税理士試験の科目別勉強時間は?
税理士試験の科目別勉強時間は、一般的に以下の表のように言われています。
科目名 |
平均勉強時間(目安) |
出題内容 |
|
必須科目 |
簿記論 |
450時間 |
計算100%/理論0% |
財務諸表論 |
450時間 |
計算50%/理論50% |
|
選択必須科目 |
所得税法 |
600時間 |
計算50%/理論50% |
法人税法 |
600時間 |
計算50%/理論50% |
|
選択科目 |
相続税法 |
450時間 |
計算50%/理論50% |
消費税法 |
300時間 |
計算50%/理論50% |
|
酒税法 |
150時間 |
計算40%/理論60% |
|
国税徴収法 |
150時間 |
計算0%/理論100% |
|
住民税 |
200時間 |
計算50%/理論50% |
|
事業税 |
200時間 |
計算30%/理論70% |
|
固定資産税 |
250時間 |
計算50%/理論50% |
科目別の平均勉強時間はあくまでも目安であり、確固たる基準ではありません。
税理士試験の勉強が初めての人と、仕事でそれなりに税務に関わってきた人では、合格ラインに達するまでの勉強時間はおのずと異なります。
目安のとおりに勉強したからといって、合格が保証されるわけではありません。
また、働きながら資格取得を目指す場合は、残業や休日出勤、仕事の飲み会や接待、家庭や趣味などプライベートの予定などとの両立が課題となります。
勉強時間の確保が厳しくなってくると、勉強時間と現時点の実力は必ずしも相関しないのに、「住民税はもう200時間勉強したから大丈夫だろう」と考えてしまい、学習計画が乱れることがあります。
目安を知っておくことは大事ですが、それにとらわれないようにしましょう。
税理士試験の合格には何年かかる?
税理士試験は科目合格制です。
所定のルールに沿って科目を選択して受験し(一部科目は必須)、合格した科目数が5科目に到達すると試験合格(官報合格)となります。
合格までの期間は最低2年、多くは3~5年が目安と言われています。
1回の受験で5科目に合格する人はほとんどいません。大半の受験生は数年をかけてチャレンジします。
また、数年といっても1科目の合格に何年も費やすのではなく、1年に1科目ずつでも確実に科目合格を積み上げていくイメージです。
(例:毎年1科目に合格すれば5年目には試験合格)
税理士試験が長丁場となることに「大変そう」というイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、悪いことばかりではありません。
税理士試験には以下のようなメリットもあります。
- 税理士試験は1科目ずつ無理なく受験することができる
- 自分の得意な科目を選んで受験することができる
勉強スケジュールや専門性を高めたい分野など、受験生側がある程度自由に選択できる試験制度となっているのです。
試験制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】税理士試験の特徴
2〜3年で合格を目指す受験プラン
税理士試験への挑戦を決めたら、まず受験プランを考えることが重要です。
- 何年で合格を目指すのか?
- 何年目に、どの科目を受験するか?
このような点をあらかじめ決めておくと、効率的に勉強に取り組めるでしょう。
1年目は【簿財2科目】が基本
1年目は、会計科目であり必須の簿財(簿記論+財務諸表論)に取り組むことが一般的です。
この2科目で学習の土台ができたところに税法を上積みしていくからです。
簿財だけでも学習のボリュームが大きい(合わせて900時間)ので、1年は2科目に注力しておくことがおすすめです。
初めて税理士試験に挑戦する人は、このような定番の流れに沿って無理せず進めましょう。
1年目に【簿財2科目+税法1科目】でもOK
ただし、1年目に【簿財2科目+税法1科目】を選択してもOKです。なぜなら、簿財の土台がなくても受験できる税法科目もあるからです。
- 相続税:理論に関する正確な理解と、財産評価と集計を素早く行うスキルが問われる。
- 国税徴収法:試験科目の中で唯一、理論のみ出題される。理論の正確な理解と解答力が要求される。
逆に、法人税は簿財の知識がしっかりあった方が学習しやすいと言えます。そのため簿財を学習した翌年に受験を計画するとスムーズです。
受験プラン例(1)2年で合格を目指す場合
- 1年目:簿記論(450時間)+財務諸表論(450時間)+国税徴収法(150時間)
- 2年目:法人税法(600時間)+相続税法(450時間)
受験に専念できる方におすすめのプランです。目安として年間1,000時間以上の学習時間が必要となりますが、短期合格できるチャンスがあります。
受験プラン例(2)2年半で合格を目指す場合
- 1年目:相続税法(450時間)or 国税徴収法(150時間)
- 2年目:簿記論(450時間)+財務諸表論(450時間)
- 3年目:法人税法(600時間)+相続税法(450時間)or 国税徴収法(150時間)
学習開始年に多くの学習時間が取れない方におすすめのプランです。1年目は比較的学習量が多くない税法科目から始め、2年目は簿財2科目、3年目 は残りの税法2科目を取得し、2年半での合格を目指します。
受験プラン例(3)3年で合格を目指す場合
- 1年目:簿記論(450時間)+財務諸表論(450時間)
- 2年目:法人税法(600時間)
- 3年目:相続税法(450時間)+国税徴収法(150時間)
毎年安定した学習時間を確保できる方におすすめのプランです。一般的な流れと同様に、必須科目である簿財2科目からスタートし、2年目以降で税法3科目をそろえるプランです。
少なくとも2年目までのプランを立ててスタートしよう
税理士試験に臨む人は、少なくとも2年目までのプランを立ててから勉強をスタートしましょう。
試験合格までの数年間のプランを立てたからといって、必ずしも計画どおりに合格できるわけではありません。合格するはずだった科目が不合格になれば、プランは後ろ倒しに変更せざるを得ません。
まずは2年目までのプランを立てておき、「3年目は残りの科目」と位置付けて1〜2年目の結果を見て調整するようにしていきましょう。もし3年間で5科目合格できれば、非常にいいペースです。
【あわせて読みたい】税理士試験に短期合格する学習計画の立て方
科目の選び方の注意点・コツ
続いて、税理士試験の科目の選び方の注意点やコツについても見ていきましょう。自分に合う科目を見つけることも、合格への大事なプロセスです。
勉強時間だけを見て選択するのがNGな理由
国税徴収法(目安150時間)など勉強時間が少ない科目には、「学習のボリュームが小さいから楽そうだ」と考える受験生が、一定数集まってきます。
しかし、税理士試験は実質的には相対評価による競争試験です。
合格基準は各科目とも「満点の60%」となっていますが、実際は上位10〜15%しか合格できません。
ボリュームが小さいゆえにライバルもしっかり勉強してくるので、得点の取りこぼしが許されない点もリスクとなります。
必要な勉強時間が少ないからといって「狙い目科目」ではないケースも多いのです。
科目選択のコツ
科目選択のコツは、勉強時間(学習のボリューム)だけではなく、税理士になったあとに役立つかも考えることです。税理士試験の受験で選択した科目(法律)は、税理士になったあとに自分の専門分野となります。
一般的には必須の簿財に加えて、税法は法人税・相続税・消費税の組み合わせを選択する人が多いです。受験時の学習のボリュームと仕事での実用性のバランスがいいことが理由です。
独立志向の人は、選択必須科目(法人税と所得税)で法人税を選択しておくと、合格後の仕事に役立ちます。なぜなら、法人税を扱う仕事は企業が相手なので、報酬も高額になり、事務所経営を安定させやすいからです。
なお、選択必須科目は2科目とも受験することも可能ですが、いずれも学習のボリュームが非常に大きく受験の難易度がかなり高まります。どちらか1科目を選択する場合、近年は法人税法を選択する人のほうが多いです。
【あわせて読みたい】税理士試験の出題範囲と科目選択のコツとは?
年間の学習計画
全体の受験プランが決まったら、1年ごとの学習計画を立てましょう。
税理士試験は例年8月なので、1年のスタートは受験前年の8〜9月となります。
1年間の学習計画で大切なことは、インプット期間(新しい知識を学ぶ期間)をあらかじめ把握しておくことです。8〜9月頃からスタートし、翌年の3~4月頃までには学習範囲を一巡できるようにしておきます。
科目によって学習のボリュームが異なるので、まずはその年に受験するすべての科目のボリュームを洗い出します。
そして、3〜4月から逆算する形で学習の計画を立ててみましょう。
「試験は8月なのに、4月までに完了させなければいけないの?」と思われるかもしれませんが、これには理由があります。
税理士試験でもっとも重要と言われる期間は、5月から試験までの直前期です。この期間は答練(本番と同じ形式の問題練習)で解答力を徹底的に高める必要があります。
なぜなら、税理士試験は「真面目に全問解こうとすると時間が足りない」試験だからです。試験本番では、解けそうもない問題は後回しにして、簡単な問題から確実に得点を積み上げていくというテクニックが必要になるので、答練で鍛えておくことがとても大切です。
5月以降は答練に集中するために、インプットは4月までに完了させておいてください。
税理士試験の勉強法 3つのポイント
税理士試験に「2〜3年で合格できる人」と「何年もかかってしまう人」では勉強法の違いがあります。
短期合格を実現できる、正しい勉強法のポイントは次の3つです。
- 計算・理論のどちらかに偏らないようにする
- アウトプットの練習をする
- 問題を取捨選択するスキルを磨く
1つずつ解説していきます。
計算・理論のどちらかに偏らないようにする
ポイントの1つめは、学習が「計算問題」と「理論問題」のどちらかに偏らないようにすることです。
▼計算問題
その名のとおり計算によって答えを導き出す問題で、国税徴収法を除くすべての科目で出題されます。簿記論は計算問題が100%です。
▼理論問題
理論を問う問題で、受験科目の規則や税法条例を理解・暗記する必要があります。簿記論を除くすべての科目で出題されます。国税徴収法は理論問題が100%です。
たとえば必須科目の財務諸表論(出題は計算50%、理論50%)の場合、「計算の対策ばかりで理論は後回し」の受験生が多いといえます。
好きな方の学習ばかりに取り組んでどちらか片方が手薄にならないよう、バランスを意識しましょう。
【あわせて読みたい】税理士試験の理論暗記法
【あわせて読みたい】税理士試験ではどんな電卓(計算機)を使えば良い?
アウトプットの練習をする
ポイントの2つめは、アウトプットの練習をすることです。
理論問題においては、自分の言葉で文章を書かなくてはならない点にハードルの高さを感じる人が多いようです。
内容を理解していてもうまくまとめられなかったり、文字数が足りなかったりするケースが見られます。理論の問題を確実にクリアするためには書く練習が欠かせません。
また、理論の暗記があいまいだと正確なアウトプットができないので、前提となるインプットも重要です。計算問題はスピーディーに進めないと、全体の時間配分が崩れてしまうこともあります。
税理士試験は、「試験時間2時間に対して3時間分の問題が出される」と言われるほど、出題のボリュームが多いことが特徴です。
そのため正確さとスピードに加えて問題を取捨選択するスキルも必要になってきます。とくに必須科目である簿記論は計算問題の割合が100%なので要注意です。
【あわせて読みたい】税理士試験の過去問は重要?第72回(令和4年度)過去問例と過去問勉強法
【あわせて読みたい】税理士試験の直前対策で答練を繰り返す理由
問題を取捨選択するスキルを磨く
ポイントの3つめとして、「問題を取捨選択するスキル」について、さらに解説しましょう。
繰り返し述べているとおり、税理士試験は試験時間に対して明らかに出題が多いです。しっかり勉強した上で初見の問題が出された場合は、「ほとんどの受験生が解けないだろう。捨てていい問題だ」と判断できます。
しかし、自分の勉強不足ゆえに初見である問題を捨てた場合は、点の取りこぼしとなります。取捨選択の判断を適切に行うには、さまざまなバリエーションの問題を経験しておくことが重要です。
問題演習でいくら数をこなしても、同じような問題ばかり解いていれば対応力が高まりません。解く問題を自分で選んでいると偏りが出るので、試験対策のプロが選んだ問題を使いましょう。
税理士試験は独学で合格できる?
資格の勉強をするにあたって「独学で合格できるのか」が気になる人は多いでしょう。
税理士試験の場合は、全科目に独学で合格することは極めて厳しいといえます。独学が難しい理由は主に次の2つです。
- 学習内容の理解と得点力の養成
- 勉強時間の確保とモチベーションの維持
税理士試験の独学については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】税理士の独学は難しい!勉強方法の7つのコツと最適な独学ツール
仕事と両立しながら短期合格するには?
仕事と両立しながら税理士試験に短期合格するために、特に重要なのは次の2つのポイントです。
- 合格に必要な知識を集中的に勉強する
- スキマ時間を最大限活用して勉強時間を確保する
税理士試験の学習範囲はとても広いため、いかに効率的に勉強を進めるかがカギになります。記憶を定着させるためには、「広く薄く」ではなく、試験で使える知識を「狭く濃く」インプットする工夫が必要です。
また、仕事との両立にはスキマ時間の有効活用が欠かせません。スマートフォンやタブレットなどを利用すれば、外出先や移動中の学習も可能になります。机に向かわなくても勉強時間を積み上げていける仕組みを作るとよいでしょう。
【Q&A】税理士試験のよくある質問
最後に、税理士試験に関するよくある質問にお答えします。
税理士になるには?
税理士になる(税理士登録を行う)ための要件は、基本的には「税理士となる資格」+「実務経験」です。このうち「税理士となる資格」を得るにはいくつかのルートがあります。
(1)税理士試験の合格者(5科目合格)
(2)税理士試験の全科目または一部科目が免除となる人
(3)弁護士
(4)公認会計士
割合が多いのは(1)と(2)の人で、20〜30代の若い世代が税理士を目指す場合は(1)のように税理士試験に挑戦するケースが一般的です。
また、2年以上の実務経験も必要で、受験と並行して税理士事務所などに勤務して実務経験を積んでいく人が多いといえます。
【あわせて読みたい】税理士資格を取得する方法は?受験資格の要件緩和でチャンスが拡大!
税理士試験の合格率は?
税理士試験は科目合格制です。令和4年度(2022年度)の科目ごとの合格率は11.4〜23.0%でした。科目ごとの合格率は年度により多少のバラツキはありますが、おおむね10〜20%程度で推移しています。
【あわせて読みたい】税理士試験の難易度・合格率は?
税理士試験の受験資格は?
税理士試験は、令和5年(2023年)4月から受験資格要件が緩和され、より多くの人が試験に挑戦しやすいよう変更されました。若い世代をはじめ、デジタル化などの社会の変化に対応できる税理士を増やしていくことなどが狙いです。変更点は次の2つです。
- 会計科目(簿記論、財務諸表論)の受験資格要件が撤廃(誰でも受験可)
- 税法科目は、学歴による受験資格要件について「法律学・経済学」から「社会科学に属する科目」に拡大
詳しくはこちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】税理士試験の受験資格を分かりやすく解説
税理士試験の勉強内容(出題範囲)は?
税理士試験の各科目ではどんな内容が出題されやすいのか、こちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】税理士試験の出題範囲と科目選択のコツとは?
まとめ
今回は、税理士試験の勉強方法やスケジュールの立て方について紹介してきました。
- 税理士試験の合格には約3~5年かかるのが一般的
- 税理士試験に挑戦する1年目は簿財2科目が基本
- 少なくとも2年目まで受験プランを立ててからスタートするのがおすすめ
税理士試験は、1年に1科目ずつでも受験できるので、働きながら自分のペースでチャレンジできます。
仕事と両立して効率的に合格を目指したい人には、短期合格にこだわった「スタディング 税理士講座」がおすすめです。