副業として司法書士の仕事はできる?
まず前提として、司法書士を副業とすることに問題はありません。
司法書士法にて兼業を規制する規定がないため、司法書士の副業は認められています。
ただし、企業によっては就業規則で副業が認められていない場合がある点にご注意ください。
バレなければいいと思って隠すのではなく、副業が認められているかを確認し、必要に応じて手続きを済ませてから副業を始めましょう。
司法書士の仕事を副業にする方法
司法書士の仕事を副業にする際、以下の流れで仕事ができるようになります。
- 司法書士試験に合格する
- 司法書士会に登録する
- 司法書士の仕事を受注する
それぞれの内容を詳しく解説します。
司法書士試験に合格する
まず司法書士になるには、試験に合格する必要があります。
司法書士試験は、筆記試験と口述試験で構成されていて、民法や不動産登記法などの法律知識を問われる国家試験です。
毎年の合格率が約4〜5%と非常に難易度が高く、最難関国家資格の1つと言われています。
合格するには約3,000時間の勉強時間が必要と言われているため、しっかりと対策したうえで試験に挑みましょう。
司法書士会に登録する
司法書士の試験に合格した後は、新人研修を受講して司法書士会に登録します。
新人研修は、司法書士会や日本司法書士会連合会が主催し、司法書士として活動するために必要なさまざまな知識が学べる研修です。
中央研修・ブロック研修・司法書士会研修の3種類の新人研修が行われます。
新人研修のあとは司法書士会への登録です。
司法書士会に登録するには、管轄地域の司法書士会に登録申請書の提出が必要です。
登録には申請書や名簿、誓約書や戸籍抄本などさまざまな書類が必要になるため、事前に情報を集めて準備し、スムーズに登録を進めましょう。
また、副業で司法書士をするには、自分の事務所を開業する必要があるため、自宅やシェアオフィスなど事務所の場所を決めなければいけません。
司法書士法20条で司法書士の事務所設置義務が規定されているため、司法書士登録する前に決めておきましょう。
司法書士の仕事を受注する
司法書士会に登録後、開業をすれば副業として司法書士の仕事を受注できます。
司法書士の仕事を受注する方法は、以下のとおりです。
- 講演会・セミナー
- 異業種交流会
- 紹介
- ホームページ
- マッチングサイト
- SNS など
司法書士は紹介によって案件を受注するケースが多いため、士業同士や他業種の方との人脈があると仕事を獲得しやすくなるでしょう。
現時点で人脈があまりない方は、士業同士の交流会や異業種交流会などに参加して、さまざまな方とつながりを持つのも1つの方法です。
その他、ホームページを作成してWebからの問い合わせに対応したり、士業向けのビジネスマッチングサイトを活用したりする方法もあります。
自分に適した方法で集客ルートを確立し、安定した収入源の確保を目指しましょう。
司法書士を副業にした際の収入目安
司法書士を副業にした際の収入目安を、以下3つの仕事を例に紹介します。
- 商業登記
- 相続登記
- 一般の方向けの法律相談
実際にどのくらいの副業収入を得られそうか考えるときに、参考にしてください。
商業登記
司法書士が行う主な業務に、商業登記があります。
商業登記は商号(社名)や資本金額、役員情報など、会社情報を法務局で登録する手続きする業務です。
商業登記の業務を受けたときの報酬目安は、下記表のとおりです。
業務 |
報酬目安 |
会社設立登記 | 10万円前後 |
本店移転 | 4万円前後 |
役員変更 | 3万円前後 |
会社設立時の登記代行業務を受任して定款や議事録、その他の登記に必要な書類を全て作成し、定款認証手続・登記申請の代理を行った場合の報酬は、10万円前後です。
相続登記
司法書士の仕事の1つである相続登記は、副業でも実践可能です。
相続登記は、戸籍などの資料を集めたり相続内容を確認したりする仕事なので、不動産売買の移転登記などと比較して時間的拘束が多くありません。
相続登記の場合の報酬相場は、6〜8万円が目安です。
依頼者の収入によって報酬額を調整できるため、相続登記は司法書士の副業の中でも行いやすい内容といえるでしょう。
一般の方向けの法律相談
司法書士は、一般の方向けの法律相談や契約書の作成も担います。
法律相談に関しては事務所によって無料で引き受けている場合もありますが、有料の場合は30分で5,500円(税込)程度が相場です。
副業の場合は、シェアオフィスや自宅などの事務所に依頼主を招いて面談したり、日中の隙間時間の中で電話したりして対応できます。
契約書の作成に関しては、本業の退勤後の時間や休日など自分のタイミングで作成可能です。
副業で司法書士の仕事をするメリット・デメリット
司法書士を副業にする方法や収入目安はわかりましたが、実際にどんなメリット・デメリットがあるのか気になる方もいるでしょう。
ここからは、副業で司法書士の仕事をするメリットとデメリットを紹介します。
メリット
副業で司法書士の仕事をするメリットは、以下の4つです。
- 年収アップが期待できる
- 幅広い業務に携われる
- 会社でのキャリアアップに活かせる
- 本業として独立開業するよりもリスクが低い
それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
▼年収アップが期待できる
司法書士を副業にしてうまく受注できた場合、本業以外の収入源を確保できます。
本業の収入よりも3〜10万円でも他の収入を得られたら、今よりも生活にゆとりができたり、趣味にお金をかけられたりするでしょう。
また、転職を検討したときは、副業の司法書士を本業にするのも選択肢の1つです。
すでに司法書士としての基盤ができていれば、司法書士の副業は年収アップや仕事の将来の観点からもみてもメリットが大きいといえるでしょう。
▼幅広い業務に携われる
司法書士の副業を通して経験を積むと、幅広い業務に携われる可能性があります。
例えば司法書士の副業を通して法律相談に対応する機会が増えると、コミュニケーション力や傾聴力が向上するでしょう。
コミュニケーション力や傾聴力が向上すると、本業でお客様への対応力がアップしたり、上司や部下とも良い関係を築けます。
また、司法書士の仕事を通して得た法律知識は、総務や企画、営業などいろいろな場面で役立ちます。
知識を活かせば、今よりも幅広い業務に携われるでしょう。
▼キャリアアップに活かせる
司法書士の副業で経験を積むと、キャリアアップにも活かせます。
なぜなら法律の実践的な知識を持つ人材として、企業に評価されやすいからです。
企業側から貴重な人材として評価された場合、企業の法務部のような専門知識が必要な職種に異動や転職できる可能性があります。
また、司法書士に資格手当を支給している企業では、年収がアップするのもメリットです。
資格手当は、資格を保有しているだけで支給されるため、資格取得後に新たに行動を起こす必要はありません。
司法書士の資格保有と副業での経験、両方のメリットを活かして、理想のキャリアを築きましょう。
▼本業として独立開業するよりもリスクが低い
司法書士を副業にする場合、本業として独立開業するよりもリスクを伴いません。
なぜなら、副業で収入を得られない場合でも、収入源が確保できているからです。
例えば、本業として独立開業したものの、仕事を受注できなかった場合、司法書士会に支払う月額費などを考えると赤字になります。
仕事を受注できれば問題ありませんが、すぐに仕事を獲得できるとも限らないため、開業初期の頃は収入が不安定になりやすい傾向があります。
一方で副業として始める場合、本業の収入が確保できている状態なので、生活資金を維持できないリスクはありません。
そのため、収入面で気にすることなく、集中して司法書士の仕事に取り組めます。
はじめは司法書士を副業として始めて、安定的に仕事を受任できるようになったタイミングで独立するのも1つの方法です。
デメリット
一方で、司法書士を副業として始める場合、以下のデメリットがあります。
- 就職して実務経験を積めない
- 受注できる仕事量が限られる
- 本業に支障が出る恐れがある
3つのデメリットを詳しくみていきましょう。
▼就職して実務経験を積めない
本業を続けている場合、司法書士事務所に就職して、司法書士としての実務経験を積むことができません。
場合によっては実務経験をあまり積んでいない状態で、新人研修の後すぐに副業を始めることになるでしょう。
とはいえ、司法書士全員が経験したことのある依頼ばかり対応しているわけではありません。
実務経験のある司法書士でも、初めての業務を経験することはあります。
必要に応じて調べて解決策を出せる力があれば、実務未経験のまま副業として開業してもしっかりと対応できるでしょう。
▼受注できる仕事量が限られる
副業は、本業よりも仕事に対応できる時間が少なく、仕事量にも限界があります。
もし平日に本業をして週末に司法書士の仕事をする場合、法務局は土日が休みのため、できることが限られています。
オンラインを使えば申請はできますが、多くの自治体で謄本の取得や役所での手続きができるのは平日のみです。
このような関係で、土日を休みにしている司法書士事務所は多くあります。
司法書士にはどうしても平日に動かなければいけない業務があるため、副業で土日だけ司法書士をするのは効率的とはいえないのが現状です。
▼本業に支障が出る恐れがある
司法書士法では正当な理由がない限り、依頼を拒めないとされているため、万が一受任しすぎた場合は本業に支障が出る恐れがあります。
副業に時間を取られすぎると十分な睡眠時間を確保できず、生活レベルの低下や体調不良を招くかもしれません。
そうすると本業にきちんと出勤できなかったり、出勤しても頭が働かなかったりするでしょう。
依頼に応じないといけない規定により、本業に支障が出る可能性は否定できません。
この部分は会社員と兼業する司法書士の難しい部分です。
司法書士の副業を始める前に確認したい注意点
司法書士の副業を始める前に確認したい注意点は、以下の3つです。
- 勤務先の就業規則次第で副業できない
- 仕事が受注できないと赤字になる
- 働きながら資格を取得するのは並みならぬ努力が必要
それぞれの注意点について詳しく解説します。
勤務先の就業規則次第で副業できない
もし本業の勤務先で副業が禁止されている場合、司法書士として副業を始められません。
副業の禁止は法律で定められているわけではないため、本業の就業時間以外で副業を行うのは、法律上は個人の自由です。
そのため、副業の禁止は秘密保持義務や職務専念義務の理由によって、社内で定められているだけです。
ただし、就業規則には法的効力を持つため、万が一、規則に違反した場合は減給や懲戒解雇などの処分を下される恐れがあります。
仕事が受注できないと赤字になる
司法書士として働く場合、司法書士会に登録が必要です。
登録時には登録手数料や入会費、研修費用などが必要となりますが、登録後に仕事が受注できなければ、総合的にみて赤字になります。
毎年の収入を増やしたり、安定させたりすることを目的に始めた副業で赤字になるのは、避けたいですよね。
司法書士の副業は、始めてすぐに収入が発生するわけでない点にご注意ください。
働きながら資格を取得するのは並みならぬ努力が必要
司法書士の資格は、最難関国家資格の1つといわれるほど難しい資格です。
そのため、現在働きながら取得を考えているのであれば、並みならぬ努力をしなければなりません。
- 試験日までに効率を意識して計画を立てる
- モチベーションを保って勉強を継続する
- 試験で自分の実力を最大限発揮する
上記のポイントを押さえながら長期間勉強する必要があります。
司法書士試験に合格するには約3,000時間の勉強時間が必要といわれているため、勉強期間は長期化することを考慮し、しっかりと対策することが大切です。
まとめ
司法書士の副業は、司法書士法にて認められています。
そのため、司法書士会に登録した後で仕事を受注できれば、本業との兼業が可能です。
改めて、今回ご紹介した内容をおさらいしましょう。
- 司法書士の副業は認められている
- 司法書士試験に合格後、研修を終えて司法書士会に登録すれば従事できる
- 副業は年収アップが期待できたりキャリアアップに活かせたりできるのがメリット
- 一方で仕事を受注できなければ赤字になる可能性がある
- 資格の難易度も高いので取得には並みならぬ努力が必要
スタディングでは、司法書士試験の受験者に向けた講座を用意しております。
スマートフォンやタブレットでスキマ時間を活用して学習できる教材のため、働きながら資格取得を目指す方にも最適です。
まずは無料講座や無料セミナーをお試しください。