税理士は過半数が60歳以上
税理士は過半数が60歳以上で、平均年齢は高めです。
以下のグラフは、税理士会が公開している税理士の年齢分布データです。
上記によると、20代の税理士は全体のわずか0.6%、30代も10%程度です。
一方で60代が全体の30%を占めており、70代以上の税理士も13%以上となっています。
全体の半数以上を60代以上の税理士が占めているという現状は「高齢化が進んでいる」だけでなく「高齢になっても働ける環境である」ともいえます。
なお、以下の従事年数を見ても20年以上の方が過半数を超えており、長く活躍できる業界でもあります。
税理士の過半数が60歳以上である理由
前述の通り、他の職業と比較しても、税理士は特に高齢の方が多い傾向にあります。
そこで、ここでは税理士の平均年齢が高い理由をピックアップしてご紹介します。具体的には以下の4点です。
- 税理士には定年がないから
- 税理士試験にチャレンジする年齢の幅が広いから
- 税務署のキャリアを終えて税理士になる方もいるから
- 受験者が減っているから
それではこれらの理由について詳しくご紹介します。
①税理士には定年がないから
一般企業に勤めている方の場合、60歳から65歳までの間に定年を迎え、退職することになります。
人の入れ替わりが起こることで平均年齢はそれほど高くなりません。
一方で税理士には定年がなく、心身が健康であれば何歳になっても現役で働き続けられます。
特に開業税理士の場合、顧客との契約期間が長くなると結びつきもその分だけ強くなります。
顧客としては自社の経営状況などを把握している税理士との長期契約を望む傾向にあるため、高齢になってもリタイアせず仕事を続けられるという現状もあります。
さらに、税理士事務所を開業していても後継者がいないことでリタイアできないというケースもあります。
②税理士試験にチャレンジする年齢の幅が広いから
令和4年度の学歴・年齢別の受験者、合格者数は以下の通りです。
区分 |
受験者数 |
合格者数等 |
合格率 |
|||
学歴等区分 |
5科目到達者数 |
一部科目合格者数 |
合格者数合計 | |||
学歴別 | 大学卒 | 21,822 | 493 | 3,561 | 4,054 | 18.6% |
大学在学中 | 1,463 | – | 436 | 436 | 29.8% | |
短大・旧専卒 | 660 | 16 | 75 | 91 | 13.8% | |
専門学校卒 | 2,591 | 59 | 404 | 463 | 17.9% | |
高校・旧中卒 | 1,962 | 44 | 389 | 433 | 22.1% | |
その他 | 355 | 8 | 141 | 149 | 42.0% | |
年齢別 | 41歳以上 | 10,805 | 274 | 965 | 1,239 | 11.5% |
36〜40歳 | 4,407 | 112 | 743 | 855 | 19.4% | |
31〜35歳 | 4,581 | 114 | 901 | 1,015 | 22.2% | |
26〜30歳 | 4,131 | 82 | 911 | 993 | 24.0% | |
25歳以下 | 4,929 | 38 | 1,486 | 1,524 | 30.9% | |
合計 | 28,853 | 620 | 5,006 | 5,626 | 19.5% |
税理士試験には年齢制限がないこともあり、幅広い年齢層の方がチャレンジしています。
上記のデータを見ても、全受験者数約28,000人のうち、41歳以上の受験者が10,000人以上と非常に高い割合を占めています。
40代以上になってから税理士を目指すという方が多く、こういった点も平均年齢が高くなっている理由のひとつです。
③税務署のキャリアを終えて税理士になる方もいるから
税理士の資格を得るためには税理士試験に合格する必要があります。
この試験は複数の科目で構成されており、一定の条件を満たせば一部科目が試験免除となります。
試験免除の条件にはさまざまなものがありますが、そのひとつが税務署でのキャリア有無です。
10年または15年以上(学歴等の条件によって異なる)税務署で勤務した経験のある方は、税法に関する科目が免除されます。
そして、23年または28年以上税務署に勤務し、さらに指定研修を修了すれば会計学に属する科目の免除が受けられます。
科目免除を受けられれば、それだけ試験対策に必要な時間も少なくなるため有利です。
科目免除を受けるために税務署でのキャリアを終えてから、税理士を目指す方も少なくありません。
④受験者が減っているから
平成27年から令和4年までの8年間の受験者数の推移は以下の通りです。
年度 |
平成27 |
平成28 |
平成29 |
平成30 |
令和元 |
令和2 |
令和3 |
令和4 |
受験者 | 38,175 | 35,589 | 32,974 | 30,850 | 29,779 | 26,673 | 27,299 | 28,853 |
【引用】国税庁「税理士試験」
税理士試験の受験者数は年々減少傾向にあり、平成27年から令和元年までの5年間で受験者数は1万人近くも減少したことになります。
新型コロナウイルスなども影響していると考えられますが、それ以前から受験者数は減少傾向にありました。
受験者数の減少にはいくつかの理由が考えられますが、特に大きいのは税理士試験に合格するためには膨大な勉強時間が必要であるという点です。
近年では働き方の多様化も進んでおり、1つの資格やスキルのみに頼ることに不安を抱く方が増えました。
そのため、合格に時間のかかる税理士という資格が敬遠されるようになったと言われています。
また、クラウド会計システムなども発達したことで記帳代行などの税理士業務が減少したことに、不安を抱かれるようになったとも考えられます。
受験者数が減少すると新しく税理士になる人の数も減り、結果として平均年齢はますます高くなっていくという仕組みです。
税理士の人数はどう推移している?
税理士登録者数の推移は以下のようになっています。
会計年度 |
登録者数 |
昭和35(1960)年度 | 10,888人 |
昭和40(1965)年度 | 15,827人 |
昭和45(1970)年度 | 24,024人 |
昭和50(1975)年度 | 32,436人 |
昭和55(1980)年度 | 40,535人 |
昭和60(1985)年度 | 47,342人 |
平成2(1990)年度 | 57,073人 |
平成7(1995)年度 | 62,550人 |
平成12(2000)年度 | 65,144人 |
平成17(2005)年度 | 69,243人 |
平成22(2010)年度 | 72,039人 |
平成27(2015)年度 | 75,643人 |
平成28(2016)年度 | 76,493人 |
平成29(2017)年度 | 77,327人 |
平成30(2018)年度 | 78,028人 |
令和元(2019)年度 | 78,795人 |
令和2(2020)年度 | 79,404人 |
令和3(2021)年度 | 80,163人 |
【引用】国税庁「税理士制度」
税理士の人数は年々増加し続けています。昭和35年から令和3年までの間で約8倍にまで増加しています。
受験者数が減っているのにも関わらずなぜ税理士の人数が増えているのかといえば、ベテラン税理士が辞めずに長く続けているためです。
税理士の人数が増えれば増えるほどライバルも増えますが、同時に税理士の需要が高いということも意味します。
税理士試験の勉強を30代・40代から始めることは可能?
資格取得を考える際に年齢がネックになってしまう、というケースも少なくありません。
10〜20代ならまだしも、30〜40代になるとチャレンジするべきか迷ってしまいがちです。
税理士の場合、先ほどもご紹介した通り受験者の年齢層が比較的高く、年齢に関係なくチャレンジできる資格です。
社会人経験を生かせる資格であり、キャリアアップにもおすすめです。
また、60歳以上で活躍する税理士も多く、40代になって資格取得しても遅いということはありません。
ただ、1つ注意点があります。先ほど令和4年度の試験結果で41歳以上の受験生がもっとも多いという情報がありましたが、その中には20代や30代から何年もかけて挑戦し続けている方も大勢います。
さらに税理士試験は、絶対評価ではなく相対評価で合否が決まります。
合格するには、何年も学習を続けている受験者との競争になるという点は頭に入れておくべきです。
税理士になるには3つの方法がある
税理士になるためには以下の3つの方法があります。
- 税理士試験に合格・2年以上の実務経験を積む
- 弁護士か公認会計士の資格を取得する
- 税務署で所定の年数以上勤務する
それぞれの方法について詳しくご紹介します。
①税理士試験に合格・2年以上の実務経験を積む
税理士試験に合格した後、税理士事務所などで実務を2年以上経験すれば税理士資格が与えられます。
税理士試験には受験資格(会計科目については不要)の制限が設けられており、試験を受けるには主に以下のような条件を満たす必要があります。
- 大学(短大含む)または高等専門学校で社会科学を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 日商簿記検定1級、もしくは全経簿記検定上級取得者
- 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
- 司法試験、公認会計士試験(短答式)の合格者
②弁護士か公認会計士の資格を取得する
「弁護士」もしくは「公認会計士」の資格があれば、同時に税理士資格も得られます。
ちなみに、弁護士法3条2項には「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」と規定されており、弁護士が税理士業務を行える法的根拠となっています。
【引用】弁護士法第3条2項
③税務署で所定の年数以上勤務する
税務署で23年キャリアを積めば、試験を受けずとも税理士資格が得られます。
税務署勤務を長く続ければ、税務に関する知識と実務スキルの習得者と見なされ、独立開業も可能です。
【あわせて読みたい】税理士試験とは?資格試験概要と科目合格制度の活用方法教えます
税理士を目指すために必要な勉強時間はどのくらい?
税理士試験に合格するために必要な勉強時間はどのくらいでしょうか?
以下の表は、税理士試験の科目ごとに必要な勉強時間についてまとめたものです。
科目 | 合格率
令和4年度 |
配点(例年) | 勉強時間(目安) | ||
理論 | 計算 | ||||
必須 | 簿記論 | 23.0% | 0% | 100% | 450時間 |
財務諸表論 | 14.8% | 50% | 50% | 450時間 | |
選択必須 | 所得税法 | 14.1% | 50% | 50% | 650時間 |
法人税法 | 12.3% | 50% | 50% | 650時間 | |
選択 | 相続税法 | 14.2% | 50% | 50% | 450時間 |
消費税法 | 11.4% | 50% | 50% | 300時間 | |
酒税法 | 13.2% | 40% | 60% | 150時間 | |
国税徴収法 | 13.8% | 0% | 100% | 150時間 | |
住民税 | 17.2% | 50% | 50% | 200時間 | |
事業税 | 14.1% | 50% | 50% | 200時間 | |
固定資産税 | 18.4% | 50% | 50% | 250時間 |
上記ではそれぞれ150〜650時間程度となっていますが、科目ごとに試験を受けて合格を目指していくため、勉強時間は数年単位で考える必要があります。
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- スキマ時間を有効活用できる
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それぞれのポイントについて詳しくご紹介します。
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【あわせて読みたい】学習スタイル
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毎回こまめに練習を重ねることで、本番でも実力を発揮しやすくなるでしょう。
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まとめ
ここでは税理士の平均年齢や登録者の人数などについて詳しく紹介してきました。最後に今回のポイントをおさらいします。
- 税理士の過半数は60歳以上
- 税理士には定年がなく、何歳からでもチャレンジできる
- 受験者数は減少傾向にあるが、税理士の登録者数は年々増加し続けている
- 税理士になる方法は3つある
- 税理士試験の対策にはオンライン講座がおすすめ
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