簿記の勘定科目「現金過不足」とは|仕訳例をパターン別に紹介

簿記における「現金過不足」は、帳簿と手元の現金の金額が一致しない状態を記録するために使用します。
借方と貸方のどちらに記載すべきかなど、簿記に慣れていない方にとっては混乱してしまう処理の1つだといえるでしょう。

本記事では、簿記における現金過不足の考え方を解説するとともに、具体的な仕訳例をパターン別にご紹介します。

簿記の勉強を始めたばかりの方や、現金過不足の処理がよくわからない方はぜひ参考にしてみてください。

簿記の勘定科目「現金過不足」とは

現金による取引は、取引のたびに現金出納帳などの帳簿に正確に記録されるべきものです。

しかし実際には、帳簿と手元の現金の金額が合わないこともあります。

現金過不足とは、このように帳簿と手元の現金の金額が一致しない状態のことです。

また、そのような現金の不足や過剰を記録するための勘定科目を指します。

現金過不足の勘定科目を使うことで、現金が過剰にある(または不足している)状態を記録できます。

しかし、現金過不足という勘定科目は期中でしか使えません。

原則として、金額の不一致が出た原因を突き止め、現金過不足は解消する必要があるのです。

期末時点でも原因がわからない場合は、「雑益」「雑損」といった勘定科目で処理します。

現金過不足が生じる原因としては、金額の数え間違いや帳簿の記載ミスといったものが考えられます。

仕訳時のケアレスミスを減らすことに加え、経理担当者が簿記の知識を深めることで現金過不足の発生はある程度防げるでしょう。

現金過不足の仕訳例をパターン別に紹介

帳簿と手元の現金の金額が合わないときの処理方法について、以下3つのパターンに分けて解説します。

  • 現金の金額不一致が発覚したとき
  • 金額不一致の原因がわかったとき
  • 原因不明のまま決算を迎えたとき

順番に見ていきましょう。

現金の金額不一致が発覚したとき

現金の金額不一致が発覚したら、まずは「現金過不足」の勘定科目を使用し、帳簿上の金額を実際の金額に合わせる仕訳を行います。

それぞれのケースで仕訳例を見てみましょう。

▼手元の現金が帳簿の金額より多かったとき

(例)手元の現金が11,000円、帳簿残高が10,000円の場合(差額1,000円)

借方科目金額貸方科目金額
現金1,000現金過不足1,000

▼手元の現金が帳簿の金額より少なかったとき

(例)手元の現金が10,000円、帳簿残高が11,000円の場合(差額1,000円)

借方科目金額貸方科目金額
現金過不足1,000現金1,000

借方と貸方が逆になるだけで、どちらも仕訳の考え方は同じです。

金額不一致の原因がわかったとき

金額不一致の原因がわかったときは、「現金過不足」の科目から適切な科目に振り替えます。

▼手元の現金が帳簿の金額より多かったとき

(例)手元の現金が帳簿残高より1,000円多く、現金過不足として処理していた。その後、売上を実際の金額より1,000円少なく記帳していたことがわかった。

借方科目金額貸方科目金額
現金過不足1,000売上1,000

▼手元の現金が帳簿の金額より少なかったとき

(例)手元の現金が帳簿残高より1,000円少なく、現金過不足として処理していた。その後、通信費として支払った1,000円を記帳していなかったことがわかった。

借方科目金額 貸方科目金額
通信費1,000現金過不足1,000

原因不明のまま決算を迎えたとき

「現金過不足」の勘定科目は期中にしか使えません。

原因不明のまま期末を迎えた場合は、何らかの収益または費用が発生したと考え、「雑益」または「雑損」の勘定科目に振り替えます。

▼手元の現金が帳簿の金額より多かったとき

(例)手元の現金が帳簿残高より1,000円多く、現金過不足として処理していた。期末になっても原因が判明しなかった。

借方科目金額貸方科目金額
現金過不足1,000雑益1,000

▼手元の現金が帳簿の金額より少なかったとき

(例)手元の現金が帳簿残高より1,000円少なく、現金過不足として処理していた。期末になっても原因が判明しなかった。

借方科目金額貸方科目金額
雑損1,000現金過不足1,000

簿記の「現金過不足」についてよくある質問

簿記の「現金過不足」について、よくある以下の質問にお答えします。

  • 現金過不足の問題は日商簿記3級に出る?
  • 現金過不足の仕訳の覚え方は?
  • 現金過不足が多いときは?いくらまでOK?

順番に見ていきましょう。

現金過不足の問題は日商簿記3級に出る?

日商簿記の資格取得を目指している方にとっては、現金過不足を勉強すべきかどうかが知りたいところでしょう。

現金過不足は、日商簿記3級の出題範囲として商工会議所簿記検定試験出題区分表に掲載されているため、問題として出題される可能性があります(2025年7月の記事執筆時点)。

受験を予定している方は、現金過不足の基本的な考え方と仕訳方法を習得しておきましょう。

「現金過不足が発覚したとき」「原因がわかったとき」「原因不明のまま期末を迎えたとき」の3パターンの仕訳に慣れることが重要です。

現金過不足の仕訳の覚え方は?

「帳簿と手元の現金の金額が一致しない」ことがわかったら、「まずは帳簿側を手元の金額に合わせる」と覚えておきましょう。

帳簿上の現金が多い場合は減らす仕訳、帳簿上の現金が少ない場合は増やす仕訳を行います。

手元の現金は調整できないため、帳簿上の金額を実際の金額に合わせるのです。

その後、原因がわかったタイミングで現金過不足の金額を本来の勘定科目に振り替えます。

各仕訳の考え方を理解すれば、借方・貸方や勘定科目の選択を間違えることはないでしょう。

現金過不足が多いときは?いくらまでOK?

現金取引を行う企業において、現金過不足は少なからず発生するものです。

しかし、あまりに金額が大きい場合、税務署や金融機関から指摘が入る可能性もあります。

現金過不足は「いくらまでならOK」と明確に線引きがなされているものではありません。

どのような場合でも現金過不足の原因は突き止めるべきですが、特に事業規模に比べてあまりに金額が大きい場合は、本格的な調査を実施するなどしたほうがよいでしょう。

なお日商簿記試験においては、現金過不足は仕訳問題や第三問の決算整理仕訳の問題などに登場しますが、仕訳に必要な情報は問題文にすべて明記されています。

本記事でご紹介したパターン別の仕訳方法を習得することに集中しましょう。

まとめ

本記事では、簿記における現金過不足の考え方を解説するとともに、具体的な仕訳例をパターン別にご紹介しました。

ポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 現金過不足とは、帳簿と手元の現金の金額が一致しない状態、およびその状態を記録するための勘定項目
  • 現金過不足が発生したら、帳簿上の金額を手元の現金の金額に合わせる
  • 原因がわかった時点で正しい勘定科目に振り替える
  • 期末時点で引き続き原因不明である場合は、「雑益」または「雑損」に振り替える
  • 日商簿記3級では、現金過不足の仕訳が出題される可能性がある

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