この記事を書いた人 ケン先生
「自分の得た知識が、受講生の進路を切り開くファースト・ステップになれば」との思いから会計系講座の講師に。 |
この記事で述べる内容は、筆者の経験に基づく個人的な見解です。
「独学=市販の書籍を購入して1人で勉強する」という前提でお話ししていきます。
税理士試験の科目は下記のとおりです。
【会計科目2科目】+【税法科目3科目】の計5科目をクリアすれば合格(いわゆる官報合格)となります。
▼税理士試験の科目一覧
必須科目(会計科目) | 必ず合格する必要がある | 簿記論
財務諸表論 |
選択必須科目(税法科目) | いずれか1科目を必ず。2科目選択も可能 | 法人税法
所得税法 |
選択科目(税法科目) | いずれかを選択 | 相続税法
消費税法法または酒税法 |
まず、会計科目については、いわゆる予備校(通学型スクール)や通信講座を一切利用せず、初学から独学で合格したという方の話を聞いたことがあります。
しかし、税法科目については、初学から独学で合格された方の話は、講師経験の中でわずかに噂程度でしか聞いたことはありません。
(もちろん、「1年目に予備校や通信講座で税法科目にチャレンジしたが残念な結果で、2年目は独学で合格した」という方はいらっしゃいました)
昭和のころは独学での受験が一般的であったため、完全に独学で合格した人はいたそうです。
しかし、令和の今とは本試験の傾向や難易度が異なります。
特に税法科目の学習内容は極めて専門的です。
毎年のように条文数も増えており、税制改正の本試験対策など、現在では独学で対応することは非常に難しいのではないかと思います。
仮に「税理士試験にまったくの独学で合格するには何年かかるか」と問われたら、私からは「毎年しっかり勉強したとしても、10年はかかってしまうのではないか」とお答えせざるを得ません。
特に税法科目については、独学に適した市販書籍はほとんどない状況です。
「初めて勉強する人は、独学ならこうすればいいですよ」といったアドバイスすら、なかなか頭に浮かびません。
現実に立ち返って会計科目の独学合格について述べたいと思います。
会計科目なら独学でも合格に手が届く理由としては、近年では会計基準の改正が少なく安定していること、そして市販の書籍や情報が豊富にあることが挙げられます。
仮に1回目の受験で失敗してしまったとしても、習得した知識は翌年以降の受験でも活用できます。
学習内容的にも、日商簿記3級から段階的にコツコツと学習すれば、簿記論や財務諸表論で学習する内容も理解することが可能と思われます。
根気強く学習を継続すれば、合格に必要な知識レベルに到達できるでしょう。
ただし、かなりの努力と時間を要することになるかと思われます。
「会計科目は1〜2年でクリアしたい」という人には独学は向いていません。
なお例外として、公認会計士試験の学習経験者であれば、税理士試験の会計科目の論点はすべて学習済みとなります。
本試験での出題傾向さえおさえてしまえば、独学で合格レベルに達することは可能でしょう。
では、会計科目に独学で合格できる人はどれくらいの割合でいるのでしょうか。
これも筆者の経験に基づく勝手な推測となりますが、予備校や通信講座などで一度学習した経験がある人を除き、「学習スタート時から独学のみ」で合格する人の割合となると、おそらく100人中5人程度、それくらい少ないのではないかと思われます。
ただしその少ない合格者も、学生時代に会計学の学習経験がある人、周りにアドバイスしてくれる受験経験者がいる人など、経験や環境面で恵まれているケースと考えられます。
税理士試験は、科目合格制が導入されていることもあり、社会人にとって受験しやすい試験です。
しかし「学習に専念する人」か「仕事などと両立しながら学習する人」かによって、合格に要する年数はまったく違ってくるでしょう。
当然、学習に専念して自分の時間のすべてを学習に使える人のほうが、短い年数で合格できる可能性が高いです。
「仕事などと両立する人」は、学習に使える時間が限られています。
独学でチャレンジするなら、かなりの覚悟を持って挑まなければなりません。
覚悟が決まらないまま学習を進めても、本試験で勝負できる状態に到達するまでに相当の時間がかかってしまうでしょう。
また、後述しますが、独学でチャレンジする場合には、学習そのものだけでなく、学習の進捗管理にも気を配らなければなりません。
一般論ですが、仕事との両立を考えるのであれば、独学よりも予備校や通信講座を利用するほうがいいでしょう。
圧倒的に時間も節約でき、効率的に合格を目指せるからです。
税理士試験を独学でチャレンジすると、一般的には多くの学習上の困難を伴うといえます。
独学で学習して失敗しやすいポイントには、次のようなものがあります。
ここでは、失敗のポイントごとに分けてお話しさせていただくとともに、簡単ではありますが、独学で学習する際の乗り越え方についても解説します。
独学での失敗では、モチベーションを維持できなかったという方が非常に多いのではないでしょうか。
税理士試験は、学習する論点のボリュームが多く、学習期間も長期に渡ります。
学習を途中であきらめる可能性がそもそも高い試験といえます。
さらに独学の場合は環境的にも孤独になりがちなので、予備校や通信講座を利用する場合よりも、挫折の可能性が上がります。
例えばこんなタイミングはモチベーションが維持しづらいでしょう。
そんな時に、同じく税理士を目指し苦労を分かち合える仲間や、客観的な立場からアドバイスしてくれる受験経験者などが周りにいれば、学習の中断からの立ち直りや、学習の軌道修正も早くなるかと思います。
独学で学習されるのであれば、学校・職場、SNSなどを通じて、同じような受験仲間や信頼のおける受験経験者を探し、相談できる相手を積極的に作る必要があるのではないでしょうか。
予備校や通信講座であれば、提供されるカリキュラムに従って学習すればよいのですが、独学の場合には、学習開始から本試験までの学習計画を自分自身で立てなければなりません。
といったことを、完璧ではなくとも学習開始時に決めておく必要があるでしょう。
なお、本試験までのざっくりとしたスケジュールは次のとおりです。
▼4月まで
まず、学習開始後、遅くとも4月までには、各個別論点のインプットは終わらせて、個別問題と標準的な難易度の総合問題に取り組んでおく必要があります。
財務諸表論であれば、理論の理解についても一通り終わらせておくべきでしょう。
▼5月以降
5月以降はアウトプット中心の学習に切り替えて、応用的な難易度の総合問題や、4月までに学習した理論の確認に取り組む必要があります。
4月までに学習した内容は、5月〜本試験(8月上旬)までに最低2回転はさせる必要があるでしょう。
さらに、過去の本試験問題を実際に解答し、どのようにすれば制限時間内に合格答案を作成することができるか、自分自身で研究する必要があるかと思います。
解答テクニックとは、具体的には次のようなものです。
財務諸表論の理論問題に関しても、理論のどの部分を強調して書けば得点となりやすいかなども、解答テクニックの一つと言えるでしょう。
解答テクニックを習得できなければ、学習論点の理解が得点につながりません。
短期間で合格を目指すためには非常に重要です。
解答テクニックの習得は、予備校や通信講座を利用する人と独学する人とで、大きく差のつくポイントになるでしょう。
予備校や通信講座では講師が講義内で解答テクニックを教えてくれますが、独学では自ら情報を探さなければなりません。
近年では、解答テクニックを記載した市販書籍も出てきています。
またインターネットで発信されている情報なども参考にしていくことになるでしょう。
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今回は、税理士試験に独学(市販の書籍での学習)で挑むと合格までに何年かかるのか、について解説しました。
税理士試験は努力と継続が必ず実を結ぶ試験といわれています。
あなたのライフスタイルに合った学習方法でスタートを切りましょう。
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