司法書士の年収の現実
司法書士の年収は働くスタイルによって大きく異なります。
司法書士の働き方は主にふたつあり、「勤務型」と「開業型」です。
勤務司法書士の平均年収
勤務型とは司法書士事務所に勤務し、そこのいちスタッフとして働くスタイルです。
勤務型の場合、事務所の規模や勤務地、勤務先の報酬体系によってさまざまです。
日本司法書士会連合会「司法書士白書2021年版」によると、経営者司法書士以外の司法書士の年収は以下の通りです。
※日本司法書士会連合会「司法書士白書2021年版」の調査結果をもとに作成
経営者司法書士ではない司法書士は、年収が「300~400万円未満」と答えた人が最も多く21.6%。
以下、「400~500万円未満」が18.8%、「500~600万円未満」が15.5%で続いています。
年収300~600万円の人で全体の50%超を占めます。
※無回答を除く
一般的な会社員と比べて断然高いというわけではありませんが、安定して収入が得られる点は勤務司法書士のメリットといえるでしょう。
多くの場合、勤務年数が長くなるほど年収もアップしていきます。
独立・開業した司法書士の平均年収
一方、独立して司法書士事務所を構える人もいます。
独立した場合は経営者として、自らの力で顧客を新規開拓していく必要があります。
日本司法書士会連合会「司法書士白書2021年版」によると、独立開業した司法書士の平均年収は約454万円です。
ただ、1,000万円以上の割合(無回答を除く)が12.8%います。つまり、8人に1人以上が年収1,000万円超ということになります。
経営者として、すべて自分の責任で仕事をしなければなりませんが、実力を磨けば、営業やマーケティング次第で高額所得も夢ではありません。
司法書士の平均年収は男性・女性で違う?
2023年の女性司法書士の割合は、司法書士会員全体の19%です。
司法書士の年収には個人の能力や働き方が大きく影響するため、女性の平均年収は男性との差がほとんどありません。
司法書士白書2021年版によると、「男性も女性も平等に仕事ができる」に対して「非常に満足」「やや満足」と答えた人は全体の42.1%、「どちらともいえない」が42.5%という結果でした。
調査対象者の8割以上が、男女の不平等を感じることなく働いています。
年収や働き方を見ても男女の不平等さを感じる場面は少なく、司法書士は性別問わず活躍できる仕事といえます。
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司法書士の年代別の平均年収
司法書士の年代別の平均年収については、正確な統計データがありません。
司法書士試験の合格者は20代から60代以上までと幅広く、同じ50歳の司法書士でも新人からベテランまで混在していると考えられ、同年齢でも年収に差が生じます。
年収は司法書士のキャリアをスタートさせた年によって変動するため、年齢よりも開業年数や勤務年数が大きく影響します。
独立開業の場合は開業年数以外にも、司法書士以外のキャリア経験・専門分野・人脈の有無も年収に影響してきます。
独立開業の場合、専門領域によっても年収に差が出る
独立開業スタイルの司法書士の場合、働き方には個人差が見られます。
ひとつの専門分野にこだわる人もいれば、専門領域を広げてより幅広く顧客のニーズをすくい上げる手法で仕事を得る人もいます。
どのスタイルが理想かは一概には言えませんが、事務所の立地や地域事情、ニーズ、自分の得意分野を踏まえたうえで、もっとも適切な手法を選択することが好ましいです。
いずれにせよ、ニーズのある専門領域を持つことが稼ぐための第一条件と言えるでしょう。
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司法書士の年収を上げる方法
司法書士の年収を理解したものの、どうやって高めていけばいいのかわからない方もいるでしょう。
ここからは、司法書士の年収を上げる3つの方法を解説します。
- 独立・開業する
- 依頼者と長期的な関係性を築く
- 認定司法書士になる
司法書士になって、ゆくゆくは年収を上げていきたい方は参考にしてください。
独立・開業する
安定した収入を求めるなら、既存事務所や合同法人に勤務して手堅く稼ぐスタイルが良いかもしれません。
しかし、もし年収1,000万円以上、2,000万円以上のような高収入を目指すのであれば、司法書士として独立・開業も検討してみましょう。
勤務司法書士の報酬は事務所の給与システムの範囲内ですが、独立開業した司法書士の収入に限界はありません。
働き方次第では、若い年齢で高収入を得ることも可能です。
仕事の量や質に見合うだけの報酬を期待する場合も、独立が向いているといえます。
ただし、独立開業は自由度が高い反面、自分自身で事務所を運営していくスキルも必要です。
独立開業する場合は綿密に計画を立てて、リスクを把握することが重要です。
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依頼者と長期的な関係性を築く
依頼者から信頼を得て長期的な関係を築くことは、司法書士として成功するための重要な要素です。
司法書士の業務の中には「相続・遺産分割手続き」「財産となる不動産の登記」など、家族間のプライバシーに関与するものもあるため、依頼者の信頼を得ることは不可欠です。
信頼を積み重ねて長期的な関係を築けば、継続依頼される可能性が高まって収入の安定につながります。
信頼を得るためには依頼者の話をよく聞いて状況を把握し、要望を聞きながら親身に対応することが重要です。
認定司法書士になる
司法書士として独立開業するなら、「認定司法書士」の資格取得も視野に入れましょう。
認定司法書士とは特別な研修を受けた司法書士のことで、簡易裁判で解決可能な訴訟額140万円以下の訴訟代理といった業務が可能となります。
司法書士白書2021年版によると74%の司法書士が認定を受けていて、合格率は2021年が70.6%、2022年が65.3%で、司法書士試験よりも合格率が高い試験です。
認定を受ければ業務の幅が広がり、司法書士としてのスキルが高められて年収アップにつながるでしょう。
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司法書士の年収に関してよくある質問
司法書士の年収に関してよくある質問をまとめました。
司法書士の年収はあまり高くない?
勤務司法書士として働く場合、特に業務に慣れていないうちは年収があまり高くはないかもしれません。
しかし、会社員として他の仕事に就く場合と比べて特に低いわけではなく、多くの場合は経験や勤務年数によって上がっていきます。
また、独立開業した場合の年収は、「開業地域」「専門分野」「事務所の規模」など、働き方次第で大きく変わります。
▼開業する地域
人口の多い都市部で開業すれば、多くの仕事が受注できて年収は上がる可能性があります。
一方、人口の少ない地方で開業した場合は、仕事が少なく年収は下がる傾向にあるでしょう。
ただし、言い換えると地方はライバルが少ないともいえます。
同業者が少ないため、差別化をしなくても人脈があれば仕事には困らないでしょう。
▼専門分野
専門分野を持つことで受注の機会が増えます。
たとえば、不動産分野に特化した司法書士であれば、不動産関連の仕事を獲得しやすくなります。
専門知識を活かしたコンサルティングができれば報酬も上がるので、専門分野を持たない司法書士よりも収入を得やすいでしょう。
▼事務所の規模
勤務司法書士であれば、所属する事務所の規模が大きいほど年収が高額になる傾向にあります。
司法書士の給料にボーナスはある?
司法書士のボーナスの有無は勤務先によって異なり、勤務司法書士であれば一般的なサラリーマンとあまり変わらない傾向にあります。
独立開業した司法書士の場合は、自身の裁量と事務所の売上次第でボーナスの有無が決まります。
司法書士は年収2,000〜3,000万円以上も可能?
司法書士白書2021年版のデータを見ると、独立開業した司法書士で年間所得1,000万円以上を稼いでいる割合(無回答を除く)は、1割を超えています。
中には「5,000万以上」と回答している人もいるため、司法書士で年収2,000〜3,000万円以上を得ることも可能だといえます。
なお、経営者でない司法書士でも「年収2,000万円以上」と回答している人が0.4%とわずかながら存在しました。
困難ではあるものの、勤務司法書士でも2,000万円以上の年収を得るのは不可能ではありません。
司法書士・行政書士のダブルライセンスは年収が上がる?
司法書士が行政書士の資格を得てダブルライセンスになると業務範囲が広がります。
ただし、急いで取る必要があるかというと、必ずしもそうではありません。
士業は互いに仕事を紹介し合うことが一般的で、できない業務があっても他の士業に依頼することで解決できます。
まずは司法書士としての業務遂行・スキルアップを進めて、自分なりのビジネスモデルを確立したほうが、年収アップにつながりやすいと考えられます。
ただ、この2資格は試験科目が重複するため、比較的容易にダブルライセンスを目指すことができます。
さらに業務範囲を広げていきたい場合は取得を検討するのもいいでしょう。
まとめ
司法書士の年収について、ポイントをおさらいしましょう。
- 勤務司法書士は年収300~600万円の人が多い
- 独立開業した司法書士の平均年収は454万円だが、年収の幅がかなり大きく年収1,000万円以上の割合も1割超
- 女性司法書士の平均年収は男性と差がほとんどない
- 司法書士の年収は、年齢よりも開業年数や勤務年数が影響
- 司法書士の年収を上げる方法は独立・開業や認定司法書士などが挙げられる
司法書士は難関資格のひとつですが、合格して独立開業すれば自身の裁量で働けるうえに、高収入を得られる可能性があります。
ぜひ司法書士試験合格を目指してみてはいかがでしょうか。