日商簿記・全商簿記・全経簿記の違いとは?各資格の概要や難易度、合格率を紹介!

簿記の資格として広く認知されているのは日商簿記ですが、ほかにも全商簿記や全経簿記といった資格があります。簿記を勉強しようと思っても、どの資格のどの級を目指すべきかわからないという方は多いでしょう。


本記事では、日商簿記・全商簿記・全経簿記それぞれの特徴や難易度、取得のメリットを紹介します。本記事を読んで、自分にとって最適な簿記の資格はどれか検討してみてください。

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日商簿記・全商簿記・全経簿記の違い

簿記の資格には、日商簿記、全商簿記、全経簿記の3種類があります。それぞれの主催団体や主な受験者層は以下のとおりです。

主催団体 主な受験者層
日商簿記 日本商工会議所 大学生・社会人
全商簿記 全国商業高等学校協会 商業高校に通う高校生
全経簿記 全国経理教育協会 経理・会計の専門学校に通う学生


大学生や社会人が就職や転職、昇進などキャリアに活かすために取得するなら、日商簿記がおすすめです。

企業の採用担当者にも広く認知されているため、履歴書に記載できればアピールになるでしょう。


一方、全商簿記は商業高校に通う高校生、全経簿記は経理・会計の専門学校に通う学生が主な受験者層となっています。

全商簿記・全経簿記の一般的な認知度はあまり高くありません。特に受験の理由がなければ、日商簿記を選んでおくのが無難だといえます。


日商簿記の試験概要・難易度・合格率

日商簿記検定は日本商工会議所が主催する試験です。

前述の通り、その他の簿記資格と比べても知名度が高く、就職や転職などキャリアに生かしやすい資格です。


日商簿記には、原価計算初級・初級・3級・2級・1級という5つの試験があります。

一般的には、履歴書に書けるレベルとされ、かつ簿記初心者でも合格が狙える「3級」から勉強を始める方が多いです。

以下、日商簿記各級の難易度や合格率について見ていきましょう。


原価計算初級

原価計算初級は、2018年に創設された新しい試験です。企業の生産性を把握・向上させるために不可欠な「原価計算」に絞って、その基本的な考え方や知識を習得するための試験となっています。

出題科目・範囲 原価計算
試験時間 40分
検定料 2,200円(税込)
合格基準 70%以上
目安合格率 90%前後
試験日程 各ネット試験会場による


3級以上と違い、特定の日程で実施される「統一試験」はありません。

商工会議所が認定した会場での「ネット試験」という方式になります。会場さえ空いていれば好きな日程で受験できるため、早めに合格したい方にとっては便利でしょう。

合格率が90%前後と非常に高いことからも、気軽にチャレンジできる資格だといえます。

ただし、一般的に履歴書に書けるのは3級以上とされていることからも、キャリアにもたらすメリットはあまり大きくないでしょう。


初級

日商簿記初級は、従来実施されていた4級が廃止されたあと、2017年にスタートした試験です。簿記の基本用語や複式簿記の仕組みを理解し、業務に活かせるレベルが想定されています。

出題科目・範囲 簿記の基本原理・仕訳ほか
試験時間 40分
検定料 2,200円(税込)
合格基準 70%以上
目安合格率 50~65%前後
試験日程 各ネット試験会場による


原価計算初級と同様、日程の決まった統一試験ではなく、認定された会場で受けるネット試験になります。

ただし、合格率は原価計算初級の90%前後よりも大きく下がり、50~65%前後となっています。複式簿記などの専門的な内容が含まれるため、難易度が低いとはいえません。


日商簿記初級では、簿記の基本的な用語や仕組みを理解し、業務に生かせるレベルで身につけられているかが問われます。

ただし、簿記を「ビジネスの言語」と位置づけ、経理や会計の担当者だけでなくすべてのビジネスパーソンを対象とした試験であるため、決算など専門的な内容は含まれません。


原価計算初級と同様、教養として身につける価値はありますが、履歴書などに書くアピール材料としてはあまり効果が期待できないでしょう。


3級

日商簿記3級では、基本的な商業簿記の内容を理解したうえで、経理関連書類の処理ができるレベルの知識が求められます。

出題科目・範囲 商業簿記
試験時間 60分
検定料 2,850円(税込)
合格基準 70%以上
目安合格率 40~50%前後
試験日程 年3回(6月・11月・2月)の統一試験
またはネット試験


日商簿記3級の出題科目は商業簿記です。

商業簿記とは、外部から商品を仕入れて販売する企業において、その活動を複式簿記によって記録するものです。初級では出題されなかった決算書作成なども含まれるため、難易度は高まります。

日商簿記3級は、年3回実施される「統一試験」と自由に日程を選べる「ネット試験」から選択できます。


関連記事:日商簿記検定 筆記試験とネット試験のちがい


出題内容の専門性は初級よりも上がっていますが、合格率は40~50%前後と低くはありません。簿記初心者でも3級から勉強を開始する方が多く、計画的に学習することで十分合格を狙えるレベルです。


2級

日商簿記2級では、3級でも扱う商業簿記の専門性が上がるのはもちろん、新たに工業簿記が出題科目として追加されます。

出題科目・範囲 商業簿記・工業簿記
試験時間 90分
検定料 4,720円(税込)
合格基準 70%以上
目安合格率 15~30%前後
試験日程 年3回(6月・11月・2月)の統一試験
またはネット試験


商業簿記では「外部から仕入れた商品を販売する企業」の活動を帳簿に記録しますが、工業簿記では「自社で製品を製造・販売する企業」の活動を帳簿に記録します。

原価計算など新たな内容が加わるため、学習範囲も広くなります。

独学でも合格は狙えますが、通信やオンラインなどの講座を利用するほうが着実に学習を進められるでしょう。


日商簿記2級は専門性の高い資格として認知度が高いため、就職や転職の際にも有利に働きます。

「3級は簡単すぎるかも」と感じる方は、3級と2級の同時受験を検討するのもよいでしょう。


関連記事:簿記3級と2級どちらから始めるべき?|はじめての簿記検定


1級

日商簿記1級の試験は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算という4つの項目に分かれます。

日商簿記のなかでもっとも難易度の高い級であり、合格率も10%前後と非常に低いです。

出題科目・範囲 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算
試験時間 商業簿記・会計学:90分
工業簿記・原価計算:90分
検定料 7,850円(税込)
合格基準 70%以上かつ1科目ごとの得点が40%以上
目安合格率 10%前後
試験日程 年2回(6月・11月)の統一試験


試験時間は商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分の計180分という長丁場になっています。

さらに、合格基準として各科目で40%以上の得点をとる必要があるため、バランスのよい学習が求められます。

学習範囲が多岐にわたるため、独学での合格は非常に難易度が高いといえるでしょう。


1級取得者は経理・会計のスペシャリストとして認知されるため、キャリアアップにもつながりやすいです。

また、税理士試験への受験資格が与えられるのもメリットの1つです。


関連記事:簿記1級 科目別攻略法


全商簿記の試験概要・難易度・合格率

全商簿記とは、全国商業高等学校協会が主催する「簿記実務検定試験」のことです。

主催者名からわかるとおり、商業高校に通う高校生を主な対象として実施されている簿記試験です。

商業高校を卒業後、経理職の採用試験を受けたい場合や、推薦入試を狙いたい場合などに役立つ資格となっています。

全体的な合格率は、大学生や社会人が主な受験者層となる日商簿記と比べ、高い傾向にあります。


受験資格の制限はないため、社会人の方でも受験することは可能です。

しかし全商簿記の認知度はあまり高くなく、高校生向けという印象も強いため、社会人の方は日商簿記を取得したほうがメリットが大きいでしょう。


全商簿記検定は、基本的に商業高校で採用されている教科書に沿った内容となっています。

そのため、教科書の内容を理解し、適切に処理する能力があれば十分合格を目指せます。


全商簿記各級(3級・2級・1級)の難易度や合格率の目安について見ていきましょう。


3級

全商簿記3級では、商品売買業を営む個人企業の会計処理について問題が出題されます。

取引の記帳や決算整理など、簿記の基礎をしっかりと身につける必要があります。

出題科目・範囲 個人企業の会計処理
試験時間 90分
検定料 1,300円(税込)
合格基準 70点以上
目安合格率 40~70%前後
試験日程 年2回(6月・1月)


2級

全商簿記2級では、個人企業のより発展的な会計処理に加え、株式会社の基本的な会計処理が出題されます。

出題科目・範囲 個人企業・株式会社の会計処理
試験時間 90分
検定料 1,300円(税込)
合格基準 70点以上
目安合格率 30~60%前後
試験日程 年2回(6月・1月)


割賦販売や本支店会計など、3級よりも高度な内容が問われます(「令和4年度第 94 回簿記実務検定試験出題範囲」参照)。

合格率にはばらつきがあるものの、やはり3級よりは低い傾向にあります。


1級

全商簿記1級では、「会計」と「原価計算」という2つの科目に合格する必要があります。

会計法規に加え、製品を製造する場合の原価計算という新たな領域が登場します。

出題科目・範囲 会計・原価計算
試験時間 各90分
検定料 各1,300円(税込)
合格基準 各科目70点以上
目安合格率 会計:25~60%前後、原価計算:40~60%前後
試験日程 年2回(6月・1月)


1級取得を推薦入試の基準としている大学・短大が多いため、商業高校に通う高校生にとっては将来の選択肢を広げる重要な資格となっています。


全経簿記の試験概要・難易度・合格率

全経簿記は全国経理教育協会が主催している検定で、主な受験者層は経理や会計の専門学校に通う学生となっています。

基礎簿記会計・3級・2級・1級・上級という5つの級に分かれており、上級合格者には税理士の受験資格が与えられます。


全経簿記の試験は年4回実施されるため、資格取得のスケジュールを組み立てやすいでしょう。

ただし、上級は年2回のみの実施となっているため、注意が必要です。


全経簿記にも受験資格はないため、社会人の方でも受験は可能です。

しかし、学生や社会人がキャリアに活かす目的で学習するなら、やはり知名度の高い日商簿記を選択すべきでしょう。


以下、全経簿記各級の難易度や合格率の目安について見ていきましょう。

参照:公益社団法人 全国経理教育協会「全経簿記能力検定


基礎簿記会計

全経簿記の基礎簿記会計では、簿記入門レベルの知識が問われます。

具体的には、基本的な帳簿作成や仕訳、決算整理のない損益計算書・貸借対照表の作成ができるレベルが想定されています。

出題科目・範囲 簿記会計学の基本
試験時間 90分
検定料 1,600円(税込)
合格基準 70点以上
目安合格率 60~90%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)


3級

全経簿記3級では、小規模株式会社の経理担当者または管理者として、帳簿作成や基本的な決算整理ができるレベルが求められます。

出題科目・範囲 商業簿記
試験時間 90分
検定料 2,000円(税込)
合格基準 70点以上
目安合格率 55~80%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)


基礎簿記会計と比較しても合格率の目安は大きく変わらず、出題科目も商業簿記だけであるため、比較的合格しやすい級だといえます。


2級

全経簿記2級では、商業簿記に加えて工業簿記が出題範囲に含まれます。

出題科目・範囲 商業簿記・工業簿記
試験時間 各90分
検定料 各2,200円(税込)
合格基準 全科目70点以上
目安合格率 商業簿記:45~65%前後、工業簿記:55~85%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)


商業簿記では、中規模株式会社の経理・財務担当者または経営者として、小売・卸売業以外の業種においても帳簿作成ができるレベルが求められます。

工業簿記の内容は、製造業における簿記の導入として、工程管理のための基本的な帳簿作成ができるレベルとされています。


合格率を見ると、2級から新しく出題範囲となる工業簿記のほうが合格率は高めです。

より内容が専門的になる商業簿記のほうが、難易度は高いといえるでしょう。


1級

全経簿記1級は、「商業簿記・会計学」と「原価計算・工業簿記」という2つの試験に分けて実施されます。

出題科目・範囲 商業簿記・会計学、原価計算・工業簿記
試験時間 各90分
検定料 各2,600円(税込)
合格基準 全科目70点以上
目安合格率 商業簿記:20~70%前後、工業簿記:45~70%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)


「商業簿記・会計学」では、大規模株式会社の経理・財務担当者または経営管理者として、さまざまな業種の帳簿作成や決算整理ができるほか、連結財務諸表の初歩的知識を有するレベルが求められます。

一方「原価計算・工業簿記」の内容は、中小規模の製造業における経理担当者または管理者として、製造過程の帳簿や製造原価報告書・損益計算書・貸借対照表などが作成できるレベルとされています。

合格率はばらつきが大きいものの、特に商業簿記は20%程度という回も少なくないことから、難易度の高い試験であることは間違いありません。


上級

全経簿記上級は、1級と同じく「商業簿記・会計学」と「工業簿記・原価計算」という2つの試験に分けて実施されます。

出題科目・範囲 商業簿記・会計学、工業簿記・原価計算
試験時間 各90分
検定料 7,800円(税込)
合格基準 各科目40点以上かつで全科目合計280点以上
目安合格率 15%前後
試験日程 年2回(7月・2月)


「商業簿記・会計学」では、上場企業の経理担当者として、最新の会計諸基準に基づいた財務諸表の作成ができるレベルが求められます。

「工業簿記・原価計算」の内容は、原価の理論を理解したうえで、損益計算書・貸借対照表を作成でき、責任者・上級管理者として会計情報を利用できるレベルとされています。


合格のためには各科目40点以上かつ合計280点以上の得点が必要です。

合格率も15%前後と低く、非常に難易度の高い試験です。

全経簿記上級への合格により、日商簿記1級と同じく税理士試験の受験資格が与えられます。


就職・転職のメリットで選ぶなら日商簿記がおすすめ!

日商簿記・全商簿記・全経簿記という3つの簿記資格を紹介しましたが、やはり認知度や評価の高さを考えれば日商簿記の取得がもっともおすすめです。

就職活動を控える学生やキャリアアップを狙う社会人の方には、特に取得メリットの大きい資格だといえるでしょう。


日商簿記合格を目指すなら、履歴書に書くだけであれば3級でもよいですが、より効果的なアピールを狙う場合や経理・会計など専門的な業務を希望する場合は、2級以上を目指して勉強するのがよいでしょう。

通信講座やオンライン講座では、3級と2級がセットになったコースなどもあるため、効率よく学べます。


日商簿記の取り方|独学は可能?

日商簿記検定の勉強方法は、主に以下の3つがあります。

  • 市販のテキストで独学する
  • 通信・オンラインの講座を利用する
  • 通学制のスクールに通う

日商簿記3級なら、市販のテキストを使った独学でも、計画的に学習を進められさえすれば十分合格を狙えるでしょう。

ただし、さまざまな専門用語や複式簿記の仕組みなど、初めての方にはとっつきにくく感じるかもしれません。

独学が不安な方や効率的に学習を進めたい方は、講座の利用がおすすめです。


日商簿記2級も独学での合格は不可能ではありません。

ただし、商業簿記と工業簿記をバランスよく学ぶ必要があるため、難易度は大きく上昇します。

合格率も3級の40~50%前後に比べ、2級は15~30%前後と狭き門になっています。


日商簿記1級はさらに専門性が高まるため、独学での合格は非常に困難だといえます。

通信やオンラインの講座、通学制のスクールを利用する方がほとんどでしょう。


関連記事:簿記勉強法~独学でも合格できるの?


まとめ

最後に今回のポイントをおさらいしていきます。

  • 日商簿記は大学生や社会人が主に受験
  • 全商簿記は商業高校に通う高校生が主に受験
  • 全経簿記は経理・会計専門学校の学生が主に受験
  • 就職や転職に活かすなら、認知度・評価の高い日商簿記がおすすめ
  • 日商簿記を勉強するなら最低3級、できれば2級以上の合格を目指したい

全商簿記・全経簿記に比べ、日商簿記は認知度や評価の高い資格となっています。

経理や会計の仕事に携わりたい方はもちろん、その他の業種・職種でもビジネスパーソンとしてのアピール要素になるでしょう。


ネット試験なら好きなタイミングで受験が可能なので、ぜひチャレンジしてみてください。

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