簿記検定の合格に必要な勉強時間は、受験する級の難易度はもちろん、学習方法によっても大きく異なります。
必要な勉強時間は、学習方法によって異なります。簿記合格を目指すなら、大きく分けて「独学」と「講座受講」が考えられるでしょう。講座には通信講座やオンライン講座のほか、通学制のスクールなどが挙げられます。
市販のテキストで独学する場合と比べ、プロが作成した効率よく学べる講座を受講するほうがより短期間で合格を目指せるでしょう。よく出題されるポイントに絞って対策できたり、習得効率のよい順番で学べたりするからです。日商簿記の2級と3級は任意のスケジュールで試験を受けられる「ネット試験」も開始されたため、効率的に学べればそのぶん受験も早められます。
通学制のスクールだと通学に時間がかかったり、費用が高額だったりといった点で受講が難しいかもしれません。通信講座やオンライン講座なら費用が安く、すきま時間で利用できるため、効率よく対策を進めたい方におすすめだといえるでしょう。
簿記検定に合格するまでに必要な勉強時間は一般的に、簿記3級は50~100時間以上、簿記2級は100~200時間以上、簿記1級は500~600時間以上と言われています。
人によって学習スタイルが異なりますが、1日に1時間~2時間の学習時間が確保できるのであれば、簿記3級は2~4ヶ月、簿記2級は3~6ヶ月。
簿記2級合格レベルの知識があり、1日に2.5時間の学習時間が確保できるのであれば、簿記1級は7~10ヵ月前から勉強を始めるのがベストです。
初めての簿記1級学習であれば、10ヶ月以上前からじっくり学習を進めた方がよいでしょう。
その人の知識や経験によって勉強時間は異なりますので、あくまで目安として考えましょう。自分に合った学習計画を立てて試験に臨むのが合格への近道となります。
独学の目安時間 | 通学・通信・オンライン講座の目安 | 参考例 | |
---|---|---|---|
簿記3級 | 100~150時間 | 50~100時間 | 1~1.5時間×2~4ヵ月 |
簿記2級※1 | 150~250時間 | 100~200時間 | 1~2時間×3~6ヵ月 |
簿記1級※2 | 500~700時間 | 400~600時間 | 1.5~2.5時間×7~10ヵ月 |
※1:3級合格レベルの知識があることを前提としています。
※2:2級合格レベルの知識があることを前提としています。
日商簿記3級の合格に必要な勉強時間の目安は、講座を利用する場合で50~100時間です。独学で勉強する場合にはもう少し長い時間が必要となり、100~150時間程度を見込んでおくとよいでしょう。
日商簿記3級では、基本的な商業簿記を扱います。2級以上で扱う工業簿記が含まれず、商業簿記の出題範囲も狭いため、簿記を初めて学ぶという方でも十分合格を狙える難易度です。
関連記事:簿記3級と2級どちらから始めるべき?|はじめての簿記検定
簿記3級の合格率は、おおむね40~50%前後です。
回(実施年月) | 合格率 |
第161回(2022.6.12) | 45.8% |
第160回(2022.2.27) | 50.9% |
第159回(2021.11.21) | 27.1% |
第158回(2021.6.13) | 28.9% |
第157回(2021.2.28) | 67.2% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「受験者データ」
第158回・第159回の合格率が低いですが、これは試験方式の変更と出題区分の改定があった影響と考えられます。その後は40~50%前後に戻っているため、あまり気にしすぎる必要はないでしょう。
それでも受験者の半数かそれ以上は不合格になっているということです。基礎レベルとはいえ、計画的に学習を進めなければ合格は難しくなるでしょう。
簿記3級の受験者の中には、初心者の方も多くいらっしゃいます。初めて3級を勉強するうえで大切なことは、まず簿記特有の勘定科目と仕訳のルールを覚えて理解することです。
それでは、どのくらい理解すれば合格レベルに達したと言えるでしょうか。一つの目安として、自分の言葉で説明できるかどうかと考えてください。
例えば、簿記学習の初期段階で学ぶ簿記の5要素、「資産、負債、純資産、収益、費用」ですが、これらは一体何なのか、問題を解いていく上でどのように関係していくのか、説明できるでしょうか。
教材の端から端まで全てを丸暗記する必要はありませんが、なんとなく覚えることだけは避けましょう。そうならないためにも、学んだことは簡潔に説明できるよう心がけてください。
そして反復学習を徹底的に行いましょう。対策本やビデオ講座などで基礎知識をインプットしたあと、実際に問題を解いたり、人に説明したりしてアウトプットをします。その繰り返し作業が最もあなたの簿記力を高めていきます。
3級で勘定科目、仕分けのルールがしっかり身に付けば、ステップアップで2級合格を目指す際も、スムーズに勉強を進めることができます。
日商簿記2級の合格に必要な勉強時間の目安は、「3級レベルの知識を習得済み」かつ「講座を利用する」場合で100~200時間ほどです。独学の場合は150~250時間とさらに長い勉強時間を要するでしょう。3級よりも出題範囲が格段に広くなるため、計画的な学習が必要です。
日商簿記2級では、3級でも扱う商業簿記に加え、工業簿記が含まれるようになります。商業簿記が外部から仕入れた商品の販売を行なう企業を対象としているのに対し、工業簿記は企業内部で製造した製品の販売を行なう企業を対象としています。そのため、原価計算など新たな知識の習得が必要です。
簿記2級は多くの企業が経理部門スタッフに求めるレベルであるため、取得すれば就職や転職の際に有利に働くでしょう。
簿記2級の合格率は、おおむね15~30%前後です。3級の40~50%前後と比較すれば、難易度の高さがうかがえるでしょう。
回(実施年月) | 合格率 |
第161回(2022.6.12) | 26.9% |
第160回(2022.2.27) | 17.5% |
第159回(2021.11.21) | 30.6% |
第158回(2021.6.13) | 24.0% |
第157回(2021.2.28) | 8.6% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「受験者データ」
2級の合格率は回によってバラつきが大きく、10%を切ることもあります。余裕を持って合格できるよう、計画的に勉強することが大切になります。
2級は3級で学んだ基本的な知識を前提に問題が出題されますので、3級で学んだ基礎知識があれば効率よく勉強を進めることができます。
3級と最も違う点は工業簿記が出題されることです。工業簿記は商業高校において修得を期待するレベルなので、まとまった勉強量と問題を解くコツをつかまなければなりません。
しかし工業簿記の出題に関しては、基本的な項目しか出題されないので、基礎を固めることを優先してください。基礎を固められればしっかり点数を稼げますので、得意分野にしてしまいましょう。
簿記2級は3級に比べて出題範囲も広くなり難易度も高くなりますが、3級で学んだ基礎があればゼロからのスタートではないので、2級の知識を積み上げるイメージで、効率的に勉強することが合格への近道になってきます。
日商簿記1級の合格に必要な勉強時間の目安は、「2級レベルの知識を習得済み」かつ「講座を利用する」場合で400~600時間ほどです。独学の場合はさらに長い500~700時間程度の勉強が必要だと考えられます。いずれにしても、必要な勉強時間からわかるとおり2級や3級とは難易度が桁違いです。
日商簿記1級では、出題科目が商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算という4つに分かれます。公認会計士や税理士など難関資格への登竜門にも位置づけられるほど、高いレベルの試験となっています。
日商簿記1級の合格率は、10%前後となっています。
回(実施年月) | 合格率 |
第161回(2022.6.12) | 10.1% |
第159回(2021.11.21) | 10.2% |
第158回(2021.6.13) | 9.8% |
第157回(2021.2.28) | 7.9% |
第156回(2020.11.15) | 13.5% |
出典:簿記 商工会議所の検定試験「受験者データ」
出題範囲が広く専門性も高い試験であるため、合格率は非常に低いです。長期にわたってバランスよく計画的に学習を進める必要があり、独学での合格はかなり難易度が高いといえるでしょう。
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1級は、学習範囲が広く内容も高度になるにも関わらず、試験時間は非常に短い(商会90分+工原90分)ため、早く正確に解けるようになる必要があります。
また、4つの試験科目ごとに40%以上の得点がなければ不合格になってしまいますので、特別苦手な分野がないように学習しなければなりません。
簿記1級の対策のポイントとしては、以下の点を意識すると良いでしょう。
本記事では、日商簿記各級の合格に必要な勉強時間や難易度について解説しました。改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
経理や会計の仕事でなくても、簿記の知識があれば取引先や競合の経営状況を分析するなど、さまざまな形でキャリアに活かせます。身につけておいて損はない資格であるため、興味を持った方はぜひ3級からでも挑戦してみてください。
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