税理士も稼げない時代だといわれています。税理士資格を取得して本当に就職・転職で有利になるのでしょうか。 | |
税理士資格を取得したことが、それだけで評価してもらえるわけではありません。しかし、あなたの税理士資格に対する見方・視点を少し切り替えるだけで、3つの大きなアピールポイントが見えてきます。 |
資格さえあれば100%有利というわけではない
定年を超えても働くことのできる税理士は需要に比べてその人数が飽和状態にあるといわれています。
また、長引く不景気から企業での税理士有資格者採用の口も大きくならないという報道がされています。
近年では、人工知能の進化で、税理士業務が機械やロボットに置き換えられてしまうのではという懸念も囁かれています。
では、税理士資格を取ることはまったく就職や転職に役立たないのでしょうか?
答えはNoです。ただし、税理士資格を用いた実りある就職・転職をするためには、視点を変える必要があります。
すなわち、「税理士資格を取ったことがどのように評価してもらえるか」ではなく、「税理士資格を取ったことをどのようにアピールできるか」という風に視点を変えて考えるのです。視点を切り替えることで、税理士資格が就職・転職に有利な、本当の理由が見えてきます。
税理士資格が就職・転職に有利な3つの理由
税理士試験には「科目選択制度」「科目合格制度」といった、他の国家資格試験と異なる特徴があります。視点を切り替えるためには、この制度の仕組みに着目し、「税理士資格を取ったということが、どういうことを意味するのか」を考える必要があります。税理士資格を持つあなたの人物像を、企業・事務所の求める人物像にうまくマッチングさせることで、税理士資格を持たない人との間だけではなく、他の難関資格を持った人との間でも差別化を図ることができるのです。
理由1:経理などに関する高い専門性をアピールできる
特に民間企業の経理・財務職への就職を希望する場合、税理士資格が必須要件ということはありませんが、尚可条件(必須でないが、満たしていれば尚よい条件)や優遇条件(必須でないが、満たしていれば給与への上乗せ等もあり得る条件)として税理士資格を挙げている企業は多く存在します。
それはなぜかというと、税理士は企業が常日頃から直面する、経理や税務への高度の専門性を有するため、税理士試験の合格者にはそれだけの能力が担保されていると考えられるからです。ここで、公認会計士試験にはない「科目合格制度」を使ったアピールが可能です。
「税理士資格を取ったから自分には専門性がある」などと短絡的にとらえるのではなく、「税理士試験は科目合格制度を採らざるを得ないほど、1科目あたりの比重・難易度が高い試験だ。そのような税理士試験で5科目もの難関試験に合格したということは、自己管理力や継続的な努力ができるという証明にもなります。また、税理士試験は単純な択一問題の試験ではなく、知識はもちろん、計算力・記述力・論理的な説明力などが総合的に問われる試験ですので、これらの能力は経理の仕事のみならず様々な場面で力を発揮できる能力をアピールすることができます。
実際の試験や受験勉強での経験に裏打ちされた自己アピールは、就職面接でもブレることはありません。こうしたものを自分の中に持ち合わせておくと、面接での様々な質疑にも対応できます。
理由2:目標に向け努力できるひたむきさをアピールできる
「科目合格制度」が税理士試験の難しさ、合格者の持つ高度の専門性を裏付けるのに対し、「科目選択制度」はあなたが税務の専門家として目指している人物像を面接官に伝えることに役立ちます。
たとえば、選択必修科目で所得税法ではなく法人税法を選択し合格したのであれば、個人というよりは企業の税金問題にコミットしていきたいというあなたの姿勢を裏付けることができ、税理士法人・会計事務所はもちろん、一般企業での採用でプラスに評価されることが多いです。一方で所得税法を選んだ場合にも、企業の社長は法人の代表という立場とは別に自身も一個人として所得税を支払わなければならないため、特に中小企業では社長個人の税務アドバイザリーとしても貢献できるというアピールポイントになります。
あるいは、選択科目で相続税法を選んだのであれば、所得税法同様に社長個人の税金問題にコミットできるというアピールが可能です。酒税法などはマイナー科目でアピールにならないと思われがちですが、お酒が好きな面接官や経営者との間で話を弾ませ、場を温めるアイスブレイク(初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法)となる可能性を秘めています。
どの科目を選んだからダメというものではなく、大事なのは科目特性を見極めたうえで、その科目の内容に合致するようにアピールする角度を変えていくことです。
理由3:問題解決に向けて軌道修正できる柔軟性をアピールできる
「科目合格制度」は「税理士試験は科目合格制度を採らざるを得ないほど、1科目あたりの比重・難易度が高い試験であること」を裏付けているということは、先ほど述べたとおりです。
そのため、一発合格者というのは少なく、どの科目でも1度や2度、不合格になっている人も少なくありません。
しかし、不合格の経験はマイナス評価にしかならないかというと、その答えもNoです。
不合格になった結果として自分の弱点を見つけ、勉強へのアプローチを変えた結果合格できたという過程を説得力を持って説明することができれば、あなたの不合格の経験も問題解決能力のアピールにつながります。
世の中に初めから完璧な人間はいません。どこかで必ず挫折を経験し、今までのやり方を変えてみることで乗り越えてきています。
会社員の方には釈迦に説法かもしれませんが、社会でも同じく、諦めずに何度もトライアンドエラーを繰り返しながら成長し、結果を残していきます。
税理士試験を突破し合格したという経験は、そのような「問題発生→分析→対策→問題解決」という、専門的な業務に従事するうえで重要なプロセスをきちんと踏むことができる人間であることを裏付ける経験としても役立てられるのです。
まとめ:大事なのは、税理士資格を持った自分がどのように貢献できるかということ
税理士試験の受験生には様々なバックグラウンドを持った方々がいます。
新卒大学生で税理士資格があれば、まだ若いということで未経験でもポテンシャル採用がありえますし、一方で社会人経験者で税理士資格を用いて転職するこということであれば、それまでの実務経験の方が重視されるということもあります。
大事なのは、それまでの自分がどのような仕事をしてきたか(大学生なら、どのような勉強をしてきたか)という実績に、税理士資格を掛け合わせるとどのような相乗効果が生まれ、それが職場でどう活かせるかという「計算過程」を分かりやすく面接官に示してあげることです。
このように視点を切り替えることで、税理士資格は就職・転職において強力な武器にすることができることでしょう。