司法書士として独立開業する際、自宅開業にするか、賃貸物件などを利用してオフィスを構えるかいずれかを選ぶことになります。後者の場合、オフィスの立地を戦略的に選ぶことが重要となります。
事務所の拠点先を選ぶにあたっては、東京にするか地方にするか、大きく分けるとこのふたつに絞られます。
一般的に、司法書士事務所は都心部や大都市圏を中心に多い傾向です。人口規模も大きくアクセス環境にも恵まれていることから、新規顧客の獲得につながりやすいためです。その一方、事務所が集中して競争率が高くなり、限られたパイを奪い合う可能性が高くなる側面にも目を向けなければならないでしょう。
東京に比べ地方は人口も企業数も少ないため、ニーズ面で不安視される傾向にあります。その一方で司法過疎地と呼ばれる地域もあり、慢性的に登記や供託の専門家が不足している問題点が指摘されています。過疎地域に拠点を構えれば、事業戦略やアイデア次第で潜在ニーズをうまくつかみ取り、地元に密着した手堅い経営ができるかもしれません。
いずれの場所を選ぶにしても、メリットだけでなくデメリットの部分も背負って開業することになります。どんな事務所を目指して、どんな業務を中心に活動したいのか、事業方針を明確にしたうえでそれに合う立地を選ぶのがよいでしょう。
司法書士として活動するうえで、最低限準備しておくものがあります。開業準備を進めるなかで、以下の備品項目をチェックしてください。
司法書士業務においてパソコンは欠かせないアイテムですが、電子機器類とセットで準備したのが外付けハードデスクです。膨大な情報量を扱う司法書士だけに、データのバックアップ対策は特に重要。パソコンでデータ保存していても、機器の故障ですべて失われる可能性もゼロではありません。バックアップ機能の強化を図るためにも、外付けハードデスクは必須アイテムといえるでしょう。
独立には資金も必要です。手持ちの資金だけで開業できないのであれば、金融機関の融資サポートを受けることになります。融資サービスの種類や融資限度額などは金融機関によって異なるため、綿密にリサーチを行い、アフターフォローも含め末永くお付き合いできるパートナーを見つけてください。
準備資金の確保も大切ですが、資金計画の前提となるコストシミュレーションも忘れてはいけません。公共料金の支払いや日々の生活費、オフィス賃料、営業活動費、事務所経費などの出費が毎月どれくらい発生するか試算を立てましょう。開業初年度からいきなり業績の安定はなかなか見込めないため、準備資金にもある程度余裕をもたせたいところです。
自治体によっては、起業を支援する名目で補助金を支給するところもあります。有効活用できる補助金や助成制度があれば、それらを生かさない手はないでしょう。
司法書士として業務をスタートするには、各種申し込みと申請手続きが必要です。スムーズな開業につなげるためにも、余裕をもって手続きを進めてください。
各種登記のオンライン申請や電子定款の認定嘱託に欠かせないのが、「セコムパスポートfor G-ID 司法書士電子証明書」の取得です。登録するには、登録番号や事務所用電話番号が必要です。発行手数料7,260円が発生します(2021年9月時点)。
オンライン申請をするには「登記ねっと供託ねっとHP」での申請者情報登録と、申請者IDならびにパスワードの取得が必要です。オンラインで申請情報を作成するには、法務省配布の申請用総合ソフトまたは各社ベンダーのソフトを利用することになります。なお、法務省配布のソフトは無料です。
民事法務協会「登記情報提供サービス」の利用にあたっては、登記情報提供サービスHPでの利用申し込みが必要です。個人であれば300円、法人であれば、740円の登録料となります(2021年9月時点)。
この記事を監修した人 山田 巨樹 講師(司法書士・スタディング 司法書士講座 主任講師) 司法書士試験合格後、1998年から大手資格学校にて司法書士試験の受験指導を行う。その後、大手法律事務所勤務を経て独立し、東村山司法書士事務所を開設。2014年、「スタディング 司法書士講座」を開発。実務の実例を交えた解説がわかりやすいと好評。 |