科目選択に迷っています。税理士試験では、ボリュームの少ない科目は簡単なのでしょうか? | |
税理士試験は、実質的に相対評価の試験であるという視点が大事です。したがって、ボリュームの多少が単純に「簡単」かどうかに直結しないということを理解しておきましょう。 |
受験生から「簡単な科目はどれか?」とか「学習しやすい科目はどれか?」という質問をよく受けますが、「学習しやすい」ことと「簡単なこと」は別ですし、さらに「合格しやすい」という意味ではもっと誤解されているようですので、科目のボリュームや科目選択について見ていきましょう。
ボリュームが少ない科目は簡単か?
国税徴収法の選択という議論
税理士の科目選択の話題で、必ずと言っていいほど話題に上がるテーマに、「国税徴収法を選択するか?」という議論があります。
これは、国税徴収法の学習時間の目安が他の科目に比べて少ない(一般的に150時間程度といわれている)ことと、計算がなく理論だけの学習であることから発生する議論です。相続税法(約450時間)や消費税法(約300時間)など他の選択科目に比べて1/2から1/3の時間で学習できることから、「簡単な科目」と考えられがちです。
たしかに、ボリュームが少ないということは短期間で学習できるというメリットはありますが、あくまでも選択基準の1つに過ぎません。
税理士試験は事実上「相対試験」である
ボリュームが少ない科目というのは、いろんなところに情報が出ているので、どの受験生もよく知っています。そういう考え方で選択をする人は、その科目に集まってきます。
しかし、どの科目も合格率は約1割くらいなので、「上位1割に入れるか」という視点で見たら、ボリュームが多くても少なくても結局はあまり関係ない話になってきます。ボリュームが少ないのは自分だけではなく、他の受験者も条件は同じですから。
例えば、「150時間くらいだったら3ヶ月で十分だ」と考えて選択したとしても、ライバルの受験生たちが半年かけて国税徴収法を2回転勉強して来たら結局負けてしまうことになるでしょう。
学習ボリュームの大小をどう考えるか?
ボリュームが少ない科目というのは実はリスクが高いとも考えられます。みんな同じことを考えているので、ボリュームが少ない分、どこが出ても解けるようにしておかないと、1問間違えただけで合否が変わってきます。そういう意味では、ボリュームが小さい科目は小さい科目で、範囲は少ないかもしれないけど、2回3回と繰り返し勉強してくる人と闘わなくてはいけなくなる可能性があるので、リスクもあるということです。
逆に簿財や法人税などの大きな科目は、仮に解けるはずの1問を間違えたとしてもチャンスはあります。そもそも大体半分くらいしか解けない試験ですし、大型科目はそもそも時間内に全問解くことが困難な試験だからです。
そういう意味で1年間の努力の成果を出しやすい科目というのは、比較的ボリュームの多い科目、本番一発勝負になりやすいのがボリュームの少ない科目とも言えます。こういうことも知っておけば、安易に「この科目は楽そう」といって飛びつくのではなく、実は結構細かいところまで押さえておかないと競争に負けるかもしれない・・・ということに気づきます。
現実的な科目選択とは?
現実的には、簿・財、法人、相続、消費を選択する人が多いのが実態です。
なぜなら、結局、その選択(簿・財、法人、相続、消費)というのは、仕事に役に立つからです。税理士の受験生は独立志向が強い傾向にあると思います。国家資格の中でも独立しやすい資格のトップクラスなので、独立してやっていくというときに、ある程度どんなことにも対応できなくてはいけないということと、税法の中でも特にこれを知っておかないと困るという科目を受験科目として選択するケースが多くなっています。
実務という意味で言うと、所得税も大切な科目です。しかし、税理士合格という視点では、所得税と法人税の両方はさすがにきついかもしれません。あえて両方選択するという方ももちろんいますが、学習の負担も考えるとどちらかの選択になることが多いのではないでしょうか。
いずれにしても科目選択では、人がどうこうより、自分が将来何をしたいかをしっかり考えた上で、必用な科目を選択することをお勧めします。