前述のとおり、社労士の働き方には大きく分けて次の2つがあります。
勤務社労士 | 社労士事務所や一般企業に雇用されて働く社労士 |
開業社労士 | 開業して自分で事務所を構えて働く社労士 |
このうち、勤務社労士の年収については、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から、ある程度は推計することができます。
たとえば、令和元年(2019年)分の同調査によると、社労士の年収は460万3,400円(44.7歳、勤続年数13.4年)となっています。
同調査の全体の平均は464万3,300円(43.1歳、勤続年数12.4年)となっており、社労士の年収は全体の平均と同じ程度の金額です。
なお、同調査で職種の中に「社会保険労務士」という項目があるのは、令和元年までとなっています。
令和2年以降については、証券アナリストや経営コンサルタント等と同じ職種として、「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の項目で集計されています。
このため令和2年以降の同調査からは、社労士の年収における正しい実態を把握するのは難しくなっているのが現状です。
参考までに、令和2年(2020年)以降の集計も確認してみましょう。同調査による令和2年と令和3年の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の年収は下記のとおりです。
令和2年(2020年) | 747万3,300円(37.2歳、勤続年数7.7年) |
令和3年(2021年) | 1,004万9,200円(40.4歳、勤続年数8.7年) |
【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」
勤務社労士の年収は、性別・年齢別でどのような違いがあるのでしょうか。まずは、男性の場合から確認してみましょう。
令和元年賃金構造基本統計調査によると、男性の勤務社労士の年収は484万7,500円(43.8歳、勤続年数12.0年)となっています。
また、同調査での男性全体の平均を見てみると、516万6,900円(43.8歳、勤続年数13.8年)という調査結果が出ています。
では、年齢別ではどのような違いがあるのでしょうか。令和元年の賃金構造基本統計調査の結果を、下記の表にまとめましたので確認してみましょう。
▼【男性】勤務社労士の年収(年齢別)
年齢 | 年収 | 勤続年数 |
30〜34歳 | 445万円 | 4.5年 |
35〜39歳 | 381万6,400円 | 6.9年 |
40〜44歳 | 487万8,600円 | 10.9年 |
45〜49歳 | 525万8,700円 | 13.7年 |
50〜54歳 | ー | ー |
55〜59歳 | ー | ー |
60〜64歳 | 834万8,600円 | 40.3年 |
65〜69歳 | ー | ー |
70歳〜 | 345万円 | 17.5年 |
年齢別で平均年収を比較すると、男性の勤務社労士では、40歳を超えたあたりから調査全体の平均年収を上回ることがわかります。
【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」
次に、女性の勤務社労士の年収を確認してみましょう。
令和元年賃金構造基本統計調査によると、女性の勤務社労士の年収は416万2,700円(46.3歳、勤続年数15.9年)となっています。
同調査での、女性全体の平均は366万4,100円(41.8歳、勤続年数9.8年)です。女性の場合、社労士の平均年収が全体の平均を上回っていることがわかります。
では、年齢別の違いについて、令和元年の賃金構造基本統計調査の結果をみてみましょう。
▼【女性】勤務社労士の年収(年齢別)
年齢 | 年収 | 勤続年数 |
30〜34歳 | 261万2,600円 | 4.5年 |
35〜39歳 | 453万4,000円 | 15.5年 |
40〜44歳 | 398万8,300円 | 8.7年 |
45〜49歳 | 398万8,300円 | 11.1年 |
50〜54歳 | 489万1,600円 | 21.3年 |
55〜59歳 | 533万4,800円 | 32.0年 |
60〜64歳 | ー | ー |
65〜69歳 | ー | ー |
70歳〜 | 318万1,600円 | 44.5年 |
女性の場合には30代後半で女性全体の平均年収を上回っています。その後、40代ではやや下降していますが、50代には30代よりもさらに高い年収を得ている傾向です。
社労士は、試験合格者に女性が多いという点が特徴的です。令和3年度(2021年度)合格者の男女比は6:4で、女性人気の背景には年収の高さもあると考えられます。
【参考】政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」
ここまで、勤務社労士の年収について詳しくみてきましたが、ここからは、開業社労士の年収や活躍する方法についてご紹介していきます。
開業社会保険労務士の報酬は、スポット業務に対する対価と、労務顧問契約に基づく顧問報酬に分かれており、報酬の自由化から各事務所ごとに報酬額は異なります。
受託するスポット業務量や顧問先数などに応じて、年間1,000万円を超える収入を得ている事務所もあれば、年間300万円未満の収入の事務所もあります。
中には多くのスタッフを雇用し、年間数億円を超える収入を得ている事務所もあります。
専門家としての知見・経験と、事業主としての経営手腕が大きく関係するといえるでしょう。
なお、開業の場合は売上金額がそのまま自分のものになるわけではありません。事務所を運営するには家賃や人件費などの経費がかかるからです。
開業社労士として活躍していくためには、いわゆる3号業務に積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。
3号業務とは、ひとことで言えば人事・労務コンサルタントとしての業務です。具体的には下記のようなものが該当します。
これらの業務を行うには専門的知見や実務経験が必要となるので、専門家として実務に活かす勉強が常に求められます。専門書を購入して自主学習したり、関連する各種セミナーに参加して知見を広げたりしていくことが必要です。
実務経験は、実際に業務に携わらなければ積めないので、人事・労務コンサルタントとしての仕事を得る機会があれば、臆することなく挑戦することが求められます。
なお、社会保険・労働保険の手続き業務である1号業務・2号業務も疎かにしていいわけではありません。3号業務を行うためのベースが1号業務・2号業務にあるからです。
社会保険・労働保険の手続き業務をしっかりと行い、その上で3号業務である人事・労務コンサルタント業務を行うことが必要です。
今回は、社労士の年収について解説してきました。