
税理士は人気の国家資格ですが、一方で「割に合わない資格」と言われることがあります。主に理由として挙げられるのは「試験が難しい割に稼げない」「独立しても食べていけない」などですが、それは事実なのでしょうか?
この記事では、税理士が割に合わないと言われる理由、年収をアップさせる方法について紹介します。
もう辞めたい?税理士が「割に合わない」と言われる理由
税理士が「割に合わない」と言われてしまう理由には、主に以下の3つがあります。
それぞれの理由について、詳しく解説します。
- 試験が難しすぎる
- 資格を取っても年収アップできるとは限らない
- ライバルとの競争が激しくなっている
試験が難しすぎる
税理士試験は、一度の試験で合格できるものではありません。
科目ごとに試験を受け、5科目すべての試験で合格基準を上回ることができて、初めて合格となります。
5科目すべてに合格するには、どんなに早くても2年、多くの人は3〜5年程度の期間がかかります。
税理士試験に合格するには数年単位の長い勉強期間が必要となるため、途中で挫折してしまう人も少なくありません。
数年間勉強を続けて合格を勝ち取るためには、資格講座を利用するなど、途中で挫折しにくくなる工夫が必要です。
【あわせて読みたい】税理士試験の難易度を合格率・勉強時間から調査!試験勉強法も徹底解説
資格を取っても年収アップできるとは限らない
前述の通り難易度の高い税理士試験ですが、試験に合格し、独立できたからといって必ずしも年収アップできるわけではありません。
開業税理士の場合、社員税理士や所属税理士とは異なり、法人に所属していないため、依頼が来るかどうかはすべて自分次第です。
営業がうまくいかずに新規顧客を獲得できなかったり、既存顧客の契約を打ち切られたりしてしまうと、ダイレクトに影響が出てしまいます。
また、独立開業の際には、事務所の準備などのコストがかかります。
十分な収入が得られなければ、初期投資の回収にも時間がかかってしまうでしょう。
一方で、独立開業すれば社員税理士や所属税理士に比べて大幅に年収をアップさせられる可能性もあります。
将来的に独立したいのであれば、上記のようなリスクがあることを留意しつつ税理士試験にチャレンジするようにしましょう。
ライバルとの競争が激しくなっている
税理士は、独立開業する人が多い職業です。
言い換えれば、自分の周囲にも、同じように独立した税理士がたくさんいるということです。
ライバルである他の税理士たちと差別化を図るには、自分の強みや専門性、得意分野などを強化していくしかありません。
もし一般的な税務に関する基礎知識しかなく、これといった強みや専門性のない税理士のままでいるとライバルたちとの差別化ができないため、競争に勝つのは難しいかと思います。
競争に打ち勝つには、ライバルが参入しにくい市場で専門性を高めることが大切です。
たとえば、国際税務に詳しい税理士、事業継承やM&Aの知識が豊富な税理士などは、まだまだ担い手が少ないため、専門性を高めていけば、将来にわたって活躍できるでしょう。
税理士の平均年収
税理士の働き方は1つではありません。自分のライフスタイルや目指す年収に合わせてチャレンジすることが可能です。
税理士の主な働き方と年収の違いについて、以下の3つのパターンを詳しく見ていきましょう。
- 開業税理士の場合
- 社員税理士の場合
- 補助税理士の場合
開業税理士の場合
日本税理士会連合会が、2014年(平成26年)に実施した「第6回税理士実態調査報告書」によると、開業税理士の平均年収(総所得/給与収入)は744万円となっています。
開業税理士は、自分の経験やスキル次第で高い収入が得られる可能性があります。
法人に所属している税理士とは違い、自分の判断でより報酬の高い仕事を受けることも可能です。また、健康やスキルに問題がなければ、定年がないため長く働き続けることもできます。
こうした働き方や、仕事の進め方を自分で決められるのが、開業税理士の魅力と言えるでしょう。
社員税理士の場合
前述の「第6回税理士実態調査報告書」によると、社員税理士の平均年収(総所得/給与収入)は886万円という調査結果となっています。
開業税理士がその事務所を法人化する場合は、「最低2人の社員税理士が必要」と税理士法で定められています。
社員税理士は、一般企業での「役員」に相当します。ただの社員とは異なり、社内での立場は高くなるでしょう。
また、税務だけではなく、法人の経営や事業展開を考える仕事も発生します。
責任は重くなりますが、そのぶん平均年収も高い傾向にあります。
補助税理士の場合
前述の「第6回税理士実態調査報告書」によると、補助税理士の平均年収(総所得/給与収入)は597万円となっています。
補助税理士は、税理士事務所や税理士法人に雇用されて仕事をします。
企業でいうと、役職のない一般社員のようなポジションです。
そのため、開業税理士や社員税理士に比べると年収額は低い傾向にあります。
補助税理士の場合、業務は事務所や法人への依頼をもとに振り分けられるので、営業力に自信がない人でも仕事ができます。
また、開業税理士や社員税理士を目指す人も、まずは補助税理士になると、業務を通して経験を積んだり、知識を深めたりできるでしょう。
【引用】第6回税理士実態調査報告書
【あわせて読みたい】税理士の年収・給料はどれくらい?主な働き方、収入アップの方法も解説
税理士が年収をアップさせる方法
税理士が年収をアップさせる方法は、主に以下の3つがあります。
それぞれの方法について、詳しく解説します。
- 独立開業する
- 昇格・転職する
- 所属税理士から社員税理士になる
独立開業する
税理士が年収・給料を上げる方法の1つ目は、独立開業することです。
税理士は独占業務を持つ資格であるため、独立開業しやすいメリットがあります。
独立開業することによって、平均を上回る年収を目指すことも可能です。
また、自分の事務所を持って顧客の悩みを解決していくことは非常にやりがいがあります。
独立すれば責任はすべて自分持ちですが、その分年収アップや大きなやりがいを得られるメリットを享受できるでしょう。
昇格・転職する
税理士が年収・給料を上げる方法の2つ目は、昇格・転職することです。
税理士法人や一般企業などで働く場合、昇格や転職などによって収入アップを目指すことができます。
キャリアを積み、十分な成果を出して評価されれば昇格し、収入アップが可能です。
また、現在所属している税理士法人や一般企業などから転職するのもひとつの方法です。
すでにご紹介した通り、税理士法人も規模などによって平均年収は大きく異なります。
そのためリスクはありますが、思い切ってより規模の大きな税理士法人などに転職することで収入アップを目指せます。
所属税理士から社員税理士になる
税理士が年収・給料を上げる方法の3つ目は、所属税理士から社員税理士にキャリアチェンジすることです。
所属税理士は、税理士法人に税理士として雇われている人を指します。
主に、補助的な業務を中心に行います。
一方で社員税理士は、複数の税理士が会社のような業態で働いている中で、その一員として業務を行っている人を指します。
しかし、所属税理士のように「雇用されている立場」とは異なり、「共同経営者(=役員)のような立場」に当たります。
まず所属税理士として実務経験を積み、社員税理士にキャリアチェンジすることで、年収・給料をアップさせることが可能です。
税理士に向いているのはどんな人?
ここまで、税理士の働き方や年収などについて解説をしてきましたが、税理士の仕事に向いているのはどんな人でしょうか。
税理士に向いている人の特徴については、以下の記事を参考にしてください。
【あわせて読みたい】税理士とはどんな職業?仕事内容や税理士になる方法について解説
税理士は割に合わない資格なのか
近年、AIなどの進化によって多くの職業が奪われてしまうといった声も聞かれるようになりました。
税理士の仕事の分野においても、税金の基本的な計算作業といった一部の業務はAIなどに代替されていく可能性は十分にあります。
だからといって、税理士に将来性がないわけではありません。
税理士は、税金に関する各種手続きなどを行うのみでなく、企業や事業者などの顧客にとって税に関する相談ができるアドバイザーという役割を担っています。
税金制度は常に変化し続けており、企業や事業者などにとって税金に関する悩みは尽きることはありません。
それだけに、税のプロフェッショナルである税理士への需要がなくなることはないと考えられます。
【あわせて読みたい】税理士の業務内容は?相性の良い資格は?
まとめ
今回は、税理士の仕事が割に合わないと言われる理由や、税理士の働き方、年収をアップさせる方法などをご紹介してきました。
- 税理士は試験の難易度が高く、収入増も確実ではないため割に合わないと言われがち
- 税理士の働き方には開業税理士・社員税理士・所属税理士があり平均年収も異なる
- 年収アップには独立開業や社員税理士、大手法人への転職などを目指す方法がある
税理士は、働き方や専門分野次第では、高収入を得ることも十分に可能な職業です。
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