簿記における小切手の役割や取引の流れ、具体的な仕訳例を解説

簿記の仕訳では、小切手による決済がよく登場します。

現金とどう違うのか、そもそもなぜ小切手が使われるのか気になる方も多いでしょう。

本記事では、簿記における小切手の役割や取引の流れ、具体的な仕訳例を解説します。

簿記の基礎をしっかりと理解したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

簿記における小切手

ここでは、小切手の役割や仕訳方法を以下3つのポイントで解説します。

  • 小切手とは
  • 小切手を振り出すときの勘定科目は「当座預金」
  • 他人振出小切手を受け取るときの勘定科目は「現金」

順番に見ていきましょう。

小切手とは

小切手とは、現金の代わりに使える証券の1つです。

とくに高額な取引が行われる場面で多く使われています。

企業間の取引では、支払金額が100万円を超えるようなケースも少なくありません。

高額な取引の場合、現金の用意に手間がかかるうえ、持ち運びにはリスクが伴います。

取引を効率的かつ安全に進めるために、ビジネスの場面では小切手が多く使われているのです。

支払いを小切手で行う場合、小切手帳の用紙に金額や振出日、振出人などを記入し、相手に渡します。

その後、小切手の受け取り手が金融機関に持参すれば、現金化できるという仕組みです。

なお、支払いのために小切手を発行することを「小切手を振り出す」、小切手を発行する人を「振出人」、小切手を振り出した日を「振出日」とそれぞれ呼びます。

小切手に関する基本的な用語なので、頭に入れておきましょう。

小切手を振り出すときの勘定科目は「当座預金」

まず、自社が振り出した小切手について押さえておきましょう。

小切手を振り出すには、事業用の預金口座である「当座預金」にお金を預けておく必要があります。

自社が小切手を振り出す場合、相手は受け取った小切手を金融機関に持参して換金します。

このとき、小切手を振り出した側の当座預金から払い出されることになるのです。

小切手の振り出しには、普通預金や現金は使えません。

必ず当座預金から振り出すことになるため、小切手を振り出したときの勘定科目は「当座預金」となります。

他人振出小切手を受け取るときの勘定科目は「現金」

次に、他社が振り出した小切手(他人振出小切手)を受け取ったときの仕訳について説明します。

他人振出小切手を受け取ったときは「現金」の増加として処理します。

他人振出小切手が「現金」として扱われるのは、すぐに現金化できるからです。

簿記における「現金」は、日常生活でイメージする紙幣や硬貨といった現金そのもののほかに、金融機関ですぐに換金できるものを含みます。

他人振出小切手は、小切手を受け取った人が金融機関に持参することですぐに現金化できるため、「現金」として扱われるのです。

小切手を使った取引の流れ

ここでは、小切手を使った取引の流れを見ていきましょう。

まず、小切手を振り出すには前述の通り当座預金の口座が必要です。

そのため、取引に小切手を使う場合はあらかじめ金融機関に当座預金の口座を開設します。

当座預金口座が準備できた状態で、必要事項を記載した小切手を相手方に渡すことで「振出」は完了です。

小切手を受け取った相手は、金融機関に持参して現金を受け取ります。

以上が小切手を使った取引の流れです。

小切手を利用することで、大量の現金を持ち運ぶことなく取引を完了させられます。

日商簿記などの資格試験にも頻出のテーマであるため、しっかり理解しておきましょう。

簿記における小切手の仕訳例

ここでは、簿記における小切手の仕訳例を以下3つのパターンで見ていきましょう。

  • 仕入代金を支払うため、小切手を振り出した場合
  • 売上代金として他人振出小切手を受け取った場合
  • (参考)売上代金として自己振出小切手を受け取った場合

仕入代金を支払うため、小切手を振り出した場合

まず、仕入代金を支払うために小切手を振り出した場合です。

小切手の振り出しは当座預金の減少につながるため、使用する勘定科目は「当座預金」となります。

例えば、10万円の仕入に対して小切手を振り出した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
仕入 100,000当座預金 100,000

借方に「仕入」を記入することで費用の増加、貸方に「当座預金」を記入することで資産の減少を記録します。

売上代金として他人振出小切手を受け取った場合

次に、売上代金として他社が振り出した「他人振出小切手」を受け取った場合です。

他人振出小切手はすぐに現金化できるため、勘定科目は「現金」を使います。

例えば、売上10万円を他人振出小切手で受け取った場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
現金100,000売上 100,000

貸方に「売上」を記入することで収益の増加、借方に「現金」を記入することで資産の増加を記録します。

(参考)売上代金として自己振出小切手を受け取った場合

最後は、売上代金として以前に自社が振り出した小切手(自己振出小切手)を受け取った場合です。

小切手は他社に譲渡できるため、過去に自社で振り出した小切手が、巡り巡って自社に戻ってくる場合もあります。

例えば、売上10万円を自社が振り出した小切手で受け取った場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
当座預金100,000売上 100,000

貸方に「売上」を記入することで収益の増加、借方に「当座預金」を記入することで資産の増加を記録します。

自己振出小切手を受け取ると、他社への支払いをする必要がなくなります。

そのため、小切手を振り出したときに減少させた当座預金を元に戻す、つまり当座預金を増加させる仕訳をします。

少し特殊なケースですが、小切手を使う仕訳のパターンとして覚えておきましょう。

まとめ

本記事では、簿記における小切手の役割や取引の流れ、具体的な仕訳例を解説しました。

ポイントをまとめると以下の通りです。

  • 小切手は現金の代わりに使える証券の1つで、企業間での取引によく使われる
  • 小切手を振り出すには当座預金の口座が必要
  • 小切手を受け取った人が金融機関に持参することで現金化できる
  • 自社が小切手を振り出した場合の勘定科目は「当座預金」となる
  • 他人振出小切手はすぐに現金化できるため、勘定科目は「現金」となる

小切手の取引は簿記の資格試験などでも頻出のテーマであるため、しっかり押さえておきましょう。

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