平成30年度 司法書士試験を受験された皆さまへ
平成30年度7月1日(日)に司法書士 筆記試験試験が行われました。受験をされた皆様、お疲れさまでした。今年度の試験に向けて、様々なことを犠牲にして頑張ってこられたのではないかと思います。ひとまず、今まで頑張ってきた自分を褒めて下さい!
講評と次年度の対策
ここでは、平成30年度の筆記試験の講評をお伝えするとともに、今回の試験傾向から次年度の対策を検討していきたいと思います。
現在、次年度の試験に向けて勉強中の方もご参考にして頂ければ幸いです。
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午前多肢択一式
憲法、刑法、会社法・商法がやや難しかったと思いますが、民法がやや易しかったのではないかと思います。また、個数問題はなく、多くの出題は組合問題でしたので、5つの肢のうち2~3肢の判別ができれば解答を導くことができる問題が多かったように思います。全体としては、例年と変わらない難易度なのではないかと思います。
対策としては、例年と変わりませんが、過去に出題されている知識の習得は当然として、過去に出題されている知識については、少し掘り下げて勉強をしておくといいでしょう。さらに、過去に出題されている知識の周辺知識及び関連知識までおさえられれば、十分合格レベルの実力がつくはずです。
平成31年度の司法書士試験の合格を目指されている方の参考になるかと思いますので、ひとつ具体例をあげておきます。
憲法の第3問では「条例制定権」に関する判例が問われました。この問題は、判例がベースとなっており、判旨をすべて覚えておけば容易に解けると思います。このことから、憲法で出題可能性のある判例の判旨まですべて覚えておかなければならないのではないかと思ってしまう方がいらっしゃいます。
しかし、この問題は、平成24年度第3問と平成27年度第3問で問われた知識を身に着けておけば、あとは文章の前後の関係から解答を導き出すことができます。
つまり、過去に出題されている知識を少し掘り下げて勉強をしていれば解答を導き出せるのです。無駄な知識を身に着けている時間などないと思いますし、普通は、たくさん覚えられないと思いますので、過去に問われた知識から、大きく外れた勉強はしないようにしていただければと思います。
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午後多肢択一式
第1問~第11問までの民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、供託法、司法書士法は、過去に出題されていた知識から大きく外れた出題はなかったと思われます。
第12問~第27問までの不動産登記法は、相変わらず総合問題が多く出題されました。不動産登記法を学ぶときには、所有権に関する登記手続、抵当権に関する登記手続、根抵当権に関する登記手続というように、分野ごとに学んでいくのですが、出題されるときは、選択肢の5肢のすべてが所有権に関する出題という問題よりも、すべての肢が違う分野から出題されている総合問題が多く出題されています。
しかし、いきなり横断的に知識を覚えておくことは無理ですから、各分野の勉強をしっかりと行い、過去問を通して横断的知識を身に着けていくようにしましょう。また、不動産登記法の多肢択一式は、記述式を解くために必要となる知識よりも、より細かな先例の知識等が問われます。
しかし、より細かな先例の知識等を理解しつつ覚えるためには、記述式で問われる知識の理解が必要となりますので、記述式の対策をしつつ、多肢択一式の過去問を通して、より細かな先例の知識等を身に着けるようにしましょう。
第28問~第35問の商業登記法は、不動産登記法とは異なり、各分野からまとまって出題される問題が多いです。そして、記述式の対策で身につく知識で多肢択一式も解答を導き出せる問題が多いので、記述式の対策を通して知識を身に着けていくようにしていけばいいと思います。
記述式
(1)不動産登記法
ものすごくオーソドックスな出題だったと思います。試験でよく問われる名義人の変更の出題もありませんでした。
そのため、【事実関係】に沿って淡々と必要となる登記申請手続を抽出すれば、必要な登記手続を書き忘れるということはなかったのではないかと思います。
また、近年、実務上で太陽光に関する手続が増えているためか、地上権設定が出題されました。区分地上権設定の出題でしたが、多肢択一式の対策で、区分地上権の登記事項等を覚えている方は無難に申請書を仕上げることができたのではないかと思います。
また、地上権に対する根抵当権設定についても、通常の根抵当権設定と記載の仕方は同じなので、無難に申請書を仕上げることができたと思われます。
さらに、登記原因証明情報の一部を書かせる問題ですが、平成25年度でも出題されていますので、対策をしていた方も多かったのではないでしょうか?登記原因証明情報は、実務でも司法書士が作成する場面が多々ありますので、受験生の段階でも知識として知っておいてくださいということだと思います。
今後も出題可能性がありますので、登記原因証明情報に必要となる要素をおさえておいていただければと思います。
(2)商業登記法
不動産登記法と同様、オーソドックスな出題だったと思います。
問1を解答するのに必要となる事実及び資料と問2を解答するのに必要となる事実と資料は、問題文に順序良く並んでいましたので、必要となる登記の事由を抽出するのにそんなに苦労しなかったのではないでしょうか?また、問3と問4の登記することができない事項も典型的な出題でした。
例年、商業登記法の記述式で時間が足りなくなったという方が多いのですが、今年度は、例年に比べて最後まで書ききれた方が多かったのではないかと思います。
今後の司法書士試験の日程
筆記試験の結果発表等
- 8月6日(月)午後4時:法務省ホームページに試験問題、多肢択一式問題の正解及び基準点が掲載されます。
- 9月26日(水)午後4時:受験地を管轄する法務局又は、地方法務局において、その受験地で受検して合格した方の受験番号が発表されます。法務省ホームページでも筆記試験合格者の受験番号が掲載されます。
口述試験等の日程は、下記をご覧ください。
山田 巨樹 プロフィール
1974年山口県生まれ。明治大学法学部法律学科卒業。司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。教材制作、講義、受講相談、質問回答など司法書士の受験指導に関わるあらゆる業務を担当。多くの合格者を輩出する。 東村山司法書士事務所 代表 |