日商簿記2級試験は、計画的に学習を進められれば独学でも合格することが可能です。
ここでは、日商簿記2級試験の概要を紹介します。
日商簿記2級の試験概要は以下の通りです。
試験科目 | 商業簿記・工業簿記 |
試験時間 | 90分 |
試験方式 | 統一試験およびネット試験 |
試験日程 | 統一試験:年3回(6月・11月・2月)、ネット試験:随時 |
合格基準 | 70%以上 |
受験料 | 4,720円(税込)※ |
※ネット試験にインターネットで申し込む場合は別途事務手数料550円(税込)が発生
日商簿記2級では、仕入や販売など外部との取引を記録する「商業簿記」と、製品を製造する工場などで用いられる「工業簿記」が出題されます。
商業簿記では、外部との取引を記録・計算し、適切な決算書の作成を行うスキルが求められます。
一方、工業簿記は、企業内部で行われる材料・人力などの資源投入について記録・計算するスキルです。
いずれも経営管理に必須の知識として、経理担当者だけでなく多くのビジネスパーソンにとって必要な能力とされています。
簿記3級と比較すると、2級合格のためには商業簿記でより高度な会計知識が求められるほか、工業簿記の原価計算など新たな知識を習得する必要があります。
関連記事:簿記2級とは|試験の概要や合格率の推移、勉強方法をまとめて解説
日商簿記2級試験の試験形式別の合格率は、以下の通りです。
【統一試験】
日程 | 受験者数 | 合格率 |
【163回】2023年2月26日 | 12,033名 | 24.8% |
【162回】2022年11月20日 | 15,570名 | 20.9% |
【161回】2022年6月12日 | 13,118名 | 26.9% |
【160回】2022年2月27日 | 17,448名 | 17.5% |
【159回】2021年11月21日 | 22,626名 | 30.6% |
【158回】2021年6月13日 | 22,711名 | 24.0% |
【157回】2021年2月28日 | 35,898名 | 8.6% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「2級受験者データ(統一試験)」
【ネット試験】
期間 | 受験者数 | 合格率 |
2022年4月~2022年12月 | 72,643名 | 37.7% |
2021年4月~2022年3月 | 106,833名 | 38.1% |
2020年12月~2021年3月 | 29,043名 | 46.6% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「【日商簿記検定試験(2級・3級)ネット試験】受験者データを掲載しました」
統一試験の合格率は、直近で最低の8.6%となった第157回(2021年2月)の試験を除き、おおむね15〜30%前後で推移しています。
一方2020年12月から導入されたネット試験では、40%前後の合格率です。
関連記事:日商簿記検定(3級・2級・1級)の概要と筆記試験・ネット試験の違い
ネット試験のほうが若干高い傾向にありますが、いずれにしても簡単には合格できない試験であることがわかります。
日商簿記2級は、3級と比較すると出題範囲が広く、より高度な知識が必要とされる試験です。
しかし、計画的かつバランスよく学習を進められる人であれば、独学で合格することも不可能ではなく、実際に市販のテキストを使った独学で合格している人もいます。
ただ、講座を利用した学習と比較すると、効率という面では劣る可能性が高いです。
独学の場合、まず適切な教材を選び、受験日までの計画的な学習スケジュールを立て、わからない部分は自分で調べて解決する必要があるからです。
通信講座やオンライン講座、スクールなら、過去の出題傾向を把握したうえで効率的なカリキュラムが組まれています。
難易度の高い簿記2級でより確実に合格を目指すなら、講座の利用がおすすめだといえます。
関連記事:日商簿記1級・2級・3級は独学で合格可能?それぞれの目安勉強時間や勉強法も解説
日商簿記2級の独学合格が難しいとされる理由としては、次の3つが挙げられます。
1つずつ見ていきましょう。
日商簿記2級を受験するにあたって、日商簿記3級の合格は必須ではありません。
しかし、2級のテキストや参考書は、3級で学習する商業簿記の基礎を理解しているという前提で作成されています。
そのため、3級の学習範囲をマスターしていない状態で2級の学習を進めると、うまく内容を理解できず、挫折につながりやすくなります。
3級の範囲で十分に理解できていない箇所がある場合は、まず3級の復習からスタートするのがおすすめです。
日商簿記3級では商業簿記の基礎的な内容が出題されますが、2級では工業簿記も出題科目となります。
原価計算の考え方など、新たな仕組みを学ぶ必要があるため、当然ながら難易度は上がります。
さらに商業簿記の内容も、連結会計などを含む高度な内容が出題されるため、幅広い出題範囲をバランスよく学ぶことが大切です。
3級の内容であればテキスト1冊でカバーできるため、独学の場合でも何を学習すべきか悩むことは少ないでしょう。
2級の場合、まず全体のなかで「何をどの順番で学ぶべきか」を整理する必要があるため、独学のハードルが上がるのです。
2021年度(第158回試験)以降、日商簿記2級の試験時間が120分から90分に短縮されました。
「ラクになったのでは?」と感じるかもしれませんが、時間が短くなったぶん「限られた時間で的確に回答する力」が求められるようになっています。
合格基準である70%の得点を達成するには、問題の意図をすばやく把握し、迅速かつ確実に正解にたどりつく必要があるのです。
独学の場合、90分で問題を解き終えるための時間配分の感覚も自分でつかむ必要があるため、難易度は高くなります。
ここでは、日商簿記2級を独学で勉強するメリット・デメリットを解説します。
メリットとデメリットの双方を十分に理解したうえで、今後の学習方法を決めましょう。
独学で合格を目指すメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
▼参考書・テキスト代がかからない
簿記2級を独学する大きなメリットとして、費用を抑えられるという点があります。
商業簿記・工業簿記のテキストと模試形式の問題集を購入しても、5千円~1万円程度には収まるでしょう。
例えば通学制のスクールの場合、6~8万円程度かかります。
学習費用に5万円以上の差があるため、あまりお金をかけずに合格を目指したい方には大きなメリットです。
ただし、通信講座やオンライン講座なら2万円以内に収まるものもあります。
学習効率とコストのバランスを見ながら、自身に適した学習方法を選びましょう。
▼自分のペースで進められる
また、独学なら仕事や学校、プライベートの予定に合わせて、自由に学習スケジュールを組めます。
まとまった時間を取りにくい人でも、通勤・通学や子どもが寝た後などのスキマ時間を利用することで、勉強時間を確保しやすくなるでしょう。
通学制のスクールではカリキュラムが決まっているため、良くも悪くもスケジュールにしたがって学習が進みます。
自分のペースで無理なく学習を進めたい人にとっては、独学のメリットは大きいといえます。
▼「すごい」といわれる機会が増える
日商簿記2級は難易度の高い資格として認知されているため、合格するだけでも一目置かれます。
しかし、独学での合格となれば、周囲から「すごい」と褒められる機会がさらに増えるでしょう。
自分で学習スケジュールをコントロールできたり、継続的に学習を進められたりといった能力の証明にもなるため、就職や転職でのアピールにもつながります。
一方、独学で学習を進める際のデメリットとしては以下2点が挙げられます。
こちらも順番に見ていきましょう。
▼学習効率が悪くなりがち
独学では、以下のような理由から学習効率が悪くなりがちです。
独学では、自分の理解が間違っていたとしても気づく機会がなかなかありません。
基礎の部分で認識を間違ってしまうと、より複雑な内容を学習する際につまずきやすく、結果として挫折する可能性が高まります。
また、講座やスクールでは、過去の出題傾向をもとに頻出ポイントに絞った効率的なカリキュラムが組まれています。
独学の場合は頻出ポイントなどの情報収集に時間がかかるうえ、学習スケジュールの自己管理も必要です。
学習効率という面では大きな差が生じるでしょう。
▼モチベーション管理が難しい
また、資格試験に独学で挑む場合、モチベーションを保ちにくい点もデメリットとして挙げられます。
たしかに自身の都合に合わせて自由に学習スケジュールを立てられるのはメリットです。
しかし、「仕事が忙しいから」「今日は疲れたから」といった理由で容易に予定を変更できるため、挫折する可能性も高まることになります。
独学で簿記2級の合格を目指すには、数カ月にわたって自己管理を徹底し、計画的に学習を進める必要があります。
講座やスクールと違って第三者のアドバイスが受けられないため、試験当日までやり抜くのは難しくなるでしょう。
日商簿記2級に独学でチャレンジする場合、どの程度の勉強時間が必要になるのでしょうか。
ここでは、合格までに必要な勉強時間・期間の目安を紹介します。
日商簿記2級に独学で合格するために必要な勉強時間の目安は、150~250時間といわれています。
これは3級の内容の理解を前提としているため、簿記初心者がいきなり2級に挑む場合はさらに多くの時間がかかります。
一方、通信講座やオンライン講座、スクールを利用する場合は、効率的な学習が可能になるため必要な勉強時間の目安は100~200時間程度です。
費用を抑えるのか、学習効率を優先するのか、よく考えたうえで学習方法を選びましょう。
独学で日商簿記2級の合格を目指すなら、勉強期間の目安として最低でも2~3カ月は確保することをおすすめします。
1日1~2時間の学習ができるとして、150~250時間の勉強を終えるには3~6カ月程度かかります。
1日3時間確保できる場合でも、1カ月で90時間にしかなりません。
日々のスケジュールを振り返り、1日あたりどの程度の学習時間を確保できるか考えてみましょう。
簿記2級ではネット試験が導入されているため、年3回の統一試験を待たなくても受験が可能です。
最短での合格を目指す場合は、講座などを利用して2~3カ月といった短期集中で合格を狙うのも1つの手です。
日商簿記2級の独学合格を目指すなら、以下のコツを押さえておきましょう。
簿記2級の学習を始める前に、まずは試験日から逆算してスケジュールを立てましょう。
商業簿記だけが出題範囲だった3級とは異なり、2級では商業簿記・工業簿記をバランスよく学ぶことが大切です。
事前に学習計画を立て、出題範囲をカバーできるよう対策を進めていきましょう。
ただし学習の初期においては、いきなり2級の勉強を開始するのではなく、まずは日商簿記3級の復習時間を設けるのがポイントです。
遠回りなようでも、3級の内容の理解を深めたうえで勉強を始めることで、結果的に学習効率がよくなります。
また試験本番の直前には、時間配分を意識して過去問形式の問題集や模試に取り組みましょう。
日商簿記2級試験にはそろばん・電卓のいずれかを持ち込めますが、多くの受験者は電卓を使用します。
電卓を使用する場合は、普段からしっかりと使い込み、操作に慣れておきましょう。
電卓は機種によってボタンの配置などが異なるため、操作になれていないと思わぬミスにつながります。
試験の直前には、本番に向けた実戦練習を積んでおきましょう。
模擬試験形式の問題に取り組み、90分という限られた時間で力を発揮できるよう、時間配分の感覚をつかんでおくことが大切です。
特に、ネット試験を選択する場合は問題用紙への書き込みができません。
オンラインの講座などWeb形式の問題集を使い、試験の形式に慣れておく必要があります。
できるかぎり本番と同じ環境を用意し、時間配分のシミュレーションをしておきましょう。
本記事では、日商簿記2級の独学合格が可能なのかや、独学で挑戦するメリット・デメリットを紹介しました。ポイントは以下の通りです。
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