簿記用の電卓の選び方
簿記に使う電卓は、サイズやボタンの配置など、使いやすいものを選ぶことが大切です。
操作のしづらさを感じるような電卓だと、計算中のミスが発生しやすくなります。
ここでは、簿記検定で使う電卓の選び方を詳しく解説します。
電卓の大きさ
最適な電卓の大きさは、使用する人によってさまざまです。自身の手のサイズに合った電卓を使いましょう。
一般的なサイズは、縦15〜20cm×横10〜15cm程度です。
なお、カードサイズの電卓は使わないようにしましょう。
ボタンが小さいため、キーの打ち間違いが起こりやすくなります。
電卓のキー・表示・桁数
簿記検定の場合、電卓のキーとしては、0〜9の数字、+・−・×・÷、=、%、√ (ルート)、ACまたはCA(全消去)、C(クリア)、メモリー(M+、M-、MRまたはRM、MCまたはCM)、GT(グランドトータル)、→(1桁消去)などがあれば問題ないでしょう。
なお、早打ち機能や税抜・税込キーについては、なくても問題ありませんが、さらなるスピードアップを求める際には検討してもよいかもしれません。
数字は12桁以上表示されるものをおすすめします。
10桁でも大体の問題には対応可能ですが、桁数の多い金額が出る場合もありえるため、12桁以上表示される電卓の方が安心です。
なお、10桁で十億単位、12桁で千億単位まで表示できます。
早打ち(キーロールオーバー)機能の有無
早打ち(キーロールオーバー)機能とは、前に押したキーから指が離れていなくても、次のキーを押した瞬間に認識される機能です。
入力速度が早い人が早打ち機能のない電卓を使うと、電卓側の認識が間に合わず、誤った計算が行われてしまいます。
そのため、キーの入力が早い人はキーロールオーバー機能が搭載されている電卓を使うことをおすすめします。
サイレントキー機能の有無|「電卓ってうるさいかも…?」と気になる方におすすめ
サイレントキー機能とは、入力時の打鍵音を抑えてくれる機能です。
自宅での学習時や職場での使用時など、電卓の打鍵音を抑えたいという方にはサイレントキー機能を搭載している電卓がおすすめです。
試験持ち込み禁止の電卓とは
商工会議所のホームページでは、電卓(計算機)について以下のように定めています。
計算器具(そろばん、電卓)を使用しても構いません。
ただし、電卓は、計算機能(四則演算)のみのものに限り、例えば、以下の機能があるものは持ち込みできません。
・印刷(出力)機能
・メロディー(音の出る)機能
・プログラム機能(例:関数電卓等の多機能な電卓、売価計算・原価計算等の公式の記憶機能がある電卓)
・辞書機能(文字入力を含む)
(注)ただし、次のような機能は、プログラム機能に該当しないものとして、試験会場での使用を可とします。
日数計算、時間計算、換算、税計算、検算(音の出ないものに限る)
出典:商工会議所の検定試験「試験科目・注意事項」
スマートフォンや携帯電話などの電卓機能、スマートウォッチなどのウェアラブル端末、タブレット端末は、試験では使用できません。
試験ではスマホなどの電源をオフにしたうえで、かばんなどにしまっておく必要があります。
なお、故障や電池切れなどの不測の事態に備え、試験会場に電卓を2台以上持ち込むことはできます。
簿記用電卓のおすすめメーカー・機種
簿記用の電卓を選ぶにあたって、おすすめのメーカーや機種を紹介します。
シャープ派とカシオ派に分かれる
簿記の試験や仕事に使うなら、耐久性や機能性を考え、大手メーカーの電卓を選んでおけば問題ないでしょう。
無名のメーカーで非常に安価な電卓には、壊れやすいものや打ちづらいものもあるためご注意ください。
キーの配置や操作方法、キーの表記は、大きく分けてシャープ派(シャープ・キャノン・シチズン)とカシオ派に分かれます。
簿記での電卓操作に慣れてからメーカーや機種を変えると、操作に違和感を覚え、ミスが起こりやすくなるため注意が必要です。
例えば複利計算においては、以下のような違いがあります。
例:1.02の10乗を計算する場合
<シャープ製>
1.02×=========(1.02の後に、×を1回、=を9回入力します。)
<カシオ製>
1.02××=========(1.02の後に、×を2回、=を9回入力します。)
いずれも計算結果は、1.21899…となります。
電卓を購入する際は、複数の機種を実際に手にとって操作してみるのがよいでしょう。
おすすめ機種:シャープEL-G37・カシオAZ-26S
シャープとカシオでそれぞれおすすめの機種を挙げるなら、以下の2つになります。
どちらも簿記初心者の方から1級レベルの方まで、問題なく使える機能が備わっています。
▼シャープEL-G37の特徴
シャープEL-G37はキーロールオーバー機能を搭載しており、1秒間に20回もの入力が可能となっています。
また、サイレントキーの採用により、打鍵音を気にせず操作が可能です。
そのほか、「=」キーを押した回数が自動で表示されるため、複利計算や減価償却費の計算に役立ちます。
太陽電池のほかに電池を内蔵しており、光がさえぎられても計算内容が維持される点も安心です。
▼カシオAZ-26Sの特徴
カシオAZ-26Sもキーロールオーバー機能を搭載しているため、すばやい入力速度での計算に対応しています。
また、サイレントキーの搭載により静かなキータッチが可能です。
太陽電池とリチウム電池が併用されているため、長く使える電卓となっています。
簿記試験で覚えておきたい電卓の使い方・設定
ここでは、日商簿記検定のために覚えておきたい電卓の使い方や設定について解説します。
覚えておきたい使い方
まずは簿記の計算に役立つ便利なキーの使い方を紹介します。
▼M(メモリー)キー
「M」は「メモリー(Memory)」のことで、数字を一時的に記憶させておく機能です。
「M」(メモリー)キーは、以下の「M+」「M-」「MR(RM)」「MC(CM)」の総称です。
- 「M+」(メモリープラス):電卓に表示されている数字をメモリーに足すキー
- 「M-」(メモリーマイナス):電卓に表示されている数字をメモリーから引くキー
- 「MR(RM)」(メモリーリコール):メモリー内容を呼び出すキー
- 「MC(CM)」(メモリークリア):メモリー内容をクリア(消去)にするキー
メモリーキーは、以下のような計算で使用すると便利です。
例1:100円の商品Aを3個、200円の商品Bを7個買った場合の合計額
① 商品A 「100」「×」「3」「M+」(表示は300)
② 商品B 「200」「×」「7」「M+」(表示は1400)
③ 合計 「MR(RM)」を1回押す(表示は1700)
このようにして「M+」「MR(RM)」を使用することで、合計額は1,700円であることがわかります。
例2:50×30-(15×20)のように、掛け算同士の引き算
① 50×30 「50」「×」「30」「M+」(表示は1500)
② 15×20 「15」「×」「20」「M-」(表示は300)
③ 引き算の結果 「MR(RM)」を1回押す(表示は1200)
このようにして、「M+」「M-」「MR(RM)」を使用することで、引き算の結果は1,200であることがわかります。
▼GT(グランドトータル)キー
「GT」は「グランドトータル(Grand Total)」のことで、計算結果を集計する機能です。
例えば、皆さんは以下の掛け算の合計を求める場合、どのように計算しますか?
123×456=
345×678=
567×890=
まずは紙にメモを取り、あとで合計するという人が多いのではないでしょうか。
しかしGTキーを使えば、「=」で出した計算結果を足し算できるのです。
上記の掛け算の場合、それぞれ
①「123」「×」「456」「=」
➁「345」「×」「678」「=」
➂「567」「×」「890」「=」
と入力してから、GTキーを押すと、3つの掛け算の集計結果が出ます。
M+キーも同様の機能ですが、計算の際に押し忘れてしまう場合もあります。
そのため、「=」なら忘れずに押せるという人にはGTキーの使用がおすすめです。
GTキーを使いこなせると、集計の際に大きなアドバンテージになります。
(ちなみに、上記計算例の集計結果は、794,628となります。)
使用前の事前設定
次に、電卓を使用する前の設定について解説します。
▼とにかく「F」に合わせる
電卓の計算結果を表示する画面の下あたりに、「F543210A」や「F CUT 5/4」などと表示されたボタンがあります。
これは端数計算に用いるもので、小数点以下を何桁まで表示するか、小数点以下を四捨五入するか切り捨てるかなどの設定が可能です。
ただし、日商簿記の試験では特に使わないため、常にF(フリー)に設定しておきましょう。
▼税率設定はしなくてOK
電卓には「税込」「税抜」ボタンがありますが、日商簿記の試験では特に使用しません。
計算時に設定する必要はないため、ボタンを触らないようにしましょう。
簿記における電卓操作のコツ
ここでは、簿記ですばやく正確な計算をするための電卓操作のコツを紹介します。
指の位置を固定する
簿記における電卓操作は、指の位置を固定し、無意識レベルで操作できるようにしておくのが理想です。
左手で操作する場合、5のボタンにある突起を中指で触った状態をホームポジションとして、「1・4・7」を薬指、「2・5・8」を中指、「3・6・9」を人差し指で操作するようにし、日頃から練習を重ねておきましょう。
スピードよりも正確性を重視する
簿記の電卓操作では、正確性が確保されている状態でスピードを上げていくことが重要です。
正確性を犠牲にしてスピードを上げても、正しい計算結果が得られなければ意味がありません。
簿記の試験で特に多いミスは、以下の2つです。
- 電卓の叩き間違い(単純なタイプミス)
- 数字の転記ミス(例:「3,663,000」を「3,633,000」などと書く)
電卓操作に慣れてきたら、ブラインドタッチは自然とできるようになります。
最初は自分の力を過信せず、目で確認しながら計算しましょう。
簿記の電卓についてよくある質問
以下は、簿記で使う電卓に関するよくある質問とその回答です。
値段はいくらくらいのものを買うべき?100均はダメ?
簿記に使用する電卓は、家電量販店などで1,000〜3,000円程度で販売されているもので問題ありません。
ネット通販で購入しても構いませんが、大きさが分かりづらいのがネックです。
お店で実物を見たうえで、自身の手のサイズに合うものを選ぶのがおすすめです。
なお、100円均一などの安すぎる電卓はおすすめできません。
操作性や丈夫さに問題があることが多く、特に資格試験では簿記の能力以外の要因で点数を落とすことになりかねません。
電卓を打つのは右手?左手?
簿記検定では、計算問題を解く際にスピードが要求されます。
そのため、利き手ではないほうの手で電卓を打てるのがベストです。
利き手でないほうの手で電卓を打ち、利き手で文字を書ければ、時間のロスが生じないからです。
右利きの人は左手でキーを打ち、左利きの人は右手でキーを打てるよう練習しましょう。
ただ、利き手でないほうの手を使うのが苦手な人は、どうしてもミスが生じてしまうということであれば利き手で電卓を打っても構いません。
まとめ
簿記検定で使う電卓には、自身の手のサイズに合ったものを選ぶことが大切です。
高価な電卓である必要はありませんが、知名度のあるメーカーの電卓は壊れにくさや使いやすさの面で安心感があります。
簿記の試験会場では、電卓の貸し出しは行われません。早めにお気に入りの電卓を決め、問題演習で使い慣れておきましょう。
どちらの手で電卓を操作するかは、簿記検定に向けてできるだけ利き手でないほうの手で使えるようトレーニングしておくことをおすすめします。
試験本番までにすばやく正確に打てるようにしておくことが何よりも大切です。
電卓は、簿記検定の受験だけでなく、実際の業務でも使い続けていくものです。
さまざまな電卓を試してみて、お気に入りの電卓を手に入れましょう。
使い慣れた電卓であれば、計算ミスが少なくなったり、スピードが速くなったりするため、正確性の向上・時間の短縮に役立ちます。
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