簿記の精算表とは、残高試算表と決算整理仕訳(修正記入)の情報から、貸借対照表と損益計算書を作成するための資料です。
日々の取引は仕訳帳に都度記帳しますが、決算の際にはそれらを集計し、決算整理を行う必要があります。
精算表に必要な情報をまとめて記入することで、ミスや漏れを防ぎながら貸借対照表・損益計算書を作成できます。
また、精算表は決算に関わる重要な資料であるため、簿記検定試験においても出題頻度の高いテーマです。
関連記事:簿記の貸借対照表とは|損益計算書との違いや書き方、問題の解き方を解説
なお、精算表の書式はいくつかありますが、以下のような8桁精算表が一般的です。
ここでは、簿記における精算表作成の流れを以下4つのステップで解説します。
精算表を作成するには、まず残高試算表を用意する必要があります。
残高試算表とは、各勘定科目の残高を一覧にした表です。
決算が年に1度であれば、その年のこれまでの取引が残高試算表に集約されることになります。
これにより、精算表の残高試算表欄が埋められます。
次に必要な作業が、決算整理仕訳です。
決算整理仕訳とは、経営や財政の状況を正確に把握するために行う決算期特有の処理です。
例えば、減価償却費や貸倒引当金の計上などが決算整理仕訳にあたります。
新たな取引が発生したわけではないものの、資産や負債の価値を実態に合わせるため、決算前の調整が必要になるのです。
決算整理仕訳の内容は、精算表の修正記入欄に記入します。
精算表の「残高試算表」と「修正記入」の欄が埋まったら、その情報をもとに損益計算書・貸借対照表の欄を記入します。
勘定科目のうち収益・費用に属するものは損益計算書、資産・負債・純資産に属するものは貸借対照表に転記しましょう。
転記の際には、残高試算表と修正記入の金額を加算または減算して記入します。
例えば、ある勘定科目について残高試算表・修正記入ともに借方に金額が入っていれば加算、残高試算表が借方で修正記入が貸方であれば、残高試算表の金額から修正記入の金額を減算、となります。
貸借対照表と損益計算書の欄が埋まったら、最後に当期純利益を算出します。
損益計算書欄の貸方と借方の合計金額の差が、当期純利益です。
借方よりも貸方の金額が大きい場合は、差額を当期純利益として損益計算書の借方へ記入します。
逆に、借方よりも貸方の金額が小さい場合は当期純損失となり、損益計算書の貸方に記入します。
以上が、精算表の作成手順です。
簿記の精算表を正しく作成するために重要なのが、決算整理仕訳の作業です。
勘定科目を間違えたり、借方・貸方を逆に記入したりといったミスがよく発生します。
決算整理仕訳のミスを防ぐには、貸借対照表と損益計算書の全体像をイメージしたうえで、扱う勘定科目が資産・負債・純資産・収益・費用のいずれに属するのか見極めることが大切です。
通常の仕訳と考え方は変わらないため、落ち着いて処理しましょう。
ここでは、日商簿記3級レベルの精算表問題を紹介します。
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次の決算整理事項にもとづいて、答案用紙の精算表を完成しなさい。なお会計期間は4月1日〜3月31日までの1年間である。
▼決算修正事項
▼決算整理事項
▼決算修正事項
1 | 普通預金 | 200,000 | 売掛金 | 200,000 |
(B/S) 普通預金:¥1,000,000+¥200,000=¥1,200,000
(B/S) 売掛金:¥1,100,000-¥200,000=¥900,000
※売掛金の金額に修正があるため、貸倒引当金の算定に注意しましょう。
2 | 仮受金 | 100,000 | 前受金 | 100,000 |
(B/S) 前受金:¥50,000+¥100,000=¥150,000
仮受金の残高は0(ゼロ)となります。
3 | 未収入金 | 850,000 | 土地 | 900,000 |
土地売却損 | 50,000 |
(B/S) 土地:¥2,800,000-¥900,000=¥1,900,000
(B/S) 未収入金:¥850,000(売却価額)
(P/L) 土地売却損:¥850,000(売却価額)-¥900,000(帳簿価額)=▲¥50,000(売却損)
▼決算整理事項
1 | 通信費 | 2,000 | 現金過不足 | 3,000 |
雑損 | 1,000 |
(P/L) 通信費:¥230,000+¥2,000=¥232,000
(P/L) 雑損:¥1,000
現金過不足の残高は0(ゼロ)となります。
2 | 貸倒引当金繰入 | 23,000 | 貸倒引当金 | 23,000 |
(B/S) 受取手形:¥700,000
(B/S) 売掛金:¥900,000
(P/L) 貸倒引当金繰入:(¥700,000+¥900,000)×3%-¥25,000=¥23,000
(B/S) 貸倒引当金:¥25,000+¥23,000=¥48,000
3 | 仕入 | 400,000 | 繰越商品 | 400,000 |
繰越商品 | 350,000 | 仕入 | 350,000 |
(P/L) 仕入:¥3,200,000(当期商品)+¥400,000(期首商品)-¥350,000(期末商品)=¥3,250,000(売上原価)
(B/S) 繰越商品:¥400,000(期首商品)-¥400,000(期首商品)+¥350,000(期末商品)=¥350,000(期末商品)
4 | 減価償却費 | 187,500 | 減価償却累計額 | 187,500 |
(P/L) 減価償却費:¥1,500,000÷8年=¥187,500
(B/S) 減価償却累計額:¥375,000+¥187,500=¥562,500
5 | 前払家賃 | 120,000 | 支払家賃 | 120,000 |
(B/S)前払家賃:¥120,000
(P/L)支払家賃:¥1,110,000-¥120,000=¥990,000
6 | 支払利息 | 11,250 | 未払利息 | 11,250 |
当期の期間に該当する9ヶ月分(7/1〜3/31)を未払利息とします。
(B/S) 未払利息:¥1,500,000×1%×9ヶ月/12ヶ月=¥11,250
(P/L) 支払利息:¥11,250
7 | 貯蔵品 | 25,000 | 租税公課 | 25,000 |
(B/S) 貯蔵品:¥25,000
(P/L) 租税公課:¥207,500-¥25,000=¥182,500
8 | 仮受消費税 | 650,000 | 仮払消費税 | 320,000 |
未払消費税 | 330,000 |
(B/S)未払消費税:¥650,000-¥320,000=¥330,000
仮払消費税と仮受消費税の残高は0(ゼロ)となります。
今回は、簿記における精算表の概要や作成の流れに加え、日商簿記3級レベルの実戦問題を紹介しました。ポイントをおさらいしておきましょう。
精算表の問題は一見複雑そうですが、手順を正しく理解できれば難しいものではありません。
仕訳の基本を押さえながら、丁寧に計算を進めていきましょう。
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