税理士とはどんな職業?仕事内容や税理士になる方法について解説

税理士とはどんな職業?仕事内容や税理士になる方法について解説

税理士とは「税務に関する専門家」です。世の中のさまざまな税務に精通しており、

法人や個人が行わなければならない申告手続きや税に関する相談になるなど幅広い業務に携わります。

この記事では、税理士の主な仕事内容や将来性、税理士になるための方法について解説していきます。

目次
  1. 税理士とは何する仕事?
  2. 【わかりやすく説明】税理士の主な仕事内容とは
    1. 申請・申告手続の代理
    2. 税務書類の作成
    3. 税金に関する税務相談の業務
    4. 独占業務以外の仕事
  3. 税理士業務の主な流れ
    1. 税理士の一日の仕事内容例
    2. 税理士の繁忙期
    3. 税理士の閑散期
  4. 【国家資格】税理士と公認会計士との違い
  5. 税理士の年収とは
    1. 開業税理士の場合
    2. 社員税理士の場合
    3. 補助税理士の場合
  6. 税理士になるメリット
    1. 税理士は生涯現役で働ける
    2. 税理士はフリーランスとして独立開業できる
    3. 税理士は自分のライフプランに合わせて働ける
    4. 税理士はさまざまな人との出会いがある
    5. 税理士は国内どこでも働ける
    6. 税理士になるデメリット
    7. 税理士は資格取得までに時間がかかる
    8. 税理士は独立しても高収入とは限らない
    9. 常に勉強し続けなければならない
    10. 繁忙期は仕事量が大幅に増える
  7. 税理士に向いている人
    1. 税務計算が苦にならない人
    2. 経営に携わりたい人
    3. コミュニケーション能力がある人
  8. 税理士に向いていない人
    1. 細かい作業が好きでない人
    2. コミュニケーションが苦手な人
    3. 数字に苦手意識がある人
  9. 税理士になるには
    1. 税理士試験に合格して2年以上の実務経験を積む
    2. 「弁護士」か「公認会計士」の資格を取得する
    3. 税務署で23年以上勤務する
  10. 【仕事がなくなる?】税理士の将来性とは
  11. 税理士と相性のいい資格
    1. 行政書士
    2. 中小企業診断士
    3. ファイナンシャル・プランナー
    4. 社会保険労務士
  12. まとめ

税理士とは何する仕事?

税理士とは、簡単に言うと「税務の専門家」です。

税務とは、個人や企業の収入や経費などをもとに、納めるべき税金を計算し、確定申告書の作成や税務署への手続きなどを行うことを指します。

税理士は、こうした税務のプロフェッショナルとして、納税者に代わって書類を作成したり、税務相談に応じたりします。

税理士法では、その使命について次のように定められています。

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に則り、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

【引用】税理士法第1条

つまり税理士は、単に計算や手続きを代行するだけでなく、申告納税制度を支える公正な立場の専門家として、納税者が正しく税金を納めるサポートを行う重要な役割を担っているのです。

【わかりやすく説明】税理士の主な仕事内容とは

税理士の仕事が「税務の専門家」であることは、税理士法 第一条によって定められています。

税理士法 第一条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
(e-Gov 税理士法 *1より)

しかしこれだけでは、納税義務者の信頼にこたえるとはどういうことなのか、納税義務の適正な実現はどのように達成されるのか、イメージをつかみにくいですよね。そこで税理士法 第二条が、税理士の具体的な業務内容を列挙しています。

税理士法 第二条(税理士の業務)
税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
三 税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号イからヘまでに掲げる事項及び地方税(森林環境税及び特別法人事業税を含む。以下同じ。)に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
(e-Gov 税理士法 *2より)

申請・申告手続の代理

個人や法人などの一般の納税義務者に代わって、税金の申請・申告を行う業務です。
納めるべき税金の種類は住民税、所得税、贈与税、法人税、相続税など対象者によって様々です。しかし一方で税金に関する法令は複雑で、加えて法改正が頻繁に行われます。そのため自分の仕事を抱えている多くの納税義務者にとって、税金の申請・申告を適切に行うことは難しいのです。
そこで税理士が税務の専門知識を活用して、彼ら納税義務者の手続を代行して行うのです。納税者は自らの納税義務を適切に果たすことができ、手続に時間や労力をかけない分、自分の仕事に打ち込むことができるようになります。

税務書類の作成

上記の申請・申告手続の前に、申請書・申告書を作成する必要があります。税理士はこうした税務に関する書面を作成することをも、独占業務として行うことができます。
たとえば毎年2月から3月にかけて行われる確定申告のために、税務署に提出する申告書を税理士が納税義務者に代行して作成することができます。
ほかにも、相続を行った場合には相続税が発生するので、その際に必要とされる相続税申告書を税理士が作成・提出することもできます。

税金に関する税務相談の業務

普段は税務にあまり関わりのない一般の社会人が、突然税務処理を求められるイベントが確定申告です。
確定申告が近づくと、各所で税理士による税務相談会などが開かれます。所得の具体的な算出方法や贈与に関する事柄など、税の様々な相談に応じて適切に指導することが、ここでの税理士の業務内容となります。

独占業務以外の仕事

税理士は「経営者の良きアドバイザー」でもあります。

経営者は、事業再生、事業承継、組織再編、M&Aなど、会社をとりまくあらゆる変化について常に考えをめぐらせていく必要があります。

そんな経営者は税理士に税務面の的確なアドバイスを期待しています。

資金調達、資金繰りの相談

「融資を受けたいが、会社が赤字で難しい」と考えている経営者もいます。しかし、事業計画の内容次第では融資を受けられる可能性も出てきます。融資を受けることができるように事業計画の内容を経営者と一緒に見直すことも、税理士の知識を役立てられるフィールドの一つです。

経営面のアドバイス

企業の顧問税理士となり、経営面での見直しや売上向上に向けた取り組みを提案することも、税理士の役割として求められることがあります。

税務対策と併行して、企業内の業務や事案について客観的な視点を持って独自の調査を行い、どうすれば実績が向上するのかなどを分析し、改善策を提言することも、経営面のアドバイスとして役立っています。

【あわせて読みたい】税理士の仕事はどんなもの? 税理士法人編

税理士業務の主な流れ

ここまで、税理士の仕事内容などについて説明してきましたが、具体的にどんな流れで一日の業務を進めていくのでしょうか。また、仕事の繁忙期や閑散期はいつ頃なのでしょうか。くわしく見ていきましょう。

  • 税理士の一日の仕事内容例
  • 税理士の繁忙期
  • 税理士の閑散期

税理士の一日の仕事内容例

これは、税理士法人に勤める税理士の一日のスケジュール例です。

8:30事務所に出勤。顧客や関与先からのメールをチェックし、一日の予定をおおまかに立てる。緊急の案件が入れば、それまでの予定を柔軟に調整していくことも。
9:00事務所内のミーティング。出勤してきた上司やスタッフに伝達事項を伝えたり、様々な確認作業を行う。
9:30外勤。クライアントを訪問し、税務書類の作成などについて打合せを行う。
12:00ランチ。時間に余裕があれば外食をすることもあるが、忙しくコンビニ弁当を買って事務所に戻って済ませることも多い。
13:00内勤。税務書類の作成。スタッフから業務内容について質問を受けたりして作業が中断することもよくあるので、集中力を上げて取り組む必要がある。
16:00再び外勤。新しく顧問先になってくれそうな新興企業への営業活動。自分の事務所を魅力的に感じてもらえるよう、コミュニケーション能力が大事。
18:30事務所に戻る。再度メールチェックを行い、すぐに対応できるものは返信して退勤。

このように、比較的一日中せわしく動いている日もあるでしょう。新人の勤務税理士から、残業をしなければならない場面も出てきます。

また、12月から5月ごろは税理士にとって繁忙期となります。この期間は企業の決算や申告に関する業務が多く、複数の顧問先を抱える税理士は遅い時間まで仕事しなければならない日も多いでしょう。

とはいえ、ある程度自分の裁量で決めていくことができますので、しっかりスケジュールを組める人であれば仕事が回らなくなるということはありません。

税理士の繁忙期

法人向けの繁忙期

法人向けでは12〜5月頃が繁忙期と言えるでしょう

多くの法人は、12月と3月を決算期としています。一般的には、3月決算の法人が多いため、税理士にとってもその前後が繁忙期となります。

決算期の前は、決算に向けた準備をしなければなりません。3月決算であれば、4月には帳簿の締め作業や税額の計算、税効果会計などが発生します。上場していない企業であれば、5月頃に決算作業を行います。

個人向けの繁忙期

依頼者が個人の場合、確定申告の時期が繁忙期となります。

確定申告の書類提出は、毎年2月〜3月頃に行います。税額を計算し、申告書類を作成するには、必要な書類を集めて提出してもらったり、打ち合わせなども必要となります。

税理士の閑散期

前述の繁忙期を除いた時期は、比較的業務が落ち着きます。そのため、6〜11月ごろが閑散期と言えるでしょう。この時期には、決算や確定申告以外の業務を行います。

閑散期の業務例

  • 巡回監査
  • 毎月の月次決算
  • 依頼者に税務調査が入る際の立ち会い
  • その他税務相談 など

巡回監査とは、依頼者のもとに出向いて、正しく経理が行えているかを確認する業務です。

月次決算は、業績報告のための月単位での決算ですが、年次決算とは異なり、税務署に報告する必要はありません。

また、税理士法人の場合、税理士の採用に関する業務もこの時期に多く行われています。

【国家資格】税理士と公認会計士との違い

会計に関する国家資格である公認会計士との違いは、以下の通りです。

税理士

税金の申告書作成や申告の代理、税務相談が主な業務です。そのほかに、会計処理の代行や節税・納税対策のコンサルティングなども行います。

公認会計士

独立した立場から企業の財務諸表(決算書)を監査し、会計基準に則って作成されているかを調べることで、投資家の信頼を担保することが主な業務です。

税理士と同様に、会計処理の代行を行う場合もあります。

ざっくりと分けると、主に中小企業の税務・会計代行、税金対策のコンサルティングなどを行うのが税理士、大企業の監査や上場対策など比較的規模の大きな業務を行うのが公認会計士といえます。

税理士の年収とは

税理士の働き方は1つではありません。自分のライフスタイルや目指す年収に合わせてチャレンジすることが可能です。

税理士の主な働き方と年収の違いについて、以下の3つのパターンを詳しく見ていきましょう。

  • 開業税理士の場合
  • 社員税理士の場合
  • 補助税理士の場合

開業税理士の場合

日本税理士会連合会が、2014年(平成26年)に実施した「第6回税理士実態調査報告書」によると、開業税理士の平均年収(総所得/給与収入)は744万円となっています。

開業税理士は、自分の経験やスキル次第で高い収入が得られる可能性があります。

法人に所属している税理士とは違い、自分の判断でより報酬の高い仕事を受けることも可能です。また、健康やスキルに問題がなければ、定年がないため長く働き続けることもできます。

こうした働き方や、仕事の進め方を自分で決められるのが、開業税理士の魅力と言えるでしょう。

社員税理士の場合

前述の「第6回税理士実態調査報告書」によると、社員税理士の平均年収(総所得/給与収入)は886万円という調査結果となっています。

開業税理士がその事務所を法人化する場合は、「最低2人の社員税理士が必要」と税理士法で定められています。

社員税理士は、一般企業での「役員」に相当します。ただの社員とは異なり、社内での立場は高くなるでしょう。

また、税務だけではなく、法人の経営や事業展開を考える仕事も発生します。

責任は重くなりますが、そのぶん平均年収も高い傾向にあります。

補助税理士の場合

前述の「第6回税理士実態調査報告書」によると、補助税理士の平均年収(総所得/給与収入)は597万円となっています。

補助税理士は、税理士事務所や税理士法人に雇用されて仕事をします。

企業でいうと、役職のない一般社員のようなポジションです。

そのため、開業税理士や社員税理士に比べると年収額は低い傾向にあります。

補助税理士の場合、業務は事務所や法人への依頼をもとに振り分けられるので、営業力に自信がない人でも仕事ができます。

また、開業税理士や社員税理士を目指す人も、まずは補助税理士になると、業務を通して経験を積んだり、知識を深めたりできるでしょう。

【引用】第6回税理士実態調査報告書

税理士になるメリット

税理士になると次のようなメリットがあります。

  • 税理士は生涯現役で働ける
  • 税理士はフリーランスとして独立開業できる
  • 税理士は様々な人との出会いがある
  • 税理士は国内どこでも働ける
  • 税理士は自分のライフプランに合わせて働ける
    1つずつ見ていきましょう。

税理士は生涯現役で働ける

税理士になるメリット1つ目は、生涯現役で働けることです。

税理士には定年がなく、年齢に関係なく活躍し続けられる数少ない職業です。「第6回税理士実態調査」によると、現役で活躍している税理士のうち約半数を占めているのは、50〜60代の方です。

さらに、70〜80代の方の割合も全体の2割を超えています。

税理士は長年培ったさまざまな知識や経験を活かしながら、生涯現役で活躍できる魅力的な資格です。

【参考】第6回税理士実態調査

税理士はフリーランスとして独立開業できる

税理士になるメリット2つ目は、フリーランスとして独立開業できることです。

税理士試験に合格し、実務経験を2年以上積むことで、税理士として登録・開業が可能です。税理士として税理士事務所や企業で働くこともできますが、多くの税理士が独立開業をしています。

国税庁が発表する平成28年度3月末のデータを見てみると全国の税理士登録者は75,643人、そのうち開業税理士が57,683人と、実に8割が独立開業をしていることになります。

独立開業すると自分の知識と営業力でクライアントを確保していくことになるので、大変やりがいがあると言えるでしょう。

税理士は自分のライフプランに合わせて働ける

税理士になるメリット3つ目は、自分のライフプランに合わせて働けることです。

税理士になると、以下のように自分のライフプランに合わせた働き方ができるようになります。

  • 高収入を狙える
    税理士の年収は数百万円から5,000万円以上までさまざまですが、自分の裁量次第で収入をアップすることができます。
  • 自分のペースで仕事ができる
    独立開業すれば自営業と同じなので、全て自分で仕事を進めていくようになります。定年もなく、生涯働きたい人にとってとても魅力のある仕事です。

税理士はさまざまな人との出会いがある

税理士になるメリット4つ目は、さまざまな人との出会いがあることです。

一般企業に勤めていれば、社外との接触や取引先など出会う人が限られてしまいますが、税理士はさまざまな人に出会うことができます。

飲食店のサービス接客業からIT関連の事業主、ものづくり職人、農業・漁業の自営業者などさまざまな業種の方と出会い、一緒に仕事を進めることができます。

税理士の仕事を通して多くの人に出会うこと、様々な業界のことを知ることに喜びを感じられるでしょう。

税理士は国内どこでも働ける

税理士になるメリット5つ目は、国内どこでも働けることです。

税務に関する仕事は日本国内どこへ行っても存在します。顧客の事業が継続する限り仕事はなくならないので、税理士として得た知識を生かせる場所は多いと言えるでしょう。

自分の故郷に戻って仕事がしたい人や、結婚で転居しなければならない場合でも、税理士として仕事を続けることが可能です。

また、税理士の資格を持っているだけでも企業から高い評価を得られるので、就職・転職も有利になるでしょう。

税理士になるデメリット

働き方の自由さなど、税理士になるとさまざまなメリットがあります。それでは逆に、税理士になるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 税理士は資格取得までに時間がかかる
  • 税理士は独立しても高収入とは限らない
  • 常に勉強し続けなければならない
  • 繁忙期は仕事量が大幅に増える

税理士は資格取得までに時間がかかる

税理士になるデメリットの1つ目は、税理士は資格取得までに時間がかかることです。

税理士試験は、少しの勉強で誰もが簡単に合格できるようなものではありません。基本的には税理士の資格を取得しようと思ったら、年単位の時間をかけて試験合格(5科目合格)を目指すことになります。

合格に必要な勉強時間は、選択する科目によって異なります。

例えば、必須科目の簿記論と財務諸表論に加えて、法人税法、相続税法、国税徴収法を選択した場合、勉強時間の目安は合計2,150時間程度です。年間で考えれば、600〜900時間の勉強を約3年続けることになるでしょう。

こうした長期にわたる勉強を続けて、初めて合格に近づけるのが税理士です。資格取得までに時間がかかるというのは、デメリットであると言えるのかもしれません。

税理士は独立しても高収入とは限らない

税理士になるデメリットの2つ目は、税理士は独立しても高収入とは限らないことです。

税理士を目指している人の中には、いずれは独立開業をしたいと考えている人や、独立して高収入になりたいと考えている人もいるでしょう。

しかし、誰もが独立さえすれば高収入になれるわけではありません。

前述の通り「第6回税理士実態調査報告書」によると、開業税理士の平均年収は744万円でした。以下の表は、さらに詳しく、金額ごとの分布を示したものです。

総所得/給与収入※開業税理士
300万円以下31.4%
500万円以下16.7%
700万円以下12.0%
1,000万円以下13.5%
1,500万円以下11.0%
2,000万円以下5.0%
3,000万円以下3.4%
5,000万円以下1.5%
5,000万円以上0.5%
無記入5.0%

【引用】日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」より筆者が編集

開業税理士の場合、稼働時間や働き方がさまざまということもありますが、「300万円以下」「500万円以下」の割合が多くなっています。

開業税理士は、社員税理士や所属税理士とは異なり、法人に所属していないため、依頼が来るかどうかはすべて自分次第です。

新規顧客が増えなかったり、既存顧客に契約を打ち切られたりすると、ダイレクトに収入に影響が出ます。

継続的に依頼を受けたり、新規顧客の獲得ができる人でなければ、高収入を目指すのは難しいでしょう。

常に勉強し続けなければならない

税理士は税に関する情報を常にアップデートしていかなければなりません。

資格が取得できても、そこで勉強が終わるわけではないのです。常に最新の情報を正確に理解し、顧客へのアドバイスを行う必要があります。

業務と勉強を両立するのは非常に大変ですが、税理士の仕事を続ける限りは、勉強も続けていかなければなりません。

繁忙期は仕事量が大幅に増える

前述のとおり、税理士の業務には繁忙期と閑散期があります。

個人が対象であれば確定申告の時期である2〜3月、法人が対象であれば決算の時期である12〜5月頃が繁忙期です。

両者が顧客にいる場合、2〜3月頃は両者の繁忙期が重なる時期となります。

この時期は毎日のように残業時間が増えますし、この時期は土日も休みなく出勤ということもめずらしくありません。

税理士に向いている人

それでは、どういった特徴を持つ人が税理士に向いているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

  • 税務計算が苦にならない人
  • 経営に携わりたい人
  • コミュニケーション能力がある人

税務計算が苦にならない人

税理士に向いている人の1つ目は、税務計算が苦にならない人です。

決算書や収支報告書など、数字が羅列する書類を扱い、正しく税額を導き出すのが税理士の仕事です。これらの書類に記された数字を毎日のようにチェックし、間違いがないかきちんと計算する作業を必ず行う必要があります。

そのうえさまざまな税金の計算方法に精通していなければならず、どんな小さなミスも許されません。数字を見るのが苦にならず、なおかつ計算処理が得意という人は、税理士の適性ありでしょう。

経営に携わりたい人

税理士に向いている人の2つ目は、経営に携わりたい人です。

税理士の仕事は、単に納税額を計算するだけではありません。クライアントの支出状況や売上を見て、経営にとってプラスとなる節税対策のアドバイスをすることも重要職務のひとつです。クライアントの経営状況を把握し、今後どのように進めていくべきかを税務面からサポートしていくため、税理士は間接的に経営の重要な決定事項に関わることになります。

また税理士は独立開業しやすい資格でもあるため、自分で事務所をもって経営していく貴重な経験を積むことも可能です。将来的に経営に興味がある方ほど、税理士向きといえるでしょう。

コミュニケーション能力がある人

税理士に向いている人の3つ目は、コミュニケーション能力がある人です。

税理士は、税のプロフェッショナルであると同時に「接客業」でもあります。クライアントの要望を把握して的確に対応するには、高いコミュニケーションスキルが必要です。

クライアントに税務処理を安心して任せてもらうには、どのようなサービスをどのような形で行うのか、分かりやすく丁寧に説明することが大切であり、それができる税理士こそ信頼され、多くの顧客を獲得できるのです。

人とのコミュニケーションが好きで苦にならない方は、税理士業務に向いているといえるでしょう。

税理士に向いていない人

それでは逆に、税理士に向いていないのはどんな人なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

  • 細かい作業が好きでない人
  • コミュニケーションが苦手な人
  • 数字に苦手意識がある人

細かい作業が好きでない人

税理士に向いていない人の1つ目は、細かい作業が好きでない人です。

税理士の仕事は、細かい作業の連続です。例えば、税金の計算や財務諸表を読み取ったりするために、細かい計算や正しく数字を追う業務が頻繁に発生します。

また、税務に必要な資料や書類をもれなく集めて、金額が正しいか、最新の税法に違反していないかも確認が必要です。そのため、細かい作業が好きでない人は、税理士に向いていないと言えるでしょう。

コミュニケーションが苦手な人

税理士に向いていない人の2つ目は、コミュニケーションが苦手な人です。

税理士について「あまり人とコミュニケーションをとらなくて済む」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それは間違いです。

むしろ税理士は、依頼者からの相談を受けたり、経営におけるコンサルティングをしたりと、コミュニケーションが非常に多く発生する仕事です。

そのため、コミュニケーションが苦手な人は税理士に向いていないと言えるでしょう。

数字に苦手意識がある人

税理士に向いていない人の3つ目は、数字に苦手意識がある人です。

税理士の仕事では、日々多くの数字を読み取り、計算し、正しい金額を導き出す作業が発生します。税額を算出するにしても、決算書を作成するにしても、うっかりミスは決して許されません。

それがもとで税務が正しく行えなくなったり、税額が変更になったりすると、依頼者の信頼を失い、トラブルや契約打ち切りを招いてしまいます。

少なくとも数字を見続けたり正確に計算し続けることが苦手な人は、税理士に向いていないといえるでしょう。

税理士になるには

税理士資格についても少し触れてきましたが、試験に合格さえできれば、すぐに税理士として働けるのかというと、そうではありません。

税理士になるにはどういった資格や経験が必要となるのか、詳しく見ていきましょう。

  • 税理士試験に合格して2年以上の実務経験を積む
  • 「弁護士」か「公認会計士」の資格を取得する
  • 税務署で23年以上勤務する

税理士試験に合格して2年以上の実務経験を積む

税理士試験に合格し、税理士事務所などで実務を2年以上経験すれば、税理士登録ができるようになります。

なお令和5年度(2023年度)からは、税理士試験の受験資格の要件が緩和されました。

簿記論・財務諸表論に関しては受験資格の制限がなくなるため誰でも受験可能になっています。

税法科目は、社会科学の科目を1科目以上履修していれば受験可能です。

「弁護士」か「公認会計士」の資格を取得する

「弁護士」「公認会計士」のうちいずれかの資格があれば、税理士試験を受けなくても税に関する業務を行えます。

司法試験や公認会計士試験も法律や会計処理に関する知識が問われるため、この分野で十分な資質と技量が認められれば、税理士になる道が開かれます。

弁護士法3条2項には「弁護士は、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」と規定されており、弁護士が税理士業務を行える法的根拠となっています。

一方、公認会計士試験合格者は、税法に関する研修を修了すれば、税理士資格を得ることができます。

税務署で23年以上勤務する

税務署で23年以上キャリアを積めば、試験を受けずとも税理士資格が得られます。

税務署勤務を長く続ければ、税務に関する知識と実務スキルの習得者と見なされ、独立開業も可能です。実際、税務署を退職後に税理士として活動する方もたくさんいます。

【仕事がなくなる?】税理士の将来性とは

税理士について「いずれAIなどのテクノロジーに仕事を取られるのではないか」と言われることがあります。

しかし、AIなどといったテクノロジーの発達は、税理士の仕事を奪うものではありません。

むしろこうしたテクノロジーを利用すれば、税理士は「人間にしか発揮できない価値」をより多く提供できるでしょう。

たとえば、顧客との綿密なコミュニケーションと税務の知識が必要なコンサルティング業務などは、税理士にしかできません。

こうした業務がすべてAIに奪われてしまうとは、考えにくいのではないでしょうか。

今後は、税理士という仕事の可能性がさらに広がっていくでしょう。

重要なのはテクノロジーなどもうまく利用しながら、時代に求められる税理士像に適応していくことです。

時代にあわせて対応できる人であれば、税理士は今後も十分に需要があり、生涯にわたって活躍し続けられる職業と言えるでしょう。

税理士と相性のいい資格

業務面で税理士と相性の良い資格としては、主に以下の資格が挙げられます。

  • 行政書士
  • 中小企業診断士
  • ファイナンシャル・プランナー
  • 社会保険労務士

行政書士

行政書士は、会社の設立や業務の許認可に関する法的な手続を行うことのできる資格です。行政書士資格を有する税理士であれば、会社の設立段階から業務に携わり、設立した後の会社についてそのまま引き続き税務に関する業務を行うことができます。なお、行政書士は税理士資格を持っていれば試験が免除になります。

中小企業診断士

中小企業診断士は、税務以外をも含んだ総合的な経営コンサルタントに関する国家資格です。会社の具体的なコスト削減策や、売り上げ拡大策など、税務の知識だけでは今一歩専門的なアドバイスを行いにくい領域についてまでアドバイスをすることができるようになります。なお、税理士試験合格者は、中小企業診断士第1次試験のうち「財務・会計」科目が免除になります。

ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナーは、企業の財務会計というよりは個人のお金に関する様々な問題に対し適切に支援する専門家です。個人事業主や中小企業を主な顧客とする税理士がファイナンシャル・プランナーの資格を有していると、事業主や社長個人の経済状況のサポートも行うことができ、クライアントからの信用向上につながります。

社会保険労務士

社会保険労務士は、人事や社会保険に関するスペシャリストとして、就業規則やパワハラ・セクハラといった労務問題にアプローチします。税務だけでなく労務問題にも適切なアドバイスができるようになれば、企業からの信頼はさらに高まることでしょう。

まとめ

今回取り上げた税理士の仕事について、ポイントをおさらいしておきましょう。

  • 税理士は税務書類の作成、税務代理、税務相談などの業務を行う税務のプロ
  • 資格取得に時間はかかるが、独立開業や生涯現役で働き続けることもできる
  • コンサルティング業務などで価値を発揮できれば、税理士の将来性は十分にある

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