方は、人材紹介サービス会社の利用を検討してみてください。