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簿記にはどんな種類がある?記帳方法や分野、検定試験の違いを解説!

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「簿記を勉強してみよう」と思って調べ始めると、意外とさまざまな種類があることに驚くかもしれません。簿記のスキルをキャリアに役立てるなら、目的に合った簿記の種類を選ぶことが大切です。

本記事では、記帳方法や扱う分野、検定試験などさまざまな角度から、簿記の種類について解説します。これから簿記の学習を始めようと思っている方は、自分に必要なのがどのような簿記なのか、イメージを掴むきっかけにしてみてください。

簿記の記帳方法の種類|単式簿記と複式簿記

まずは記帳方法による違いです。

確定申告でおなじみの白色申告と青色申告。

白色申告は簡易な単式簿記での記入で構いませんが、青色申告には高度な知識を要する複式簿記を用いる必要があります。

単式簿記

単式簿記はとてもシンプルなお金の記録方法で、家計簿や預金通帳など、身近な場面でも用いられています。

企業でも個人でも、お金を使えば「○○からお金が出て、△△にお金が入る」というふうにお金の流れが生まれます。

単式簿記では、お金を使った項目のみ記入すればよく、使われたお金によってどんな結果が生まれたかの記載は必要がありません。

そのため、特別な知識がなくても簡単に数字の記入が可能です。

複式簿記

複式簿記では、お金を使い、その結果資金状況はどうなったか、取引の両面を記録・管理します。

例えば、企業が経費でモノを買った場合、経費が増えたことによる現金の減少という結果が生まれます。

経費で使った分と、資産が減った分は一致していなければなりません。

複式簿記では、取引の両面を「借方・貸方」に分けて記載するのが大原則です。

関連記事:簿記で必要な計算書の種類と意味

簿記で扱う分野の種類|商業簿記・工業簿記・建設業簿記

簿記3級までの出題範囲は商業簿記に限定されますが、2級と1級では工業簿記の知識も問われます。

より専門性の高い経理と会計の知識を習得するには、まず商業簿記と工業簿記の違いを理解しなければなりません。

商業簿記

通常、簿記と言えばこの商業簿記を指します。

簡潔に言えば、一般企業や各種店舗で使用されている決算報告書や収支書のこと。

「○○スーパーが商品を50円で仕入れる」という状態を商業簿記で理解すれば、「50円の資産が増えて50円の現金が減った」ということになります。

その仕入れた商品を1個100円で販売できたら、「100円の売上が生まれて利益は50円(100円-50円)となった」という結果が生まれます。

お金がどう使われ、どんな結果を生んだか、項目別に細かく記録するのが商業簿記です。

工業簿記

工業簿記は、製造業や工場などで用いられる簿記です。

完成された商品を仕入れて販売するまでのお金の流れをつかむ商業簿記に対し、工業簿記では製品の製造過程におけるお金の流れを記録します。

例えば1個のパンを製造するにしても、原材料費や製造に携わるスタッフの人件費が発生します。

ひとつの商品が完成するまでに投入されたコスト項目すべてをチェックするのが工業簿記であり、その内容は商業簿記と比べ、やや複雑となります。

建設業簿記

建設業簿記とは、その名の通り、建設業務にまつわる簿記のこと。

建設メーカーなどの経理業務に役立つ建設業簿記は、商業簿記や工業簿記のスキルを問う一般の簿記と区別して、「建設業経理検定」という名目で試験が実施されます。

建設業簿記と一般簿記との最大の違いは、商品完成までに要する期間です。

建設業界が取り扱う個人住宅やマンションなど建築物の工期は、短くて3ヶ月程度、長くて半年以上はかかります。

規模によっては1年を要するケースもあるでしょう。

そのような長期にわたる工程では、年に2回行われる決算との兼ね合いが難しくなるという問題が避けられません。

建設業経理では、決算時点で未完である住宅の建築に費やした部材費は、「未完成の工事に支出したお金=未成工事支出金」という科目で処理することになります。

同様の事情により、工事途中で処理する項目として「工事未払い金」「未成工事受入金」「完成工事未収入金」などがあります。

いずれも日商簿記には出てこない勘定科目ばかりですが、すでに簿記検定を取得している方は基本的な簿記の仕組みは熟知しているはずなので、建設業経理の試験もチャレンジしやすいでしょう。

簿記の検定試験の種類と違い|日商簿記・全商簿記・全経簿記

主な簿記検定には、日商簿記・全商簿記・全経簿記という3つの種類があります。

ここでは、それぞれの簿記検定の違いを解説します。

日商簿記(原価計算初級・初級・3級・2級・1級)

日商簿記検定は、日本商工会議所が主催する試験です。

受験者は、一般の大学生や社会人が多い傾向にあります。

ほかの簿記資格と比べても知名度が高く、就職や転職などキャリアに活かしたい方におすすめです。

日商簿記各級の試験内容や難易度は、以下の通りとなっています。

▼原価計算初級

出題科目・範囲 原価計算
試験時間 40分
検定料 2,200円(税込)
合格基準 70%以上
合格率 90%前後
試験日程 各ネット試験会場による

▼初級

出題科目・範囲 簿記の基本原理・仕訳ほか
試験時間 40分
検定料 2,200円(税込)
合格基準 70%以上
合格率 50~65%前後
試験日程 各ネット試験会場による

▼3級

出題科目・範囲 商業簿記
試験時間 60分
検定料 2,850円(税込)
合格基準 70%以上
合格率 40~50%前後
試験日程 年3回(6月・11月・2月)の統一試験

またはネット試験

▼2級

出題科目・範囲 商業簿記・工業簿記
試験時間 90分
検定料 4,720円(税込)
合格基準 70%以上
合格率 15~30%前後
試験日程 年3回(6月・11月・2月)の統一試験
またはネット試験

▼1級

出題科目・範囲 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算
試験時間 商業簿記・会計学:90分

工業簿記・原価計算:90分

検定料 7,850円(税込)
合格基準 70%以上かつ1科目ごとの得点が40%以上
合格率 10%前後
試験日程 年2回(6月・11月)の統一試験

キャリアに活かすことを考えるなら、日商簿記3級からチャレンジするのが一般的です。

関連記事:日商簿記各級(初級・3級・2級・1級)の違いは?試験の概要や日程、合格率を紹介!

全商簿記(3級・2級・1級)

全商簿記は、全国商業高等学校協会が主催する「簿記実務検定試験」です。

主な受験者層は、商業高校に通う高校生となっています。

商業高校を卒業したあと、経理職の採用試験や大学・短大の推薦入試などを受ける際に役立つ資格です。

大学生や社会人でも受験できますが、認知度が低く高校生向けの印象も強いため、キャリアに役立てたい方は日商簿記のほうがおすすめです。

▼3級

出題科目・範囲 個人企業の会計処理
試験時間 90分
検定料 1,300円(税込)
合格基準 70点以上
合格率 40~70%前後
試験日程 年2回(6月・1月)

▼2級

出題科目・範囲 個人企業・株式会社の会計処理
試験時間 90分
検定料 1,300円(税込)
合格基準 70点以上
合格率 30~60%前後
試験日程 年2回(6月・1月)

▼1級

出題科目・範囲 会計・原価計算
試験時間 各90分
検定料 各1,300円(税込)
合格基準 各科目70点以上
合格率 会計:25~60%前後

原価計算:40~60%前後

試験日程 年2回(6月・1月)

関連記事:日商簿記・全商簿記・全経簿記の違いとは?各資格の概要や難易度、合格率を紹介!

全経簿記(基礎簿記会計・3級・2級・1級・上級)

全経簿記は、全国経理教育協会が主催している簿記検定です。

主な受験者層は、経理や会計の専門学生となっています。

全経簿記でもっとも難しい「上級」に合格すると、日商簿記1級と同様に税理士試験の受験資格が得られます。

一般の大学生や社会人でも受験できますが、全商簿記と同じく認知度があまり高くないため、キャリアに役立てたい方は日商簿記がおすすめです。

▼基礎簿記会計

出題科目・範囲 簿記会計学の基本
試験時間 90分
検定料 1,600円(税込)
合格基準 70点以上
合格率 60~90%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)

▼3級

出題科目・範囲 商業簿記
試験時間 90分
検定料 2,000円(税込)
合格基準 70点以上
合格率 55~80%前後
試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)

▼2級

出題科目・範囲 商業簿記・工業簿記
試験時間 各90分
検定料 各2,200円(税込)
合格基準 全科目70点以上
合格率 商業簿記:45~65%前後

工業簿記:55~85%前後

試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)

▼1級

出題科目・範囲 商業簿記・会計学、原価計算・工業簿記
試験時間 各90分
検定料 各2,600円(税込)
合格基準 全科目70点以上
合格率 商業簿記:20~70%前後

工業簿記:45~70%前後

試験日程 年4回(5月・7月・11月・2月)

▼上級

出題科目・範囲 商業簿記・会計学、工業簿記・原価計算
試験時間 各90分
検定料 7,800円(税込)
合格基準 各科目40点以上かつ全科目合計280点以上
合格率 15%前後
試験日程 年2回(7月・2月)

簿記検定試験の種類ごとの難易度は?

次に、簿記検定の種類ごとの難易度について解説します。

日商簿記・全商簿記・全経簿記の比較

日商簿記・全経簿記・全商簿記の級ごとの難易度を表にまとめました。

日商簿記
全経簿記
全商簿記
1級 上級
2級 1級 1級
3級 2級 2級
初級 3級 3級
基礎簿記会計

上記の通り、同じ級であっても検定試験によって難易度や出題範囲は大きく異なります。

例えば、日商簿記の2級は全経簿記・全商簿記の1級と同じレベルとされています。

先述の通り、大学生や社会人が就職や転職などのキャリアアップに生かすなら、知名度のある日商簿記がおすすめです。

日商簿記には、原価計算初級・初級もありますが、初心者でも3級からの挑戦で問題ないでしょう。

目安としては、日商簿記3級から履歴書に書けるレベルの資格とされています。

さらに、日商簿記2級に合格していれば経理業務を任せられる人材として高く評価され、1級であれば経理のスペシャリストとして重宝されるでしょう。

関連記事:簿記3級とは|試験の概要や合格率の推移、勉強方法をまとめて解説

簿記検定の独学合格は可能?

次に、独学で簿記検定の合格を目指すのは可能なのか見ていきましょう。

なお、ここでは受験者が多く知名度も高い、日商簿記の3級・2級・1級について解説します。

▼日商簿記3級は独学でも十分合格可能なレベル

日商簿記3級に合格するには、基本的な商業簿記を理解したうえで、経理関連書類の適切な処理を身につける必要があります。

簿記としては基礎的な内容であるため、初心者が独学で学習した場合でも十分合格は可能です。

ただし、仕訳や勘定科目など簿記特有の用語や仕組みを理解する必要があるため、簡単というわけではありません。

短期間で効率よく合格を目指すのであれば、通信やオンラインの講座を利用するのがおすすめです。

関連記事:日商簿記1級・2級・3級は独学で合格可能?それぞれの目安勉強時間や勉強法も解説

▼日商簿記2級は独学合格が不可能ではないレベル

日商簿記2級に合格するには、商業簿記と工業簿記をバランスよく学習する必要があります。

独学での合格も不可能ではありませんが、合格率が3級より大きく下がることからも、難易度の高さは明らかです。

3級の商業簿記は小規模な株式会社を想定したものですが、2級では中規模の株式会社を想定した経理業務となり、より複雑な処理が求められます。

また、自社製品の製造を扱う工業簿記も新たに学習が必要です。

商業簿記だけでも出題範囲や難易度が高くなるうえ、工業簿記もバランスよく学ぶ必要があるため、独学のハードルはかなり高くなると言えるでしょう。

関連記事:簿記2級とは|試験の概要や合格率の推移、勉強方法をまとめて解説

▼日商簿記1級は独学合格が困難なレベル

日商簿記1級に合格するには、商業簿記・工業簿記に加え、本格的な原価計算や会計学の習得が求められます。

日商簿記1級に合格すれば経理のスペシャリストとみなされ、税理士の受験資格も取得できますが、そのぶん高度な会計知識が求められます。

出題範囲は3級・2級と比べて圧倒的に広く、独学で合格レベルのスキルを身につけるのはかなり難しいでしょう。

通信講座やオンライン講座、スクールなどを利用して合格を目指すのが一般的です。

関連記事:日商簿記1級の難易度や必要な勉強時間は?取得するメリットや科目別攻略法も紹介

簿記資格が活かせる仕事の種類は?

ここでは簿記の資格が生かせる仕事の代表例として、以下の3つを紹介します。

  • 企業経理
  • 会計事務所
  • 税理士事務所

ただし、上記のような専門職だけでなく、簿記で身につけたスキルは営業やコンサルティングなど、ビジネス全般に生かせます。

簿記の知識によって自社や競合他社、取引先の経営状況を的確に分析できるため、より高度な判断が下せるようになるからです。

経理・会計の専門職を目指さない場合であっても、簿記はビジネススキルの1つとして大いに活用できることを覚えておきましょう。

企業経理

企業の経理部門では、会計ソフトを使った経理業務や、決算書の書類作成などが主な仕事となります。

まさに、簿記検定で得た知識とスキルが役立つ職業だと言えるでしょう。

ただし、一口に企業経理といっても業種によって扱う内容は異なります。

一般企業では商業簿記のスキルで十分ですが、製造業では原価計算(工業簿記)のスキルが必要となります。

会計事務所

簿記の勉強で会計処理の基本が身につけば、会計事務所で働くこともできます。

会計業務とは、簡単に言うと「収入と支出によって、お金がどう増減したか」を正確に記録する作業です。

会計事務所の補助スタッフになると、会計士のアシスタント業務がメインとなり、企業経理とは業務内容も求められるスキルも異なるでしょう。

しかし、基本的な簿記のスキルが不可欠である点は共通しています。

税理士事務所

税理士事務所でも、会計ソフトを使って法人税や所得税の計算処理を行うため、簿記のスキルが役立ちます。

税理士事務所では、個人や法人の顧客に代わって税務処理を行います。

個人の確定申告と法人の税務申告では、必要な知識や求められるスキルが異なりますが、ベースとして基本的な簿記のスキルは不可欠です。

また、将来的に税理士を目指したい方には、業務を通じて経験が積める理想的な環境だと言えるでしょう。

関連記事:簿記検定を生かせる仕事とは?

まとめ

今回のポイントをおさらいしておきましょう。

  • 簿記の記帳方法の種類は、単式簿記と複式簿記の2つ
  • 簿記の分野には、商業簿記・工業簿記・建設業簿記という種類がある
  • 簿記検定としては、日商簿記・全商簿記・全経簿記の3つが有名
  • キャリアに活かすなら知名度の高い日商簿記がおすすめ

簿記の知識を身につければ、経理のスペシャリストとしてはもちろん、その他の業務にも幅広く活かせます。

日商簿記3級であれば初心者の方でも十分合格が可能なため、まず3級からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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