税理士の人数や事務所・法人の数は?業界の変化を生き抜くヒントを解説

税理士とはどんな職業?仕事内容や税理士になる方法について解説

これから税理士を目指す人にとって、「税理士は現在どのくらいの人数なのか」、ひいては「これからも食べていける職業なのだろうか」という点は、大いに気になるのではないでしょうか。

この記事では、税理士の人数や税理士事務所・法人の数の推移、税理士業界全体の変化、これからの時代を生き抜く税理士になるにはどうすればいいのかについて解説します。

 

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全国の税理士の人数は?

まず、税理士は全国に何人いるのでしょうか。税理士登録者数の推移や、年齢別・都道府県別・男女別の人数などを詳しく見ていきましょう。

税理士登録者数の推移

はじめに、税理士登録者数の推移を見てみましょう。

税理士として働くには、日本税理士会連合会(日税連)の税理士名簿に登録をする必要があります。

日税連が公開している全国の税理士登録者数8万467人となっています。令和5年(2023年)1月末日現在のデータです。

また、これまでの税理士登録者数の推移は以下のとおりです。

税理士の人数は毎年増加を続けているのがわかります。ただ、近年の増加率はかなりゆるやかなペースとなっています。

▼全国の税理士登録者の推移

会計年度登録者数
昭和35(1960)10,888人
昭和40(1965)15,827人
昭和45(1970)24,024人
昭和50(1975)32,436人
昭和55(1980)40,535人
昭和60(1985)47,342人
平成2(1990)57,073人
平成7(1995)62,550人
平成12(2000)65,144人
平成17(2005)69,243人
平成22(2010)72,039人
平成27(2015)75,643人
平成28(2016)76,493人
平成29(2017)77,327人
平成30(2018)78,028人
令和元(2019)78,795人
令和2(2020)79,404人

【参考】国税庁「税理士制度」

【年齢別】税理士の人数

次に、税理士の人数を年齢別に見てみましょう。

日本税理士会連合会が平成26年(2014年)に実施した「第6回税理士実態調査」の結果によると、年齢別の人数と比率は、以下のとおりとなっています。

年齢人数比率
20歳代187人0.6%
30歳代3,358人10.3%
40歳代5,599人17.1%
50歳代5,817人17.8%
60歳代9,868人30.1%
70歳代4,343人13.3%
80歳代3,421人10.4%

【参考・画像引用】日本税理士会連合会「税理士って? 〜一生の仕事を探すなら〜」

年齢別に見ると、税理士の人数が最も多いのは60歳代です。比率としては50歳以上の年代が全体の70%以上を占めています。

逆に、30歳代以下はわずか11%程度で、若手がかなり少ないことがわかります。

税理士試験は、数年をかけて合格を目指すことが一般的で、おのずと資格取得までに年数がかかる試験です。

また、国税専門官として一定以上の年数勤務をすると試験が免除される制度があり、国税専門官を経て税理士になる人もいます。

こういった事情から、税理士は40歳代や50歳代などある程度の年齢になってから取得する人が多い資格と言えます。

加えて、開業すれば定年を気にせず働き続けることができるため、ミドル世代以上の人がセカンドキャリアとして選択するケースも多いです。

こうした理由から、税理士業界全体が高齢化の傾向にあると言えるでしょう。

【都道府県別】税理士の人数

次に、税理士の人数を都道府県別に見てみたいのですが、47都道府県別の税理士登録者数は一般向けには公開されていません。

ただし、東京税理士会や千葉県税理士会など、税理士会が都道府県単位で存在する地域については登録者数を確認できます。

日税連が公開している全国各地の税理士会ごとの登録者数は以下のとおりとなっています(令和5年1月末現在)。

会名登録者数
東京23,936人
東京地方5,073人
千葉県2,543人
関東信越7,548人
近畿15,262人
北海道1,877人
東北2,489人
名古屋4,789人
東海4,371人
北陸1,446人
中国3,222人
四国1,651人
九州北部3,508人
南九州2,269人
沖縄483人
80,467人

【独立開業】税理士の人数

次に、独立開業している税理士の人数を見てみましょう。

下記の円グラフは、開業税理士、社員税理士、所属税理士の割合を示したものです(令和4年3月末日現在)。

開業税理士独立開業している税理士。
社員税理士税理士法人において、一般企業の「役員」に相当する税理士。「社員」といっても、会社員のように「雇用されている」という意味ではない。
所属税理士税理士法人や税理士事務所に勤務して税理士業務を行う税理士。

 

▼税理士登録者・税理士法人届出数(令和4年3月末日現在)

【参考】国税庁「日本税理士会連合会」

一般に、税理士は独立開業に向いている資格だとよく言われるとおり、開業税理士は税理士全体の70%以上を占めています。

やはり税理士は、独立開業をする人が多い職業であると言えるでしょう。

【男女別】税理士の人数

次に、男女別の税理士の人数を見てみましょう。

日税連の税理士登録者数のデータによると、男性6万5,904人女性1万1,423人という調査結果がでています(平成30年3月末現在)。

男性のほうが圧倒的に多い割合ではありますが、税理士登録者数の推移を見ると女性税理士の人数数は年々増加しています。

【参考】日本税理士会連合会「税理士って? 〜一生の仕事を探すなら〜」

税理士事務所の数の推移

次に、税理士事務所の数と推移を見てみましょう。

総務省統計局の「事業所・企業統計調査」と「経済センサス」では、税理士事務所と公認会計士事務所数が1つの項目にまとめられていて、その数は以下のように推移しています。

▼税理士事務所・公認会計士事務所の数の推移

調査年事務所数
平成13(2001)33,716
平成16(2004)31,860
平成18(2006)32,664
平成21(2009)32,296
平成24(2012)31,222
平成28(2016)31,208

※平成18年度(2006年度)までは「事業所・企業統計調査」を参照。平成21年度(2009年度)以降:「経済センサス」を参照。

【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「事業所・企業統計調査」

【参考】総務省統計局「経済センサス」

税理士法人の増加や、高齢化による廃業などの影響もあり、税理士事務所数は年々ゆるやかな減少傾向にあると言えるでしょう。

次に、税理士業界の市場規模も見てみましょう。

総務省統計局の「サービス産業動向調査」でも税理士事務所と公認会計士事務所は1つの項目としてまとめられていて、その年間売上高は、以下のように推移しています。

▼税理士事務所・公認会計士事務所の年間売上高の推移

調査年売上高
平成25(2013)1,412,847百万円
平成26(2014)1,454,971百万円
平成27(2015)1,506,719百万円
平成28(2016)1,665,072百万円
平成29(2017)1,627,523百万円
平成30(2018)1,651,469百万円

【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「サービス産業動向調査」

税理士事務所全体の売上高は、上昇傾向にあると言えるでしょう。

近年は個人の税理士事務所が減少し、代わりに税理士法人が増加しています。事業規模の大きな法人が全体の売上高を伸ばしていると考えられます。

税理士の人数を弁護士・公認会計士と比較

税理士の人数を、同じ士業である弁護士公認会計士の人数と比較してみましょう。

日本弁護士連合会の「弁護士白書 2022年版」によると、全国の弁護士の人数は4万4,101人となっています(令和4年5月末現在)。

次に、日本公認会計士協会によると、全国の公認会計士の数は4万1,331人となっています(令和4年12月現在)。

前述のとおり、全国の税理士の人数は8万467人(令和5年1月末現在)のため、3つの士業の中では税理士が最も多い職業となります。

▼弁護士の人数の推移

【参考・画像引用】日本弁護士連合会「弁護士数の推移/男女別年齢構成/男女別弁護士数の推移」

▼公認会計士の人数の推移

【参考】日本公認会計士協会「会員・準会員数の推移(10年毎及び最新年度、12月末日現在)」

ここ数年の人数の推移を見ると、弁護士も公認会計士も、税理士と同じく年々増加傾向にあります。

弁護士の場合、2000年ごろから進められている司法制度改革の影響を受けて、資格を取得する人が増えているようです。

また公認会計士は、監査法人などからの需要も高まっており、人気の資格となっています。

税理士、弁護士、公認会計士は、いずれも難易度は高いですが独立開業などを実現しやすい資格です。

自分次第で多様な働き方や高収入も目指せて、定年なく働けることなどからも、人気が高まっていると言えるでしょう。

税理士業界の変化とこれからを生き抜くヒントは?

ここまで、税理士の人数に関するさまざまなデータを見てきました。

ただ、これから税理士を目指す人が一番気になるのは、「現在の税理士業界はどんな状況なのか」「これからも食べていける職業なのか」という点ではないでしょうか。

ここからは、その点について述べていきます。

テクノロジーの発達→「人間ならでは」の仕事で価値提供

従来の税理士の主な仕事は、中小企業と顧問契約を結び、税理士の独占業務である税務代理や税務書類作成などを請け負うことでした。

また、企業のお金の流れを帳簿に記録する記帳代行などの経理業務も、税理士が担うことがよくありました。

しかし、最近はどうでしょうか。

2010年代以降、クラウド会計ソフトが急速に普及しました。これにより、今では企業でも個人でも、税理士を頼らなくても自力で記帳や確定申告を行う人が増えています。

会計ソフトの登場によって、かつては税理士が担っていた業務の一部がテクノロジーによって代替される時代が来たと言えるでしょう。

こうした影響を受けて、税理士は「いずれテクノロジーに仕事を奪われてしまうのではないか」と言われることもあります。

しかし、人間である税理士の業務を、AIなどが完全に代替できるわけではないでしょう。

例えば、自動化できるタスクは会計ソフトなどに任せて、コンサルティングなど人間にしかできない業務に注力すれば、時代に合わせた価値を発揮できるでしょう。

テクノロジーは税理士にとって「仕事を効率化する」ものであって、「仕事を奪う」存在ではないのです。

このように、税理士は従来の仕事のスタイルから、テクノロジーと協力してより高い価値を提供できるスタイルへの転換が求められています。

こうした新しい税理士像に適応できる人であれば、これからの時代も需要の高い税理士として活躍できるはずです。

税務・会計の外注先→経営者を支えるコンサルタント

先ほど述べた内容とも関連する話ですが、かつての税理士は、いわば「税務・会計の外注先」でした。

しかし、今の時代はそれにとどまらず、会社経営のあらゆる相談に応じる「経営コンサルタント」としての役割が求められています。

前述のとおり、現在は会計ソフトなどの導入が進み、記帳代行などの業務は減少傾向にあります。

また、中小企業の減少などにより、顧問契約が解除となったり、新規の契約をなかなか獲得できなかったりするケースも増えています。

こうした状況下で、これまでどおりの税務や経理に関する業務をこなすだけでは、需要の高い税理士でい続けることは難しいでしょう。

そこで、付加価値を高めるために必要なのが、経営に関するコンサルティングなどの業務なのです。

単なる税務や会計の代行者ではなく、会社経営全体のコンサルタントとして経営者をサポートできるようになれれば、今後も価値の高い税理士でい続けることができるでしょう。

税理士の高齢化→若手にチャンス到来

冒頭で解説したとおり、税理士業界は高齢化に直面しています。50歳代以上の世代が70%以上を占める一方、30歳代以下は11%程度で若手がかなり少なくなっている状況です。

しかし、これは若手の税理士にとっては大きなチャンスであるとも言えます。

前述のとおり、税理士業界では会計ソフトの導入などにより大幅なIT化が進んでいます。

最新の会計ソフトなどITツールの使い方や、ITリテラシーなどについては、どちらかといえばベテランよりも若手のほうが詳しい分野だと言えるでしょう。

社会の変化をとらえ、ベテランにはあまりない強みを発揮できれば、若手でも活躍のチャンスは大いにあります。

また、顧客もすべての人が経験豊富なベテランの税理士を求めているわけではありません。

最近は、顧客の中にもベンチャー企業やIT企業、若手の経営者などが増えています。

こうした企業の経営者の中には、ベテラン税理士よりも、最新のビジネスやITの知識が多そうな若手税理士を求める人も少なくありません。

このように、時代によって税理士に求められるスキルや知識は変わっていきます。

今後需要が高まりそうな分野や、ベテランには担い手が少ない分野のスキルを高めれば、今後も需要のある税理士でい続けることができるでしょう。

まとめ

今回は、税理士の人数や税理士事務所・法人の数の推移、税理士業界全体の変化などをご紹介してきました。

  • 税理士の人数は現在約8万人で、毎年ゆるやかに増加傾向にある
  • 税理士事務所は減少傾向だが税理士法人は増加傾向にあり、業界全体の売上高も増加傾向
  • テクノロジーを味方につけ、コンサルティングなどで価値を発揮できれば将来性はある

税理士は増加傾向にありますが、テクノロジーを味方にし、対応できる分野を広げたり、専門性を高めたりすることで、付加価値の高い税理士を目指すことができます。

ご自身がこれからどのような税理士を目指していきたいのか、ぜひ考えてみてください。

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