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税理士試験の難易度を分析-どんな人が合格しやすい?

税理士試験の難易度について教えてください。やはり司法試験や公認会計士試験よりは簡単なのでしょうか。また、高学歴の人のほうが受かりやすいのでしょうか。

試験の形式も科目も異なる他資格の試験と比較してみても、税理士試験が簡単だと言い切ることはできません。しかし学歴と合格率に相関関係が無く、その意味で正しく努力すれば成果の出る、フェアな試験であるといえます。

税理士試験の難易度を見る方法はたくさんの切り口がありますし、学習している方が気になってしまうお気持ちもわかります。
しかし、税理士資格取得を目指すみなさんにとって、実はあまり難易度を意識する必要はないのではないかとも思っています。
そこで、まず最初に、どんな人が合格しやすいかを見ていきましょう。
そのうえで税理士試験の難易度を、その他資格と比較して見ていきましょう。


税理士試験は難しい?~合格しやすい人の特徴

合格率など他人のデータで「過度に」一喜一憂しない人

たしかに科目ごとの合格率は、比較的合格しやすい科目を検討するために有用なデータです。しかし、合格率はあくまで、あなた自身ではなく全受験生の点数などから導いたデータです。したがって合格率が高いことと、あなたがその科目で合格点を取ることができるかはまったく別の問題です。

合格率で試験科目を選択する方法もありますが、あまりおすすめできません。それより、自分が勉強を続けるだけの興味のある科目や、将来目指したキャリアで活かせる科目を選択することが重要です。
合格率だけで科目選択をしてしまうと、練習問題や模擬試験の結果に一喜一憂し、「他の科目を選択すればよかった」と後悔することがあるかもしれません。その時に、「好きだから」や「この道で仕事を取っていくんだ」という意識を持っていると、自然と前向きに勉強を進められるものです。

自分の立てた学習計画を忠実に実行、修正ができる人

税理士試験は科目合格制度があるため、社会人でも仕事と両立した受験勉強がしやすいという利点があります。

しかしこの利点も、効率的な学習計画を立てて、忠実に実行していかなければ、いつまでもダラダラと勉強を続けてしまうという結果になってしまいます。その結果、税理士試験に合格できなければ、お金も時間も非常にもったいないことになります。

そうならないよう、学習時間ではなく学習の質に着目して、質の高い学習を目指しましょう。

質のよい学習をするために大事なのは、学習期間を設計し、毎日のタスクを着実にこなし、できなかった部分については適宜修正していくという「学習マネジメント能力」です。この能力もまた、税理士試験合格には必要です。

税理士試験の難易度とは?

次に、税理士試験の科目別合格率を見た上で、その他難関資格との比較や、生活スタイルに合わせたおすすめの学習方法をお伝えしていきます。

科目別の合格率

平成29年度以降の科目別合格率は、以下のように推移しています。

科目区分

科目名

令和2年度試験合格率

令和元年度試験合格率

30年度試験合格率

29年度試験合格率

必須科目

簿記論

22.6% 17.4% 14.8% 14.2%

財務諸表論

19.0% 18.9% 13.4% 29.6%
選択必修科目

法人税法

12.0% 14.7% 11.6% 12.1%

所得税法

16.1% 12.8% 12.3% 13.0%
選択科目

相続税法

10.6% 11.7% 11.8% 12.1%

消費税法
酒税法

12.5%
13.9%
11.9%
12.4%
10.6%
12.8%
13.3%
12.2%

国税徴収法

12.2% 12.7% 10.7% 11.6%

住民税
事業税

18.1%
13.1%
19.0%
14.8%
13.5%
11.0%
14.3%
11.9%

固定資産税

13.5% 13.7% 14.9% 13.3%

国税庁ホームページ(令和2年度(第70回)税理士試験結果より抜粋)

合格率は年によって多少ばらつきがありますが概ね10~20%くらいといわれています。いずれにしても、国家資格ならではの難しさがあり、中途半端な勉強をしていては合格できないことが分かります。

学歴別合格率(令和2年度)

学歴ごとに見た合格率は、以下のとおりです。

学歴 受験者数(A) 5科目到達者数 一部科目合格者数 合格者数合計(B) 合格率(B/A)
大学卒 20,166人 509 人 3,387人 3,896人 19.3%
大学在学中 1,143人 2人 371人 373人 32.6%
短大・旧専卒 676人 13人 104人 117人 17.3%
専門学校卒 2,409 人 72人 333人 405人 16.8%
高校・旧中卒 1,912人 38人 418人 456人 23.8%
その他 367人 14人 141人 155人 42.2%
合計 26,673人 648人 4,754人 5,402人 20.3%

国税庁ホームページ(令和2年度(第70回)税理士試験結果より抜粋)

受験者の中で最も多くを占めるのが、大学卒の受験者です。次に、専門学校卒、高校・旧中卒、大学在学中、短大・旧専卒、その他の順となっています。一方、最も合格率が高いのは、大学在学中の受験者です。合格率の面では、若く記憶力が高いうちに受験する人が若干有利といえそうです。


年齢別合格率(令和2年度)

年齢ごとに見た合格率は、以下のとおりです。

年齢 受験者数(A) 合格者数 一部科目合格者数 合格者数合計(B) 合格率(B/A)
41歳以上 10,105人 247人 1,087人 1,334 人 13.2%
36~40歳 4,343人 136人 696人 832人 19.2%
31~35歳 4,619人 126人 876人 1,002人 21.7%
26~30歳 3,890人 96人 881人 977人 25.1%
25歳以下 3,716人 43人 1,214人 1,257人 33.8%
合計 26,673人 648人 4,754人 5,402人 20.3%

国税庁ホームページ(令和2年度(第70回)税理士試験結果より抜粋)

受験者の中で最も多く占める年齢層は、41歳以上の受験者です。次に、31~35歳、36~40歳、26~30歳、25歳以下の順となっています。一方、合格率が高いのは、25歳以下や26~30歳の受験者層です。ただし、41歳以上の層でも合格率は10%超となっており、一定の割合で合格者が存在します。若いうちに受験すれば有利ですが、年齢にかかわりなく正しい努力をすれば合格できる試験ともいえます。


他の試験との比較

司法試験との比較

国家試験最難関とされる司法試験も、新司法試験制度に移行してからの合格率は20%前後と比較的高い数値で推移しています。そのため、一部には「司法試験は簡単になった」という声も聴きます。

しかし、3科目の短答式試験と選択科目を含め8科目の論文式試験を課す司法試験は出題範囲が膨大で、文章構成力、論理的思考力などあらゆるセンスが問われます。税理士試験とは試験科目や試験形式が大きく異なるため一概に言うことはできませんが、一般的には司法試験は税理士試験よりも難関とされています。

司法試験の方が難関とされるのは、後述する公認会計士試験同様、すべての試験が一発勝負である点にも起因しているようです。

公認会計士試験との比較

税理士と並ぶ会計関連資格である公認会計士試験は、合格率が10%前後で推移しており、税理士試験よりも「狭き門」であることがわかります。
公認会計士試験の試験科目は、財務会計論(簿記と財務諸表論)、管理会計論、企業法、監査論、租税法に選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうちから1つ)を加えた6科目です。
問題のレベルにはそう大きな差はないと言われていますが、税理士試験と異なり科目合格制度がないため、毎年の試験が一発勝負で、合格点に達していない場合は全ての試験が受けなおしとなります。

もっとも試験科目には重なり合う部分もあるため、税理士試験に合格後、スキルアップの一環として公認会計士試験に挑戦する、という順番が良いかもしれません。

実は学歴で合格率に差は出ない?実務経験が生かされる資格

ここまでで、科目別合格率と受験資格別合格率、2つのデータを見てきました。

科目については、試験の性質上、どの科目を選ぶかによって合格率に若干ながら差が出てしまうことは事実です。

しかし受験資格、特に学歴については、大学卒の合格率を高校卒の合格率が上回るなどの現象が生じています。したがって、大学を出ていないからといって尻込みする必要はまったくありません。むしろ高校卒でも、人より早く社会に出て実務経験を積んだということが、税理士試験において大きなアドバンテージとなり得るのです。

学習スタイル別・学習の方針(一例)

大学生(専業受験生を含む)

大学生は大学受験を終えたばかりでまだ若いということもあり、知識の吸収力が高い傾向にあります。実際に現役大学生の合格率が高いことも、そのことを裏付けています。したがって、大学入学後すぐに税理士試験の受験勉強を始めることで、在学中に全科目合格して卒業とともに税理士として働き始めることも十分現実的といえます。

また、現役大学生であれば、税理士試験の受験科目を大学の講義として選択・履修することで、受験科目に対するより深い理解を得ることもできます。

社会人

社会人は当然仕事があり、勉強時間が限られてきます。ただし、学生にくらべて生活リズムを一定に保ちやすいというメリットもあります。したがって限られた時間を計画的に学習時間にあてていけば、うまく学習習慣が定着し、結果的に最後まで継続して学習を続けていくことが可能になります。
まずは自分の生活リズムをよく考え、ムリなく勉強に充てられる時間を作り出すところからはじめていきましょう。

日商簿記等により受験資格を得た方

高校卒業後働き出し、日商簿記等により受験資格を得た方は、さきほど述べたとおり社会に早く出て実務経験を積んだ分、税理士試験において他のライバルより優位に立つこともあります。
一方で、大学生が講義やゼミで行うような、大量の文献を読んで文意を早く理解するといった経験が少ない場合も考えられます。
税理士試験、特に簿記論などでは、問題を早く理解してすばやく解く、スピードが要求されます。そのための訓練は、より多くの練習問題にあたることなどで積んでいく必要があります。」

(出典・リンク)

※国税庁ホームページ