社労士と司法書士、どっちの難易度が高い?ダブルライセンスのメリット

【比較】社労士と司法書士、どっちの難易度が高い?

社労士と司法書士はどちらも難易度の高い国家資格であり、司法書士のほうが難易度が高いと考えられます。

本章では以下4つの項目から両資格を比較し、社労士よりも司法書士の難易度が高いとされる理由を詳しく解説します。

社労士司法書士
受験資格学歴による受験資格あり
実務経験による受験資格あり
試験合格による受験資格あり
年齢、性別、学歴等に関係なく、誰でも受験可能
合格率6.9%(令和6年)5.3%(令和6年)
勉強時間500〜1000時間3000時間
試験内容五肢択一式選択式筆記試験口述試験(筆記試験合格者のみ)

具体的に見ていきましょう。

社労士は受験資格あり、司法書士は受験資格なし

社労士司法書士
【学歴による受験資格】
大学・短大・高専などの卒業者や一定単位修得者
専修学校の専門課程修了者
厚生労働大臣認定校の卒業者
全国社会保険労務士会連合会が同等学力と認めた者や旧制度学校卒業者

【実務経験による受験資格】
労働社会保険法令関連法人、国・地方公共団体、社会保険関連機関、または労務関連業務において通算3年以上の実務経験を有する者

【試験合格による受験資格】
厚生労働大臣が認めた国家試験合格者司法試験関連の予備試験・第一次試験合格者行政書士試験合格者
年齢、性別、学歴等に関係なく、誰でも受験可能

【参考】
社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」
日本司法書士会連合会「司法書士を目指す人へ」

社労士は一定の学歴・実務経験・試験合格暦のいずれかに該当しないと、受験できません。

一方で、司法書士は年齢・性別・学歴による制限はなく、誰でも受験が可能です。

受験自体へのハードルで見ると、社労士のほうが司法書士より難易度が高いと判断できます。

社労士は司法書士より合格率が高い

▼社労士試験の受験者数・合格者数・合格率

年度受験者数合格者数合格率
平成27年度40,712人1,051人2.6%
平成28年度39,972人1,770人4.4%
平成29年度38,685人2,613人6.8%
平成30年度38,427人2,413人6.3%
令和元年度38,428人2,525人6.6%
令和2年度34,845人2,237人6.4%
令和3年度37,306人2,937人7.9%
令和4年度40,633人2,134人5.3%
令和5年度42,741人2,720人6.4%
令和6年度43,174人2,974人6.9%
【参考】厚生労働省「社会保険労務士試験の結果について」

▼司法書士試験の受験者数・合格者数・合格率

年度受験者数合格者数合格率
令和6(2024)13,960人737人5.3%
令和5(2023)13,372人695人5.2%
令和4(2022)12,727人660人5.2%
令和3(2021)11,925人613人5.1%
令和2(2020)11,494人595人5.2%
令和元(2019)13,683人601人4.4%
平成30(2018)14,387人621人4.3%
平成29(2017)15,440人629人4.1%
平成28(2016)16,725人660人3.2%
【参考】法務省「司法書士試験」

社労士試験の合格率は、6〜7%程度です。

一方、司法書士試験の合格率は、例年4~5%程度で推移しています。司法書士は、法律系国家資格の中でも特に合格率が低い資格の1つです。

司法書士試験の合格率が低い理由としては、出題範囲の広さや、上位5%前後のみが合格するとされる「相対評価形式」の合格基準が設けられている点が挙げられます。

合格率の低さから見ると、司法書士のほうが社労士よりも難易度が高いことがわかります。

社労士は司法書士より勉強時間が短い

社労士司法書士
500〜1000時間3000時間

確実に資格を取得するためには、勉強時間の確保が非常に重要です。

社労士の場合は500〜1,000時間ほど、司法書士の場合は3,000時間ほど勉強時間を要します。

司法書士がこれほどの勉強時間を要する理由には、試験の出題範囲が大きく影響しています。

社労士は8科目の出題範囲であるのに対し、司法書士は11科目もの勉強が必要です。

たとえば、週休2日制の会社員が資格取得を目指した場合、以下のような勉強スケジュールが想定されます。

【社労士試験】1年間で900時間の勉強を想定

  • 平日(5日)2時間程度
  • 休日(2日)3.5〜4時間程度

【司法書士】3年間で3000時間の勉強を想定

  • 平日(5日)3時間程度
  • 休日(2日)4〜5時間程度

勉強時間の観点から見ると、社労士よりも司法書士のほうが圧倒的に難易度が高いと考えられます。

社労士と違い司法書士には口述試験がある

社労士司法書士
選択式
五肢択一式
多肢択一式
記述式

【参考】
社会保険労務士試験オフィシャルサイト「試験の概要」
日本司法書士会連合「司法書士を目指す人へ」

社労士の試験は選択式と五肢択一式の問題であるのに対し、司法書士は多肢択一式と記述式の筆記試験に加え、口述試験もあります。

口述試験は筆記試験の合格者のみが受けられます。

「不動産登記法」「商業登記法」「司法書士法」に関する質問に対して、論理的に説明をしなければなりません。

口述試験自体の合格率はほぼ100%といわれているため、難易度が高いわけではありませんが、筆記試験に合格した後も勉強を継続する必要があります。

また択一式や選択式だけの社労士試験と違い、司法書士試験では記述式の問題があるため、筆記試験単体での難易度も社労士より高いと考えられます。

総じて社労士より司法書士のほうが難易度が高い

「受験資格」に関しては司法書士のほうが制限がなく難易度が低いですが、「合格率」「勉強時間」「試験内容」の3点を踏まえると、総じて司法書士のほうが難易度が高いといえるでしょう。

司法書士試験は、国家資格の中でも難易度が高い資格として上位に挙げられます。

しかし、難易度が高い資格だからといって諦める必要はありません。

出題形式を意識し、目標を定めた計画的な学習を積み上げることで、合格の可能性は十分にあります。

自身の理想とするキャリアを目指し、正しい勉強法で難関資格を取得しましょう。

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社労士と司法書士の違いを比較

社労士と司法書士の仕事にはどのような違いがあるのでしょうか?

資格取得後の状況について、3つの観点から両資格を比較します。

社労士司法書士
仕事内容労働・社会保険関連の書類作成と役所への提出代行
労働・社会保険手続きの代理人としての主張や説明
就業規則など労務関係の帳簿書類の作成
不動産登記、会社・法人登記
簡易裁判所での訴訟代理業務
成年後見業務
債務整理
平均年収500~700万円600~800万円
働き方独立開業や事務所・企業勤務など多様で、独立の場合は定年なし
書類提出期限で業務が集中し、残業や不規則勤務の可能性あり
手続き代行から人事労務・年金相談まで業務の幅が広がっている
独立開業や事務所勤務など選択肢が多様
法務局や裁判所の手続き期限に合わせた業務形態で、時期により残業や休日出勤も発生
登記手続きから訴訟関係、成年後見まで幅広い業務に対応する働き方が可能

具体的に見ていきましょう。

仕事内容・独占業務の違い

社労士司法書士
労働・社会保険関連の書類作成と役所への提出代行
労働・社会保険手続きの代理人としての主張や説明
就業規則など労務関係の帳簿書類の作成
不動産登記、会社・法人登記
簡易裁判所での訴訟代理業務
成年後見業務
債務整理

2つの資格の共通点は以下の通りです。

  • 法的手続きの代行を行う点
  • 専門知識が必要な仕事である点
  • 資格取得者のみ独占業務がある点

一方で、具体的な仕事内容には違いがあります。

社労士は主に社会保険や労務関連の課題を解決する専門家です。

たとえば「助成金の申請をしたい」「就業規則を作りたい」といった企業側からの相談から、「不当な解雇を受けた」「仕事中に怪我をした」といった社員側の相談まで幅広く対応できます。

一方で司法書士は、登記関連や供託、成年後見人関連など法的手続きを行う専門家です。

クライアントは個人や法人を問わず依頼人が求める手続きをスムーズに進めます。

年収の違い

社労士司法書士
500~700万円600~800万円

社労士や司法書士の年収について正確なデータが存在しませんが、一般的には社労士が500~700万円、司法書士が600~800万円程度といわれています。

国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者の平均年収は460万円です。

社労士も司法書士も収入自体に大きな違いは見られず、どちらも日本の平均年収よりも高額になる傾向があります。

また、厚生労働省の令和6年「賃金構造基本統計調査」では、社労士を含む「その他経営・金融・保険専門職業従事者」の平均年収が903万2,200円(39.5歳、勤続年数8.1年)となっています。

一方、司法書士を含む「法務従事者」の平均年収は765万2,700円(47.2歳、勤続年数11.3年)となっています。

上記数値には社労士・司法書士以外の方も含まれるためあくまで目安に過ぎませんが、やはりどちらの資格も日本の給与取得者平均と比べて高い収入につながりやすいといえそうです。

また、社労士も司法書士も企業に勤務して行うケースと、開業をして独自で運営するケースの2パターンがあります。

企業勤務の場合、一定の年収から大幅に上がる可能性は低いですが、開業をした場合は自身の努力次第で1,000万円に近い金額を狙うことも可能です。

働き方の違い

社労士司法書士
働き方独立開業や事務所・企業勤務など多様で、独立の場合は定年なし
書類提出期限で業務が集中し、残業や不規則勤務の可能性あり
手続き代行から人事労務・年金相談まで業務の幅が広がっている
独立開業や事務所勤務など選択肢が多様で、独立の場合は柔軟に勤務時間の設定が可能
法務局や裁判所の手続き期限に合わせた業務形態で、時期により残業や休日出勤も発生
登記手続きから訴訟関係、成年後見まで幅広い業務に対応する働き方が可能

社労士と司法書士はどちらも「独立開業」と「企業勤務」の選択が可能です。

両者とも書類提出期限に合わせた業務となり、特定時期に仕事が集中すると残業や不規則な勤務が発生します。

近年は社会変化で役割が拡大し、社労士は人事労務管理や年金相談、司法書士は民事事件や成年後見などの業務も増加しています。

社労士と司法書士、どちらの取得がおすすめ?

社労士と司法書士はどちらも難易度が高く、その分将来性も期待できる資格ですが、どちらを取得するべきか悩む方も多いのではないでしょうか?

本章では両資格のおすすめな人の特徴について解説します。

自身の希望するキャリアやこれまでの経歴を考慮して、取得すべき資格を明確にしましょう。

社労士の取得がおすすめの人

  • 人事労務部門に勤務している人
  • 独立志向が強い人
  • 独立後も安定して働きたい人
  • 転職やスキルアップを考える人

社労士は労務や社会保険の専門家なので、人事や労務部門に勤務してきた方はこれまでの知見を活かして業務を遂行できます。

また、社労士は独立・開業をしても仕事ができるため、自身のスキルを活かして事務所を開業することが可能です。

社会保険や労務関係の仕事は継続的に需要があるため、独立後でも安定的な受注が期待できます。

一方で、正確な事務処理管理が求められるため、定型業務や細かな事務作業が苦手な方には向いていない側面があります。

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司法書士の取得がおすすめの人

  • 責任感のある人
  • 専門的なスキルを身につけたい人
  • 傾聴力のある人
  • 法律家として働きたい人

司法書士は依頼人の話を聞いたうえで、要望に応じて正しい法的手続きを行う必要があります。

法的手続きを要する場面は依頼人にとって重大な事案が起きている可能性があるため、傾聴力があり、情報を正しく効き出せる人がおすすめです。

また法律に携わる仕事であるため法律に興味があり、専門性を持って仕事を遂行したい方におすすめできるでしょう。

一方で、人と話すことが苦手な方や、きめ細かな対応が苦手な方は司法書士に向かない可能性が高いです。

社労士と司法書士のダブルライセンスのメリット・デメリット

社労士・司法書士ともに難易度が高い資格ですが、ダブルライセンスによって得られるメリットも大きいです。

一方でダブルライセンスを取得した際に注意すべきデメリットもあります。

メリットデメリット
年収が増加する
顧問契約の獲得しやすい
経営が安定化する
自身の価値向上が見込める
どちらも取得の難易度が高い
対応範囲が拡大化する

本章では社労士と司法書士のダブルライセンスのメリット・デメリットについて解説します。

ダブルライセンスのメリット

  • 年収が増加する
  • 顧問契約を獲得しやすい
  • 経営が安定化する
  • 自身の価値向上が見込める

社労士と司法書士は非常に相性の良い資格です。

特に開業している場合は、他の事務所と比べて差別化もしやすく、受注業務の幅が広がるため年収の増加が期待できます。

たとえば、司法書士として商業登記や会社の設立に携わり、そのまま企業の入退社手続きや、労務関係にも関与することも可能です。

企業と継続的に関われるため、顧問契約も結びやすいでしょう。

また、転職活動でも非常に有利であり、独立・開業後した場合でも経営が安定しやすい点も魅力です。

ダブルライセンスのデメリット

  • どちらも取得の難易度が高い
  • 対応範囲の拡大によりリソース不足が懸念される

相性の良い2つの資格ですが、デメリットには資格取得の難易度が高いことが挙げられます。

司法書士試験は勉強時間3,000時間を要するにもかかわらず、合格率は平均4.66%です。

社労士試験に関しても、500〜1,000時間の勉強が必要なうえ、合格率は平均6.33%とどちらも難易度の高い資格です。

ダブルライセンスを取得するためには多くの時間と労力がかかります。

また、対応範囲が拡大することは一見メリットではありますが、注意が必要です。

独立直後にリソースと見合っていない業務まで引き受けてしまうと、対応しきれなくなる可能性があります。

社労士と司法書士の両軸で対応する場合は、チーム化するなど十分な人員を整えておく必要があります。

まとめ

社労士と司法書士の難易度について解説しました。

  • 社労士と司法書士では司法書士のほうが難易度が高い
  • 社労士と司法書士はどちらも独占業務があり、平均年収よりも高額になる傾向がある
  • 社労士と司法書士のダブルライセンスは相乗効果でキャリアアップにつながる
  • 資格の取得目的を明確にし、自身のキャリアにあった資格取得が望ましい

社労士や司法書士はどちらも難易度の高い国家資格であり、長期間の勉強を要するため、効率良く要点を押さえた学習が合格へとつながります。

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