
「理系から税理士を目指すことは可能?」という疑問にお答えします。結論から言えば「可能だが受験資格を満たす必要がある」です。
この記事では、理系の方が税理士試験の受験資格を満たす方法や、税理士を目指すメリット・デメリットについて紹介します。
税理士になるには文系理系、どっちが有利なのか
結論からいうと、税理士試験を受験するためには文系のほうが有利です。
なぜなら、文系のほうが税理士試験の受験資格を満たしやすいからです。
特に法学部や経営学部、経済学部の人であれば、大学で学んだ知識をそのまま税理士試験に生かしやすいでしょう。
理系の人でも受験資格を満たすことは可能ですが、文系の人のほうが受験資格が取得しやすいといえます。
理系から税理士を目指すメリット
税理士試験を受験するためには文系のほうが有利ですが、理系から税理士を目指すメリットもあります。
理系の人は数字に強く、論理的思考が身についています。
税理士の主な業務である税務業務や会計業務には「計算」が必須です。
また、理系であれば、膨大な数字を相手にするこれらの業務においても、苦手意識やストレスを感じることなく業務を遂行できるでしょう。
「理系だから」とあきらめるのではなく、理系の持ち味を活かせる業務もあることも理解し、税理士試験への挑戦を考えてみましょう。
理系から税理士を目指すデメリット
理系から税理士を目指すデメリットとして挙げられるのが、文系に比べて税理士試験の受験資格を満たしにくい点です。
税理士の受験資格の一つとして「大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者」があります。
文系である場合、社会科学に属する科目の単位を取得しやすいですが、理系の場合は取得する機会が少なく、社会科学関連の単位を持っていない人も多いでしょう。
令和5年度税理士試験より受験資格が緩和
税理士試験の受験資格は、令和5年度(2023年度)実施分より要件が緩和されました。
緩和されたのは以下の事項です。
- 簿記論・財務諸表論の受験資格の制限が撤廃
- 税法科目の履修科目要件が緩和
1つずつ見ていきます。
簿記論・財務諸表論の受験資格の制限が撤廃
簿記論・財務諸表論の受験資格の制限が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
撤廃される以前は受験資格に制限があったため、大学の3年次以降、もしくは日商簿記1級を取得してから受験するのが一般的でした。
しかし、この受験資格の制限が撤廃されたことにより、誰でも税理士試験に挑戦できる機会が得られるようになったのです。
税理士試験は科目合格制で、合格すれば生涯有効なので、早いうちに試験に挑戦できればより早期の全科目合格が達成しやすくなるでしょう。
税法科目の履修科目要件が緩和
税法科目の履修科目要件が緩和され、法律や経済分野以外の履修でも受験が可能となりました。
従来は、法律学または経済学に属する科目を1科目以上履修していなければ税法科目は受験できませんでした。
しかし、令和5年度(2023年度)より科目要件の「法律学または経済学」が「社会科学」という広範囲の学問に拡充されました。
法律学や経済学に属する科目を履修するには、一般的に法学部や経済学部に進学しなければ難しいため、緩和する前は法学部や経済学部の学生以外は試験にチャレンジしにくい状況でした。
しかし、社会科学は法律・経済・政治・行政・社会・経営・教育・福祉・情報などが含まれる幅広い学問分野なので、学部に関係なく履修しやすい科目です。
つまり文学部や理工学部など、法律や経済学に関連しない学部の大学生でも受験資格を得やすくなりました。
税理士試験に必要な4つの受験資格
税理士試験のうち税法科目を受験するには「学識」「資格」「職歴」「認定」の条件のうち、1つを満たす必要があります。
ここからは、受験資格の詳細をみていきましょう。
税理士試験に必要な受験資格①:学識
「学識」資格で受験する際は、以下のいずれかに該当しなければなりません。
- 大学、短大または高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上の学生で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者
- 専修学校の専門課程(1:修業年限が2年以上かつ、2:課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
【出典】国税庁「受験資格について」
現役の大学生の場合
現役の大学生であれば、自分が62単位以上取得していて、その中に「社会科学」に属する科目が含まれているかを確認する必要があります。
社会科学に属する科目の例は以下の通りです。
- 改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「法律学に属する科目」に該当していた科目
法学、法律概論、日本国憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法等 - 改正前(令和4年度の税理士試験以前)の「経済学に属する科目」に該当していた科目
(マクロまたはミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済等 - そのほかの科目
社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等
履修した科目が社会科学に属する科目かどうか判定できない場合、授業内容が記載されている学生便覧や担当教授の専門分野等がわかるものを取り寄せた後、文部科学省ホームページの「学科系統分類表(Excel/707KB)(文部科学省ホームページへのリンク) 」をご参照ください。
【参考】国税庁「受験資格について」
既に大学を卒業している場合
既に大学を卒業されていて、働きながら資格取得を目指す方であれば、「成績証明書(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)」「専門課程証明書」を取り寄せた上で、受験資格を満たしているかをしっかりと確認するようにしてください。
▼「学識」による受験資格と提出書面
| 受験資格 | 提出書面 |
| 大学・短大又は高等専門学校の卒業者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 | 成績証明書(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要) |
| 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者 | 成績証明書(大学3年次以上であることが確認できるもの)(年次の記載がないものは大学3年次以上であることが確認できる書類として、年次の記載がある在籍証明書等も必要) |
| 専修学校の専門課程(1:修業年限が2年以上かつ、2:課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 | 成績証明書(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)および専門課程証明書(当該専門課程が左欄の1および2の要件を満たす課程であることについて都道府県知事等が発行した証明書を専修学校が原本証明したもの) |
| 司法試験に合格した者 | 所管官庁の合格証明書 |
| 旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験または旧司法試験の第二次試験に合格した者 | 所管官庁の合格証明書 |
| 公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年度以降の合格者に限る) | 公認会計士・監査審査会会長発行の「公認会計士試験短答式試験合格通知書」または「短答式試験合格証明書」 |
| 公認会計士試験短答式試験全科目免除者 | 公認会計士・監査審査会会長発行の「公認会計士試験免除通知書」または「免除証明書」 |
税理士試験に必要な受験資格②:資格
日商簿記1級合格者や、会計士補の方がこの受験資格に該当します。
該当する場合は、「合格証明書」を発行してもらえば受験できます。
▼「資格」による受験資格と提出書面
| 受験資格 | 提出書面 |
| 日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者 | 日本商工会議所発行の合格証明書 (合格証書は不可) |
| 公益社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限る) | 公益社団法人全国経理教育協会発行の合格証明書 (合格証書は不可) |
| 会計士補 | 日本公認会計士協会発行の登録証明書 |
| 会計士補となる資格を有する者 | 公認会計士・監査審査会発行の旧公認会計士試験第二次試験合格証明書または同試験の免除科目が全科目に及ぶことを証する書面 |
税理士試験に必要な受験資格③:職歴
以下の職歴も受験資格となります。
- 法人又は事業を営む個人の会計に関する事務
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助の事務
- 税務官公署における事務又はその他の官公署における国税若しくは地方税に関する事務
- 行政機関における会計検査等に関する事務
- 銀行等における貸付け等に関する事務
提出書類として「職歴証明書」が要求されている場合、その様式には注意するようにしてください。
▼「職歴」による受験資格と提出書面

税理士試験に必要な受験資格④:認定
「学識」「資格」「職歴」の3つの受験資格は、内容が明確に決まっています。
しかし、税理士試験を行っている国税審議会は、上記受験資格にある者と同等の資格があると個別認定を受けた者については、税理士試験の受験資格を付与しています。
具体的には、海外の大学で法律学や経済学を履修して卒業した者などが挙げられます。
▼「認定」による受験資格と提出書面
| 受験資格 | 提出書面 |
| 国税審議会より受験資格に関して個別認定を受けた者 | 国税審議会会長発行の受験資格認定通知書 |
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税理士の受験資格がないときどうすればいい?
税理士試験の税法科目を受ける際、「大学を出ていない」もしくは「大学を出たが「社会科学」に属する科目を履修していないので学識による受験資格を満たしていない」という方もいらっしゃると思います。
しかし、税理士試験の受験を諦めるのはまだ早いです。
【理系大学出身の方】「社会科学」に関する科目を放送大学などで1科目だけ履修・単位取得する
「社会科学」に属する科目を履修しないまま大学を卒業した方は、「社会科学」に関する科目を1科目だけ履修・単位取得する方法があります。
放送大学は通信制で1科目から履修でき、社会科学の単位が取得できれば、学識による受験資格を得られます。
大学での半年間の受講と試験を受ける負担はありますが、日商簿記1級の取得によって受験資格を得るよりは、難易度は低いといえるでしょう。
なお、上記の方法で受験資格を得られるのは「大学・短大・高専の卒業者」または「大学3年次以上で62単位以上を取得した者」のみです。
たとえば理系の大学出身者の方であれば可能ですが、一方で高卒の方の場合は学識の要件を取得することはできません。
【高卒・大学1・2年生の方】①実務経験を積む
高卒、大学1・2年生の方でも、以下のような実務経験を2年以上積めば税理士試験の受験資格を得られます。
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助の事務
- 税務官公署における事務、またはその他の官公署における国税、もしくは地方税に関する事務
- 行政機関における会計検査等に関する事務
- 銀行等における貸付け業務や運用に関する事務
通算2年以上従事すれば職歴の受験資格と認められるので、たとえ複数の業務に従事した期間が短くても、合計で2年以上となれば問題ありません。
実務経験を積む時間はかかりますが、大学を卒業しなくても受験資格が得られる方法です。
【高卒・大学1・2年生の方】②日商簿記1級を取得する
高卒の方や大学1・2年生の方でも、日商簿記1級を取得すれば税理士試験を受験可能です。
令和5年度(2023年度)より会計科目は受験資格の制限が撤廃されて、誰でも受験できるようになりましたが、税法科目には「大学3年次以上で社会科学に属する科目を含めて62単位以上を取得している」という制限があります。
「では高卒や大学1・2年生は受験できないのか?」と言えばそうではありません。
「日商簿記1級」を取得すれば、学識の要件を満たしていなくても税法に属する試験科目を受験できます。
日商簿記1級は取得難易度の高い資格ですが、税理士試験科目の「簿記論」と出題範囲が重なる部分があるため、勉強すれば税理士受験にもプラスに働くでしょう。
高卒で税理士を目指す方は、日商簿記1級の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
高卒で税理士試験の受験資格を得るには
最終学歴が高校卒業の人は、2年以上の実務経験を積むか日商簿記1級を取得すれば、税理士試験の受験資格を得られます。
すでに働いている人の場合、大学などに通うのは大変ですが、日商簿記1級なら仕事を続けながら取得を目指すことも可能です。
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まとめ
今回取り上げた「税理士試験に有利なのは文系理系どちらなのか」のテーマについて、ポイントをおさらいしておきましょう。
- 税理士試験に有利なのは、受験資格を満たしやすい「文系」
- 理系が税理士を目指すメリットは「数字に対する強さ」を活かせる点
- 令和5年度(2023年度)の税理士試験から受験資格が緩和されたため、あらゆる人にチャンスが広がった
- 受験資格を満たせないまま大学を卒業した人は、放送大学で必要単位を履修するのがおすすめ
- 高卒の人は日商簿記1級を取得すれば、受験資格を満たせる
受験資格が緩和されたことによって、文系の人も理系の人も税理士試験に挑戦しやすい環境になりました。
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