日商簿記2級とは
ここでは、日商簿記2級の概要や試験スケジュール、受験方法などを紹介します。
簿記2級試験の概要
日商簿記検定は、日本商工会議所が主催する検定試験の1つです。商業簿記の基礎を扱う3級と比較すると、2級では商業簿記の出題範囲や専門性が高いことはもちろん、工業簿記という新たな科目が加わります。
2級 | 3級 | |
試験科目 | 商業簿記+工業簿記 | 商業簿記のみ |
商業簿記が「外部から仕入れた商品を販売する企業」を対象とするのに対し、工業簿記では「企業内部で製造した製品を販売する企業」を対象としています。原価計算などが含まれるため、より専門性が高いといえるでしょう。
2級の内容を習得すれば、財務諸表にもとづくより正確な企業分析が可能になります。経理・会計の仕事はもちろん、その他の業務においても自社や他社の経営状況が的確に把握できるため、さまざまな場面で役立つでしょう。就職や転職の際にも有利に働きます。
日商簿記2級の試験概要は以下のとおりです。
試験科目 | 商業簿記、工業簿記 |
試験時間 | 90分 |
試験方式 | 統一試験、ネット試験 |
受験料 | 4,720円(税込)※ |
※ネット試験の場合、別途事務手数料550円(消費税込)が必要
試験方式には、年3回実施される「統一試験」と任意の日程で受験できる「ネット試験」があります。2022年度統一試験のスケジュールは以下のとおりです。
- 161回:2022年6月12日(日)
- 162回:2022年11月20日(日)
- 163回:2023年2月26日(日)
申込受付の日時や方法は商工会議所によって異なるため、事前によく確認しましょう。
ネット試験(CBT方式)も選択可能
日商簿記検定では、2020年12月より3級・2級にネット試験(CBT方式)が導入されました。
ネット試験といっても自宅から受験するわけではなく、特定のネット試験会場(テストセンター)においてパソコンを使用して受験するものです。それでも、以下のようなメリットがあるため多くの方が利用しています。
- テストセンターの空きがあれば、いつでも受験可能
- 受験日の3日前まで変更・キャンセルが可能
- 試験終了後、すぐに点数と合否がわかる
ただし、年4回の施行休止期間がある点に注意が必要です。2022年度の施行休止期間は以下のとおりです。
- 2022年4月1日(金)~2022年4月13日(水)
- 2022年6月6日(月)~2022年6月15日(水)
- 2022年11月14日(月)~2022年11月23日(水・祝)
- 2023年2月20日(月)~2023年3月1日(水)
簿記2級の合格基準と合格率
簿記2級の合格基準や合格率についても確認してみましょう。
合格基準
日商簿記2級の試験問題は、以下の構成・配点で出題されます。合格基準は70%以上となっているため、各大問において大きな取りこぼしがないよう、バランスよく勉強を進める必要があります。
問題 | 内容 | 配点 |
第一問 | 商業簿記仕訳(5問) | 20点 |
第二問 | 【頻出論点】連結会計、株主資本等変動計算書 | 20点 |
第三問 | 【頻出論点】損益計算書、貸借対照表、本支店会計 | 20点 |
第四問 | 問一:工業簿記仕訳(3問)問二:個別原価計算、総合原価計算、部門別原価計算 | 28点 |
第五問 | 【頻出論点】直接原価計算、標準原価計算差異分析 | 12点 |
第一問~第三問が商業簿記、第四問~第五問が工業簿記の問題となっています。
合格率の推移
日商簿記2級の合格率は15~30%前後となっています。3級の合格率が40~50%前後であることと比べれば、難しい試験であることがわかります。
回(日付) | 合格率 |
161回(2022.6.12) | 26.9% |
160回(2022.2.27) | 17.5% |
159回(2021.11.21) | 30.6% |
158回(2021.6.13) | 24.0% |
157回(2021.2.28) | 8.6% |
156回(2020.11.15) | 18.2% |
155回(2020.6.14) | 中止 |
154回(2020.2.23) | 28.6% |
153回(2019.11.17) | 27.1% |
152回(2019.6.9) | 25.4% |
151回(2019.2.24) | 12.7% |
150回(2018.11.18) | 14.7% |
149回(2018.6.10) | 15.6% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「受験者データ」
上記のとおり、回によって30%を超える場合もあれば10%を切る場合もあるなど、合格率にバラつきがあります。合格率の低い回に当たったとしても合格基準を上回れるよう、余裕をもって対策を進めていきましょう。
簿記2級を取得するメリット
簿記2級を取得することで得られるメリットは、大きく分けて3つあります。
どんな仕事にも活かすことができる!
簿記の知識は、経理や会計の部署でなくてもあらゆる仕事に役立ちます。
会社経営には簿記の考え方が不可欠であるため、経営者の多くはたとえ簿記の資格を持っていなくても、知識としては身につけているものです。簿記の知識をつけることで、経営者と同じ目線でビジネスを捉えられるようになります。
特に2級の知識を身につければ、財務諸表や原価計算の仕組みなどをより深く理解し、経営状況を的確に把握できるようになるでしょう。
就職、転職に有利になる!
日商簿記検定の保有者は企業からのニーズが高いため、就職や転職の際にも有利に働くでしょう。多くの企業では、経理部門の社員に簿記2級以上の知識を求めています。
また経理や会計以外の仕事でも、簿記の知識を活かしてどのような貢献ができるか伝えることで、プラス要素としてアピールできるでしょう。
他の資格取得へのステップアップに役立つ!
簿記の知識は、さらに難易度の高い資格へのステップアップにもつながります。
公認会計士や税理士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーなどの試験では、簿記の知識が求められます。先に簿記2級レベルの知識を身につけておけば、試験対策を効率的に進められるでしょう。
簿記2級試験の難易度
続いて、簿記2級試験の難易度について見てみましょう。
3級試験との比較
日商簿記2級と3級の合格率について、直近5回分を比較したのが以下の表です。
回(日付) | 2級 | 3級 |
161回(2022.6.12) | 26.9% | 45.8% |
160回(2022.2.27) | 17.5% | 50.9% |
159回(2021.11.21) | 30.6% | 27.1% |
158回(2021.6.13) | 24.0% | 28.9% |
157回(2021.2.28) | 8.6% | 67.2% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「受験者データ」
多少バラつきはありますが、基本的には2級の合格率は3級より大幅に低くなっています。より専門的な知識が求められるため、経理・会計の実務経験がある方や簿記3級の合格者でなければ、短期間での2級合格は難しいといえます。
また、簿記2級の教材は3級レベルの知識がある前提で作成されているものがほとんどです。そのため、簿記初心者がいきなり簿記2級を目指すのは非常にハードルが高いでしょう。
関連記事:簿記3級と2級どちらから始めるべき?|はじめての簿記検定
必要な勉強時間の目安
簿記2級合格に必要な勉強時間の目安は、以下のとおりです。
- 講座を利用する場合:100~200時間
- 独学の場合 :150~250時間
上記の数字は、もともと簿記3級の知識があるという前提での勉強時間です。通信講座やスクールなどを利用する場合でも、100~200時間程度は想定しておくべきです。独学の場合はポイントを押さえた効率的な学習が難しいため、もう少し多い150~250時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
ただし、重要なのは内容の理解です。勉強時間を目標にするのではなく、知識を1つ1つ着実に身につけるよう意識しましょう。
独学で合格できるのか
独学で簿記2級の合格を目指すことは、不可能ではありません。ポイントは「簿記3級の知識を改めて整理しておくこと」と「本番形式の問題に取り組むこと」の2つです。
簿記2級の内容を理解するには、3級の知識が不可欠です。そのため、最初の1~2週間だけでも3級の勉強に時間を充てることで、2級の勉強を効率的に進められるでしょう。また、簿記の試験では類似する問題が繰り返し出題されます。そのため、知識を身につけたあとは本番形式の問題を繰り返し解くことが大切です。
計画的に学習を進められれば独学でも十分合格可能ですが、2級は商業簿記と工業簿記が出題対象であり、バランスよく習得するのは簡単ではありません。短期間で合格率を高めたい場合は、通信やオンラインなどの講座を利用するほうが効率的にスコアアップを目指せるでしょう。
簿記2級の勉強方法
簿記2級を勉強するには、大きく分けて3つの方法が挙げられます。
市販のテキストで独学する
1つ目は、市販のテキストで独学する方法です。
独学のメリットとしては、テキスト代以外にお金がかからない点や自分のペースで進められる点が挙げられます。しかし、工業簿記を含む3級よりも広い出題範囲に対し、自分で計画を立てバランスよく進めていくのは簡単ではありません。
講座を利用すれば、よく出題されるポイントに絞った学習や、習得効率を高めるサイクルでの復習などが可能になりますが、独学では遠回りしてしまう可能性が高いでしょう。時間に余裕がある方は、独学での合格にチャレンジしてみてもいいかもしれません。
通信講座・オンライン講座を利用する
2つ目は通信講座やオンライン講座を利用する方法です。
効率よく学べるようカリキュラムが整理されているため、独学よりも効率的に学べるでしょう。また、オンラインの講座であれば通勤・通学時間やお昼休みなど、ちょっとしたスキマ時間を有効活用できます。
独学の場合と比較すると費用はかかってしまいますが、通学制のスクールに通うよりは安価に済みます。多少の費用よりも勉強効率や合格の確実性を重視するなら、通信講座やオンライン講座は検討する価値のある選択肢です。
通学制のスクールに通う
3つ目は、通学制のスクールに通って勉強する方法です。
学習のスケジュールが決まっているためペースを維持しやすい点や、わからない部分を質問できる点がメリットです。また、同じ資格を目指す仲間ができやすい点も魅力の1つでしょう。
しかし一方で、独学や通信講座に比べると費用が高いことや、通学の手間・時間がかかることがデメリットです。時間とお金に余裕がある方なら、通学制スクールで直接指導を受けてみてもよいかもしれません。
まとめ
本記事で紹介した簿記2級のポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 簿記2級は経理・会計はもちろんさまざまな職種に活かせる資格
- 就職・転職や難関資格へのステップアップに役立つ
- 年3回開催の統一試験のほか、ネット試験も選べる
- 簿記が初めての方は3級から取得するのがおすすめ
- 独学も不可能ではないが、効率よく学びたいなら講座がおすすめ
簿記2級の知識を持っていれば、自社や取引先の経営状況を分析できるようになります。経理や会計といった専門職だけでなく、幅広い仕事で知識が役に立つでしょう。また、将来起業したり、フリーランスを目指したりする場合にも、財務諸表の作成や確定申告に活かせます。
簡単に取れる資格ではないからこそ、簿記2級を取得するメリットは大きいといえます。少しでも興味を持った方は、ぜひチャレンジしてみてください。