
税理士試験の受験生から「簡単な科目はどれか?」とか「学習しやすい科目はどれか?」という質問をよく受けます。
しかし「学習しやすい」ことと「簡単なこと」は別ですし、さらに「合格しやすい」という意味ではもっと誤解されているようです。
この記事では、税理士試験の科目のボリュームや科目選択について見ていきましょう。
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税理士試験の科目選択について
まずは税理士試験の科目選択について、以下2つのポイントを押さえておきましょう。
- 科目選択のルール
- 科目免除とは
科目選択のルール
税理士試験では、【会計2科目】+【税法3科目】の計5科目に合格する必要があります。
また、科目の選び方には以下表の通りルールが決まっています。
| 必須科目 2科目とも合格が必要 | 会計科目 | 簿記論、財務諸表論 |
| 選択必須科目 どちらか1科目以上合格が必要 | 税法科目 | 所得税法、法人税法 |
| 選択科目 残りの科目から選び、合計で5科目になることが必要 | 相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税 |
会計科目の「簿記論」「財務諸表論」は必須科目であり、また「法人税法」と「所得税法」はいずれかの合格が必須となっています。
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科目免除とは
税理士試験には、条件を満たすことで特定科目の試験が免除される「科目免除」の制度もあります。
科目免除の要件としては、以下の3種類が定められています。
- 資格による試験免除
- 学位取得による科目免除
- 国税従事による科目免除
免除のハードルは高いものの、1科目でも免除を受けられれば大きなアドバンテージになるため、自身が当てはまらないか要件を確認しておきましょう。
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税理士試験に受かりやすい科目はある?
税理士試験を受けようと考えるとき、多くの人は「どの科目が受かりやすいんだろう?」と気になるものです。
ここでは、以下3つのポイントで税理士試験の科目について解説します。
- 国税徴収法が受かりやすいって本当?
- 事実上の競争試験だから「受かりやすい科目はない」
- 「学習ボリュームが少ない=受かりやすい」ではない
国税徴収法が受かりやすいって本当?
税理士の科目選択の話題で、必ずと言っていいほど話題に上がるテーマに、「国税徴収法を選択するか?」という議論があります。
これは、国税徴収法の学習時間の目安が他の科目に比べて少ない(一般的に150時間程度といわれている)ことと、計算がなく理論だけの学習であることから発生する議論です。
相続税法(約450時間)や消費税法(約300時間)など他の選択科目に比べて1/2から1/3の時間で学習できることから、「簡単な科目」と考えられがちです。
たしかに、ボリュームが少ないということは短期間で学習できるというメリットはありますが、あくまでも選択基準の1つに過ぎません。
事実上の競争試験だから「受かりやすい科目はない」
ボリュームが少ない科目というのは、いろんなところに情報が出ているので、どの受験生もよく知っています。そういう考え方で選択をする人は、その科目に集まってきます。
しかし、どの科目も合格率は約1割くらいなので、「上位1割に入れるか」という視点で見たら、ボリュームが多くても少なくても結局はあまり関係ない話になってきます。
ボリュームが少ないのは自分だけではなく、他の受験者も条件は同じですから。
例えば、「150時間くらいだったら3ヶ月で十分だ」と考えて選択したとしても、ライバルの受験生たちが半年かけて国税徴収法を2回転勉強して来たら結局負けてしまうことになるでしょう。
「学習ボリュームが少ない=受かりやすい」ではない
ボリュームが少ない科目というのは実はリスクが高いとも考えられます。
みんな同じことを考えているので、ボリュームが少ない分、どこが出ても解けるようにしておかないと、1問間違えただけで合否が変わってきます。
そういう意味では、ボリュームが小さい科目は小さい科目で、範囲は少ないかもしれないけど、2回3回と繰り返し勉強してくる人と闘わなくてはいけなくなる可能性があるので、リスクもあるということです。
逆に簿財や法人税などの大きな科目は、仮に解けるはずの1問を間違えたとしてもチャンスはあります。
そもそも大体半分くらいしか解けない試験ですし、大型科目はそもそも時間内に全問解くことが困難な試験だからです。
そういう意味で1年間の努力の成果を出しやすい科目というのは、比較的ボリュームの多い科目、本番一発勝負になりやすいのがボリュームの少ない科目とも言えます。
こういうことも知っておけば、安易に「この科目は楽そう」といって飛びつくのではなく、実は結構細かいところまで押さえておかないと競争に負けるかもしれない・・・ということに気づきます。
科目別の合格率・難易度に差はある?
それでは、科目別の合格率・難易度についてもう少し詳しく見てみましょう。
- 科目別の合格率
- 科目別の目安勉強時間
科目別の合格率
近年の税理士試験における科目別の合格率は、以下の通り推移しています。
おおむね10%台でバラつきもあり、特定の科目が簡単だとは言えないことが分かります。
| 科目区分 | 科目名 | 令和6年(2024年) | 令和5年(2023年) | 令和4年(2022年) | 令和3年(2021年) | 令和2年(2020年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 必須科目 | 簿記論 | 17.4% | 17.4% | 23.0% | 16.5% | 22.6% |
| 財務諸表論 | 8.0% | 28.1% | 14.8% | 23.9% | 19.0% | |
| 選択必修科目 | 法人税法 | 12.6% | 13.8% | 14.1% | 12.6% | 12.0% |
| 所得税法 | 16.4% | 14.0% | 12.3% | 12.8% | 16.1% | |
| 選択科目 | 相続税法 | 18.7% | 11.6% | 14.2% | 12.8% | 10.6% |
| 消費税法 | 10.3% | 11.9% | 11.4% | 11.9% | 12.5% | |
| 酒税法 | 12.1% | 12.7% | 13.2% | 12.6% | 13.9% | |
| 国税徴収法 | 13.0% | 13.9% | 13.8% | 13.7% | 12.2% | |
| 住民税 | 18.2% | 14.7% | 17.2% | 12.7% | 18.1% | |
| 事業税 | 13.7% | 16.4% | 14.1% | 12.6% | 13.1% | |
| 固定資産税 | 18.0% | 17.3% | 18.4% | 13.8% | 13.5% |
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科目別の目安勉強時間
税理士試験に必要な科目ごとの勉強時間目安は以下の通りです。
| 科目 | 合格率 令和6年度 | 配点(例年) | 勉強時間(目安) | ||
| 理論 | 計算 | ||||
| 必須 | 簿記論 | 17.4% | 0% | 100% | 450時間 |
| 財務諸表論 | 8.0% | 50% | 50% | 450時間 | |
| 選択必須 | 所得税法 | 12.6% | 50% | 50% | 600時間 |
| 法人税法 | 16.4% | 50% | 50% | 600時間 | |
| 選択 | 相続税法 | 18.7% | 50% | 50% | 450時間 |
| 消費税法 | 10.3% | 50% | 50% | 300時間 | |
| 酒税法 | 12.1% | 30% | 70% | 150時間 | |
| 国税徴収法 | 13.0% | 100% | 0% | 150時間 | |
| 住民税 | 18.2% | 50% | 50% | 200時間 | |
| 事業税 | 13.7% | 50% | 50% | 200時間 | |
| 固定資産税 | 18.0% | 50% | 50% | 250時間 | |
税理士試験は科目合格制度を採用しており、一度にすべての科目に合格する必要はなく、数年かけて順に合格を目指すことができます。そのため、働きながらでも無理なくチャレンジできるのが大きな特徴です。
とはいえ、長期間にわたって勉強を継続する必要があるため、国家資格の中でも難易度は非常に高い部類に入ります。
そこで鍵となるのが、スキマ時間の有効活用です。通勤中や休憩中など、わずかな時間も積み重ねていくことで、忙しい社会人の方でも税理士試験の合格を十分に狙うことができます。
科目別に見ると、国税徴収法は理論問題が100%となっており、必要な勉強時間は150時間と一番短くなっています。
しかし、令和6年度の合格率は13.0%と決して高くはありません。
前述の通り、税理士試験は実際には競争試験であるとされており、他の受験者を相対的に上回らなければなりません。
そのため、学習ボリュームの小ささだけを目当てに科目を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
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税理士試験の現実的な科目選択とは?おすすめの組み合わせは?
では、どのように選択科目を決めればよいのでしょうか。
ここでは、以下の2点を解説します。
- 「簿・財・法人・相続・消費」を選ぶ人が多い
- 迷った場合の科目の選び方
「簿・財・法人・相続・消費」を選ぶ人が多い
現実的には、簿・財、法人、相続、消費を選択する人が多いのが実態です。
なぜなら、結局、その選択(簿・財、法人、相続、消費)というのは、仕事に役に立つからです。
税理士の受験生は独立志向が強い傾向にあると思います。
国家資格の中でも独立しやすい資格のトップクラスなので、独立してやっていくというときに、ある程度どんなことにも対応できなくてはいけないということと、税法の中でも特にこれを知っておかないと困るという科目を受験科目として選択するケースが多くなっています。
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実務という意味で言うと、所得税も大切な科目です。
しかし、税理士合格という視点では、所得税と法人税の両方はさすがにきついかもしれません。
あえて両方選択するという方ももちろんいますが、学習の負担も考えるとどちらかの選択になることが多いのではないでしょうか。
迷った場合の科目の選び方
科目選択で迷った際は、以下の考え方を参考にしてみてください。
- 受験者数の多い科目を選ぶ
- すでに知識のある科目を選ぶ
- 理論重視か計算重視かで選ぶ
- 今後のキャリアを見据えて選ぶ
順番に見ていきましょう。
受験者数の多い科目を選ぶ
受験者数の多い科目を選ぶメリットは、教材や情報が豊富にある点です。
大手予備校や通信講座でも定番科目として対策が整っているため、スムーズに学習を進められるでしょう。
受験者の体験談が多く、学習の指針を立てやすいのもメリットです。
また、同じ科目を学ぶ仲間が見つかりやすいことから、情報交換の機会が増え、モチベーション維持につながります。
すでに知識のある科目を選ぶ
大学や実務で学んだことがある分野を選ぶのも有効な戦略です。
すでに基礎知識がある科目なら、ゼロから学ぶよりも理解が早く、効率的に合格点に到達できます。
例えば、相続関連の実務に携わっている人なら相続税法を選ぶと勉強を進めやすいでしょう。
自分の得意分野が活かせる科目を選ぶことで、学習の負担を軽減でき、その分他の科目に集中できます。
理論重視か計算重視かで選ぶ
税理士試験の各科目は、基本的に理論と計算を両方学ぶ必要があります。
しかし、配点の傾向を見ると一部の科目には差があることが分かります。
具体的には、国税徴収法は理論問題が100%、酒税法は理論問題が30%、計算問題が70%です。
理論と計算のどちらが得意かを考え、その比重が大きい方を選ぶのも一つに考え方になるでしょう。
今後のキャリアを見据えて選ぶ
科目選択は、将来どの分野で活躍したいかを考えて決めることも重要です。
資格取得後にどう活躍したいかイメージができているなら、そこで役に立つ科目を選んでおくことで試験対策で培った知識を実務に生かせるでしょう。
将来的に従事したい業務に直結する科目を学ぶことで、合格後に即戦力として活躍しやすくなります。
まとめ
本記事では、税理士試験の科目について解説してきました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 税理士試験は【会計2科目】+【税法3科目】の計5科目に合格する必要がある
- 事実状の競争試験だから、受かりやすい科目は存在しない
- 科目ごとの合格率にはバラつきがあるものの、特定の科目が簡単とは言えない
- 今後のキャリアに役立つ科目を選ぶなど、自分なりの判断基準を持って選択すべき
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