司法書士・土地家屋調査士ともに、業務面では不動産登記と密接な関わりを持ちます。司法書士が不動産権利に関する登記申請を取り扱うのに対し、土地家屋調査士は土地・建物の物理的状況を正確に把握するための測量・調査を専門の生業としています。
司法書士のメイン業務は、登記・供託などの手続き代理です。土地やマンション、家宅など不動産の権利関係を登記として記録するための書類作成、および申請代理を行います。また、供託とは法律行為の達成を目的に公的機関に財産などを預ける制度で、その申請代理を司法書士が行います。いずれも司法書士法で定められた司法書士の独占業務です。
裁判所に提出する訴状、検察庁に提出する告訴状、ならびに法務局や地方法務局に提出する登記申請書・登記原因証書などの作成は、司法書士法第3条で規定されている司法書士の独占業務です。書類作成や申請に関する事務のほか、登記・供託に関する相談受付も業務範囲に含まれます。
また、法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所における訴訟事務を行うことが認められています。訴訟手続きのほか、支払督促手続きや民事調停手続きなど、簡易裁判所管轄の事案についての代理が行えるのです。
土地家屋調査士の業務は、不動産登記に必要な土地・家屋の調査と測量です。土地家屋調査士による測量調査は、不動産の物理的状況を正確に把握する目的で行われ、登記情報の基礎となります。たとえば、公法上の筆界(一筆の土地の範囲)を確定する作業は、隣接地所有者立ち会いのもと、土地家屋調査士が行うことになります。
不動産表示に関する登記申請の手続き代理も、土地家屋調査士に認められた独占業務です。土地家屋調査士が行う不動産登記の内容は、建物状況や土地の筆界など、不動産の物理情報がメイン。また、不動産表示の登記について登記官の処分が不当であると主張する者がいる場合、登記に関する審査請求の手続きを土地家屋調査士が代理します。
筆界特定を巡って土地所有者同士が紛争した場合、民間紛争解決手続きにしたがい解決を試みます。これらの事務行為は、法務大臣が認定する土地家屋調査士に限り、認められます(弁護士との共同受任が条件)。
司法書士試験と土地家屋調査士の試験内容について、それほど重複する部分は見当たりません。司法書士が不動産登記や商業登記、民法などの重要法がメインに出題されるのに対し、土地家屋調査士試験では法律問題に加え測量や作図といった技術試験もあるのが特徴です。
司法書士試験は、例年7月第1日曜日(筆記試験)と10月中旬頃(口述試験)に実施されます。筆記試験は午前と午後の2部に分かれ、合格者のみ口述試験を受験できます。筆記試験は、年齢・学歴・経験に関係なく、どなたでも受験が可能です。
民法・憲法・商法・刑法・不動産登記法・商業登記法など司法書士として業務を行ううえで欠かせない法的知識が問われます。このうち、メインとなる科目は民法、不動産登記法、商法、ならびに商業登記法です。出題範囲は幅広いものの、これら特定の科目に出題が集中する傾向にあります。
土地家屋調査士試験は、例年10月第3日曜日に筆記試験、翌年1月中旬頃に口述試験が行われます。司法書士試験と同じく筆記試験は午前と午後の2部制で、午前の部で測量および作図に関するもの、午後の部で不動産表示の登記に関する問題が出題されます。なお、測量士・測量士補・建築士などの資格があれば午前の部の試験は免除されます。
午前の試験では、平面測量や作図など技術的なスキルが問われる試験問題がメインです。午後の部では、不動産登記の申請手続きや審査請求手続きに関する知識に加え、民法が出題されます。
この記事を監修した人 山田 巨樹 講師(司法書士・スタディング 司法書士講座 主任講師) 司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。その後、大手法律事務所勤務を経て独立し、東村山司法書士事務所を開設。2014年、「スタディング 司法書士講座」を開発。実務の実例を交えた解説がわかりやすいと好評。 |