実は5科目すべてを受験する人は減っている
日本税理士会連合会発行の「第6回税理士実態調査報告書」(*1)によれば、試験免除制度を利用して登録した税理士の数は平成6年に16.7%、平成16年に25.3%、平成26年には37.2%と、スピーディーに増加しています。
上記の結果を見ると、税理士を目指している受験者の多くははじめから5科目すべてを受験するつもりがなく、試験の全部又は一部の免除制度を利用するという方が増えていることがわかります。
では、試験の全部又は一部の免除制度とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
税理士試験の科目免除制度とは?
税理士試験は複数の科目ごとに試験が分かれており、すべて合格しなければ資格を取得できません。
難易度が高いだけでなく、どんなに短くても2年以上勉強を続けなければならないという厳しさも、税理士試験のハードルを上げている原因となっています。
それだけに、一部の科目が免除になれば非常に有利になるため、うまく活用したい制度です。
科目免除の条件にはさまざまなものがあります。
満たしている条件によって免除される科目も異なっているため、受験前に自分がどの条件を満たしているのかを確認したうえで、試験対策をはじめることが大切です。
以下は、科目免除制度について表にまとめたものです。
免除の区分 |
該当者 |
免除される科目 |
資格による試験免除 | 弁護士 | ・全科目 |
公認会計士(一部研修が必要) | ||
学位取得による科目免除 | 平成14年3月までに大学院に進学した者 | ・商学の学位(修士または博士)を持つ者は会計系の科目(簿記論、財務諸表論)
・法学、または経済学のうち財政学の学位(修士または博士)を持つ者は税法系の科目(選択必修及び選択科目) |
平成14年4月以降に大学院に進学した者で、会計系あるいは税法系の修士論文を執筆し学位を得た上で、それぞれの科目に1科目以上合格した者 | ・会計学に属する科目等の学位を持つ者は残る会計系の科目
・税法に属する科目等の学位を持つ者は残る税法系の科目 |
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平成14年4月以降に大学院に進学した者で、会計系あるいは税法系の博士論文を執筆し学位を得た者 | ・会計学に属する科目等の学位を持つ者は会計系の科目
・税法に属する科目等の学位を持つ者は税法系の科目 |
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国税従事による科目免除 | 10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者 | ・税法系の科目 |
23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者 | ・会計系の科目 |
参考:改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&A、税理士法第7条 第8条
資格による試験免除
まずは資格による試験免除です。
まず弁護士は、無試験で税理士として登録することができます(弁護士法3条2項)。
公認会計士もかつては無条件で税理士登録が可能でしたが、法改正により平成29年4月1日以降の公認会計士試験合格者は、税法に関する研修を修了した場合のみ税理士資格を得られるようになりました。
学位取得による科目免除
次に、学位取得による科目免除です。
税理士法の改正により「平成14年3月までに大学院に進学した方」と、「平成14年4月以降に大学院に進学した方」とで、取り扱いが分かれています。
▼平成14年(2002年)3月までに大学院に進学した方
平成14年3月までに大学院に進学した方は、修士号か博士号かに関わらず、商学の学位であれば会計系の科目(簿記論、財務諸表論)、法学または経済学のうち財政学の学位であれば税法系の科目(選択必修及び選択科目)がそれぞれ免除されます。
▼平成14年4月以降に大学院に進学した方
一方、平成14年4月以降に大学院に進学した方は、「修士(博士前期)の学位」であるか「博士(博士後期)の学位」であるかで、科目免除のための要件が異なってきます。
▼修士(博士前期)の学位の場合
「修士(博士前期)の学位」の場合、以下の要件を満たすことで、それぞれの科目につき残りの科目が免除になります。
- 会計系あるいは税法系の修士論文を執筆し学位を得ていること
- 税理士試験のそれぞれの科目に1科目以上合格すること
例1:①修士(会計学)の学位を取得し、②簿記論の試験に合格
⇨財務諸表論(会計学)の試験が科目免除となる
例2:①修士(税法)の学位を取得し、②法人税法の試験に合格
⇨税理士資格取得に必要な残りの税法科目(選択必修科目・選択科目)が科目免除となる
▼博士(博士後期)の学位の場合
「博士(博士後期)の学位」の場合、会計学に属する科目等の学位を持つ者は、会計系の科目(簿記論・財務諸表論)、税法に属する科目等の学位を持つ者は、税法系の科目(選択必修科目・選択科目)が免除となります。
国税従事による科目免除
税務署に勤務した経験がある場合、その職域とその期間に応じて、免除される科目が段階的に増えていきます。
以下のように、10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、経験した職域に応じて税法に属する科目が免除されます。
法的根拠 |
該当者 |
免除科目 |
税理士法8条1項4号 | 官公署における事務のうち所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税若しくは酒税の賦課又はこれらの国税に関する法律の立案に関する事務に従事した期間が通算して10年以上になる者 | 税法に属する科目のうち国税に関するもの |
税理士法8条1項5号 | 官公署における国税に関する事務のうち前号に規定する事務以外の事務に従事した期間が通算して15年以上になる者 | 税法に属する科目のうち国税に関するもの |
税理士法8条1項6号 | 官公署における事務のうち道府県民税(都民税を含む。)、市町村民税(特別区民税を含む。)、事業税若しくは固定資産税の賦課又はこれらの地方税に関する法律の立案に関する事務に従事した期間が通算して10年以上になる者 | 税法に属する科目のうち地方税に関するもの |
税理士法8条1項7号 | 官公署における地方税に関する事務のうち前号に規定する事務以外の事務に従事した期間が通算して15年以上になる者 | 税法に属する科目のうち地方税に関するもの |
税理士法8条1項8号 | 第6号に規定する事務に従事した期間が通算して15年以上になる者 | 税法に属する科目 |
税理士法8条1項9号 | 第7号に規定する事務に従事した期間が通算して20年以上になる者 | 税法に属する科目 |
23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は、会計に属する科目が免除されます。
法的根拠 |
該当者 |
免除科目 |
税理士法8条1項10号イ | 第4号から第6号(上記表)までに規定する事務に従事した期間が通算して23年以上になる者 | 会計学に属する科目 |
税理士法8条1項10号ロ | 第7号に規定する事務に従事した期間が通算して28年以上になる者 | 会計学に属する科目 |
税理士法8条1項10号ハ | 8条10号イに規定する期間を通算した年数の23分の28(約82.14%)に相当する年数と8条10号ロに規定する期間を通算した年数とを合計した年数が28年以上になる者 | 会計学に属する科目 |
税理士試験の科目免除は通信の大学院でも受けられる?
科目免除制度は大学院で学ぶもしくは博士号を取得することで利用できますが、それは通信制の大学院でも可能です。
通信制の大学院であれば毎日通学する必要がないため、働きながらでも無理なく通えます。
そこで会計に関する研究、または税法に関する研究を行い、博士号を得ることができれば税理士試験の科目免除を受けることが可能です。
学べる内容や研究対象は大学院によって異なっているため、事前に免除条件を満たしているか確認しておくことが必要不可欠です。
働きながら大学院に通う際の主な注意点3選
大学院で一定の条件を満たすことによって税理士試験の科目免除が受けられるため、一気に合格に近づくことができます。
そのため、税理士を目指すために大学院に通うことを検討している方も多いでしょう。
現在大学生の方はそのまま大学院に進学するという選択肢がありますが、働きながら大学院に通う場合、いくつかの注意点があります。
具体的には以下の3点です。
- 大学院に合格するための準備が必要
- 学費・時間がかかる
- 大学院に通っても不認定になる場合がある
それでは、それぞれのポイントについて詳しく紹介していきます。
①大学院に合格するための準備が必要
大学院に入学するためには、まず入試に合格する必要があります。
税理士試験の科目免除が受けられる「商学研究科」「経営学研究科」「経済学研究科」などの学科に入学するには、会計学や経営学、経済学などの試験に合格する必要があります。
もともと大学などでこれらの科目について学んでいる方であればそれほど難しくはありませんが、初学者の場合はまず大学院に合格するための準備に多くの時間をかける必要があります。
大学院を目指すなら、大学院に合格するための準備期間も頭に入れておくことが大切です。
②学費・時間がかかる
大学院に通う場合、学費がかかります。
通う大学院によって費用は異なりますが、国立の大学院の場合入学金は約28万円、授業料は約53万円ほどです。
公立の場合もほぼ同様か、少し安い程度となっています。
私立の場合は大学によってバラつきがありますが、入学金は30万円前後、授業料は100万円を超えることもあります。
科目免除を受けるために多額のお金が必要になるのがデメリットです。
また、大学院を卒業するには基本的に2年間在学している必要があります。
働きながら通う場合、それ以上の年月が必要になる可能性も視野に入れておきましょう。
③大学院に通っても不認定になる場合がある
科目免除を受けるには会計学や税法の研究によって修士や博士の学位を得る必要があるため、ただ大学院に通うだけでは不十分です。
大学院の課程を修了するのはもちろん、修了していても条件を満たしていなければ不認定となってしまいます。
さらに働きながらとなれば、スケジュール管理と効率の良さを徹底する必要があります。
まずは「大学院の課程を修了するのと、試験を受験するのとどちらが早いか」について入念に検討しましょう。
税理士試験の大学院科目免除制度は今後廃止されるのか?
税理士試験の科目免除制度については、過去に何度か条件の変更が行われたことがあります。
それだけに「税理士試験の大学院科目免除そのものが今後廃止されるのでは?」といった不安を抱いている方も多いようですが、現時点では廃止される予定はありません。
とはいえ、直近で廃止される予定はないというだけで、今後どうなるかは不明です。
そのため、現行の制度で科目免除を受けたいと考えているのであれば、できるだけ早く税理士試験に向けて動き始めることをおすすめします。
働きながらでもコツコツ学習を進めれば受かる可能性の高い税理士
税理士試験は多様な科目免除制度に加え、1科目ずつ無理なく受験することができる「科目合格制度」と、自分の得意な科目を選んで受験することができる「科目選択制度」という、時間のない中でも資格取得を目指す受験生に配慮された試験設計になっています。
司法試験など1度の受験ですべての科目の合否が決定してしまう国家資格試験に比べて、コツコツ学習を進めることで成果を実感しやすい試験といえるでしょう。
また、自分の好きな科目を選んで受験することで、仕事で扱ったことのある科目や、将来税理士として扱ってみたい科目を選んで受験することができます。
時間はかかりますが、自分のライフプランに合わせた受験計画を立てていくことで、確実な資格取得が見込めます。
働きながら税理士試験の勉強をするならスタディングがおすすめ!
税理士試験に合格するためには、各科目ごとに膨大な勉強時間が必要です。
独学での合格も不可能ではありませんが、より効率的に勉強できるオンライン講座がおすすめです。
スタディングでは税理士試験の短期合格を目指せるオンライン税理士講座が用意されています。おすすめポイントは主に以下の3点です。
- 効率的に記憶しやすい
- スキマ時間を有効活用できる
- スマート問題集で本試験レベルの練習ができる
では、それぞれのポイントについて詳しく紹介します。
効率的に記憶しやすい
スタディングではインプット学習とアウトプット学習を効率的に繰り返すことによって、記憶しやすいカリキュラムを採用しています。
必要な情報をインプットするのみでなく、同時にアウトプットも行うことで得点力を高められるという点もポイントです。
動画や音声講座もあるため、単にテキストを読むよりも内容をイメージしやすく、繰り返し視聴することで記憶を定着させやすい点もポイントです。
税理士試験は勉強しなければならない範囲が非常に広いため、いかに効率的に学習を進められるかが重要となります。
スタディングでは、合格するために必要最低限の内容に絞っているため、効率的に学習できるカリキュラムが用意されています。
【引用】教材・カリキュラム
スキマ時間を有効活用できる
税理士試験に合格するためには膨大な勉強時間が必要なので、いかに一日の勉強時間を確保するかが重要です。
働きながらの学習となれば、まとまった学習時間を確保するのは困難でしょう。
勉強時間を確保するためのポイントとなるのが、スキマ時間の有効活用です。
スタディングではスマホやタブレットでも学習を進められるため、通勤時間や待ち合わせなどの空き時間を活用できます。
「仕事が忙しくてなかなか勉強時間を取れない」と悩んでいる方にとって、スタディングの税理士講座はおすすめです。
【引用】学習スタイル
スマート問題集で本試験レベルの練習ができる
税理士試験に合格するためには、実際に問題を解く練習をすることも重要です。
スタディングではスマート問題集によって、本試験レベルの練習を繰り返すことができます。そのため、しっかりとした試験対策が可能です。
スマート問題集に加え、テーマ別の演習や過去問題トレーニング、2ヶ月に1回の実力テストもあります。
その時点の自分の実力や弱点の把握だけでなく、本試験に慣れるための準備も可能です。
【引用】教材・カリキュラム
まとめ
この記事では、税理士試験の大学院の科目免除について詳しくご紹介しました。それでは最後に今回のポイントをおさらいします。
- 大学院で一定の条件を満たすことで税理士試験の科目免除が受けられる
- 働きながらでも通信の大学院に通うことで科目免除を受けることが可能
- 現時点では大学院の科目免除が廃止される予定はない
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