
簿記の損益計算書は、特定期間における企業の収益を示すものです。
貸借対照表と一緒に学ぶことが多いため、作成の目的や勘定科目の種類をうまく理解できていない方もいるでしょう。
本記事では、簿記の損益計算書について、その概要や貸借対照表との違い、作成手順を紹介します。
簿記の基礎をしっかり身につけたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
簿記の損益計算書とは|貸借対照表との違い
損益計算書と貸借対照表は、企業の経営・財務の状況を示す重要な財務諸表です。
簿記の資格試験においても重視されている項目であり、頻繁に出題されています。

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損益計算書の役割や貸借対照表との違いをしっかりと理解し、簿記の基礎を固めておきましょう。
損益計算書とは
損益計算書は、特定期間における企業の収益と費用、およびその差額としての利益(または損失)を示す財務諸表です。
損益計算書を見ることで、企業の経営活動の状況を数字の面から把握できます。
収益とは、商品販売やサービス提供によって企業が得た売上高などのことです。
費用とは、商品の仕入れや生産にかかった売上原価・人件費・広告宣伝費などの経費のことです。
損益計算書では、収益から費用を差し引く形で特定の期間(通常は1年間)における利益(当期純利益)を算出します。
以下は損益計算書の簡単な例です。
損益計算書
〇〇株式会社 X2年4月1日からX3年3月31日まで (単位:円)
費用 | 金額 | 収益 | 金額 |
売上原価 | 500,000 | 売上高 | 1,000,000 |
給料 | 200,000 | ||
減価償却費 | 150,000 | ||
法人税、住民税及び事業税 | 50,000 | ||
当期純利益 | 100,000 | ||
1,000,000 | 1,000,000 |
収益である売上高から、売上原価や給料、減価償却費といった費用を差し引き、当期純利益が計算されています。
損益計算書は、経営者や株主、投資家などが企業の業績や収益性を判断するための重要な資料です。
貸借対照表と合わせて分析することで、企業の財務状況をより詳細に把握できます。
貸借対照表との違い
貸借対照表と損益計算書は、いずれも企業の経営・財務の状況を把握するうえで重要な財務諸表ですが、それぞれ異なる側面を示しています。
貸借対照表と損益計算書の主な違いは、「対象期間」と「示す内容」です。
貸借対照表は、ある特定の時点での企業の資産と負債、そして純資産を示す財務諸表です。
資産は企業が保有する財産や権利、負債は企業が負っている債務や支払い義務、純資産は資産から負債を差し引いたもの(=自己資本)を示します。
損益計算書は前述の通り、特定期間における収益と費用、そして利益(または損失)を示します。
損益計算書と貸借対照表は密接に関連しているため、企業の全体像を理解するにはどちらも欠かせません。

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簿記における損益計算書作成の流れ
簿記における損益計算書の作成は、以下の流れに沿って行われます。
- 取引を仕訳帳に記載
- 総勘定元帳に転記
- 残高試算表を作成
- 精算表を作成
- 損益計算書を作成
まず、売上や仕入など企業の日々の取引を仕訳帳に記入します。
仕訳帳とは、取引内容を記録するための帳簿のことです。

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仕訳帳に記載した取引内容は、勘定科目ごとに総勘定元帳に転記します。
総勘定元帳は、取引に関するすべての勘定科目とその取引金額を一覧で示す帳簿です。
日々の取引を仕訳帳・総勘定元帳に記録しておけば、決算の際にはそれらを集計・調整することで財務諸表を作成できます。
まず、期末における各勘定科目の残高を集計して残高試算表を作成します。
残高試算表とは、期中の取引結果を勘定科目ごとに一覧にまとめた表のことです。
残高試算表ができたら精算表に転記し、日々の取引とは異なる決算時期特有の処理として決算整理仕訳を行います。
精算表の算出結果を元に、該当期間における収益と費用を転記して損益計算書を作成します。
簿記の損益計算書に関するよくある質問
ここでは、簿記の損益計算書に関する以下の質問について解説します。
- 売上高の求め方
- 売上原価の求め方
- 当期純利益の求め方
- 損益計算書・貸借対照表の覚え方
順番に見ていきましょう。
売上高の求め方は?
売上高とは、特定の期間内に企業が商品やサービスの販売から得た収益の総計です。
期間内のすべての商品やサービスの販売金額(売上)から、返品や割引などを差し引いて計算します。
また、商品販売においては「商品の単価×販売数量」という方法でも求められます。
売上原価の求め方は?
売上原価は、企業が特定の期間内に販売する商品の製造または仕入にかけたコスト(原価)の総計です。
「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」という計算式から求められます。
仕訳の処理としては、まず期首商品棚卸高の金額を資産である「繰越商品」から費用である「仕入」に振り替えます。
売上原価の計算には、前期の終了時点で残っていた在庫である「期首商品棚卸高」を含める必要があるからです。
逆に、期末時点の商品在庫は費用である「仕入」から資産である「繰越商品」に振り替えます。
期末における商品在庫とは、まだ販売されていない商品のことです。
期中には費用である「仕入」として計上されていますが、期末には資産である「繰越商品」に振り替えます。
期首・期末の仕訳処理により、売上原価や繰越商品が正しく計算されるのです。
当期純利益の求め方は?
当期純利益とは、企業が特定の期間(通常は1年間)の経営活動によって得た最終的な利益のことです。
当期純利益は収益の合計から費用の合計を差し引くことで計算されます。
当期純利益は企業の経営状況を表す重要な指標であり、収益性や業績を把握するうえで欠かせない情報です。
損益計算書・貸借対照表の覚え方は?
損益計算書と貸借対照表は、それぞれの名前に着目して覚えるとよいでしょう。
損益計算書は「損益」の名前が示す通り、特定期間における企業の収益と費用を一覧にまとめることで利益を計算する財務諸表です。
一方、貸借対照表は特定の時点での企業の資産・負債・純資産(自己資本)の状況を示す財務諸表です。
貸付や借入など、「貸借」の状況が読み取れる資料だと考えれば覚えやすいでしょう。
まとめ
本記事では、簿記の損益計算書について、その概要や貸借対照表との違い、作成手順を紹介しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 損益計算書は、特定期間における収益と費用、その差額としての利益を示す
- 一方、貸借対照表は特定時点の資産・負債・純資産の状況を示す
- 損益計算書と貸借対照表は「対象期間」と「示す内容」が異なる
- 損益計算書を作成するためには、日々の仕訳帳や総勘定元帳の管理が不可欠
- 残高試算表を精算表に転記し、決算整理仕訳を加えることで損益計算書が作成できる
損益計算書を正しく読み取れるようになれば、簿記の資格試験はもちろん会社員としてのキャリアにも大きくプラスになるでしょう。
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