
お金に関連する資格として、簿記とFPのどちらを取るか悩む方は多いでしょう。
学習内容には大きな違いがあるため、自身の目標や目的に合った資格を選ぶことが大切です。
本記事では、簿記とFPという2つの資格について、それぞれの難易度やメリットを解説します。
将来に向けて資格取得を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
簿記とFPの違いは?
お金に関連する資格として有名な簿記とFPですが、学習内容には大きな違いがあります。
ここでは、それぞれの資格の概要と身につくスキルについて解説します。
簿記とは
簿記とは、企業における日々の取引を記録し、財務諸表にまとめる作業を指します。
簿記の学習によって身につくスキルや資格試験について見てみましょう。
簿記で身につくスキル
簿記を学ぶことで、経理・会計の知識が身につきます。
経理の仕組みや会計処理の方法を理解することで、企業における財務・経営の状況を的確に把握できるようになります。
簿記のスキルは経理や財務部門だけでなく、ビジネス全般に生かせるものです。
例えば、自社や競合他社の経営状況を的確に把握できれば、営業や企画といった職種においても効果的な提案がしやすくなります。
簿記はビジネスパーソン全般にとって必須の知識であり、仕事の質を上げるのに役立つスキルだといえます。

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簿記の資格試験
簿記の資格試験としては、日商簿記・全商簿記・全経簿記の3つが有名ですが、一般の大学生や社会人がキャリアに活かすなら日商簿記がおすすめです。

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日商簿記の資格試験は、原価計算初級・簿記初級・3級・2級・1級の5つが実施されています。
ただし、一般的に履歴書に書けるのは3級からといわれており、簿記初心者でも十分合格できるレベルであることから、3級の受験から始める方が多いです。
日商簿記3級では、小規模な企業を想定した経理・会計の基礎知識が身につきます。
出題科目は商業簿記だけであり、あくまで「簿記の基礎が身についていることの証明」といった位置づけです。
日商簿記2級になると、商業簿記に加えて工業簿記が出題科目となり、全体的に専門性が上がります。
2級に合格していれば、経理・会計の専門職を目指す場合にも一定のアピールになるでしょう。
日商簿記1級は商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算という4つの科目で構成されており、難易度が上昇します。
大企業で必要な連結決算などに関する詳しい知識が身につくため、取得すれば経理・会計のスペシャリストとして高く評価されます。

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FPとは
FP(ファイナンシャルプランナー)とは、金融・税制・不動産・住宅ローン・保険・年金制度など、主に個人が管理・運用するお金に関して幅広い知識を持つ専門家のことです。
FPの学習によって身につくスキルや資格試験について見てみましょう。
FPで身につくスキル
FPの学習で身につくのは、個人や家族の資産・財務状況を総合的に管理し、将来の経済的な安定や目標達成を支援する能力です。
FPの学習ではまず、資産管理や投資に関する知識を習得します。
個々の資産状況を評価したうえで適切な運用を提案するため、投資商品やリスク管理の手法について学びます。
また、クライアントのニーズに合わせた最適な提案のためには税金や法律に関する知識も必要です。
FPのスキルは金融業界や不動産業界でのキャリアに直結するだけでなく、個人の資産管理や家計の改善など私生活でも役に立ちます。
FPの資格試験
FPの資格試験は「FP技能試験」と呼ばれ、日本FP協会と一般社団法人金融財政事情研究会によって実施されています。
難易度によって3級・2級・1級に分かれており、それぞれ学科試験と実技試験が設けられています。
FP技能試験に合格するには、学科試験・実技試験の両方に合格することが必要です。
学科試験は2つの団体いずれも同じですが、実技試験は内容が異なるため注意しましょう。
FP3級・2級では、基本的な常識や金融の知識を問う選択問題(学科試験)と、実際の相談内容を想定した選択・計算問題(実技試験)が出題されます。
FP3級は特別な資格がなくても受験が可能なのに対し、FP2級は以下のいずれかに該当する必要があります。
- AFP認定研修の修了
- 3級FP技能検定合格
- 2年以上のFP実務経験
FP1級にも受験資格が定められており、簿記よりも受験のハードルは高いといえるでしょう。
簿記とFPの資格難易度は?
日商簿記とFPの資格難易度について、合格率と必要な勉強時間の観点から比較してみましょう。
日商簿記3級とFP3級の比較
日商簿記3級とFP3級について、過去5回分の合格率の推移は以下の通りです。
【日商簿記3級合格率(統一試験)】
実施回 | 合格率 |
164回 | 34.0% |
163回 | 36.5% |
162回 | 30.2% |
161回 | 45.8% |
160回 | 50.9% |
【FP3級合格率】
実施回 | 学科試験合格率 | 実技試験合格率(資産設計提案業務) |
2023年5月 | 88.25% | 86.83% |
2023年1月 | 85.25% | 88.34% |
2022年9月 | 80.78% | 84.44% |
2022年5月 | 83.37% | 90.33% |
2022年1月 | 87.01% | 90.75% |
合格率はあくまで目安にすぎないものの、過去のデータを見ればFP3級のほうが合格率が高いといえます。
合格までに必要な勉強時間の目安としては、日商簿記3級は50〜150時間程度、FP3級は80〜150時間程度とされており、大きな差はありません。

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日商簿記2級とFP2級の比較
2級についても同様に、合格率と勉強時間の観点から比較してみましょう。
以下に過去5回分の合格率を示します。
【日商簿記2級合格率(統一試験)】
実施回 | 合格率 |
164回 | 21.1% |
163回 | 24.8% |
162回 | 20.9% |
161回 | 26.9% |
160回 | 17.5% |
【FP2級合格率】
実施回 | 学科試験合格率 | 実技試験合格率(資産設計提案業務) |
2023年5月 | 48.82% | 58.61% |
2023年1月 | 56.12% | 59.53% |
2022年9月 | 42.16% | 56.55% |
2022年5月 | 49.20% | 62.11% |
2022年1月 | 41.51% | 56.33% |
2級の合格率もFPのほうが高い傾向にあることがわかります。
ただし、前述の通りFP2級はまず受験資格を満たす必要があるため、受験のハードルは簿記よりも高いです。
2級合格に必要な勉強時間の目安は、日商簿記2級が100〜250時間程度、FP2級は150〜300時間程度と大きな差はありません。

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簿記とFPはどっちを取るべき?
簿記とFPはそれぞれ異なるスキルを習得できる資格です。
自身の将来の目標や興味に合うスキルを習得し、キャリアアップに役立てましょう。
ここでは、それぞれの資格がどのような人におすすめかを解説します。
簿記がおすすめな人
簿記は、以下のような人におすすめの資格です。
- 経理や財務に関心がある人
- 公認会計士・税理士に興味がある人
- 数字に基づいた論理的な思考力を身につけたい人
- 企業の経営分析・財務分析に興味がある人
簿記では経理や会計の知識を網羅的に学べるため、これらの業務に従事している人はスキルをそのまま活かせます。
しかし前述の通り、簿記の知識は経理担当者だけでなくビジネスパーソン全般に活かせるものです。
FP資格を目指す明確な理由がないなら、簿記を取得しておいたほうが知識を活用できる場面は多いでしょう。
また、公認会計士や税理士といったさらに専門性の高い資格に興味がある人も、会計系資格の入り口として簿記の取得がおすすめです。
FPがおすすめな人
一方、FP資格の取得がおすすめなのは以下のような人です。
- 個人や家族の資産管理に関心がある人
- 人々の生活にかかわる仕事に興味がある人
- 金融業界でのキャリアアップを目指す人
- 独立してFP業務を行いたい人
FP資格を取得すれば、個人やその家族の経済的安定をサポートすることが可能となります。
ライフプランニングや資産運用、保険などに関する知識が身につくため、私生活にも役立つでしょう。
また、銀行・証券会社・保険会社など金融業界への就職・転職を希望する人にとっては、FPの資格が大きなアドバンテージとなります。
そのほか、将来独立して業務を行いたいという人にもFP資格の取得はおすすめです。
簿記とFPのダブルライセンスは意味ある?どっちを先に取るべき?
ダブルライセンスは、2つの異なる資格を保有することでより大きな強みを発揮する状態を指します。
簿記とFPのダブルライセンスなら、企業会計に強い簿記の知識と、個人の資産運用に強いFPの知識を掛け合わせられます。
その結果、お金に関してより総合的なアドバイスが可能になるでしょう。
また、金融業界を含むビジネスの幅広い領域でキャリア形成に役立つはずです。
現在の仕事が金融系でない場合や、ビジネス全般に活かせる知識を優先したい場合は、簿記の資格を先に取得するとよいでしょう。
企業の経営・財務に関連する貴重なスキルであり、知識を活かせる場面が多いからです。
一方、すでに金融系の仕事をしていたりこれから金融業界への就職・転職を目指す場合は、FPを先に取得するとよいでしょう。
身につけた知識を活かすチャンスがあれば、実務を通じてさらにスキルを磨けます。
まとめ
本記事では、簿記とFPという2つの資格について、それぞれの難易度やメリットを解説しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 簿記は経理・財務の知識が身につく資格で、ビジネス全般に活かせる
- FPは個人の資産管理に関する知識が身につく資格で、金融分野での仕事に活かせる
- 同じ級で比較するとFPのほうが合格率は高い傾向にあるが、FP2級以上は受験資格が必要
- 資格取得の目的が明確でないなら、ビジネス全般に活かせる簿記を優先するのがおすすめ
これから簿記を勉強するなら、就職や転職、キャリアアップに活かせる「日商簿記」の取得がおすすめです。
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スキマ時間で効率よく日商簿記試験の合格を目指せます。