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税理士事務所に事務員として勤めながら資格取得を目指しています。しかし事務所の先生の受験時代の苦労話を聞くにつけ、だんだん自信がなくなってきました。途中で挫折しないよう、計画的に勉強し確実に合格するために何が必要でしょうか。 |
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税理士試験は科目合格が許される分、勉強計画をルーズにしてしまう受験生が多く、そういった方はかえって合格までに時間がかかってしまいます。①自分の勉強しやすい科目を実務経験から判断し、②しっかりした学習計画を立てること。 この2つが、社会人受験生の早期合格の秘訣といえます。 |
税理士試験は「科目合格制度」を採用しており、合格に必要な5科目全てを一度に受験し合格する必要がなく、任意の科目だけを選んで受験することができます。そのため他の多くの国家資格試験と異なり、「不合格イコール全ての科目を受け直し」ということにはなりません。
しかしここには、税理士試験特有の「受験生が陥りがちな罠」が存在することに注意する必要があります。
すなわち、自分が受験したいと思った科目だけを受験できるという状況に「無意識のうちに」甘えてしまい、なかなか合格に必要な勉強時間・勉強の質が確保できないという罠にハマってしまうのです。
人間は本質的に「楽をしたい」生き物です。その日のうちに終わらせなければならない仕事が10あるとすれば10の力を出して仕事をこなしますが、仕事が5しかないときに10の力は出さず、5の力どころか4,3の力しか出ない人が多いです。
これを税理士試験に置き換えてみましょう。たとえば1年目の試験で「財務諸表論」「消費税」を受験しようと思い必死に勉強をしていたものの、仕事が忙しくて「財務諸表論」のみの受験に絞ったとします。するとその途端、「財務諸表論」の合格に必要な勉強すらしなくなって不合格になってしまう、というケースです。
この罠に引っかかってしまい、5科目合格に何年もの長い期間をかけてしまう受験生が出てきてしまいます。そしてこの傾向は、時間に余裕のある学生受験生だけでなく、余裕のないはずの社会人受験生に顕著です。これではせっかくの勉強時間やかけたお金がもったいないですよね。
罠に陥らないための方法論の前に、働きながら資格取得を目指すことのメリットを確認しておきましょう。
<専業受験生Aさん(学生)の場合>
・勉強時間:月曜~金曜の講義がない時間帯(曜日によってバラバラ)。土日はコンパやバイトで忙しく勉強できない
・勉強場所:大学図書館(税に関する専門書などがたくさんある)
・勉強スタイル:市販のテキストでインプット&アウトプット。分からないところは図書館にある教科書なども色々読んで理解する
⇒生活リズムが日によってバラバラで、なかなか勉強習慣が定着しない。
各種専門書をしっかりと読み込めているものの、独学なので知識はまばらで、税理士試験に必要なレベルを超えている論点と足りない論点が混在し、結果的に試験に合格できない。
<兼業受験生Bさん(税理士事務所勤務)の場合>
・勉強時間:月曜~金曜の通勤時間、ランチ時間と帰宅後+土日。
・勉強場所:平日は通勤電車の中、ファミレスやカフェ。土日は近くの図書館(税に関する専門書は少ない)。
・勉強スタイル:平日は通勤電車の中でインプット学習に重点をおき、帰宅後に基本問題を解いてみる。土日は1科目分をまとめて、過去問や予想問題を解いてアウトプット学習。
⇒社会人なのでメリハリのついた時間運用ができる。通勤時間は毎日同じなので勉強習慣がすぐに定着。試験合格のためだけに特化した予備校の講義と過去問演習で、合格レベルを逸脱しない。
このように、見方を変えれば社会人受験生の方が合格に近い勉強スタイルの構築がしやすいということがあります。働きながら受験するということは、皆さんが思っている以上に不利というわけではないのです。
以上を踏まえた上で、働きながら受験し早期合格を勝ち取る秘訣を考えていきましょう。
税理士事務所で働くことで、具体的な税の知識や、税理士が実際にどのように仕事をしているのかが身についていきます。その中で、「この税の仕組みは面白いな!自分が税理士になったらぜひ扱ってみたいな」といった「気づき」が得られればしめたものです。自分が税理士試験を受けたときに、得意科目となる可能性を秘めているからです。
まったく関心のない科目を勉強することの苦痛は、高校受験や大学受験などで十分知っている方も多いかと思います。せっかく税理士試験には科目選択制度があるのですから、これを活かさない手はないですよね。
合格の秘訣を一言で言ってしまうと、「しっかりした計画と、コツコツ進める忍耐力」です。ここでいう「しっかりした学習計画」とはギチギチに詰まった計画ではありません。接待や家族サービスなど、勉強ができなくなるような事態をはじめから織り込んだ、余裕のある計画のことです。
平日の生活リズムがある程度固定化されている社会人受験生であれば、平日/休日の1日あたりの勉強時間(可処分時間)を割り出すことは比較的簡単です。1年かけて複数科目の合格を目指すのであれば、1日あたりの可処分時間×365日が総勉強可能時間となります。そこからある程度の時間を、上記「接待や家族サービスなど、勉強ができなくなるような事態」の時間として差し引き、算出された勉強時間を、各受験科目に配分していく計算となります。
最初に立てた計画通りに勉強が進むことの方が珍しいです。そうなったときに慌てず軌道修正してコツコツ勉強を継続できるよう、余裕をもった学習計画を立てるようにしましょう。
冒頭の”科目合格制度の罠”は、「無意識のうちに」ハマってしまうのが怖いところです。
しかしこの記事で書いたように、時間に余裕のない社会人受験生でも、必ず資格取得を勝ち取ることができます。
①実務経験から勉強しやすい受験科目を決める。
②しっかりした学習計画を立てる。
この2つを確実に実践して、早期の資格取得を目指しましょう。