社労士試験の午前中に行われる「選択式試験」は、科目ごとに厳しい合格基準点が設定されています。このため「あと1科目」「あと1点」に泣く人が毎年続出し、選択式試験がネックで何年も不合格が続く人も少なくありません。
合格するには正しい選択式試験の対策を知り、日頃の勉強から実践することが重要です。この記事では、選択式試験の特徴、合格基準点、おすすめ勉強法などを解説します。
社労士試験の「選択式」と「択一式」の違い
社労士試験には「選択式試験」と「択一式試験」という2種類の出題形式があり、試験に合格するには両方とも合格基準点をクリアする必要があります。
このうち、午前中に行われる選択式試験には次のような特徴があります。
- 「穴埋め」問題
- 試験は80分で40問
- 科目ごとの合格基準点が厳しい設定
選択式は「穴埋め」問題
選択式試験は「穴埋め」問題が出題されます。問題文に5つの空欄があり、20個の選択肢から適切なものを選ぶ形式です。
法令などの知識はもちろん、前後の文章を理解した上で解答する必要があるため、文章の読解力、理解力も求められる問題となっています。
逆に言えば、文章を正しく理解する能力があれば本文内で正解のヒントを見つけることも可能な問題もあります。
一方、択一式試験は問題に対する解答が5つ用意されていて、「正しいもの(誤っているもの)はどれか」「正しいもの(誤っているもの)はいくつあるか」といった問いが出題されます。
選択式は80分で40問
選択式試験の試験時間は80分(1時間20分)であり、大問が8個(それぞれに小問が5個)出題され全40問となっています。
これに対して択一式試験は210分(3時間30分)で、大問が7個(それぞれに小問が10個)の全70問です。
選択式は科目ごとの合格基準点が厳しい設定
選択式試験は、科目ごとの合格基準点が厳しく設定されています。
択一式試験では1科目につき「10点中4点以上」であるのに対し、選択式試験は1科目につき「5点中3点以上」となっているため、より高い正解率が求められます。
選択式の合格基準点
社労士試験の科目ごとの合格基準点は、択一式試験よりも選択式試験のほうが厳しいものになっていると述べました。
選択式試験の合格基準について、詳しく見ていきましょう。
配点・合格基準点
選択式試験は大問が8個(それぞれに小問が5個)で、小問1個につき1点のため40点満点です。合格基準点は、原則として下記のようになっています。
▼社労士試験の合格基準点
出題形式 |
満点 |
合格基準点(原則) |
選択式(5点×8科目) | 40点 | 合計28点以上かつ各科目3点以上 |
択一式(10点×7科目) | 70点 | 合計49点以上かつ各科目4点以上 |
選択式試験の合格基準点(原則)は、総得点として28点以上、かつ各科目(大問)で5点中3点以上となります。
仮に、各科目が下記の得点だったとしましょう。
労基・安衛 | 労災 | 雇用 | 労一 |
社一 | 健保 | 厚年 | 国年 | 合計 |
5 | 4 | 4 | 2 |
2 | 4 | 5 | 5 | 31 |
この場合は、合計得点は合格基準点の28点をクリアできていますが、「労一」と「社一」で各科目3点以上の条件をクリアできていません。
たとえ択一式試験では合格基準点を超えていたとしても、その年の社労士試験は不合格となります。
「救済」とは
科目ごとの合格基準点に関連して知っておきたいのが、いわゆる「救済」制度です。
先ほどの合格基準点の説明の際に「原則」と述べました。なぜなら合格基準点は毎年のように調整が加わっているからです。
その年の試験の難易度に応じて、科目によっては合格基準点が引き下げられることがあり、救済と呼ばれています。
近年の社労士試験では救済が行われる年が続きましたが、必ず行われるわけではなく、令和4年(2022年度)試験では行われませんでした。
また救済の内容(対象となる試験形式、科目、点数)は受験が終わるまでわかりません。
受験生は救済をあてにするのではなく、原則の合格基準点を目指すことが大切です。
近年の選択式の合格基準点・救済科目
年度 | 合格基準点 | 救済科目 |
---|---|---|
令和4(2022) | 総合得点27点以上かつ各科目3点以上 | なし |
令和3(2021) | 総合得点24点以上かつ各科目3点以上 | 「労一」は1点以上、「国年」は2点以上 |
令和2(2020) |
総合得点25点以上かつ各科目3点以上 |
「労一」・「社一」・「健保」は2点以上 |
令和元(2019) |
総合得点26点以上かつ各科目3点以上 |
「社一」は2点以上 |
平成30(2018) |
総合得点23点以上かつ各科目3点以上 |
「社一」・「国年」は2点以上 |
平成29(2017) |
総合得点24点以上かつ各科目3点以上 |
「雇用」・「健保」は2点以上 |
選択式の対策はいつから?
ここまで選択式試験の基本情報を確認してきましたが、ここからは合格基準点をクリアするにはどのように対策すればいいのかを考えていきましょう。
まず、「選択式試験の対策はいつからスタートするべき?」と迷っている人がいるかもしれませんね。
社労士試験は1年で合格を目指すケースが多いので、1年間の学習スケジュールを見てみましょう。
▼1年の勉強スケジュール(目安)
時期 |
やること |
9〜3月 | 基礎力を養う(出題範囲を2周、「インプット+問題」をセットで学習) |
4〜5月 | 基礎の復習+最新情報の肉付けをする(法改正、白書、統計など) |
6〜8月 | 得点力を高める(答練、模試など) |
社労士試験の勉強は、出題範囲を何周も繰り返し学習して内容を定着させていきます。
最初のステップとして、9月から3月までに全範囲を最低2周は学習して、基礎力を養っておきましょう。
基礎力は試験での得点力に直結します。「試験問題を解く」というゴールを意識しながら、インプットを進めていくことがポイントです。
選択式対策は、9月の勉強開始からすでに始まっているといえるでしょう。
特に意識しておきたいのが、条文に登場するキーワードの丁寧な暗記です。
空欄に入る用語を選ぶ選択式試験問題では、ひっかけとして、似たような用語が選択肢に並びます。
例えば、令和3年度の選択式試験の国民年金法の問題では、選択肢に次の4つの文が並びました。
・給付として支給を受けた金銭を基準
・給付として支給を受けた金銭を標準
・給付として支給を受けた年金額を基準
・給付として支給を受けた年金額を標準
あいまいに暗記していると、最後の2択で絞れないケースもあります。どんな言葉が使われているのかインプットの段階から丁寧におさえていきましょう。
基礎のインプットの段階から試験を意識しておけば、選択式試験の演習を本格的に始めるのは5~6月以降でも問題ありません。
科目別では、労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)は、社労士試験の全科目の中でも特に点を取りにくいとされていて、合格基準点割れに泣く受験生も多いです。
労一では白書・統計からも出題されカバーすべき範囲も広いので、直前期になって焦ってやる羽目にならないよう、早めに着手しておくのがおすすめです。
選択式のおすすめ勉強法
続いて、選択式試験の対策として具体的な勉強法を紹介します。
- 「問題が解ける」ための勉強をする
- 全科目の「1周目」の勉強を早く終える
- 難問で出題される細かな知識を追求しすぎない
「問題が解ける」ための勉強をする
選択式試験のおすすめ勉強法の1つ目は、問題が解けるようになるための勉強をすることです。
とてもシンプルなことですが、実は多くの人はできていません。
問題が解けるようになるには、テキストの知識を「理解している」「暗記できている」という状態では不十分です。
試験にどのように出題されるのか、どんなひっかけが仕込まれるのかといったことを把握して知識を使いこなせる状態になっておく必要があります。
このため、問題集や過去問を使って「解く」学習を重視すると、合格する可能性が高まります。
たくさんの問題と向き合い、問題がどのように作られているかを頭に焼き付けていけるからです。
インプットだけに偏らない勉強を意識しましょう。
全科目の「1周目」の勉強を早く終える
選択式試験のおすすめ勉強法の2つ目は、全科目の「1周目」の勉強を早く終えることです。
すでに述べたとおり、社労士試験の勉強は、出題範囲を何周も繰り返し学習するのが一般的です。
言い方を変えれば、何周もしなければ内容が定着しないほど、ボリュームが多いということ。
「2周目の勉強を始めたら、1周目で学んだはずの内容をあまり覚えていなかった」というのは珍しいことではありません。
特に選択式試験の対策においては、科目ごとの厳しい合格基準点をすべてクリアする必要があり、苦手科目を作れません。
社労士試験に合格できる人は、勉強法に特徴があります。
それは、途中でわからないところがあっても計画通りに勉強を進めて、まずは全科目の1周目を早く終えようとすることです。
また、特定の科目にこだわらず、バランスよく学習を行い、好きな科目よりも苦手科目の対策に時間を使います。
このような合格者の勉強法をマネするのが合格への近道となります。
難問で出題される細かな知識を追求しすぎない
選択式試験のおすすめ勉強法の3つ目は、難問で出題される細かな知識を追求しすぎないことです。
選択式試験では「奇問」「難問」と呼ばれるような出題があります。
過去問で問題練習をしたり直前期に模試を受けたりしていると出合うことになるでしょう。
「解けない問題があっては、合格基準点を超えられないかも……」と怖くなるかもしれなませんが、実際は基礎的な問題が解ける力をしっかりつけて、他の受験生が得点できる問題を取りこぼさないことのほうが、はるかに重要です。
難問対策ばかりにとらわれて時間を奪われてしまうといった事態は避けるように準備を進めるようにしてください。
スマホでできる!得点力を高める選択式対策
これまでご紹介してきました勉強のポイントをしっかり押さえて作られているのがオンライン通信講座の「スタディング 社会保険労務士講座」です。
PC、タブレット、スマホなどさまざまなデバイスで学習できることも特徴です。
とくにスマホを使うと、電車移動中、出先でのちょっとした空き時間、寝る前の時間などスキマ時間を活用してコツコツと選択式対策に取り組めます。
▼「問題が解ける」ための勉強をする
教材の流れに沿って進めるだけで「動画講座で知識のインプット+問題練習」をワンセットで学習できます。
よく出題される重要論点を科目別に厳選したオンライン過去問題集も、スマホで学習可能。
さらに、効果的な復習のタイミングはAIが知らせてくれるので、苦手な問題も確実に自分のものにできます。
▼全科目の「1周目」の勉強を早く終える
視覚的に理解しやすいスライドを活用した動画講義で、スピーディに勉強を進めることができます。1.5倍速や2倍速での視聴も可能で、出題範囲が非常に広い社労士試験と相性抜群です。
▼難問で出題される細かな知識を追求しすぎない
スタディングの教材は過去50年分の社労士試験の出題実績を分析して、必要十分にして最小限のカリキュラムを開発しています。
そしてスタディング 社会保険労務士講座は、選択式試験に特化した対策として「暗記ツール」「直前対策答練(※)」「合格模試(※)」を用意しています。
(※マークは「ミニマム」「レギュラー」「フル」の3コースのうち「フル」のみ)
「暗記ツール」で時短・効率化!
暗記ツールはWEBテキストで利用できる機能です。
暗記ツールの機能をオンにすると、講師があらかじめマークしておいた押さえるべき重要なキーワードが濃い赤ペンで塗りつぶしたように隠されて、まるで選択式試験の穴埋め問題のような状態になります。
塗りつぶし部分を指でタップすると、色が消えて重要キーワードが表示されるので、WEBテキストがそのまま選択式試験対策の問題集のように使えるのです。
暗記ツールがあれば、暗記用ノートを自分で作る手間が省けて、しかも覚えるべき箇所は講師が厳選しているため、費用に効率よく学習できます。
スマホでいつでもどこでも気軽に暗記ができるので、スキマ時間の有効活用にもぴったりです。
一回めの受験は選択式で一点足らずに不合格でした。スタディング教材は早苗先生が「ここは選択式注意!」とアラートをしてくださいますし、簡単に見え消しできる暗記ツールも標準装備ですので、選択式の実力アップには相当効果があったと思い返しております。
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「直前対策答練」「合格模試」で本番さながらの練習!
「フルコース」では、講師作成のオリジナル問題で直前対策答練と合格模試を利用できます。実際の選択式試験の出題形式に完全対応しており、本番さながらの練習が可能です。
「直前対策答練」では本試験と同じ形式の演習を積むことができ、さらに解説講義によって空欄前後から解答を導くための考え方など、選択肢試験で「あと1点」を勝ち取る解法のコツが身につきます。
「合格模試」は、スマホやパソコンのほか試験本番と同様の紙ベースで解くことができます。その場ですぐに採点・解説の確認が可能で、翌日には全受験者中の位置や科目別の成績も把握できます。
絶対合格したかったので、模試や直前答練までついているコースを購入しました。お陰で、勉強不足感がなく挑めましたし、力がついたと思います。絶対に合格したいのであれば、模試までついているコースを選択されることをおすすめします。
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選択式の時間配分
最後に、試験本番における選択式試験の時間配分についてもふれておきましょう。
前述のとおり、選択式試験は大問(1科目)8個を80分で解きます。
時間配分は、単純計算で考えると大問1個(小問5個)あたり10分となりますが、見直しの時間を残しておく必要があるため、実際はもっと短くなります。
とはいえ、一般的に択一式試験(全70問の五肢択一式で、1肢あたりの文章が長い)は全問を解くのに制限時間いっぱいまでかかるのに対して、選択式試験は時間に余裕を持って解けると言えます。
試験の解きすすめ方については、事前の演習で色々なパターンを試して自分のスタイルを固めておくといいでしょう。
選択式試験に関しては、時間配分よりも「終わった後の気持ちの切り替え」のほうが重要です。
午前の選択式試験で難問・奇問が出題されると、「解けなかった」「合格基準点を下回ったかも……」と落ち込んでしまうかもしれませんが、その気持ちを午後の択一式試験に引きずってしまうのは危険です。
お昼休憩は選択式試験の答えの確認は行わず、択一式試験でベストを尽くすことに集中しましょう。
まとめ
今回は社労士試験の選択式試験について詳しくご紹介しました。それでは重要なポイントを改めておさらいしましょう。
- 選択式試験は問題文の空欄に入る適切な言葉を選択する問題(穴埋め問題)が出題される
- 科目ごとの合格基準点の設定は、択一式試験よりも選択式試験のほうが厳しい
- 選択式試験を攻略するには、解答力の養成、「1周目」を早く終えること、難問対策よりも基礎固めの3つが重要
社労士試験合格を目指す上で、選択式試験への対策は欠かせません。今回ご紹介したポイントを押さえながらしっかり対策をして本番に臨んでください。