相続税法とは|税理士試験

税理士試験の相続税法は、相続税・贈与税について、税額の計算方法、申告・納付など必要な事項について定められた法律です。

実務上、相続税の申告件数が増える中、税法科目の中で安定した人気を集めています。

法人税法・所得税法に次いで学習範囲が広い科目で、合格レベルに達するためには、理論・計算ともに多くの学習時間が必要となります。

合格率は他の科目と同程度ですが、実務での必要性が高く受験者間の競争が激しい科目といえます。

この記事では、税理士試験の相続税法について解説します。

相続税法とは

相続税及び贈与税について、納税義務者、課税財産の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めた法律です。

相続税法は、他の税法とは異なり、1つの税法の中に相続税と贈与税という2つの税目が定められているため、「1税法2税目」と呼ばれています。

人の死亡によって相続税が課税される場合がありますが、この負担をできるだけ軽くしたいと考え、生前に財産を贈与するケースがあります。

これを無条件に認めてしまえば、相続税の負担を回避・軽減することができます。そこで、相続税を補うために、生前の贈与に対して贈与税が存在します。

このように贈与税は相続税を補完する役割があり、相続税法の中で相続税と並び一税目として規定されているのです。

税理士試験の相続税法の特徴

理論・計算がいずれも50点で合計100点満点の試験です。

相続税法の理論問題

理論では、相続税法や租税特別措置法などの各種規定を説明させる問題や、事例形式の問題が出題されています。

個別理論のほかに、複数の規定に関する応用理論として出題される場合もあります。 近年では、直近の改正論点が取り上げられる傾向にあります。

相続税法の計算問題

計算では、相続事例に基づく総合問題が出題されています。各種財産の評価から、税額の加算・控除を行い、各相続人・受遺者の課税価格・相続税額を計算する問題です。

現在の日本では、社会の高齢化に伴い相続が多数発生し、相続税法の改正により相続税の課税割合も増加しています。

相続税の申告件数が増える中で、実務でも使える相続税法は安定した人気を集めています。

ただ、相続税法の改正により、学習のボリュームが増え続け、法人税法・所得税法に次ぎ多くの学習時間が必要となります。

相続税法の標準学習時間

相続税法に合格するための標準的な学習時間は。450〜500時間です。

この時間はあくまでも合格レベルに到達するための学習時間の目安です。

理論では税法の規定が法人税法・所得税法に次いで多く、計算でも宅地・家屋、上場・非上場株式を中心に各種財産の評価に加え、

暦年贈与・相続時精算課税贈与を行い、課税価格を計算できるようにする必要があります。

さらに相続税額の加算や贈与税額控除などを経て各相続人・受遺者の相続税額まで算出できるように集計にも慣れる必要があるため、必要な学習時間は多くなります。

ただ、各論点は学習を一通り行えば、十分理解できるものばかりです。

合格のためのポイントは、理論の苦手項目を作らず、相続税法全体の幅広い知識を身につけ、計算では財産評価を確実に行いつつ、集計スピードを上げ、取りこぼしのないようにすることが大切です。

相続税法の合格率と難易度

税理士試験の相続税法の合格率は下記の通りです。 税理士試験の合格ラインは、建前上「満点の60%以上」とされていますが、税法科目の場合、受験者の上位10~15%が合格するという競争試験です。年によって合格率の上下はありますが、一定範囲の合格率で推移しています。

年度合格率
令和2年10.6%
令和元年11.7%
平成30年11.8%
平成29年12.1%
平成28年12.5%
平成27年13.4%
平成26年12.9%

税理士試験の他の科目の合格率を見る

相続税法の難易度

次に難易度の面では、理論の出題は、一つ一つの問題は比較的シンプルなものが多いのですが、幅広い学習範囲の中から解答を的確に記述することが求められます。

ただ、受験生の競争が激しいため、他の受験生より精度の高い理論答案を作成できるようにする必要があります。

計算の出題は、総合問題において各財産を正確に評価するとともに、素早く集計して各相続人・受遺者の課税価格と税額を計算することが要求されます。

相続税法 短期合格勉強法

相続税法は、幅広く正確な理論に関する理解と、財産評価と集計を素早く行うスキルが問われる試験です。

したがって、以下の項目と順番で学習するのがおすすめです。

相続税法の理論の勉強方法

  • 各論点の概要を理解する(完璧にするのではなく、一通り全体像をつかむ)
  • 簡単な例題を解いてみる→個別の理論の確認
  • 少しまとまった分量の問題を解いて、内容理解を深める →どういう形で出題されるか?を理解する
  • 演習問題や過去問題を時間を決めて解き、解答力を身につける→演習後、解答・解説と照らして、自分に足りない記述や解法を補う
  • 改正論点もおさえ、一通り解答できるようにする

相続税法の計算問題の勉強法

  • 個別論点の計算問題を練習する(完璧にするのではなく、一通り解いてみる)
  • しばらくしてからもう一度問題練習をして、定着しているか確認する→定着していない場合は、復習して繰り返し学習で記憶に定着させていく
  • 本試験に近いレベルの問題で実力をチェックする(どこで間違えたか・忘れていることなど)→復習する
  • 本試験レベルの問題を本試験と同様に時間を決めて解く練習をする→復習する

このように、繰り返し練習をして、理論の幅広く正確な理解と計算・集計に関するスキルを積み上げていくのが相続税法攻略の道です。

相続税法については、テキストを読み理解を深めると同時に、問題練習を通じて幅広い知識の定着と補充を繰り返していく必要があります。

理論では各論点の概要を一通り理解しておけば、試験直前期の理論問題演習においてコンスタントに高得点を取りやすくなります。

計算では基本の個別論点を着々とマスターし、直前期に課税価格・相続税額の総合問題を解けるようにすれば、本試験突破も可能です。

相続税法では、学習のボリュームが多いため、一定の努力が必要ですが、一方で理論・計算で偏りなく得点する要領の良さも必要となります。