簿記における帳簿の役割と種類|初心者の方向けに書き方もわかりやすく解説

簿記における帳簿は、決算資料を作成する際の元資料となるほか、日々の経営状況を把握するために不可欠です。
しかし、仕訳帳や総勘定元帳、売上帳など多岐にわたるため、よくわからないという方も多いでしょう。

本記事では、簿記における帳簿の役割や書き方を初心者の方にもわかるよう丁寧に解説します。
簿記の資格取得を目指している方や、簿記の知識を実務に活かしたい方はぜひ参考にしてみてください。

簿記における帳簿の役割と種類

重要な財務諸表である貸借対照表と損益計算書を作成したり、日々の経営状況を的確に把握したりするため、簿記ではさまざまな帳簿を使って取引を記録します。

ここでは、帳簿について以下2つのポイントで解説します。

  • 帳簿とは
  • 主要簿と補助簿

帳簿とは

簿記における帳簿とは、事業活動によって生じる日々の取引を記録した台帳を指します。

会社法によって帳簿の作成と保管は義務付けられており、企業は必ず帳簿を作成しなければなりません。

帳簿を作成する目的には、日々の金銭管理以外にも、企業の財務・経営状況の把握や、適切な納税申告の実現といったものが挙げられます。

帳簿の種類によって記載内容は異なりますが、以下の項目はカバーされているケースが多いでしょう。

  • 取引を行った年月日
  • 取引の内容
  • 取引先の名称
  • 取引金額

帳簿に情報をまとめることで、企業の経営・財務の状況を正確に把握できるのです。

主要簿と補助簿

複式簿記で使われる帳簿には、「主要簿」と「補助簿」があります。

主要簿は日々の取引を記録するメインの帳簿で、「仕訳帳」と「総勘定元帳」を指します。

複式簿記を採用する場合、日々の取引結果の記録・集計のためにどの企業においても必ず作成されるものです。

一方、補助簿はあくまでも主要簿を補完するための帳簿です。

補助簿の種類は多いものの作成は必須ではないため、企業によって作成される補助簿の組み合わせはさまざまです。

主要簿は「仕訳帳」と「総勘定元帳」

主要簿には「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2つがあります。

ここでは、それぞれの役割と記入例を見ていきましょう。

仕訳帳の役割と記入例

仕訳帳とは、日々の取引を適切な勘定科目を用いて仕訳し、日付順に記録した帳簿です。

企業の財務・経営の状況を表す「貸借対照表」や「損益計算書」といった重要書類を作成するためには、いつどの程度の収益(または費用)が発生したか、資産(または負債)が増減したかといった情報が欠かせません。

そのため、個別の取引を正確に仕訳帳に記録することが重要なのです。

仕訳帳の記載例を以下に示します。

(フォーマットは以下に限定されるわけではありません。)

仕訳帳

1

日付摘要元丁借方貸方
202X/4/1(仕入)5100,000
(現金)1100,000
A社より商品購入
202X/4/3(現金)1150,000
(売上)3150,000
B社へ商品販売

仕訳帳には、取引を日付順に上から記帳していきましょう。

摘要には適切な勘定科目を記載します。

仕訳帳に記録された取引は、次に紹介する「総勘定元帳」に勘定科目ごとに転記します。

総勘定元帳の役割と記入例

総勘定元帳とは、仕訳帳に記載された仕訳の情報を勘定科目ごとにまとめて記録する帳簿のことです。

貸借対照表・損益計算書の作成にあたり、勘定科目ごとにそれぞれの金額を把握するうえで重要な役割を担います。

先ほどの仕訳帳の例から、勘定科目「現金」を総勘定元帳に記載する際の例を以下に示します。

(こちらも、フォーマットは以下に限定されるものではありません。)

総勘定元帳

現金

1

日付摘要仕丁借方日付摘要仕丁貸方
202X/4/3売上1150,000202X/4/1仕入1100,000

「現金」勘定を記録する箇所であるため、仕訳帳に記載された「現金」勘定を含む取引のみを転記します。  

摘要には、その取引における相手科目を記載しましょう。

総勘定元帳を作成すれば、各勘定科目の残高が計算できます。

この記載例の場合は、「150,000円(借方)-100,000円(貸方)=50,000円」であり、202X年4月3日時点の現金勘定の残高は50,000円ということがわかります。

補助簿の種類はさまざま

補助簿は、主要簿の記録内容を補完するため、各取引におけるより詳細な情報や特定の勘定科目の明細を記録する帳簿です。

大きく「補助記入帳」と「補助元帳」に分けられ、企業の取引内容によってさまざまな種類が使用されています。

補助記入帳(特定の取引の明細を記録する帳簿)現金出納帳
当座預金出納帳
小口現金出納帳
売上帳
仕入帳
受取手形記入帳
支払手形記入帳
補助元帳(特定の勘定科目の明細を記録する帳簿)売掛金元帳
買掛金元帳
商品有高帳
固定資産台帳

補助簿は主要簿と異なり必須ではありませんが、取引状況の把握のためには重要です。

ここでは、以下の代表的な補助簿について、その役割や記入方法を解説します。

なお、いずれの帳簿も企業によってフォーマットはさまざまですが、基本的な書き方は同じです。

  • 現金出納帳
  • 売上帳
  • 仕入帳
  • 売掛金元帳
  • 買掛金元帳
  • 商品有高帳
  • 固定資産台帳

順番に見ていきましょう。

現金出納帳の役割と記入例

現金出納帳とは、現金の入金と出金を日付順に記録する帳簿のことです。

すべての現金取引を記録することで、いつでも実際の現金残高を把握できます。

なお、現金出納帳の内容は、主要簿である総勘定元帳の「現金」勘定の内容と一致します。

現金出納帳の記載例を見てみましょう。

現金出納帳

202X年摘要収入支出残高
51前月繰越300,000300,000
2C社より売掛金の回収100,000400,000
10PC購入88,000312,000

摘要欄には、勘定科目よりさらに詳細な取引情報を記載します。

月末には摘要欄に「次月繰越」と記載し、支出欄に月末残高を転記します。

売上帳の役割と記入例

売上帳とは、その名の通り売上のみを集計した帳簿のことです。

売上帳には、売上が発生した日付や取引先、発生要因、金額などを記載し、売上に関する情報をまとめます。

なお売上帳の内容は、主要簿である総勘定元帳の「売上」勘定の内容と一致します。

売上帳の記載例を見てみましょう。

売上帳

202X年摘要内訳金額
51D社掛け
ボールペン100本@150円15,000
コピー用紙30個@350円10,50025,500
2E社現金
コピー用紙10個@350円3,500

摘要欄には取引先や決済方法、商品名、売上数量、単価を記録します。

月末には売上の合計(総売上高)から、返品や値引きなどの金額(売上戻り高)を引いて、純売上高を計算し、当月の帳簿を締めます。

仕入帳の役割と記入例

仕入帳は、仕入取引のみを集計した帳簿です。

仕入が発生した日付や取引先、発生要因、金額などを記載し、仕入に関する情報をまとめます。

仕入帳についても、内容は主要簿である総勘定元帳の「仕入」勘定の内容と一致します。

仕入帳の記載例を見てみましょう。

仕入帳

202X年摘要内訳金額
61F社掛け
りんご300個@100円30,000
みかん100個@80円8,00038,000
2G社現金
りんご50個@100円5,000

摘要欄には取引先や決済方法、商品名、仕入数量、単価を記録します。

月末には仕入の合計(総仕入高)から、返品や値引きなどの金額(仕入戻し高)を引いて、純仕入高を計算し、当月の帳簿を締めます。

売掛金元帳の役割と記入例

売掛金元帳とは、取引先ごとに売掛金の詳細が記録された帳簿のことです。

売掛金元帳を作成することにより、それぞれの取引先にいくら売掛金が残っているかが明確になるため、回収状況を管理しやすくなります。

売掛金元帳の記載例を以下に示します。

売掛金元帳

H株式会社

202X年摘要借方貸方借/貸残高
72売上10,00010,000
6回収2,0008,000

売掛金元帳は今までの補助簿と異なり、1つの取引先につき1つの帳簿を作成するという特徴があります。

摘要欄には、取引の内容を記載しましょう。

売掛金を回収した際は、回収額を直近の残高から差し引くことで新たな残高を計算します。

「借/貸」欄は、売掛金が残っている場合は資産がある状態なので「借」、売掛金がマイナスの場合は「貸」となります。

通常売掛金がマイナスとなることはないため、「借/貸」欄は「借」を記載することがほとんどでしょう。

買掛金元帳の役割と記入例

買掛金元帳では、仕入先ごとに買掛金の詳細を記録します。

各仕入先にいくらの買掛金が残っているかが明確になるため、今後の支払い計画を立てやすくなります。

買掛金元帳の記載例を見てみましょう。

買掛金元帳

I社

202X年摘要借方貸方借/貸残高
81仕入30,00030,000
10支払10,00020,000

買掛金元帳も売掛金元帳と同様、1つの取引先につき1つの帳簿を作成します。

「借/貸」欄は、買掛金が残っている場合は「貸」、買掛金がマイナスの場合は「借」と記載します。

こちらも通常、買掛金がマイナスになることはないため、「借/貸」欄は「貸」と記載することがほとんどです。

商品有高帳の役割と記入例

商品有高帳とは、商品ごとの受け入れと払い出しの状況を記録する帳簿のことです。

商品有高帳を作成することで在庫管理がしやすくなり、日々変動する在庫・価格の把握が容易になります。

商品有高帳の記載例を見てみましょう。

商品有高帳

みかん

202X年摘要受入(入庫)払出(出庫)残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
9/1前月繰越20010020,000
2仕入10012012,00020010020,000
10012012,000
3販売15010015,000501005,000
10012012,000

商品の単価を管理する方法は、おもに2つあります。

先に入庫した商品から順番に販売する「先入先出法」と、商品が入庫するたびに仕入の平均価格を計算する「移動平均法」です。

上記の記載例は「先入先出法」で記載していますが、いずれの方法も日商簿記試験の出題範囲に含まれているため、受験予定の方は「移動平均法」も理解しておきましょう。

固定資産台帳の役割と記入例

固定資産台帳とは、企業が所有する固定資産を管理するための帳簿のことです。

建物や車両など減価償却を伴う資産について、取得原価や償却方法、前期までの減価償却累計額、当期の減価償却費などを細かく記載します。

これにより資産ごとの減価償却の状況が把握しやすくなります。

固定資産台帳の記載例を見てみましょう。

固定資産台帳

202X年3月31日現在

取得日付名称期末数量償却方法耐用年数取得原価期首減価償却累計額差引期首帳簿価額当期減価償却費期末帳簿価額
202Y年4月1日車両1定額法61,200,000200,0001,000,000200,000800,000

減価償却の仕訳を見るだけでは、取得原価や減価償却累計額がわかりにくい場合があります。

固定資産台帳に情報をまとめることで、各資産の管理が容易になるのです。

まとめ

本記事では、簿記における帳簿の役割や書き方をまとめて解説しました。

ポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 簿記における帳簿とは、日々の取引を記録するための台帳
  • 決算資料である貸借対照表や損益計算書を作成するために重要
  • 「仕訳帳」と「総勘定元帳」は主要簿とよばれ、作成は必須
  • 主要簿を補完するため、「現金出納帳」や「売上帳」などさまざまな補助簿が使われる

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